2022年5月27日金曜日

火器が勝敗を決した初の戦い Cerignola 1503 - Arquebus (GMT) AAR ③

  スペイン軍の陣地にずらっととりついたフランス軍に対し、スペイン軍歩兵が一斉射撃。初めて火器が勝敗を決した戦いとして、チェリニューラの名を歴史に刻んでやるのだ。次々と銃火に倒れていくフランス兵。ある部隊は混乱、退却し、ある部隊は自軍の旗が立っているところまで敗走(Retired)、そしてパイク兵1ユニットが壊滅した。フランス軍の歩兵戦列はぼろぼろである。



 余裕のスペイン軍、と言いたいところだが、恐怖の暴発ルールがある。実際の戦闘でもスペイン軍の火薬が爆発したそうで、この戦いではスペイン軍は歩兵部隊を活性化する度に暴発チェックをしないといけない。サイコロを振って40%の確率で暴発が起こり、ランダムにユニットが選ばれてそのユニットから2へクス以内のスペイン軍はすべて混乱してしまうのである。あー恐ろし。今回は幸い火薬に火はつかなかったけど。

 

 多くの部隊が損害を被ったフランス軍だが、左翼(マップ上方)は無傷である。まずはSBによる連続射撃で重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)を敗走させ、壕を挟んで白兵戦を行う。防御ラインを崩すことに成功、壕の向こう側にSBが進出した。




 左翼は果敢に攻撃したが、壕にとりついているほかのフランス軍部隊は敵けん制のため現状維持。なぜ攻撃させないかというと、攻撃成功の確率が低いこともあるが、何より彼らがスイス傭兵だからである。1315年モルガルテンの戦いでハプスブルグ家の軍隊を破り、1386年ゼンパッハの戦いで再びハプスブルグ軍に完勝したスイス歩兵の精強さは、ヨーロッパ中に知られるところとなった(ちなみに両戦闘ともVae Victis誌でゲーム化されている)。スイス傭兵はフランスをはじめとしてヨーロッパの諸勢力で雇われたが、金には貪欲で「金のないところスイス兵なし」と言われたそうだ。金が払われていないと戦うのを拒否したりしたらしい。ハイジはそんな守銭奴みたいな子じゃなかったのに。

 このゲームでもスイス傭兵が金にシビアなことを表すルールがあって、スイス傭兵が白兵戦を試みるたびに、実際に戦うかどうかチェックしないといけない。チェックに失敗すると攻撃を拒否するか、最悪の場合、戦線離脱をしてしまう。なのでスイス傭兵は壕にとりついて敵の戦力を引き付けておくことに使う。

 なおスペイン側にはドイツの傭兵であるランツクネヒトがいるが、彼らはスイス傭兵ほど金にうるさくなかったそうで、こういうチェックはない。まあランツクネヒトはランツクネヒトで、サッコ・ディ・ローマとかやっていますからね。

 

 このスイス傭兵の戦闘忌避チェックに関しては、ルールブックにSwiss Shock Reluctanceとあって、その下に(The Harry Lime/Jerry Maguire Rule)と書いてある。Harry LimeとJerry Maguireって誰?と思って調べてみたら、後者は映画「ザ・エージェント」の主人公。金だけを追い求める会社の方針に反対したらしい。要は、戦闘忌避チェックに成功して、金が支払われなくてもちゃんと戦うってことか。さfらにルールブックの説明では、チェックに成功した場合「ウィリアム・テルの子孫はパイクを構えて仕事に取り掛かる。ロッシーニをかけろ」なんて書いてある。そういえばウィリアム・テルの舞台はスイスだったな。ロッシーニって、オペラ「ウィリアム・テル」を作曲していたらしい。はー、勉強になるわ。

 もう一人のHarry Limeは映画「第三の男」の悪役。スイスとどういう関係があんの?と思っていたら、戦闘忌避チェックでサイの目が10以上の場合、「そのユニットは戦わないと決めただけでなく、国に帰って鳩時計を発明することを決意する(我々がハリー・ライムから得た情報だ)」なんて書いてある。

映画「第三の男」では

「イタリアではボルジア家支配の30年間は戦争、恐怖、流血に満ちていたが、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてルネサンスが生まれた。片やスイスは、500年にわたる民主主義と平和で何を産んだと思う? 鳩時計さ。」

っていう感じのハリーのセリフがあって、それを指しているんでしょうな。ボルジア家の支配って、Arquebusのイタリア戦争の時だし。いやーしかし、このゲームのルールって結構ノリノリで書いたのかな。ルールブックでニヤニヤしてしまうって、自分が読んだ中ではなかなか無いなー。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

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