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2026年3月15日日曜日

12世紀イングランドの内戦を引き起こした一隻の船、『The White Ship』

 「Men of Iron Tri-pack」が再版されましたね。しかもシリーズ第6作の「Purgatorio」も出て、いやー、嬉しい。MoIシリーズは比較的シンプルなルールで多くのシナリオを楽しめるので、ハマる人がもっと出てくるといいなー。



 というわけでMen of Ironシリーズの関連書籍をちらほら読んでいるんだけど、今回は第5作「Norman Conquests」関連。ノルマン・コンクエストって言ったら世界史で習うぐらいメジャーだし、ノルマン人の南イタリアとシチリアの征服も『ノルマン騎士の地中海興亡史』が去年復刊されてるんですけどね、収録シナリオの一つ、Tinchebrai 1106についてもっと知りたいな、と思いまして。1066年のノルマン・コンクエストから12世紀半ばのプランタジネット朝成立までの200年弱ってぼんやりとした印象しかないんですよね。

 今回読んだのは『The White Ship』という本。The White Shipって言葉だけ見るとなんかいいイメージが湧いてしまいますが、イギリスの歴史においては悲劇の船らしいんですね。1120年、The White Shipはノルマンディーの港を出てすぐに沈没、乗っていたイングランド王の跡継ぎをはじめ王族、貴族が多数死亡してしまいます。この海難事故はイングランドとノルマンディーでthe Anarchy(無政府状態)と呼ばれる15年の内戦を後に引き起こすことになるんですが、ニューヨークタイムズのベストセラーにもなったDan Jonesの『The Plantagenets』もこのThe White Shipの難破から書き起こしていますね。『The White Ship』ではThe shipwreck impacted spectacularly on the next generation, resulting in the bloodiest anarchy that England has ever suffered.  'No Ship that ever sailed brought England such Disaster,'なんて書いています。

 それだけインパクトのあったホワイトシップの難破ですが、この本『The White Ship』はそれを中心にノルマンコンクエストからプランタジネット朝の開始までを概説しています。冒頭に触れたTinchebraiは征服王ウィリアムの死後、兄弟間の争いで起こった戦いで、この経緯についても説明していて、あの戦いが自分の頭の中でその前後の歴史の流れとつながって助かりました。それに、この本、結構わかりやすい文章で書かれているんですよね。おかげでさくさく読めました。

 しかしまあ、イングランドって結構内紛続きだったんだなっていう印象です。まあ征服王ウィリアム自身がノルマンディーにいた子供のころから結構大変な状況に置かれていて、William even awoke one morning to find his chamberlain in the bed next to him, his throat slashed open in silent assassination.なんてエピソードも載っていました。ウィリアムが存命のうちはその強権で国内はある程度安定してたようですが、As soon as the Conqueror died... his attendants fell upon his belongings in an orgy of self-enrichmentだそうです。そりゃごたごたが起こってもおかしくない。

 でも1106年のTinchebraiの戦いでヘンリーⅠ世が兄弟喧嘩を制したあとは、His rigid control of the English aristocracy....had helped to lay down a third of a century of peace there.だそうです。そして跡継ぎもちゃんと育って安心……と思っていたら、ホワイトシップの悲劇が起こるわけですね。ヘンリーⅠ世の死後のthe Anarchyに関しては、The days of the Conqueror's strong rule - when, it had been claimed, a girl laden with gold could cross the land unmolested - were long gone.とか書かれちゃってます。ほかにもEngland had fallen spectacularly from the strictly administered harmony of Henry to the bloody purgatory of Stephen.ってあって、おお、Men of Ironの新作のタイトルとこんなところでつながるとは、と本筋と関係ないところで嬉しくなりました。

 ヘンリーの死後の内戦はDan Jonesの『The Plantagenets』でちょっとは知識があって助かりました。『The White Ship』では一方の主役Matildaのことが結構書かれていて面白かったです。女性が支配者になることに強い抵抗のある時代だってことが繰り返し書かれているんですが、she retained a 'mind steeled and unbroken in adversity'.とか、Matildaが窮地を脱したときはIt was an escape so daring that it drew the admiration of Matilda's enemies.とか、もっとMatildaのことが知りたくなりましたよ。

 もちろんタイトルとなっているthe White Shipについても、どういう状況だったのか説明されているんですけど、みんな酔っぱらってたようで、when monks appeared with holy water to bless the White Ship the more high spirited passengers chose to chase them away, shouting insults. This made the drunken spectators aboard howl with delight.とか、そりゃいかんだろ。

 ところで筆者のCharles Spencerはオックスフォードで歴史を専攻したあと、テレビの歴史番組にかかわったりしていたそうです。でも、そういう経歴よりも目を引いたのがNinth Earl Spencerだってこと。しかもA godson of Her Majesty the Queenだそうで、エリザベス二世が名付け親ってこと? この本は畳の上で寝ころびながら読んでいたんですけど、筆者がこんな貴族さまだって知って、ちゃんと背筋伸ばして紅茶淹れなきゃって思いましたよ。


2025年2月27日木曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part4

  ランカスター軍は左翼(マップ右方)のサマセットがなんとか態勢を立て直そうとするも、右翼のパーシーが続かず。ヨーク軍はトマス・ネヴィルが正面のサマセットの部隊を攻撃。ヨーク軍がさらに追い打ちをかけようとしたところで、ランカスター軍がたまらずSeizureカウンターを使用する。敵を波に乗らせてはいけない。ここで流れを切らなくては。60%の確率だったが継続奪取に成功。サマセットがトマス・ネヴィルに反撃する。

 だがまたもパーシーが続かない。自由活性を得たヨーク軍は、ヨーク公が自ら動く。配下のネヴィル一族だけに戦わせたまま高みの見物をするヨーク公ではないわ! 正面のパーシーの部隊に猛攻、損害を与えていった。

 よし、ソールズベリーよ、ヨーク公に続け。敵に息つく暇を与えずに畳みかけるのだ! だが継続活性に失敗。おいおい、活性化値5が泣くぞ。

 自由活性を得たランカスター軍は援軍登場チェックを行う。このゲームではランカスター軍の増援は同軍の自由活性のたびに10面体サイコロを振って登場するかを決める。登場に失敗するごとに次から+1DRMされるため、時間がたつほど登場する可能性が高まるのだ。サイの目にDRMをプラスして12以上だとマップ左端下方からウィルトシャー伯ジェームズ・バトラーの部隊が、そして14以上だとマップ右端からジョン・クリフォード卿の部隊が登場する。今回はDRM+4。そしてサイの目は……9! 待ちに待った援軍が来たぞ! 増援の到着に士気が上がったか、ランカスター軍は自由活性終了時の敗北チェックにも耐えた。

 敵が背後から現れただと! だが眼前のランカスター軍はあと少しで士気崩壊する。やるかやられるかだ。このまま攻撃を続けて先に敵を倒すのみ。ヨーク公が陣頭に立って熾烈な攻撃を加え、全軍の士気を鼓舞する。次々と敗走していくパーシーの兵たち。ランカスター軍の敗走ポイントは14に上ったものの、ギリギリのところでランカスター軍は敗北チェックに耐えた。だがすかさずヨーク軍中央のソールズベリー伯がヨーク公に続く。マップ上端に追いつめたランカスター軍をさらに押し込んでいった。

 ランカスター軍は増援として現れたウィルトシャー伯を急進させる。サマセットたちが持ちこたえている間にヨーク軍を背後から襲うのだ。今回もランカスター軍は敗北チェックをしのいだが、激戦に疲弊したかサマセットが継続活性に失敗し続かない。

 背後の敵にかまうな、パーシーとサマセットにとどめをさせ、とヨーク公が猛攻。重装騎兵2ユニットの集中攻撃ですでに混乱状態だったパーシーの歩兵を蹴散らす。そのまま勢いに乗ってヨーク公が敵軍旗に迫り、敗走状態の歩兵を壊滅させた。まだまだ終わらんよ、狙うはパーシーの首!と、混乱状態の歩兵とともにいるパーシーを歩兵2ユニットで攻撃。だがパーシーの兵は斜面の上に位置するという地形にも助けられ、ヨーク軍の攻撃に耐えた。ランカスター軍の敗走ポイントはすでに15。だがまたも敗北チェックに耐える。ランカスター軍の悪運もそろそろ尽きるはず、ソールズベリー伯よ、とどめをさせ、と思いきや、伯は動かず。どうした?!

 ヨーク軍の連携が乱れているを見て、ランカスター軍増援のウィルトシャー伯がソールズベリー伯の後方からチャージ!+3DRMでネヴィルは混乱、継続攻撃でネヴィルのMM壊滅、ネヴィル戦死! さらにヨーク公の長弓兵を後方と側面からInf2ユニットが攻撃、損害を与える。おし、罠にかかったヨーク軍をこのまま挟撃だ!

 だがランカスター軍の粘りもここまでだった。敗北チェックのサイの目は5。積み重なる損害に耐えきれず、ランカスター軍は士気崩壊、背後から襲われながらも勝ちを収めたのはヨーク軍となった。

 こうしてヨーク公リチャードが護国卿として覇権を握る状態が続くことになる。でも、あれ? リチャードのイケメンの息子、マーチ伯がエドワード4世として王位に就くのはかなり先になるってことですかね。


2025年2月23日日曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part3

  連続しての攻撃をヨーク軍による継続奪取でくじかれたランカスター軍。やられたらやり返せ、敵に流れを渡してなるものかと、今度はランカスター軍がSeizureカウンターを使用する。右翼(マップ左方)で指揮官が突出しているパーシー隊を動かそうとするも、継続奪取に失敗。逆にヨーク軍に自由活性を与えてしまった。

 

 Men of Ironシリーズは活性継続にはサイコロによるチェックが必要で、先ほどのリチャード・ネヴィルのように動くと思っていた部隊が動かなかったり、意外なところで意外な部隊が動いたりしてゲームをスリリングなものにしているのだが、Seizureカウンターがさらに緊張感を増してくれている。Seizureカウンターには戦闘を有利にするものなどもあるが、敵の活性継続時に継続奪取を試みることができるカウンターもあり、効果的に使用すると敵に対する心理的ダメージも大きい。敵に対応する暇を与えず自軍部隊で連続攻撃、と意気込んでいたら、敵に活性をかっさらわれてしまうわけである。

