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2024年12月2日月曜日

アンナ・コムネナが生きた時代を知る-『12世紀の地中海』

  12月2日はアンナ様の誕生日。ということでアンナ・コムネナ関連の本を読んでみました。アンナが活躍したのは12世紀ですが、『La Méditerranée au XIIe Siècle』はそのタイトルどおり12世紀の地中海世界についてまとめた本。この時代の地中海って面白いんですよね。中央部ではフランスから来たノルマン人が勢力を拡大して、東と西では十字軍にレコンキスタ。というか、この本の目次を見たほうが早いんですけど、まずは西欧キリスト教世界の拡大、ビザンツ帝国の衰退、分裂したイスラム世界って地中海の3つの文明について前半で説明していて、次に3つの地域での異文化の接触として、南伊のノルマン人、スペインのレコンキスタ、東方の十字軍という章立てになっています。こうして巨視的な感じでまとめてくれるとバラバラだった知識がすっきりつながって嬉しい。自分が大学受験で世界史の論述問題の勉強していた時、こういう本を知っていたらありがたかっただろうな―と思いました。

 この時代のビザンツと言えば、前世紀に東ではマンジケルトでけちょんけちょんに負けて、西ではノルマン人に領土を奪われるという踏んだり蹴ったりで、アンナ様のお父様が何とか立て直してますね。この本でもお父様のアレクシオス一世や、アンナ様の宿敵、じゃなかった弟のヨハネスは何度か触れられています。アンナ様についても当然書かれている…って思ったら、あれ、無い。え、アンナ様の名前が出て無いの? 見落としちゃったのかな…。まあ、この本ではビザンツはメインではないですし、書かれている内容もあんまり嬉しいものじゃないんですよね。「ビザンツ帝国の衰退」っていう章タイトルからしてそれがわかるんですが、その章の中には「ビザンツ帝国の政治的・軍事的危機」とか「ビザンツ帝国の経済的・社会的危機」といった節が立っていて、危機ばっかりじゃねえかと突っ込みたくなりました。いやまあ、ビザンツの歴史って危機の連続だったと言えばそうなんですけどね。

 12世紀の十字軍と言ったらウォーゲーマー的にはリチャード獅子心王とサラディンが知られていると思いますが、サラディンはしばしば寛容の精神を示したためキリスト教徒たちが勇敢な騎士像をサラディンに見出した、なんて書かれている一方で、リチャードはアッコンを陥落させたときに抵抗した兵士だけでなく女性や子供も処刑したことが触れられていますね。あと、以前AARを書いたアンティオキアサグラハスといった戦いも出てくるのがちょっと嬉しい。イベリア半島では1195年にAlarcosでキリスト教勢力が大敗するんですが、第二のサグラハスなんて書かれていました。たしかにサグラハスでもアルフォンソ六世がぼろ負けしてたもんね。それと、Levy&Campaignシリーズの「Almohavid」が扱う時期の前後の流れもわかるようになっています。

 『La Méditerranée au XIIe Siècle』では政治・軍事的なことだけでなく、この時代の文化的側面も解説してくれています。12世紀の地中海と言ったらいわゆる12世紀ルネサンスがありましたが、スペインでの様々な文献がアラビア語からラテン語に翻訳されたことが述べられています。あと、『昼も夜も彷徨え マイモニデス物語』っていう小説があって、主人公のマイモニデスは中世最大のユダヤ思想家ともいわれ、迫害などを避けスペインからエジプトまで亡命しサラディンの侍医になったりした人なんですけど、『La Méditerranée au XIIe Siècle』でもマイモニデスが出てきて、医学と哲学の面での功績が解説されていましたね。それとユダヤ人と言えば、十字軍でもっとも被害を受けたのがユダヤ人だって書かれていました。

 というわけで、12世紀の地中海世界のゲームがやりたくなってきましたよ。十字軍関連のものでもやってみるかな。でも会戦級ばかりで、広い地域を扱ういわゆる戦略級的なものは持っていないんだった。バラバラだった知識がすっきりつながったとか書いておきながら、活用できないじゃん…。

2023年12月2日土曜日

アンナ・コムネナのお誕生日に、『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』

  12月2日はアンナ・コムネナの誕生日で、今年で940歳。まあ、12世紀に活躍した人ですからね。今日は漫画『アンナ・コムネナ』関連のイベントが書泉グランデであるんですけど、先日からイベントの告知やら早々に定員に達したなんてお知らせやらアンナ様関連のことがツイッターで目についたので、アンナ様と言ったらビザンツということでビザンツ関連の本を読んでみました。


