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2023年4月5日水曜日

「The Charge of the 3 Kings」(NAC) 追加シナリオ和訳


 1212年、スペイン南部のコルドバ近くで起きたナバス・デ・トロサの戦い。カスティーリャ、ナバラ、アラゴンのキリスト教3王国が連合してイスラム教勢力のムワッヒド軍を打ち破り、レコンキスタにおけるキリスト教勢力の優位を確立した戦いである。キリスト教軍は敵の半分以下の兵力だったのにもかかわらず大勝しているのだが、ナバラ王の"el Fuerte"(剛勇王)サンチョ7世が自ら敵本陣に突入したり、カスティーリャ王アルフォンソ8世が死ぬ覚悟を決めたりといろいろと逸話があって中世の会戦としては有名らしい。

 この戦いは、同じくレコンキスタを扱ったLevy&Campaignシリーズの「Almoravid」(GMT)の時代より約130年後。「Almoravid」の時代にキリスト教勢力はイベリア半島中央部の古都トレドを陥落させるのだが、直後に1086年のサグラハスの戦いでムラービト朝に惨敗を喫し、その後はキリスト教とイスラム教の両勢力の均衡状態が続く。両勢力とも結構内紛をしていて、1143年にはポルトガル王国がレオン・カスティーリャ王国から独立したりしている。一方同じころのイスラム勢力では、モロッコでムワッヒド朝が勃興しムラービト朝が滅亡、ムワッヒド朝はイベリア半島のアンダルス(イスラム勢力圏下の地域)を支配下におさめキリスト教勢力を圧迫する。

 カスティーリャ王のアルフォンソ8世は1195年にアラルコスの戦いでムワッヒド軍に大敗し10年の休戦協定を結ばされるが、休戦期間が終わるや再び対立、ナバラとアラゴンの両王国、それにテンプル騎士団やホスピタル騎士団の増援を得てナバス・デ・トロサで兵数2倍以上の敵と対峙するのである。


 ナバス・デ・トロサはキリスト教軍中央の突撃で戦いが始まるが、突撃したカスティーリャ軍は次第に疲弊、敗走の恐れが生じた。そしてムワッヒド軍の騎兵によってキリスト教軍は両翼から包囲される危険にさらされる。このとき、カスティーリャ王アルフォンソ8世は従軍していたトレド大司教ドリゴ・ヒメネス・デ・ラダに「我々二人とも今日ここで死のう」と叫び、予備の精鋭部隊とともに戦列中央部で突撃。そこにアラゴン軍が左翼から、ナバラ軍が右翼から突撃(なので3人の王の突撃になるんですな)。特にナバラ王"el Fuerte"サンチョ7世は太い鎖で守られていたムワッヒド軍本陣に突入、戦いの帰趨を決めた。ちなみにこのことにちなんで、ナバラ王国の紋章には金の鎖があしらわれるようになったらしい。ナバラ王国の紋章はこんな感じ


 この戦いは昔Vae Victis 62号で付録ゲームになっているけど、スペインのNAC Wargamesから「The Charge of the 3 Kings」というタイトル(スペイン語では「La Carga los 3 Reys」)でゲームになっていて、日本語訳付きで小さなウォーゲーム屋さんから発売されています。このゲームをWilandorさんがブログで詳しく紹介してくれました。

一斉チャージを見てみたい(怖いけど)…The Charge of 3 Kings(NAC)

いやもうこのブログを読むだけでどんなゲームかよくわかりますし、やってみたいっておもうんじゃないでしょうか。うーん、こういう紹介記事が書けるように自分も見習わなくては。

 で、そういえばALEA38号にこのゲームの追加シナリオが2本載っていたぞと思い出し、和訳して小さなウォーゲーム屋さんで公開していただきました。わざわざNACにまで許可をとっていただきありがとうございました。