 ただ継続奪取を試みる側にもリスクがある。サイコロを振って奪取に成功するかチェックしなければならないのだが、失敗した場合は敵に自由活性が与えられる。Men of Ironシリーズでは同じ部隊が連続して活性化することは基本的にできないのだが、自由活性を得たプレイヤーは自軍の部隊を自由に選んで活性化できるため、活性奪取直前に活性化した部隊も動かすことができる。要は、継続奪取に失敗すると敵プレイヤーは同じ部隊を2回連続して活性化することもできるようになるのだ。


 敵の継続奪取失敗で自由活性を得たヨーク軍は、左翼のヨーク公を動かす。継続奪取に失敗して落ち込むランカスター軍プレイヤーに対しダメ押しとばかりに、ヨーク軍はSeizureカウンターのUnsteady Troopsを使って敵右翼(マップ左方)パーシーの歩兵を混乱状態にする。

「イングランド王ヘンリー6世を手中におさめ、このままいけばイングランドの実質的な支配者になるかもしれないヨーク公。そのヨーク公が陣頭に立って攻撃してくるのを見てパーシーの兵たちは動揺したんだよね」

と得意げなヨーク軍プレイヤー。混乱した歩兵をヨーク公が重装騎兵2ユニットで攻撃すると、ランカスター軍の兵たちは散り散りになった。さらに突出しているパーシーの歩兵に対し射撃で損害を与えた後、白兵戦でとどめを刺した。


 ヨーク公の部隊の奮戦で敵パーシー隊はかなりの損害を被った。いけ、ソールズベリー伯、たたみみかけろ。だが、またも継続に失敗。

「おいおい、活性化値5ってかなり優秀なはずだろ。能力を出し惜しみしなくてもいいんだよー」


 またも敵の連携の悪さに助けられたランカスター軍。パーシーが残存の兵をかき集めて戦列を敷く。耐えろ、時間を稼ぐのだ。待っていれば必ず援軍が現れる。サマセットは防御を固めつつ、射撃でヨークの長弓兵を敗走させた。

 そんなランカスター軍にヨーク軍は猛攻を加える。まずは右翼のトマス・ネヴィルが長弓兵で正面サマセットの歩兵を混乱させ、そこにトマス自ら突撃。たまらずサマセットの歩兵は壊滅、そして下馬状態の騎兵(UH)にもネヴィルの重装騎兵が突撃し混乱させた。続けてヨーク軍中央のソールズベリー伯が活性化。ここでも射撃で混乱させ歩兵で白兵戦、というコンボ攻撃でサマセットの長弓兵が敗走する。そして息子のトマスに続け、とソールズベリー伯も重装騎兵を率いて突撃、だがなんとサイの目ゼロが出て両者混乱となってしまった。ランカスター軍に対応する暇を与えずに、トマス・ネヴィルが再び動く。ネヴィル親子の連携攻撃である。射撃と白兵戦で敵を敗走させ、先ほど混乱状態にした下馬騎兵にトマスが3ユニットの集中攻撃で蹴散らす。そしてさらにソールズベリー伯が継続活性に成功。

「げ、ヨーク軍の活性が4回続くの? 対応できないじゃん」

「ふっ、ソールズベリーの活性化値5は伊達じゃないんだよ」

「ソールズベリー、これまで継続活性に結構失敗してましたけど?」


 ネヴィル一族の怒涛の連携攻撃でランカスター軍の敗走ポイントは12に上った。このゲームのランカスター軍の敗走レベルは18。自由活性化が終わるごとに敗北チェックで10面体サイコロを振り、敗走ポイントとの合計が敗走レベルを越えたら負けである。つまり現時点ですでにランカスター軍は30%の確率で敗北チェックに失敗してしまう状況となっている。一方、ヨーク軍はいまだ2である。ランカスター軍の援軍は間に合うのか。


つづく

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C3i誌を出されていたRodger MacGowan氏の訃報が届きました。長年ウォーゲーム界に大きな貢献をされてきた氏のご冥福をお祈りいたします。

なお、カリフォルニアの火災で大きな被害を受けた氏のご家族への寄付は今も受け付けられています。

Support Rodger, Mae and Steven post-Palisades Fire


2025年2月18日火曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part2

  ヨーク軍は左翼ヨーク公、中央のソールズベリー伯と活性化が続いたが、さらにヨーク公が再び活性化。左翼(マップ左方)から全力で攻撃する。先ほどの突撃で混乱状態だったランカスター軍歩兵は重装騎兵の攻撃で壊滅。怒涛の波状攻撃でヨーク軍がランカスターの戦列に食い込んだ。


 ここでやっとランカスター軍の自由活性が回ってくる。右翼(マップ左方)のパーシーの部隊がヨーク公に反撃。敵の好きなようにさせてたまるか。指揮官パーシーが陣頭に立ち、突出している敵歩兵に打撃を加えた。

 続いて左翼(マップ右方)サマセット公が動く。敵最後尾のトマス・ネヴィルの部隊が遅れていて右翼(マップ右方)が手薄になっているのを見て取るや、歩兵が前進。敵の射撃を避けるようにして長弓兵の側面に回り込み、白兵戦をしかける。歩兵2ユニットの攻撃でソールズベリー伯の長弓兵は混乱状態となった。

「あれ、ランカスター軍は反撃なんかせず守りに徹したほうがいいんじゃないの? 増援が来るまで時間を稼げばいいんだしさ。無理に攻撃して、下手したら自滅するよ」

「いやいや、そんな口車には乗るかっての」


 先述のようにランカスター軍はほとんど歩兵のみの一方、ヨーク軍は歩兵のほかに長弓兵と重装騎兵も擁しバランスのいい兵種構成となっている。重装騎兵は白兵戦で攻守ともに歩兵に対して有利に戦えるし、長弓兵の射撃で混乱させたところに重装騎兵を突っ込ませたり歩兵で白兵戦をしかけたり、というコンボ攻撃もヨーク軍は可能なのだ。そのためランカスター軍は少々のリスクを冒しても適宜反撃して敵の攻撃力を削いでいく必要があると思われる。でもまあ、ヨーク軍中央のソールズベリー伯の活性化値5を考えると、反撃に出たはいいけれどもヨーク軍が連続して活性化してボコボコにされる、という可能性も高いのだけれども。


 ランカスター軍の反撃に対し、ヨーク軍は素早く対応。最後尾にいたトマス・ネヴィル自らが重装騎兵を率いて突撃。ソールズベリー伯の長弓兵に対する攻撃のため側面をさらけ出していたランカスター軍歩兵はたまらず壊滅する。トマス・ネヴィルの勢いは止まらず、さらに継続攻撃で敵歩兵1ユニットに損害を与えた。

 このトマス・ネヴィル、同じくウェイクフィールドで戦っているソールズベリー伯の息子である。有名なキングメーカー、ウォリック伯はトマスの兄にあたる。つまりウェイクフィールドの戦いではウォリックの父親と弟が加わっていたのだけれども、二人ともこの戦いで亡くなっている。ソールズベリー伯はウェイクフィールドの戦いの前年にブロア・ヒースでランカスター軍に大勝するなど有能な指揮官だったようで、このゲームでは活性化値が5とかなり高い。「薔薇戦争」(GJ)でもヨーク派貴族として登場しており、星二つの2-7である。ちなみにトマスのほうは31歳と比較的若くして亡くなったせいかぱっとした戦歴がなく、父親が大勝したブロア・ヒースの戦いでは逆にランカスター軍の捕虜になったりしている。うーん、兄のウォリックとなんかかなり差があるなあ。


 息子に救われた形になったソールズベリー伯。トマスに続け。ネヴィル家の団結力をみせてやるのだ。だがソールズベリー伯は継続活性に失敗して動かず。あれれ。活性化値5はどうしたんだよ。

 

 敵の連携が乱れている隙に、ランカスター軍は右翼(マップ左方)のパーシーがヨーク公に反撃。突出していた混乱状態の敵歩兵を壊滅、斜面を下ってそのままパーシー自ら敵陣に切り込んだ。ヨーク公の歩兵はその勢いを押しとどめることができず後退してしまう。

 

 おし、このモメンタムを持続させるのだ。活性化値4と優秀なサマセット伯がマップ右方でも攻撃、と思いきや、そうはさせじとヨーク軍がSeizureカウンターを使用。継続奪取に成功し、右翼(マップ右方)のトマス・ネヴィル隊を活性化。「マジかよ、このまま勢いに乗りたかったのに」とぼやくランカスター軍プレイヤーを尻目に、先ほどトマス自らの突撃で混乱状態にしていた敵歩兵にとどめを刺し壊滅させた。

つづく


2025年2月14日金曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part1

  薔薇戦争の初期の1460年、王位を狙うヨーク公リチャードはヘンリー6世を捕え、マーガレット王妃をはじめとするランカスター派に対して戦いを有利に進めていた。だが12月30日にウェイクフィールドの戦いで数的優勢なランカスター軍に大敗を喫し、ヨーク公は戦死してしまう…というのが今回のゲーム「The Battle of Wakefield」である。Men of Ironシリーズの一つで、C3i誌の31号に付いたもの。なんでこれをプレイしたかというともちろんMoIが好きだから、というのもあるんだけど、ウォーゲーマーだったらよく知っているようにカリフォルニアの火災でRodger MacGowan氏の自宅兼仕事場が焼失してしまって、C3i製作に必要な機材などもなくなってしまったという衝撃的なニュースが1月にありまして。少しでも応援になればとC3iのゲームをプレイすることにしたわけです。いやプレイだけじゃなくてゲームも買えよ自分。ちなみにMacGowan一家への寄付はこのブログを書いている2月13日現在も受け付けています。

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 このウェイクフィールドの戦い当時、ヨーク公はサンダル城に入って援軍を各地から集めようとしていた。だが食料調達に出た兵たちが敵と小競り合いを始めたのを見て、城から打って出る。そしてランカスター軍の待ち伏せをくらい両翼から包囲されて惨敗した―とよく言われているらしい。だがデザイナーは、数千のランカスター軍が布陣していたのならサンダル城からも見えたはずで、数的に劣勢だとわかっているヨーク公がわざわざ城から出て敵の罠の中に突っ込んでいくなど馬鹿げたことをやるはずがない、と書いている。まあ、12月の末なんで降雪や悪天候で視界が悪かったからヨーク公も敵の状況を誤認した、という説もあるらしいけど。いずれにせよ突出したヨーク軍に対し待ち受けていたランカスター軍が挟撃、というのはゲームのシチュエーションとしては面白く、このゲームでもランカスター軍の増援がマップ左右の両端から登場しヨーク軍の側面や後方を襲う、という形をとっている。増援が現れる前にランカスター軍を敗北に追いやりたいヨーク軍、かたやランカスター軍はひたすら耐えて増援を待つ、という展開になる。