 ビザンツについての本はいろいろ出ているけど、今回読んだのは『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』。この本、2018年に出版されているんですが、今年の10月に新装版が出ているんですよね。もしかして、『アンナ・コムネナ』の影響でビザンツに興味を持つ人が増えている? でも、自分が持っているのは原著の『The Lost World of Byzantium』のペーパーバック版。だって、安いんだもん…。白水社さん、すみません。

 この本、ビザンツの通史なんですけど、結構軍事面も書かれているんですよね。ニケフォロス・フォカスのクレタ奪還戦についても、上陸直後の脆弱なビザンツ軍を攻撃しようと待ち構えているアラブ軍に対し、船に傾斜台を装備して歩兵も騎兵もフル装備のまま下船、上陸して即座に戦闘できるようにしたとか、千年の通史にここまで書く? ウォーゲーマーとしては嬉しいんですが。11世紀後半にはノルマン・コンクエストの影響でアングロ・サクソン系の傭兵が増えたとかも書かれてあったなあ。それとヘラクレイオス1世の対ペルシア戦役なんかも、西方で敵を抱えつつもペルシアの虚を突いたりとか意外と詳述していて、この時期を扱ったゲームがあったらやってみたいなと思いましたよ。しかしヘラクレイオス、西方でアヴァール人を打ち破り東ではペルシアに大きな勝利を収めて領土を回復したのに、数年もしたら勃興期の超イケイケのイスラム勢力がなだれ込んでくるなんて、次から次へと外敵の脅威にさらされたビザンツ帝国を象徴するような生涯ですな。


 Vae Victis誌162号のヒストリカルノートにユスティニアヌス帝からマンジケルトまでの帝国東方の戦役が描かれていたんだけど、そこで読んでいた内容や人物が『The Lost World of Byzantium』を読んでいると出てきて嬉しくなりました。西欧から来た傭兵指揮官でアナトリア高原に実質的な自治領を打ち立てたRoussel of Bailleulも、ちらっと触れられていたしね。VV162号の付録ゲーム「Basileus II」に含まれている戦いが全部出てこないかなーなんて期待してしまいましたよ。

 でもね、Vae Victisの記事は当然人物名がフランス語表記なんですよ。ユスティニアヌスはJustinienだし、ニケフォロス・フォカスはNicéphore Phocasだし。一方の『The Lost World of Byzantium』は、なるべく元のギリシア語表記に忠実に表記しようとしたそうだけど、固執はしてなくて、Johnとか英語で知られた名前の場合は英語表記にしたそうです。なので自分の頭の中でもいろんな表記が入り混じってしまって、やっぱり日本語で読めばよかったよ…。

 とはいえこの本、全体的に文章は平易なうえに、事実の羅列ではなくなんと言うか物語的に読めました。出だしからして、16世紀半ばのイスタンブールであるフランス人がビザンツの遺構探しにはまってしまうところから始まりますし。なのでサクサク読み進められたんだけど、1204年に第四回十字軍にコンスタンティノープルを占領されて以降は、なんというか文章が悲哀を帯びていて、読むスピードも遅くなってしまいました。いや、文章というよりは、読んでいる自分が「ああ、これからもう滅亡に向かって衰退していくんだよな…」って気持ちで読んでいるからなんでしょうけど。

 あと、本の最後にはビザンツ帝国の残した教訓として、強靭な社会は、もっとも危機的な状況においてすら、適応し外部の人々を取り入れることができるのだ、みたいな感じのことが書かれていたけど、なんか今の日本はどうなんだろうと思ってしまいました。

 ペーパーバック版だと本文が250ページもないので、それほど負担にならずに読めるんじゃないでしょうか。残念ながらアンナ様はほとんど出てこないけど、ビザンツの通史を、新書よりはもうちょっと詳しく、でもそんなに肩に力を入れずに読みたい、という方にはピッタリかと思います。


共和国軍の攻勢から反乱軍の反撃、そして機動戦から消耗戦へ Brunete 1937 (Alea43) AAR part5

 ●第5ターン  残り2ターンである。このゲーム、序盤は共和国軍が圧倒的に優勢であるものの、反乱軍には続々と増援が登場する。下の写真はこのショートシナリオが扱う第1~6ターンの両軍の増援で、一目瞭然、共和国軍には微々たる数しか現れないのに対し、反乱軍は大量の援軍を受け取る。ヒスト...