【日本語PDFルールあり】The Charge of the 3 Kings

 追加シナリオはひとつがキリスト教軍が中央に兵力を集中していたらという仮想シナリオ。もう一つはムスリム側にも勝機があった瞬間から始まるショートシナリオです。

 仮想シナリオの方は、イントロダクションがいきなり長ーい独白というか手記の体で始まっていてちょっと面食らったんですが、この戦いの前日、軍議で中央の正面突破が決まった、という様子を描いています。

 ナバス・デ・トロサの戦いの10数年前、アラスコスの戦いでアルフォンソ8世はムワッヒド軍にぼろ負けしているんですけど、この戦いでキリスト教軍は突撃したはいいものの、ムワッヒド軍の偽装退却に引っかかって包囲されるんですね。

 ALEA38号の付録ゲームSagrajas1086は、アルフォンソ8世の祖先にあたるカスティーリャ・レオン王アルフォンソ6世が重騎兵で思い切り突撃したはいいもののムラービト軍に側面から奇襲されてぼろ負けした、というもので、あれから約100年後のアラルコスでも同じような目にあっているんですなあ。

 ちなみにアラルコスで中央部隊を率いていたのが、ナバス・デ・トロサの戦いでの中央部隊の指揮官ディエゴ・ロペス・デ・アロです。アラスコスでの惨敗を教訓にして、ナバス・デ・トロサの戦いでは両翼をかなり強力にするとともに中央部隊はむやみに敵陣に突っ込まないようにしたのですが、仮想シナリオではその教訓が生かされなかった、という想定になっています。ナバラとアラゴンの王、それに騎士団の代表など多くはキリスト教軍の強さを過信して騎兵による正面突撃を主張。アラルコスの敗戦を知っているディエゴ・ロペス・デ・アロは「マジで?……でもそう決まったんなら仕方ありません。前衛を率いて戦います」と受け入れた、という想定だそうです。

 もう一つの追加シナリオは、キリスト教軍中央部隊が突撃で疲弊、一方ムスリム側は両翼の騎兵部隊がキリスト教軍の側面に回り込もうとする、という状況から始まります。 デザイナーズノートによると、キリスト教軍は包囲の脅威にさらされる状況で、予備の精鋭をいつ突撃させるか決定しないといけないそうです。

 「The Charge of the 3 Kings」をお持ちの方は追加シナリオを試していただけると嬉しいです。このブログを書いている時点で小さなウォーゲーム屋さんではもう在庫わずか1になっているので、欲しいと思った方は善は急げですよ。あ、私、小さなウォーゲーム屋さんやNACの回し者ではないですからね。ここんとこスペインのウォーゲーム界が活気づいているので、それにあやかりたいと思っているだけです。このあいだもバスクのほうでウォーゲームのイベントありましたし。いいなー。

2022年11月10日木曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑦

 ●第3ターン(続き)

 反撃を受けたもののまったく意に介することなく、老親衛隊が攻撃を続ける。砲撃で敵を混乱させたのち、3ユニットが攻撃。親衛隊の士気の高さにものを言わせ、敵を混乱、潰走させる。


 ここでやっと第3ターンが終了。JdGでは各ターンの最後に、潰走状態のユニットは自軍マップ端(英連合軍はマップ上端、仏軍は下端)に向けて全移動力で潰走移動(mouvement de déroute)し、マップ外に出たユニットは壊滅とみなされる。

 マップを見れば一目瞭然だが、主戦場である高地からマップ下端までは距離があるのに対し、上端まではすぐであり、特に右方は余裕がない。つまり仏軍は潰走しても何度か回復する機会があるが、英連合軍は潰走するとあっという間にマップ外に出て壊滅してしまう。

 実際、英連合軍の潰走ユニットがすでにマップ端に達しているのに対し、第1ターンの英連合軍の反撃で潰走した壮年親衛隊はまだマップ上にとどまっている。フランス軍には復活の希望を、英連合軍には後ろがない緊張感を与える優れたデザインではないだろうか。-というのは何回かプレイして感じたことです。フランス軍は精神的に厳しいけど、こういうところでバランスをとっているのかな。