 初期配置は写真のとおり。ヨーク軍の各部隊は歩兵(Infantry, Inf)、長弓兵(Longbow, LB)、重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)と兵種のバランスが取れているのだが、部隊ごとの兵力は少なく、各部隊5~6ユニットとなっている。一方のランカスター軍はほとんどが歩兵で、長弓兵は各部隊に1ユニット、重装騎兵はサマセットの部隊にのみ1ユニットだ。ただしランカスターの両部隊とも歩兵を8ユニット擁しており、増援が現れるまでひたすら防御するのには向いているのかもしれない。


 というわけでプレイ開始である。

「敵の増援? んなもん気にすんな。初っ端からフルスロットルで攻撃!」

 ヨーク軍は全部隊を急進させ、左翼(マップ左方)のヨーク公から攻撃をしかける。敵長弓兵を射撃戦で混乱状態にし、そこに歩兵が切り込んだ。たまらずランカスター軍の長弓兵は散り散りになって軍旗まで敗走。さらにヨーク公の部隊の最左翼では重装騎兵2ユニットが降り積もった雪を蹴散らしながら突撃、敵歩兵を混乱状態に陥らせた。

 続いてヨーク軍中央のソールズベリー伯リチャード・ネヴィルがヨーク公を支援。長弓兵でランカスター軍唯一の重装騎兵に射撃を加える。Men of Ironシリーズでは重装騎兵は射撃を受けた場合、条件さえそろえばカウンターチャージが行える。チェックに成功しさらに射撃でも損害を受けなかった場合、射撃をしてきた長弓兵ユニットに突撃ができるのだ。

 だが、たしかにカウンターチャージに成功すれば敵長弓兵を敗走させられる可能性が高いが、その結果重装騎兵が単独で突出することになる。ランカスター軍は増援が到着するまで防御に専念していればいいのだ。敵の挑発に乗ることはない。

 そう考えて自重したランカスター軍だが、百年戦争でもその威力を発揮したロングボウによって強制下馬(Unhorsed)の結果を被る。強力なはずの重装騎兵が、歩兵よりも脆弱なユニットになってしまった。

「げ、ランカスター軍唯一の騎兵ユニットなのに、馬をなくしちゃったの?! My kingdom for a horse!」

「そのセリフ、言っていいのはリチャード三世だけだからね」

つづく


おまけ。出先でぶらぶらしていたらたまたま見つけたウェイクフィールド通り



2024年3月29日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ⑤

  イングランド軍右翼のラヌルフ隊の猛烈な攻撃に続いて、中央のロベール・ド・ボーモンが動く。先ほど奮戦した敵の精鋭歩兵を再び攻撃。さすがの精鋭も2度目の攻撃は支えきれず、混乱状態になって後退する。こうして敵に損害を与えつつ、ロベール・ド・ボーモンは混乱状態にあるユニットの回復に努めた。

 イングランド軍の好きにさせてたまるか。敵も大いに出血しているのだ、死力をふるって攻撃し続けろ! と中央のノルマンディー公ロベールがやり返す。先ほど敵の波状攻撃で損害を被っていたにもかかわらず精鋭歩兵が奮戦、同じく消耗していた敵槍兵を敗走させる。そして弓兵が敵指揮官ロベール・ド・ボーモン率いる重装騎兵に至近距離まで近づいて矢を放つ。イングランド軍は次々と馬を失い混乱状態に陥った。そこに槍兵が白兵戦をしかける。この槍兵自身も混乱状態だったが、奮戦し敵を敗走させた。必死に兵を押しとどめようとしたイングランド軍の老将ロベール・ド・ボーモンは、この混戦の中で戦死してしまった。 

 そしてノルマンディー軍右翼(マップ右方)のモルタン伯ギョームが動く。敵の重装騎兵を指揮官ギョームが自ら仕留め、配下の槍兵が軍旗の下に敗走していたサリー伯部隊の兵を掃討していった。イングランド軍左翼は崩壊である。さらにノルマンディー軍左翼(マップ左方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレームが続く。先ほどのイングランド軍右翼のラヌルフ隊の攻撃で大損害を受けていたため、後退して態勢を整えようと努めた。

 ここでやっとイングランド軍に自由活性が回ってくる。このシナリオではイングランド軍は自軍の自由活性の際に増援の登場チェックが行える。失敗するごとに有利なサイの目修正がつくので、時間がたてばたつほど増援が現れる確率が高くなる。これまでずっと登場チェックに失敗していたが、頼む、イングランド軍の最後の攻撃に間に合ってくれ、との祈りを神が聞き入れたか、ブルターニュ公アラン四世の重装騎兵部隊がついに登場! だが遅い。遅すぎる。史実ではイングランド王ヘンリーI世がブルターニュ騎兵に戦場を迂回させ、敵の側面から後方にかけて奇襲、ノルマンディー軍を崩壊させている。このシナリオでも増援の重装騎兵3ユニットは強力なのだが、すでにイングランド軍の累積敗走ポイントは敗走レベル(Flight Level)の21を上回っており、敗北が決まっている。イングランド軍としてはブルターニュ騎兵の攻撃でできる限り敵に損害を与え、この自由活性の終了時の敗北チェックでノルマンディー軍も崩壊させ、引き分けに持ち込むしかない。


 増援として現れるブルターニュ公アランはタンシュブレーの戦いの10年前に第一回十字軍に参加している。ちなみにブルターニュはノルマンディーの西隣にあたり、両地方はずっと抗争を続けていたらしい。ブルターニュ公国は中世の間、実質的な独立を保つが、百年戦争の後にフランスに屈服する。これはVaeVictis160号でゲームになっていますね。あと、漫画『ブルターニュ花嫁異聞』はまさにブルターニュが主な舞台で、これは13世紀のお話。

 

 マップ右方から重装騎兵部隊が土煙を上げて敵の側面に突撃。突然現れた騎兵集団にノルマンディー軍左翼の兵たちは浮足立ち、ブルターニュ公アラン四世率いる重装騎兵の突撃を防ぐすべもない。歩兵が次々と蹴散らされていき、さらには指揮官のロベール・ド・べレームは戦死してしまった。ちなみにこのロベール・ド・べレーム、史実では敵の騎兵部隊が出現すると一目散に戦場から逃走したらしい。

 このブルターニュ部隊の奇襲攻撃でノルマンディー軍の累積敗走ポイントは15に上った。敗走レベルは18で、10面体ダイスを振って60%の確率で敗北となる。そしてサイの目は5。これまでの激戦に耐えられず、ノルマンディー軍の士気も崩壊してしまった。イングランド軍も敗走レベルを超えているので、この兄弟間の死闘は引き分けとなる。ボクシングの最終ラウンド、それまでの激しい殴り合いで立っているのもやっとの赤コーナー・ヘンリー。最後の力を振り絞って放った右ストレートが青コーナー・ロベールの顔面をとらえ、両者ともにリングに崩れ落ちた ― という感じでのゲーム終了である。


 このAAR冒頭で書いたように、このシナリオではノルマンディー軍が不利である。だが既述のように攻撃側が有利なので、果敢に攻撃して殴り合いを制すれば勝機はあると思われる。まあ、もちろんイングランド軍の増援がいつ現れるかにもよるんだけど。

 タンシュブレーの戦いはウォーゲーム的にはマイナーだと思うけど、Hollandspielの「Shields & Swords II」シリーズの、「House of Normandy」というゲームにTinchebraiのシナリオが収録されている。PnP版が12ドルと廉価で手に入るので、「Norman Conquests」のこのシナリオと比較してみるのもいいんじゃないでしょうか。


2024年3月22日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ④

  ノルマンディー軍左翼(マップ右方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレームに続いて、右翼(マップ左方)のモルタン伯ギョームが継続活性。すでに大きな損害を被っている敵サリー伯の部隊に、とどめだとばかりに激しい攻撃を加える。イングランドの兵たちは自部隊の軍旗目指して我先に敗走。サリー伯が率いる重装騎兵だけがからくも持ちこたえた。

 ノルマンディー軍の攻撃によって右翼のラヌルフ隊は大きな損害を被り、左翼のサリー伯隊にいたってはほぼ壊滅状態。左右両翼で危機にさらされているイングランド軍。唯一無傷でいるのは中央後方に布陣しているヘンリーI世の部隊のみ。たった2ユニットの部隊だが、精鋭の下馬騎士で、防御力も高い。この王直属部隊を投入すべきか。


 イングランド軍を率いるヘンリーI世はノルマンディー公ロベール二世の弟で、征服王ウィリアムが死去した際、ロベールがノルマンディーを、もう一人の兄ウィリアムがイングランドを相続したが、ヘンリーは現金をもらっただけだったそうだ。だがイングランド王となったウィリアムが狩猟中に死去。その死因には諸説あるようだが、とにかくすぐさまヘンリーはウェストミンスターに駆け付けそこにあった王室の宝庫を確保、そしてイングランド王に即位している。優秀な指揮官であった一方で冷酷な面も持ち、ヘンリーのせいで孫娘がむごい目にあっている。そのことに激怒した孫娘の母親、つまりヘンリーの娘が、クロスボウで自分の父を狙撃、危ういところで矢がそれた、というエピソードが残っている。おいおい、どんな親子だよ。


 しばし迷ったイングランド軍だが、王を危険にさらすな、とイングランド軍右翼のラヌルフが配下の兵を叱咤して突進させる。粘っていればブルターニュの重装騎兵部隊が敵の側面を攻撃し始める。そう信じて戦い続けるのだ。 

 ラヌルフの槍兵1ユニットが敵の混乱状態の2ユニットを一気に壊滅させる。さらに、先ほど突撃してきたノルマンディー軍指揮官ポンティユー伯ロベール・ド・べレームに対し、ラヌルフが重装騎兵とともにチャージ! 慌ててポンティユー伯がカウンターチャージを命ずるものの、消耗しているイングランド軍から突撃を受けるとは思っていなかったノルマンディー軍の騎兵はカウンターチャージに失敗。浮足立つノルマン騎兵にラヌルフが突っ込む。たまらずノルマン騎兵は混乱状態で退却。逃すか、とさらにラヌルフが追い打ちをかけ壊滅させる。その勢いは止まらず、ついでとばかりにノルマン弓兵を攻撃して損害を与えた。


 Men of IronシリーズではMounted Men-at-Armsなどの兵種が白兵戦や射撃、突撃を受けた場合、カウンターチャージを試みることができる。敵から攻撃を受けた精鋭の騎兵が、なめるな! とやり返す、ってことですね。突撃に対するカウンターチャージは基本的に50%の確率で成功し、敵の突撃の効果を無効にする。Men of IronシリーズではMounted Men-at-Armsなどは兵種としても白兵戦で有利なのだが、突撃やカウンターチャージが行えるためさらに強力なユニットとなる。「Men of Iron Tri-pack」収録の「Infidel」に登場する騎士(Knight, KN)なんか、狂暴なまでに強い。

 また、今回のラヌルフの突撃はサイの目が走り継続攻撃(Continue Attack)が続いた。正常状態の防御ユニットに対する攻撃は、白兵戦では継続攻撃は得られず、突撃でサイの目がいい場合のみ、防御側が混乱して退却、継続攻撃となる。混乱した防御ユニットに対する継続攻撃ではさらに継続攻撃を得られる可能性があり、連続して継続攻撃を得たラヌルフは敵部隊を切り裂いていったのである。  


 左翼が大損害を被っていたイングランド軍は一方的に敗走ポイントが蓄積していき、13となっていたが、このラヌルフ隊の奮戦でノルマンディー軍の累積敗走ポイントも11に上った。両者互角といった状態である。 


つづく


2024年3月15日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ③

  中央のノルマンディー公の攻撃に続いて、右翼(マップ左方)のモルタン伯ギョームが継続活性に成功。総指揮官(Overall Commander, OC)のノルマンディー公は活性修正(Effectiveness)という値を持ち、指揮範囲内にいる他の指揮官が継続活性する場合、サイの目が1有利なる修正がつく。初期配置では配下の2人の指揮官は指揮範囲外だったが、先ほどのノルマンディー軍中央の活性化の際に、モルタン伯ギョームを指揮範囲に入れるようにノルマンディー公が移動していた。先述のとおりモルタン伯ギョームの活性化値は3と凡庸だが、総指揮官の活性修正を得て継続活性しやすくなっていたのである。


 このノルマンディー公ロベール二世、征服王ウィリアムの長男なのだが、父親とは仲が悪く反乱を起こしている。ちなみに母親のマティルダは息子の反乱を支援したりしたらしい。敬虔なキリスト教徒で、タンシュブレーの戦いの数年前に第一回十字軍に参加しており、遠くイェルサレム攻撃にも加わっている。Men of Ironシリーズの「Infidel」に収録されているDorylaeumとAscalonのシナリオに登場していますね。


 先ほどのイングランド軍左翼サリー伯ギョームの突撃で損害を受け包囲状態になっている指揮官ギョームを救出するため、ノルマンディー軍右翼(マップ左方)は弓兵が至近距離から敵槍兵に矢を放ち混乱させた。そしてこれまでのぶつかり合いで混乱状態となっているイングランド軍槍兵の戦列にモルタン伯ギョームの歩兵が突っ込む。イングランド軍ユニットは次々と壊滅、サリー伯の部隊は半壊状態となった。

 左翼が崩壊の危機にさらされているイングランド軍は、無傷で残っている右翼のラヌルフを救援に差し向ける。敵中央ノルマンディー公の部隊左翼(マップ右方)を集中攻撃。たまらず槍兵が壊滅した。

 そして右翼の救援を受けたイングランド中央のロベール・ド・ボーモンが続く。このロベールも先ほどのノルマンディー軍同様、総指揮官ヘンリーI世の指揮範囲内にいるため、継続活性でサイの目が1有利になるのだ。

 あまたある中世の戦いのなかでも名高いヘイスティングスの戦いで名を上げたこのロベール、敵ノルマンディー公の部隊を粉砕してみせようぞ。ロベールが高齢にもかかわらず陣頭に立って突進。突出している敵ノルマンディー公の精鋭歩兵に対し側面から槍兵の支援も得て白兵戦をしかける。サイの目修正は+4とほぼ攻撃成功、のはずが、ノルマンの意地を見せたか精鋭歩兵たちが奮戦、イングランド軍の集中攻撃は撃退された。また、弓兵の至近距離からの槍兵に対する射撃も効果がなく、ロベール・ド・ボーモン隊の攻撃はさえないものに終わる。おいおい、ヘイスティングスで活躍した指揮官じゃないのかよ。

 イングランド軍右翼が中央の救援に動いた隙をついて、ノルマンディー軍左翼(マップ右方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレーム(Robert of Bellȇme, Count of Ponthieu)が攻撃に出る。弓兵の矢で敵を混乱させ、そこに指揮官自らが重装騎兵を率いて突撃、なんなく敵を蹴散らした。イングランド軍右翼ラヌルフ隊は中央にシフトしていため部隊右方の防御が薄くなっている。そこにポンティユー伯の槍兵2ユニットが集中攻撃。だが敵を侮ったか、攻撃側混乱に終わった。だが他の槍兵が白兵戦で敵に損害を与えていった。

 ノルマンディー軍が手を緩めずに攻撃してきたため、イングランド軍の累積敗走ポイントは9。一方ノルマンディー軍はまだ4にとどまっている。イングランド軍は敵の勢いを押しとどめ、増援が現れるまで耐えることができるか。


つづく

2024年3月8日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ②

  ノルマンディー軍右翼(マップ左方)モルタン伯ギョームの先制攻撃で多くの被害を受けたイングランド軍左翼だが、敵の連携が取れていないのを見て取り、やられたらやり返せと反撃する。

 このシナリオでは両軍ともに槍兵が主力となっているが防御力が低く、いずれも白兵戦防御DRM(Shock Defence DRM)は+1。この数値は敵の攻撃の際のサイの目修正となり、数値がプラスだと攻撃側に有利になる。このDRM+1を持つ槍兵に対し、同じく槍兵が1対1で白兵戦をしかけた場合、攻撃側に不利な結果となるのは30%なのに対し防御側が混乱したり退却する確率は50%。守りを固めるよりも積極的に攻撃したほうがよく、殴り合いの展開となりがちである。


 ちなみにこの英左翼部隊の指揮官はサリー伯で名は正面の敵モルタン伯と同じくギョーム。「Norman Conquests」のシナリオ集Battle BookではWilliam de Warrene, 2nd Earl of Surreyと表記されているが、Warreneという家名はノルマンディーのVarenneという地名から由来している、なんてWikiに書かれていたので、この人はギョーム・ド・ヴァレンヌと呼ぶことにする。ちなみにヴァレンヌと聞くとフランス革命のときのヴァレンヌ逃亡事件を思い出す。ルイ16世とマリー・アントワネットがオーストリアへの逃亡を図ったものの露見しヴァレンヌで捕まってパリに送還された、という事件。このヴァレンヌはVarrenesで最後にsが付いていて、場所もフランス東部国境近くなので違う地名である。


 先ほど騎兵を率いて突撃してきたノルマンディー軍のギョームに対し、サリー伯ギョームが目には目を、騎兵には騎兵だ! と騎兵を率いて突撃。指揮官同士の激突で両者混乱状態となった。サリー伯部隊の弓兵や槍兵がこれに続き、敵1ユニットが敗走した。

 だが今度はイングランド軍が継続活性に失敗。ノルマンディー軍は中央のノルマンディー公の部隊を動かす。ギョーム同様、弓兵の射撃ののち指揮官が突撃、さらに歩兵も続く。この部隊には精鋭の重装歩兵(Dismounted Men-at-Arms, DM)が1ユニット含まれており、両翼の部隊よりはやや強力になっている。このユニットを中心にして槍兵も奮戦、正面の敵ロベール・ド・ボーモンの部隊の兵を後退させていく。


 このイングランド軍中央を率いるロベール・ド・ボーモンだが、「Norman Conquests」のBattle BookではRobert de Beaumont, Count of Montfortとなっている。これ、Count of MontfortじゃなくてCount of Meulan(ムーラン伯)じゃないかな。この戦いには同じくRobertという名のRobert de Montfortがイングランド軍に参加していたようなので、それと混同しているのかも。ただ前回紹介した、「Norman Conquests」の参考文献の『The Norman Commanders』のタンシュブレーの戦況図ではイングランド軍中央がRobert of Montfortとなっている。ただ本文ではRobert of Meulanという名前が出てくるんだよね。

 いずれにせよこのロベール・ド・ボーモン、タンシュブレーの戦いの40年前、1066年のノルマンコンクエストに加わり、ヘイスティングスの戦いでは右翼で歩兵を指揮して若いながらも奮戦したという古参で、イングランドでは初代レスター伯となっている。タンシュブレーの戦いのときには50代から60代になっていたらしい。


つづく

2024年3月1日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ①

  1066年、征服王ウィリアム一世がノルマンディーからイングランドを征服するが、その死後、息子たちの間で遺領が分割される。ノルマンディーは長子のロベールが得たが、イングランド王位は弟のウィリアムを経てもう一人の弟ヘンリーが受け継いだ。もともと仲がいいとは言えなかったこの兄弟、ノルマンディーとイングランドをめぐって骨肉の争いが始まる。この抗争に終止符を打ったのが、今回プレイする1106年のタンシュブレーの戦いである。この戦いで敗れたノルマンディー公ロベールは弟のイングランド王ヘンリーI世によって捕えられ、死ぬまで28年もの間、幽閉されるのだ。


 …と知ったかぶりして書いたけど、この戦いについては先日紹介した『The Norman Commanders』で読んで初めて興味を持った。というか、1066年のノルマンコンクエスト以降のイングランドや北フランスの歴史は、百年戦争までほとんど知識がなくてぼんやりとしかわかっていませんでした。マグナ・カルタとか習った気がするんだけどね。


 タンシュブレーの戦いのあった場所はノルマンディー。エポック/サンセットゲームズの「史上最大の作戦」のマップだと、下端近く、中央やや左よりのあたりになるはず。ゲーム終盤に薄い独軍の防衛線をアメリカ軍が突破するかも、というところかな。「史上最大の作戦」はゲーム置き場になっている押入れの奥深くに眠っているのでサルベージしないと確認できないんだけど。

 このシナリオではノルマンディー軍、イングランド軍ともにまっすぐ戦列を引いて相対している状況で始まる。正直、ノルマンディー軍が不利である。まず数で敵に劣る。これで兵の質が優勢だったらいいのだがそんなこともない。そして敗走レベル(Flight Level)はノルマンディー軍が18、イングランド軍が21。敗走レベルとはMen of Ironシリーズで勝敗を決める値なのだが、損害が蓄積していってこの値を越えた側が敗北となる。つまり敗走レベルの数値が低いほうが負けやすいのだが、この点でもノルマンデー軍は不利。さらに、イングランド軍には増援があり、重装騎兵3ユニットがマップ右端から現れてノルマンディー軍の側面を襲うことになる。そのためノルマンディー軍は増援が現れる前に勝負を決めなくてはならず、焦って攻撃をしなくてはならない状況に置かれている。