●第4ターン

 このターン、戦略イニシアティブ(initiative stratégique)はフランス軍がとった。神のご加護は皇帝にあり! 当然、老親衛隊のロゲ部隊(赤)を活性化させる。

 前ターン最後に続く老親衛隊の連続活性化である。英連合軍の砲兵から防御射撃(tir de réaction)を受けても微動だにしない老親衛隊は2ユニットで攻撃。防御スタックを蹴散らし、さらにその隣接スタックも混乱状態にして高地から追い落とした。士気が高い老親衛隊が戦力を集中させるとDRMがかなり有利になり、戦闘結果で突破(choc de rupture)が出てさらに攻撃が行えるのだ。

 また戦列中央では、士気8とこのゲーム最強を誇る親衛隊第一猟兵連隊第2大隊がついに攻撃を開始。ウェリントンとスタックしている歩兵を苦も無く蹴散らした。


「やばい! まともな歩兵が残っていないじゃん!」

 老親衛隊の猛攻にさらされ、中央部が危うくなってきている英連合軍。もともとこのゲームでは英連合軍の歩兵は潤沢にあるわけではないのだ。

 だが幸い、前ターンに敵右翼(マップ右方)ドンズロ部隊への反撃が成功していたため、この方面はしばらくは打ち捨てられる。英連合軍は正常状態で残っているわずかな歩兵から2ユニットを抽出し、老親衛隊の第二猟兵連隊第2大隊に反撃を試みる。親衛隊がなんぼのもんじゃい! DRM+3の攻撃をくらえ! だが、サイの目は無情にも1。攻撃側は混乱し、士気チェックにも失敗して2ユニットとも後退。マジかよ。



 JdGのショック戦闘は戦力比などをDRMとして1d10を振る、というのは先述したが、4以下の場合、攻撃側が混乱状態となり、さらに士気チェックに失敗すると1へクス後退となる。つまりDRM+3の攻撃だと攻撃側混乱となるのは20%の確率なのだが、英連合軍は渾身の反撃でそのような結果が出てしまったのである。

 不運の続く英連合軍だが、マップ上端まで潰走していた歩兵が回復。このままだとターンの終わりにマップ外に出て壊滅だったので助かった。


 ちなみに反撃に失敗した英連合軍の2ユニットだが、Kruse、Brunswickと書かれていて、このゲームの英連合軍のユニットの中では例外的に紋章がユニット左に小さくついている。

 Kruseのほうには青地に金色の獅子らしきものが描かれていて、どうやらこのユニットはAugust von Kruseの率いるナッサウ公の部隊で紋章はナッサウ家のものらしい。もう一方はブラウンシュヴァイクの部隊で、描かれている紋章は赤字に白い馬でブランシュヴァイクを含むニーダー・ザクセン地方のもののようだ。つまり両ユニットともドイツの兵ということか。ただ自分はワーテルローも紋章も詳しくないので、知っている方いらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。

 また、「La Garde Avance!」の英連合軍ユニットは士気値の色で国籍が識別されている。ちなみにルールでこれを説明している部分は、Vae Victisのホームページに載っている英文ルールではカットされている。プレイ上は国籍関係ないけど、ちゃんと訳そうよ~。あと、この時代に国籍って言葉でいいのかな。ルールにはnationalitéって書いてあるけど。

 英連合軍の多くは英軍だが、ナッサウ、ブランシュバイクの他、オランダ、ハノーファーのユニットも含まれている。オランダはナショナルカラーのオレンジ、というのはわかるけど、ハノーファーは黄色と白になっていて、なんでそうなっているのかわからず自分の無知を痛感します。知識があるとそういう細部も楽しめるんだろうなあ。


つづく


2022年10月3日月曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ⑥

 ●6ターン目(第8ターン)

―キリスト教軍ターン

 増援の歩兵4ユニットがマップ上端から登場し、がら空きになっていた側面をカバーする。このままやりたいようにさせてたまるか。騎兵と共同して敵の弓騎兵を壊滅させた。




―イスラム教軍ターン

 ムラービト軍騎兵集団が数の猛威を振るう。たった4ユニットの増援など焼け石に水よ。弓騎兵が大群で射撃をして敵を混乱させる。そして白兵戦。次々とキリスト教軍が壊滅していく。