 ノルマンディー軍はゲーム最初の活性化を与えられているため、プレイ開始から全力で攻撃するしかない。幸い、イングランド軍の主力である槍兵の防御力は低い。先手必勝で敵に打撃を与え自分たちのペースに持ち込むのだ。


 ところで登場する指揮官の名前なのだが、1066年のノルマンコンクエスト以降、イングランドの貴族はフランス語を話していた。タンシュブレーの戦いから三百年ほどたって、百年戦争が始まる14世紀にはやっと英語が主要言語になっていったようだけど。ということでこのAARでは指揮官の名前はフランス読みにすることにする。ただイングランド王Henryは「アンリ」って呼ぶと個人的に違和感があるし、たいてい日本語の書籍では「ヘンリー」ってなっていると思うのでそれに合わせている。


 ノルマンディー軍右翼(マップ左方)のモルタン伯ギョーム(William, Count of Mortain)の部隊が攻撃を開始する。弓兵の射撃で敵の槍兵を混乱させ、そこに指揮官が陣頭に立って重装騎兵の突撃。モルタン伯に続け、と槍兵が一斉に敵に襲いかかる。攻撃は一部で撃退されたもののイングランド軍左翼の歩兵に大きな被害を与え、敵の戦列に食い込んだ。

 よし、第一撃は成功だ。ここで追い打ちをかけたいところだったが、中央のノルマンディー公ロベール二世が継続活性に失敗する。ノルマン軍の指揮官は3人とも活性化値が3と凡庸で、連携攻撃をあまり期待できないのだ。


つづく

2024年2月23日金曜日

「Norman Conquests」(GMT)のおともに - 『ノルマンの指揮官たち』

  高校の世界史でノルマン人がヨーロッパ各地に進出したのは習った覚えがあるけれど、ノルマン人って活動範囲が広すぎるんだよね。北フランスにノルマンディー公国を作ったり、ノルマン・コンクエストでイングランドを征服しちゃったり、地中海に冒険野郎たちが乗り込んでいって南伊とシチリアを獲ってしまって、さらには中東にアンティオキア公国なんてのも立ててしまう。そんなノルマン人についてまとまったものないかな、と思って「Norman Conquests」(GMT)に参考文献として挙げられていた『The Norman Commanders』を読んでみた。

 『The Norman Commanders』ではまず最初に、11世紀前半にノルマン人が南伊に進出していく頃までの歴史をざっくりと述べている。その後は、ロベール・ギスカール、ウィリアム征服王、ボエモンドといった有名な人物、それにヘイスティングスやチヴィターテといった個々の戦いについて章立てされているので、気になったところを拾い読みするのにも適している。それにちょろちょろとコラムが入っていて、集中力が落ちても読めたかな。最後の4分の1ぐらいを使ってノルマン人の戦略や戦術について解説しているんだけど、ここも兵站や訓練、騎兵、歩兵など細かい項目に分けられているため、読み進めていくのが楽だったなあ。

 この本で繰り返し強調されているのが、ノルマンの指揮官の有能さ。本の最後も、ノルマン人が戦争において勝ち続けたのは指揮官の質に起因するのだ、という一文で終わっている。まあ、本のタイトルが『The Norman Commanders』だからね。ヘイスティングスの戦いについても、ノルマンディー公ギョームは全部隊が士気範囲に入るような布陣で行軍した、なんて分析をしている。いまいち知名度が低いイングランド王ヘンリー一世についても、「戦うべき時と戦いを避けるべき時をわかっている指揮官だという印象を受ける」なんてコメントがある。ロベール・ギスカールについても結構ほめていて(まあ、あくまで指揮官として、だけど)、南伊に少数で傭兵として戦っていたノルマン人たちが次第に勢力を拡大していったとき、彼らをまとめあげ、ノルマン人のイタリアへの冒険に征服という意義を与えられる人物が必要とされた、その時に現れたのがロベール・ギスカールだ、なんてちょっと劇的な感じで紹介している。

 ヘイスティングスとチヴィターテの戦いについては結構詳述されているんだけど、チヴィターテは南伊でのノルマン人の優位を確立し戦いだし、ヘイスティングスなんかイギリスの歴史を大きく変えた戦いだからね、詳しく書くのも当然といえば当然でしょう。あと、分裂状態の南伊はノルマン人が時間をかけて浸透していけたけど、イングランドはアングロ・サクソンの王国の基で統一されていたためノルマンディー公ギョームはヘイスティングスの一戦で敵王を倒さなければならなかった、なんて感じでイングランドと南伊の比較も面白かったな。

 ビザンツ好きには嬉しいことに、ロベール・ギスカールとアンナ様のお父様のアレクシオス一世がぶつかった、Dyrrhachiumの戦いについても比較的ページが割かれている。でもアレクシオス、この戦いでは負けているんだけどね。Men of Ironシリーズでこの戦い、出してほしい。

 ノルマンコンクエストで負けたアングロ・サクソン人たちが遠くビザンツに渡ってヴァリャーギ親衛隊となっていたそうで、Dyrrhachiumではノルマン人の公が率いる軍勢によって二度目の敗北を味わったものもいただろう、なんてなことも書いている。ノルマンディー公によってヘイスティングスで負けたと思ったら、アプリアなどの公となっていたロベール・ギスカールにまた負けた、ということですな。ちょっとアングロ・サクソンが気の毒になる。


 個人的に結構嬉しかったのが、Roussel de Bailleulがコラムで紹介されていたこと。この人、VaeVictis162号のヒストリカルノートで触れられていて、ビザンツでノルマン人の傭兵部隊を指揮、反乱を起こしてアナトリアに実質的な自分の自治領を作っちゃったという人物。VaeVictisのこの号のヒストリカルノートはビザンツ東方の主に10~11世紀の軍事的状況を説明していたんだけど、ビザンツにとって傭兵はもろ刃の剣だっていうコラムでRoussel de Bailleulが出てきていた。『The Norman Commanders』を読んでいると結構有能な指揮官だったようで戦場でのエピソードが少し紹介されている。ビザンツでは反乱ののちアンナ様のお父様に捕らえられているんだけど、1076年のことなのでお父様がアレクシオス一世として即位する前のことですね。

 この本ではさらに話は東に広がって、第一回十字軍まで絡んでくる。第一回十字軍のときにボエモンドが建てたアンティオキア公国って言ったら中東で、ノルマンディーから遠く離れているけど、シチリアやイングランドの二つのノルマン王朝よりも長続きしたって書いてあって、ああそうかって改めて気づかされた。アンティオキア公国は1268年までつづいたけど、ノルマン人が打ち立てた王朝はシチリア王国では1194年まで、ノルマンディーのお隣のイングランドでは1154年までなんだよね。個々の王朝についてはなんとなく知識があるけど、こうやってつなげてくれると新鮮な目で見られる。


 というわけで、10世紀から12世紀にかけてのノルマン人の活躍ぶりがよくわかるこの本、「Norman Conquests」をプレイするんだったらおススメです。

2024年2月18日日曜日

ノルマン騎士に、シュヴァーベンの意地を見せろ! Civitate 1053 - Norman Conquests(GMT) AAR ③

  リシャールに続け、ロベール。ノルマン軍の指揮官の優秀さを見せつけるのだ、と檄を飛ばすも、左翼(マップ下方)のロベールが継続活性に失敗。このシナリオでのノルマン軍の強みの一つである指揮官の活性化値の高さが生きない。

 逆に、敵の連携ミスを見て取った教皇軍のヴェルナーが自隊正面のロベール隊に攻撃をしかける。弓兵で敵の混乱状態のユニットを壊滅させ、敵最左翼のユニットを包囲、壊滅させる。ノルマン軍の累積敗走ポイント(FP)は10に上った。

 ノルマン軍の敗走レベル(Flight Level)は15で、10面体サイコロを振って出た目と累積敗走ポイントを足してこの数値を越えると負けてしまう。ノルマン軍としては余裕がなくなってきた。


 ちなみにこのロベール・ギスカール、後に南伊ノルマン人の間で突出したリーダーとなり、シチリアに侵攻、そして南伊に残るビザンツ帝国の拠点を落としている。さらにはバルカン半島に攻め込みビザンツ皇帝アレクシオスと死闘を繰り広げるのだが、漫画「アンナ・コムネナ」では、ビザンツ皇帝アレクシオスの宿敵呼ばわりされている。なお、ロベールの容姿についてはアンナ様は結構ほめていたりする。イケメンはこれだから困るよ。同じくイケメンだったロベールの息子のボエモンドは、第一回十字軍の主要指揮官の一人となり、中東の主要都市アンティオキアをとったりしている。Men of Ironシリーズの「Infidel」に収録のDorylaeumAntiochのシナリオに指揮官として登場してますね。

 

 ノルマン軍左翼(マップ下方)のロベールが危うい。だが他の2隊はフレデリック隊と交戦状態にあるうえ、ロベールとも距離がある。ノルマン軍は救援に駆け付けるよりも右翼正面の脆弱な敵フレデリック隊の殲滅に注力する。そうはさせない、と教皇軍がSeizureカウンターを出して継続奪取を試みるも、ノルマン軍が奪取無効(Seizure Nagation)のカウンターでしのぐ。ノルマン軍はオンフロワ、そしてリシャールと連携のよさを見せつけ、怒涛の連続攻撃。フレデリック隊はもうボロボロだ。

 教皇軍の累積敗走ポイントは9に上った。教皇軍の敗走レベルは12で、現状だと敗北チェックでは60%で負けとなる。教皇軍のほうも後がなくなってきた。

 

 だが、教皇軍は多くのユニットが壊滅している割には、槍兵は壊滅しても2FPにしかならないため累積敗走ポイントが増えていない。一方、ノルマン軍の主力である重装騎兵は1ユニットが壊滅すると3FP。包囲され退却できない状態で攻撃されたり、射撃で強制下馬となって脆弱となったところを狙われたりすると、今回のノルマン軍のように一気に累積敗走ポイントが跳ね上がるのである。

 教皇軍右翼(マップ下方)のヴェルナー隊の主力は重装歩兵(Men-at-Arms, MA)で兵種として強力なうえ、個々のユニットの防御力もそこそこ高い。一方でフレデリック隊の槍兵は兵種として劣るうえに、防御力も低いユニットが多いためノルマン軍としてはフレデリック隊を主要攻撃目標としたくなる。だが前述のように槍兵の敗走ポイント(FP)は2。その一方で突撃などで突出してしまった騎兵が包囲され壊滅してしまったら3FPとなってしまう。一方、ヴェルナー隊のMAは重装騎兵と同じく3と高価。そのため、ノルマン軍としてはフレデリック隊への攻撃は陽動にとどめて、状況に応じてヴェルナー隊に主力を向け教皇軍に出血を強いるほうがいいかもしれない。


 一気に勝負をつけたいノルマン軍だが、ロベールが継続活性に失敗。おいおい、チヴィターテではロベールの側面攻撃が戦いを決めたんじゃなかったのかよ。

 そして教皇軍に活性化が移る。自軍の崩壊が迫っている教皇軍としては、死に物狂いに攻撃して先に敵の戦意を喪失させるしかない。やるかやられるかだ。わがシュヴァーベンの強者どもよ、勝負はこの一撃で決まる! と檄を飛ばして兵たちを奮い立たせるヴェルナー。教皇軍の弓兵が矢を降り注ぎ、ロベールの重装騎兵を混乱状態にし馬も失わせる。さらに、すでに混乱状態だったノルマンユニットを射撃で壊滅させた。

 こうして手薄になったロベール隊にヴェルナーのシュヴァーベン精鋭歩兵が長剣をふるって襲いかかる。包囲されたノルマン騎兵は逃げ場がないうえ、教皇軍がノルマン軍の戦列の裂け目に突入してきたため(SeizureカウンターのInto the breachを使用)到底敵の攻撃を防ぐことができない。結果、2ユニットが壊滅してしまった。

 ここで教皇軍の自由活性が終わり、両軍の敗北チェックとなる。この時点でノルマン軍の累積FPは16で、敗走レベルの15を上回っている。せめて教皇軍が敗北チェックに失敗して引き分けになれば。そんなノルマン軍の願いもむなしく、教皇軍のサイの目は3。ぎりぎりで踏みとどまり、ノルマン軍の敗北となった。


 このシナリオ、騎兵対歩兵という対照的な両軍のぶつかり合いであるだけでなく、ユニット数が少なく特別ルールもほとんどないので1時間ほどで気軽にプレイできる。それに「Norman Conquests」は「Men of Iron Tri-pack」のルールをそのまま使っているため、MoIシリーズの導入にも向いているかも。

 チヴィターテの戦いについて書かれた読みやすい日本語の本って多くはないと思うんだけど、『ノルマン騎士の地中海興亡史』(白水社)が読みやすかったな。帯に「南イタリアのノルマン騎士の活躍を描く一大叙事詩。」とあるように、ノルマンディーから南伊に乗り込んできたオートヴィル家の若者たちがどのようにかの地を征服していったかがよくわかります。この本を読んでからプレイするともっと感情移入ができるんじゃないでしょうか。



2024年2月11日日曜日

ノルマン騎士に、シュヴァーベンの意地を見せろ! Civitate 1053 - Norman Conquests(GMT) AAR ②

  他の2部隊に遅れてやっと活性化が可能になったロベール隊が前進。ころはよし、とノルマン軍が攻撃を開始する。まずは右翼(マップ上方)のリシャールがフレデリック隊の左翼端に回り込み、弓兵を側面から襲う。

 つづけて中央のオンフロワが活性化。敵フレデリック隊の再右端(マップ下方)に位置する弓兵に射撃戦を仕掛け、相打ちで混乱状態にしたのち、重装騎兵4ユニットがそろって突撃。脆弱な歩兵どもなどノルマン騎兵の前では鎧袖一触、と思いきや、このゲームでは槍兵(Pike, PK)の正面から突撃をする際は、騎馬が突撃を躊躇したかどうかのチェックが課されるCharge Reluctanceというルールがある。まあ、槍衾に正面から突っ込むって想像しただけでも結構怖いもんね。このチェックは基本的に2分の1の確率で成功するのだが、リシャール隊の重装騎兵4ユニットのうち半数が成功。1ユニットは敵の固い陣形に恐れをなしたか馬がスピードを緩めてしまい、白兵戦(Melee)となった。

 突撃に成功した騎兵は敵戦列に食い込む。混乱して後退する槍兵に追い打ちをかけたが、小川越しの攻撃となり逆に撃退された。

 また一斉に攻撃をしかけた騎兵4ユニットのうち一つは敵弓兵に突っ込む。この弓兵は先ほどの射撃で混乱状態となっていたため一息に蹴散らせてくれるわ、と思いきや、必死に放たれた矢によってノルマン騎兵は強制下馬(Unhorsed)となってしまった。

 敵の攻撃で大きな損害を受けた教皇軍のフレデリック隊だが、果敢に反撃する。敵ノルマン軍のオンフロワも正面攻撃で大きな被害を出している。左翼が敵リシャール隊の圧力を受けているからといってこのまま守りに入っていては敵の思うがまま。機を逃さず反撃あるのみ。フレデリックの弓兵が、先ほど強制下馬となった敵ユニットを至近距離からの射撃で敗走させる。そして槍兵が混乱状態の重装騎兵を包囲、壊滅させた。ノルマン軍としては痛い損害である。


 このシナリオで登場するオンフロワとロベール・ギスカールは異母兄弟で、仏ノルマンディ地方西部のオートヴィル家の出身。このオートヴィル家は冒険心盛んで、フランスから南伊に渡りシチリアを征服してシチリア王国を建てている。オンフロワとロベール二人の長兄ギョームは鉄腕の異名を持つほか、父タンクレードも勇猛だったらしく、狩りの最中、猟犬に襲いかかった巨大イノシシを剣で倒したというエピソードが残っている。ちなみにこのシナリオのもう一人の指揮官リシャールはオートヴィル家の出身ではないが、オンフロワやロベールの姉妹フレッセンダと結婚している。


 フレデリックに続け、とばかりに教皇軍右翼(マップ下方)のヴェルナーの精鋭部隊が前進。射撃でロベール隊最左翼の重装騎兵を強制下馬とした。

 このヴェルナーの歩兵は南西ドイツのシュヴァーベンの兵だったようだが、シュヴァーベンと言えばロンメルの出身地で、どっかの本でロンメルがきついシュヴァーベンの方言で話した、みたいなこと書いてあった記憶がある。というか、自分は昔シュヴァーベンの農家で2カ月ほど居候させてもらったことがあって(仕事を手伝う代わりに部屋代・飯代はタダ)、シュヴァーベンと聞くとちょっとえこひいきしてしまいたくなる。チヴィターテにドイツから参加した兵たちもSchwäbischを話していたのかなあ。


 このまま教皇軍に押されてたまるか、とノルマン軍もやり返す。先ほどノルマン中央オンフロワ隊に対して反撃に出た教皇軍のフレデリック隊だが、その分マップ上方のリシャール隊に対する備えが犠牲になっている。これを見て取ったリシャールが、重装騎兵を突撃させる。側面や背後から騎兵の突撃をくらった歩兵たちは次々と混乱状態に陥っていった。そして敵の射撃をものともせず弓兵にもリシャールの騎兵が突撃、馬蹄にかけて蹴散らした。



つづく

2024年2月8日木曜日

ノルマン騎士に、シュヴァーベンの意地を見せろ! Civitate 1053 - Norman Conquests(GMT) AAR ①

 Men of Iron(GMT)シリーズの最新作「Norman Conquests」が去年末、やっと出た。ノルマン・コンクエストと言ったら世界史でも習うほど有名で、1066年に北フランスからノルマンディー公ギョーム(英語風の読みだとウィリアム)がイングランドを征服した、という歴史的な出来事。イギリス史的には当然超重要であり、かつて英外相が自国のことを「1066年にフランス人によって創立された(founded in 1066 by the French)」って言ったことがあるぐらい。

 Men of Ironシリーズの最新作を待ちわびつつ、そうか、これまでMoIは十字軍や薔薇戦争、イタリア戦争を扱ってきたけど今度はノルマン・コンクエストか、と思っていたんだけど、タイトルをよく見るとNorman Conquestsと複数形になっている。11世紀にノルマン人はイングランドだけでなく南伊なども征服しており、そういったノルマン人の広範囲な征服活動をこの複数形は示しているんだろうな。実際、収録シナリオの半数以上は1066年の戦い以外だし。しかし最初は複数形だと気が付かなくて、征服王ウイリアムのノルマン・コンクエストだって思い込んでましたよ。ははは…。


 今回プレイするのは「Norman Conquests」収録のシナリオの一つ、Civitateである。チヴィターテって読むらしいけど、ノルマン・コンクエストの13年前、1053年に南イタリアで行われた戦い。11世紀の南伊はビザンツ帝国の影響下にあったものの分裂状態で、北フランスからやってきたノルマン人の荒くれ共が傭兵として暴れつつ自分たちの勢力を拡大していく。そこに教皇レオ9世がノルマン人を鎮圧しようとして起こったのがチヴィターテの戦い、とざっくりいうとこんな感じ。教皇軍はさんざんに打ち破られ、レオ9世がノルマン側の捕虜になったという。この戦いで南伊におけるノルマン人の優位が確立し、以後シチリアを征服、さらには東に向かいバルカン半島にまで進出しようとするのである。でもそんなことしたらアンナ様に怒られるよ。


 初期配置は写真のとおり。両軍のユニット数はほぼ互角であるものの、ノルマン軍は弓兵3ユニットを除いた残り12ユニットがすべて重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)と、騎兵中心の軍勢であるのに対し、教皇軍には騎兵は無くすべて歩兵という、対照的な兵種構成となっている。

 指揮官の活性化値の点ではノルマン軍のほうが優れており、同軍の騎兵の機動力も考慮すると、教皇軍としては固く守るほうが得策だろう。

 ちなみにこの戦いに参加しているノルマン人の指揮官はフランス出身なので、このAARでは名前をフランス風にしている。Humphrey de Hautvilleはオンフロワ、Richard Drengotはリシャール、Robert Guiscardはロベールとなる。

 また、実際の戦いでは教皇軍左翼(マップ上方)のイタリア兵がノルマン軍の突撃で早々に敗走したが、南ドイツのシュヴァーベンから来た部隊が最後まで奮戦したそうで、教皇軍右翼のヴェルナーの精鋭部隊はシュヴァーベンの兵を表していると思われる。というか、このAARではシュヴァーベンの兵として扱う。単にシュヴァーベンに思い入れがあるという個人的な理由からなんだけども、それは後で触れる予定。



 プレイ開始。ノルマン軍はリシャールとオンフロワの2部隊を右(マップ上方)にシフト。ロベールの前面を空ける。一方、教皇軍は全軍を後退、小川を利用して守りを固めようとする。