 だがキリスト教軍の中央ではリーダーのアルバル・ファニェスが奮戦し、敵の大軍相手に戦列を維持する。リーダーが参加している戦闘はDRMが1有利になるのだ。このアルバル・ファニェスは初期配置ミスで国王アルフォンソ六世のユニットとなっている。やはり王を目にすると兵たちも奮闘するのか。

「そうだよ。だからさ、やっぱりこっちのほうが本物のアルフォンソってことにしようよ」

「いやほんと、それだけは勘弁してください…」


●7ターン目(第9ターン)

―キリスト教軍ターン

 このターンからアルフォンソはマップ外に離脱できる。すでに述べているが、キリスト教軍はアルフォンソ六世が離脱したターン数と同じ勝利得点が得られる。さらに最終ターン(10ターン目、第12ターン)までマップにとどまっていれば15点獲得する。ただ最終ターンまでアルフォンソ六世が生き延びるのはかなり難しいと思われる。また、1ターン粘っても1点しか得られないので、敵騎兵集団によって自軍ユニットが壊滅して数ポイント献上するぐらいだったら、アルフォンソはとっととマップ外に逃げてゲーム終了にしたほうがいいのではないだろうか。

 ということで、アルフォンソはマップ外に離脱。残るはイスラム教軍のターンのみとなる。


 なおアルフォンソ六世はこのAARでは全く活躍していないが、勇敢王(El Bravo)の異名を持ち当時のイベリア半島のキリスト教諸国の中では突出した君主で、全ヒスパニアの皇帝(imperator totius Hispaniae)とも名乗った。実際に支配していたのはイベリア半島の北部だったけどね。このサグラハスの戦いでは負傷しながらも逃げ延び、それから20年以上も王として君臨、バレンシアも手に入れている。ちなみに生涯で5回も結婚している。う、うらやましくなんかないんだからね。


―イスラム教軍ターン

 これが最後の攻撃となる。敵る限り多くのユニットをマップ状態に突破させるとともに、騎兵集団の猛攻で敵3ユニットを壊滅させた。盤上に残っているキリスト教軍はわずか5ユニットである。史実同様、惨憺たる敗戦となった。




 そして勝利得点の集計。キリスト教軍は敵ユニットの壊滅で87点、さらにアルフォンソが第9ターンに脱出したので合計96点。そしてイスラム教軍は敵ユニットの壊滅で88点、そして8ユニットが突破で16点、計104点。敵に10点以上差をつけられなかったので、引き分けとなった。

「いやー、最終ターンに勝利得点を細かいところまで計算して突破とかさせていたら勝てたと思うんだけどね。そういうの好きじゃないんだよねー」とイスラム教軍プレイヤー。

「いやいや、ただの計算ミスでしょ。数字が3桁いくとわからなくなるという」

「国王を間違って配置するなんていう凡ミスしたやつが言うか」


 このSagrajas1086、ルールは簡単なので中世の会戦級が未経験の人でもすぐにプレイできると思います。ただ移動に関して規定が甘く、移動しなくても向きだけ変えることは可能なのかとか疑問が少し出てきましたが、プレイヤー同士で決めればいいかと。あと、トルナフエやヒット&ランは移動中に行うのですが、両戦術を使う際はユニットの向きを自由に変えられるという規定があるけど、そういう戦術が使える軽騎兵なんだから通常の移動中も向きが変えられるとしたほうがいいんじゃないかなと思います。まあこれは好みですが。BGGではデザイナーが次のゲームで移動ルールを見直すと書いているので、次回作を期待したいです。


 なんにせよこのゲーム、キリスト教軍は最初の強烈な突撃、そのあとは圧倒的な敵兵力の攻撃にさらされながらの後退と、劇的な状況の変化が味わえます。イスラム教軍はその逆で、諸タイファ軍が次々と消えていくのに耐えた後は、騎兵集団でキリスト教軍を崩壊させるお楽しみが待っています。いずれにせよ両軍とも激しく攻撃することになるので、殴り合いが好きな方におススメです。