 こうして両軍が態勢を整えているうちにロベールが活性化可能となった。チヴィターテの戦いはリシャールとオンフロワが右翼で教皇軍を崩壊させている間に中央から左翼にかけてが苦戦に陥った。そのときにロベールが敵の側面にまわり勝負を決めたそうで、ロベールが戦闘に参加するのが遅くなったのを反映してか、このシナリオではノルマン軍の2回目の自由活性化にならないとロベールは活性化できない。そのため、ノルマン軍プレイヤーは他の2部隊で早急に攻撃をしかけることなく、時間をかけて攻撃態勢を整えたのである。


つづく


2023年11月6日月曜日

失われた王になってたまるか! Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ⑤

  リチャードの凄まじい勢いを見ても冷静なランカスター軍プレイヤー。Seizureカウンターを使用して敵の継続活性を奪取し、

「歴史に名を残すのは、お前じゃない」

とつぶやく。

「映画『敦煌』の李元昊かよ。つうか、リチャードはボズワースで負けても十分歴史に名を残しているだろ」

 そんなヨーク軍プレイヤーのツッコミをしり目に、マップ右端に位置するトマス・スタンリーの部隊を動かす。リチャード隊左翼(マップ右方)の歩兵に集中攻撃をかけて損害を与えた。また、先ほどリチャードの重騎兵がウィリアム・スタンリー隊に切り込んできたが、そのユニットが背面をさらけ出しているのを兄トマス・スタンリーが見逃さない。長弓兵が矢を射かけて混乱状態にし、そこに重騎兵が突撃、敵騎兵を蹴散らした。


 ここまで戦闘に参加していなかったヘンリー隊だったが、ついに動く。スタンリーの側面攻撃でリチャード隊が手負いとなった今こそ、主役の見せ場。イングランド王位を継ぐのはランカスターの血を引くこのヘンリーなのだ。ものども、突撃! リチャードの白い猪を奴の血で赤く染めてやれ!!  ヘンリー自ら陣頭に立って突撃。粉塵を巻き上げて突っ込んでくる重騎兵集団の攻撃で、リチャード隊の重騎兵と歩兵が混乱状態となった。

 よし、余に続けオックスフォード、とヘンリーが命じるものの、これまでの激戦で疲弊したか、オックスフォードが動かない。そしてヨーク軍に自由活性が回ってくる。迷わずリチャードが活性化。左翼(マップ右方)の歩兵がスタンリーの歩兵を壊滅させる。リチャードは、王自ら勝負を決めてやる! と反転してスタンリーの重騎兵に向かう。ここでヨーク軍は「戦列の裂け目へ(Into the Breach)」という、白兵戦でDRM+1となるカウンターを使用。

「もう一度、あの敵戦列の裂け目へ! 皆の者、もう一度だ!」とリチャードになり切って檄を飛ばすヨーク軍プレイヤー。

「それの元ネタって『ヘンリー5世』でしょ。リチャードじゃないじゃん。というか、リチャードをあれだけの悪役に仕立て上げたシェイクスピアから引用してていいの?」


 このセリフ、シェイクスピアの「ヘンリー5世」の原文だと、

Once more unto the breach, dear friends, once more

ってなっています。dear friendsって呼びかけるんですね。それと、これはハーフラー(仏語読みだとアルフルール)の街の攻城戦のシーンで、このセリフのあとOr close the wall up with our English dead(さもなくばイギリス人の死骸で城壁を塞ぐのだ)」と続いていますね。


 すでに混乱状態だったスタンリーの重騎兵はリチャードの猛攻に耐えきれず、粉砕された。これでランカスター軍の累計敗走ポイントは16。敗北チェックのサイの目は…3。ランカスター全軍の士気は崩壊し、リチャードは王として君臨し続けることになった。



「いやー、もうちょっと粘っていればリチャードを挟撃して勝負がわからなかったと思うんだよね。でも苦労人のヘンリー・テューダー、ここで負けてもしぶとく生き残ってまたフランスに亡命して、捲土重来してきそうだよね」

とはランカスター軍プレイヤーの敗戦の弁。ヘンリー・テューダーは若い頃から亡命してフランスでしぶとく生き残っているし、1回大陸からの侵攻に失敗していて、2度目にボズワースで勝ちを収めているんですよね。それにリチャードはボズワースで勝ったとしても貴族たちの不満を抑えられたかどうかはわからず、ランカスター派の反乱は続くんでしょう。

 でもそんなことは置いておいて、映画「ロスト・キング」を見てからこのシナリオをやると燃えると思いますよ。「Blood&Roses」の入っている「Men of Iron Tri-pack」はGMTから再版が決まっているので楽しみです。

2023年11月1日水曜日

失われた王になってたまるか! Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ④

 スタンリー兄弟がついに本性を現しランカスター側についたが、ヨーク軍のノーフォークが奮戦、またも長弓兵が猛威を振るう。集中射撃を受けオックスフォード隊の歩兵がたまらず壊滅。そして射撃で混乱状態に陥ったランカスター軍の歩兵に重騎兵が白兵戦をしかけ粉砕した。指揮官のノーフォークも自ら陣頭に立って突撃。混乱状態の徴集兵を側面から襲い瞬殺した。

 積み重なる損害に、ランカスター軍の累積敗走ポイントは12となった。このシナリオでのランカスター軍の敗走レベル(Flight Level)は18で、自由活性の終了時に10面体サイコロを振り、出た目を累計敗走ポイントに足してこの数値を越えると負けてしまう。つまり、現状では7以上の目が出ると終わりで、損害が増えるとランカスターが敗北する可能性がさらに上がっていくのだ。

 ヨーク軍にとっては一気に勝負をつけるチャンス。だが、またもリチャード動かず。おいおい、どうしたよリチャード。このままでは史実同様、負けてしまうぞ。もしかして失われた王になって、500年後に見つけてほしいのか?


 ヨーク軍が攻撃の手を緩めたすきに、ランカスター軍は軍旗(Standard)を活性化、軍旗周辺に敗走していたオックスフォード隊の4ユニットを回復させた。これでランカスター軍の累積敗走ポイントは8に下がり、一発敗北の可能性はなくなったことになる。


 そしてオックスフォードが継続活性しノーフォーク隊へ全力で攻撃。ノーフォーク隊は射撃ユニットは多いものの、歩兵や重騎兵が少ないため白兵戦では数的に不利なのだ。こうしてヨーク軍に攻撃する一方で、オックスフォードは先ほど敗走状態から回復して混乱状態になった4ユニットを、さらに正常状態に戻す。これでオックスフォード隊の戦力はかなり回復した。

 スタンリーが参戦したことで勢いづいたランカスター軍は、ウィリアム・スタンリー隊をヘンリーの隣にシフトさせ、支援態勢をとる。そしてまたもやオックスフォード隊が猛攻。先ほど軍旗のもとで回復したウェールズの長弓兵とノルマン弓兵が戦列に復活して弓矢の雨を降らせ、敵長弓兵を壊滅。そしてノーフォーク隊の重騎兵を包囲攻撃、混乱させた。


 オックスフォードはこのとき42歳。戦闘経験豊かで、ボズワースの14年前にあったバーネットの戦いにもランカスター軍の一隊を率いていた。ちなみにこの戦いでキングメーカー・ウォリックが敗死している。オックスフォードは父の第12代オックスフォード伯がエドワード四世によって処刑されたため、若くして第13代オックスフォード伯になっており、22歳の時にはエリザベス・ウッドヴィルの戴冠式で王妃に水を給仕する役を務めている。


 ここでやっとヨーク軍に自由活性が回ってくる。包囲され損害を受けているノーフォークの重騎兵が危ない。重騎兵は壊滅すると敗走ポイント(FP)が3と、結構高価なのだ。長弓兵とハンドガンの集中射撃で敵包囲網に穴をあけ、重騎兵が後方に退避。ふう、危ない危ない。

 ノーフォークとオックスフォードの死闘を静観していたリチャードだが、好機がやっと到来したと見たか、ついに動いた。重騎兵がスタンリー兄弟の弟、ウィリアムの歩兵に集団で突撃。3ユニットのチャージを受けた歩兵は瞬殺された。

 リチャードの猛攻で弟が危ない。兄のトマス・スタンリーが駆け付ける。リチャードの重騎兵を長弓兵の射撃で混乱状態にし、そこに重騎兵が突撃。リチャードのユニットは敗走した。

 だが、ここでオックスフォード続かず。この時点でランカスター軍の累積敗走ポイントは10、一方ヨーク軍は5にとどまっている。ヨーク軍に追い打ちをかけたいのに、連係ミスが痛い。60%の確率でオックスフォードが動くはずだったのだが。


 ヨーク軍のノーフォーク隊は射撃戦を繰り広げつつ、混乱状態の重騎兵と歩兵の回復に努める。そしてリチャードが熾烈な攻撃を続ける。重騎兵を引き連れ陣頭に立ち、歩兵も従えて猛攻、スタンリーの歩兵ユニットを壊滅させた。リチャードの白兵戦修正値(Charisma)+2は伊達じゃない。失われた王などになってたまるか!


つづく

2023年10月27日金曜日

失われた王になってたまるか! Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ③

  オックスフォードの反撃を受けたヨーク軍のノーフォークだが、猛烈な射撃をくらわせランカスターの兵を次々と矢で倒していく。さらにノーフォーク隊の歩兵が対応射撃(Reaction Fire)をものともせずオックスフォードの砲兵にとりつき、壊滅させた。

「マジ? オックスフォード隊に射撃能力のあるユニットはなくなったじゃん。早くスタンリー裏切ってよ!!」

 これでヨーク軍は敵から撃たれる危険を考慮しなくてよくなった。ノーフォーク隊の重騎兵2ユニットが突撃する。オックスフォードの徴集兵1ユニットが混乱、もう1ユニットが壊滅した。 

 敵前衛が損害を受けている今こそ、追い打ちをかける好機! だがリチャード続かず。配下の奮闘を無駄にするつもりか? やっぱり悪王なのか?


 ヨーク軍の連係ミスを見て取ったヘンリーは、スタンリーに裏切りを促す。40%の確率だったが、スタンリー動かず。ええい、リチャードを目の前にして臆したか。それとも、実績のほとんどない28歳の若造ヘンリーの側につくことを躊躇しているのか。

 実際、14年間亡命していたヘンリー・テューダーは実戦で指揮を執ったことが少なかったようで、シェイクスピアの「リチャード三世」でも「実戦経験の全くない男だ(he was never trained up in arms)」なんて言われていますね。


 日和見しているスタンリーなど頼りにならんわ! とオックスフォードがノーフォークに反撃。またその間、混乱状態にあるユニットの回復に努めた。

 させるか! とノーフォーク。混乱状態の徴集兵に重騎兵が鎧袖一触、と攻撃するも、敵を侮りすぎたか徴集兵は踏みとどまった。だが、集中射撃にたまらずオックスフォード隊のウェールズ歩兵が敗走する。こうして敵を消耗させていく一方で、ノーフォークは混乱状態の長弓兵を回復させた。敵に弓兵がいなくなった今、こちらから一方的に射撃をくらわしてやるのだ。


 ノーフォークの攻撃で敵ランカスターの前衛はボロボロだ。王よ、敵にさらなる打撃を! だが、一人奮戦するノーフォークの懇願にも関わらず、またもリチャード動かず。何考えているんだ。

「いや、リチャードはやっぱり悪い奴なんだって。ノーフォーク隊に戦わせて限界まで出血するのを黙って見ているんだよ。悪人になると決めたって本人も言ってたじゃん」

いやそれ、またシェイクスピアの書いたセリフ。ちなみに原文は

I am determined to prove a villain

で、映画「ロスト・キング」でも出てきますね。


 リチャードがぐずぐずしている間に態勢を立て直したいランカスター軍。再びスタンリーに裏切りを要請する。引いたカウンターは70%で裏切るというもの。そしてスタンリー裏切り! おっしゃー!!

 

 スタンリー兄弟の兄トマス・スタンリーは薔薇戦争中に他の多くの貴族同様、寝返りをしているが、以前紹介した『Blood Royal』では、勝ちそうな人物であればだれであろうと忠誠を誓っていた、なんて書いてある。短い期間で大軍を召集する能力を見せつけ、どの戦いにおいてもほんの少しだけ遅れて参加したそうだ。


 スタンリーの裏切りを見て、オックスフォード隊が積極的な攻撃に出た。これまでは前面のノーフォークに加え、右翼にリチャードが迫ってきていたため、オックスフォード隊はユニット数が多いとはいえ限定的な攻撃をする余裕しかなかった。なにせ、ヘンリー本隊は5ユニットしかいないため、リチャード隊の攻撃をまともに食らったら支えきれず、どうしてもオックスフォードの支援が必要になる。だがスタンリーがランカスター側に立った今、右翼は彼らに任せられる。オックスオードは兵力を左にシフトし、これまでのうっ憤を晴らすかの如く果敢に攻撃。ノーフォーク隊に損害を与えた。



つづく

2023年10月22日日曜日

失われた王になってたまるか! Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ②

  まずはヨーク軍のノーフォーク隊が前進、オックスフォードの部隊と射撃戦を展開する。そしてリチャードが白い猪の旗印を掲げ左翼方面(マップ右方)に前進。スタンリーに近づいたことで裏切りの可能性がやや低くなる。

 あ、白い猪っていうのはリチャードの旗印(heraldic badge)です。映画「ロスト・キング」でも、もちろん出てきましたね。



 ランカスター軍はオックスフォード隊が射撃で応戦するものの、ヘンリーが継続活性に失敗。敵の連携がとれていないうちに追い打ちを、とノーフォークは長弓兵に容赦のない射撃を行わせる。そうして敵前衛を牽制しつつ、リチャードがさらにマップ右方を急進した。

 ヨーク軍の好きにさせるわけにはいかない。オックスフォード隊が突出していたノーフォークの歩兵を3ユニットで集中攻撃、混乱させる。射撃戦では不利であっても、兵数ではオックスフォード隊のほうが上なのだ。そしてやっとヘンリーが動く。マップ右方にシフトしてリチャードに対応できるようにするとともに、スタンリーに近づくことで裏切りの可能性を上げた。


 このシナリオでは最初はスタンリーの2部隊は中立で動かないが、ランカスター軍は自由活性を使ってスタンリーの裏切り(Stanley Mobilization)チェックをすることができる。基本的に、スタンリー裏切りカウンター(Lancastrian Stanley counter)を1枚引いてそこに書かれているサイの目以下が出れば裏切るのだが、カウンターは5枚あって裏切りの可能性は30%~70%と幅がある。とはいえいろいろ計算すると、50%の確率で裏切るはず(でも計算自信ないなあ)。

 ただし、スタンリーの2人の指揮官のうちどちらかから12へクス以内にリチャードがいれば裏切りチェックのサイの目が1不利になり、逆にヘンリーが8へクス以内にいれば1有利になる。


 今回リチャードはスタンリーに近づくようにマップ右方に展開したが、実際はデメリットの方が大きいと思う。こちら方面は湿地(Bog)や小川(Stream)、それに沼地(Marsh)などがありリチャード麾下の重騎兵の機動力や突撃能力を活かしにくい。それだけでなく、スタンリーが裏切った場合、ヘンリーとスタンリーから挟撃される可能性が高いのだ。

 しかもマップ下方の中央右よりにある沼地は、「沼地とリチャード三世ルール(Marshes and the Richard the Third Rule)」なんてのがあって、騎兵がここで白兵戦を行うと強制下馬(Unhorsed)となる可能性がある。ボズワースでは沼地でリチャードが馬を失い討ち死にしたと言わているが、それを反映しているらしい。リチャード三世としてはマップ右下は縁起が悪い。


 一方、マップ左方にリチャードが展開した場合、平坦な地形が広がっているので重騎兵がその能力を発揮できるうえ、スタンリーの2部隊がマップ右方から主戦場に駆け付けるのに時間がかかる。そもそも、スタンリーは2人とも活性化値3と凡庸だ。ヘンリーの指揮範囲にいると継続活性でDRM1有利になるが、リチャードがマップ左方から全力で攻撃する場合ヘンリーがオックスフォードの救援に駆け付けざるをえず、スタンリーから離れることになる。つまりスタンリーが活性化しにくくなり、ヨーク軍を攻撃する位置にたどり着くまで時間がかかるのだ。

 ということでこのシナリオの場合、リチャードはマップ左方に展開したほうがメリットが大きいと思う。だがヨーク軍プレイヤーは

「進め!  雄々しく!  猛進して乱戦に飛び込むのだ。天国に行けなければ、ともに地獄に進もうぞ」

とうそぶきながらマップ右方に兵を進める。

「いや、それシェイクスピアの『リチャード三世』のセリフでしょ。不吉すぎない?」

と敵プレイヤーに心配される始末。両プレイヤーとも映画「ロスト・キング」を見てリチャード三世に肩入れしてしまっているのである。「リチャード三世」のボスワース戦のところを読み返したりしていたし。


ちなみにこれは「リチャード三世」のボズワース戦冒頭のところで、原文は

March on. Join bravely. Let us to it pell mell,

If not to heaven, then hand in hand to hell.

となっています。


つづく

2023年10月17日火曜日

失われた王になってたまるか! Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ①

  映画「ロスト・キング 500年越しの運命」を見たら、当然ボズワースでリチャード三世の無念を晴らさなくては、ということでMen of Ironシリーズ「Blood & Roses」のボズワースのシナリオをやってみることにした。

 ボズワースの戦いと言ったら30年続いたイギリスの血みどろの内戦・薔薇戦争を終結させたと言われる戦いで、リッチモンド伯ヘンリー・テューダーがリチャード三世を打ち破った。シェイクスピアの戯曲「リチャード三世」でのリチャードの最後のセリフ、「馬の代わりに我が王国をくれてやる!(My kingdom for a horse!)」が有名である。

 というかね、「リチャード三世」で悪人に描かれて過ぎていて、その反動からかリチャードを擁護するRicardianなんて人たちが出てきているんですよね。リチャード三世協会なんてのもあるんだけど、映画「ロスト・キング」では学者からファンクラブと馬鹿にされていましたね。でもそんなRicardianが、川に投げ捨てられたという伝承が残るリチャードの遺体を、2012年に発見するんですよ。いやー、すごいなあ。


 で、ボズワースである。リチャード率いるヨーク軍は前衛をノーフォク公ジョン・ハワード、中央がリチャード、後衛をノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーが指揮しているが、以前のAARにも書いたようにノーサンバランドが動くことはほとんど期待できない。一方、ヘンリー・テューダーのランカスター軍は、前衛がオックスフォード伯ジョン・ド・ヴィアーの部隊、その後ろにヘンリー直属部隊が布陣している。



 射撃力でヨーク軍は優位に立っている。百年戦争から薔薇戦争にかけて猛威を振るった長弓兵のユニット数はヨーク軍6,ランカスター軍3だ。またランカスターのオックスフォード隊は兵力が多いように見えるが、そのうち6ユニットは徴集兵(Levy)。徴集兵は他の兵種と共同でないと白兵戦がしかけられないので、あくまで補助的な戦力である。


 ちなみに、「Blood&Roses」のシナリオ集「Battle Book」にもちらっと書いてあるけど、この戦いのランカスター軍の多くはフランスやウェールズの兵で、ユニットにもウェールズやフランス、ノルマンディ、ブルターニュの紋章がついていたりする。ヘンリー・テューダーは亡命して長い間ブルターニュ公の庇護下にあった。そして今回はフランス王シャルル八世の支援を得て、ノルマンディーのアルフール港からウェールズにもどってきている。

 テューダー家はもともとウェールズの貴族で、薔薇戦争中はペンブローグ城を拠点にしてヨーク家に対し抵抗を続けた。ウェールズと言えば紋章は赤い竜で、ヘンリー・テューダーは1485年にリチャードを倒すためウェールズに上陸した際、赤竜の軍旗を掲げてウェールズ人の支持を得たらしい。ウェールズの吟遊詩人たちはヘンリーのことをアーサー王の再来と称え、その帰還を待ち焦がれていたそうだ。…というのは『物語 ウェールズ抗戦史』という本の受け売りで、この本の帯には「そのとき赤竜の軍旗を掲げアーサー王は蘇った。」なんて惹句が付いている。まあ、実際ヘンリーはアーサー王伝説をうまく利用したようで、息子にもアーサーと名付けている。


 おおっと、話がそれた。ということでランカスター軍はやや不利で、指揮官の活性化値ではランカスター軍のほうが優っているものの、マップ右下にいるスタンリー兄弟が史実のようにリチャードを裏切って味方に付いてくれないと苦戦することだろう。


つづく



Battle of Imaichi (Chronicles of the Tosando - The Boshin War: Tactical Battalion-Scale Combat) AAR part5

 - Turn 6  The coalition focused on retreat while the New Government gave chase. As mentioned before, movement off the roads is heavily rest...