(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年10月1日土曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ⑤

 ●4ターン目(第6ターン)

―イスラム教軍ターン

 このターンも、潰走していた諸タイファ軍のユニットが地図外に遁走した。敵に勝利得点を献上することになるが仕方ない。タイファの軍勢はキリスト教軍を釣るための餌。敵騎兵が突撃し、側面をがら空きにさせるのがこちらの策なのだよ。

 と、あたかも自分がこの形勢を作り出したかのようなセリフをイスラム教軍プレイヤーは言いつつ、騎兵集団をキリスト教軍の右翼(マップ左方)に襲いかからせる。アンダルスの同胞を脅かす異教徒どもに鉄槌を!


 キリスト教諸国によるイスラム勢力への攻勢は十字軍が有名だが、1096年の第一回十字軍より前に、イベリア半島では1060年代からローマ教皇の呼びかけによってイスラム勢力に対抗するためヨーロッパ各地から騎士たちが集まってきていた。1064年にはイベリア半島北部の町バルバストロが陥落している。ちなみにこのときキリスト教軍によって数万人が殺害されレイプなど残虐行為が繰り広げられたと言われている。エルサレムなど東方での十字軍がやったこととこの点はあんまり変わりませんな。


 キリスト教軍は4ユニットが壊滅し、イスラム教軍の勝利得点は53と追い上げる。損害が累積してきたため、キリスト教軍騎兵の士気も3まで低下してしまった。


 一方で、中央からマップ右方にかけてはキリスト教軍騎兵が頑強に抵抗する。イスラム教軍は囮攻撃であるトルナフエを試みるがこれも失敗してしまった。

 

 トルナフエとはkarr wa-farrとも呼ばれ、もともとはアフリカ北西部の勢力が使っていた戦法でイベリア半島では最後のイスラム勢力となるナスル朝でも採用されている。騎兵が小競り合いののちわざと退却することで敵に追撃させ、味方が待ち伏せしているところまで誘い出したり、時間を稼いだりした……と英文ルールに書いてありました。ALEA誌本文にはこの説明はなくて、もしかしてスペインの戦史愛好家では常識的な知識なんですかね。

 Sagrajas1086ではイスラム教軍騎兵のうち一部がトルナフエの能力を持っており、成功すると敵が混乱したり、誘い出されて1へクス前進したりする。イスラム教軍騎兵の中にはトルナフエのほかに、移動中に射撃ができるヒット&ランという能力を持つものもある。デザイナーズノートによると、この二つの戦術はともに軽騎兵が敵を混乱させるためのもので非常に似ており、一つのルールに統一してもよかったのだがムラービト軍の異質さ、多様性を表現するために二つに分けたそうだ。

 ただしデザイナーも認めているようにこのゲームではイスラム教軍は数的優位を利用すればいいので両戦術を使う必要性はあまりない。ぜひトルナフエやヒット&ランが活用できるゲームを出してほしいものである。


●5ターン目(第7ターン)

―キリスト教軍ターン

 敵の騎兵集団が現れたので側面から捕捉される前にとっととマップ上端から逃げ出したいのだが、移動ルールの関係でそうもいかない。だがマップ右方で2ユニットが回復、A5となった。この方面のイスラム教軍はB4やA3が主体なので、正常状態に戻ったキリスト教軍騎兵が簡単にやられることはないだろう。


 また、マップ左方で孤立していた騎兵が孤軍奮闘する。混乱状態ながらも、ムラービト軍歩兵を壊滅させた。キリスト教軍の勝利得点はこれで80。かなりのペースで追い上げられているものの、まだイスラム教軍の1.5倍ある。

「考えてもみろ。我々が最初に稼いだ勝利得点の数を。キリスト教軍はあと10年は戦える」

「いや、あんた、マ・クベ?」


―イスラム教軍ターン

 マップ右方ではキリスト教軍にがっちりと守られたものの、マップ左方では騎兵集団が数の猛威を振るう。キリスト教軍騎兵が壊滅、潰走していく。またマップ上端まで騎兵が進出した。これでいつでも突破ができる。


 2ターン後にはアルフォンソがマップ外に離脱可能になり、そうなったらゲーム終了だ。イスラム教軍はキリスト教軍をどれだけ補足、壊滅させることができるか。


つづく




(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年9月29日木曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ④

 ●2ターン目(第4ターン)

―イスラム教軍ターン 

 潰走ユニットが1ユニット、戦場から逃走。そしてもう1ユニットはがっちりと戦列を組んでいる味方ユニットに阻まれ壊滅した。

 押され続けているイスラム教軍だが、残存兵力で反撃する。戦列中央ではこの前のキリスト教軍ターンで、潰走したイスラム教軍ユニットを追ってキリスト教軍騎兵が戦闘後前進していており、その結果わずかながら戦列に隙間が生じていた。戦闘結果で防御側が潰走すると戦闘後前進はマストなのだ。

 このゲームではいわゆるZOCはユニットの正面ヘクスにしか生じず、側面や背面は敵の移動を妨げない。イスラム教軍は乱れた敵戦列の間隙を見逃さず、騎兵の側面から背面に回り込み壊滅させた。


 2ターン目(第4ターン)終了時でキリスト教軍の勝利得点は60で、イスラム教軍の約2倍半だ。次ターンには敵騎兵集団が高地から降りてくるだろう。キリスト教軍はこの得点差を大きく減らすことなく退却できるのかどうか。逆にイスラム教軍は得点差をどれだけ埋めることができるのか。


●3ターン目(第5ターン)

―キリスト教軍ターン

 このターンにムラービト軍騎兵集団が高地から降り始めるはず。というのも、それ以上遅らせてもアルフォンソ六世がマップ外に離脱可能になるターンは変わらない。イスラム教軍としてはアルフォンソが脱出してゲームが終了する前になるべく多くのキリスト教軍ユニットを壊滅させなければならず、主力である騎兵集団の投入を遅らせる意味はないからだ。


 となればキリスト教軍は後退すべし、と慎重なプレイヤーなら考えるかもしれないが、「突撃できる騎兵は突撃するんじゃ-!」と混乱状態から回復して突撃能力を取り戻した右翼(マップ左方)の騎兵たちを突っ込ませていく。3ユニットの連続突撃でムラービト軍歩兵を蹴散らし、敵陣深く切り込んでいった。

 でも、キリスト教軍の右翼って横から敵騎兵集団が現れる方面じゃないですか。だが「側面? そんなもん、敵に気にさせとけ!」とのたまうキリスト教軍プレイヤー。実際は、こちらの方面は敵騎兵に捕捉される可能性が高く、そのうち壊滅させられるのであれば突撃の破壊力を発揮して少しでも多くの敵を除去しておいたほうが得策、という冷静な計算のもとでやっていたそうである。

 それに突破した先にいる敵戦列第二線の左翼はC3の弓兵。突撃後に混乱状態になった騎兵はC4で、弓兵相手にも有利に戦える。もし突破してきたキリスト教軍騎兵の排除のために敵が騎兵を一部派遣してきたら、それこそ敵兵力の誘引となる、との考えだったらしい。リーダーユニットを間違って配置したプレイヤーとは思えない。



―イスラム教軍ターン

 ついにユースフ率いるムラービト軍騎兵集団15ユニットが高地を下り始める。そして中央ではムラービト軍がジャベリンで敵騎兵を混乱させ、セビリア・タイファ軍の精鋭A4騎兵がとどめを刺した。


  ジャベリンと言えば今次のウクライナ侵攻で有名になったが、このゲームで登場するのはもちろん、投槍のことである。古代ギリシアやローマの時代から使われていた由緒ある武器ですね。

 イスラム教徒の軍隊に関する資料で手に入りやすいものは少ないと思われるが、OspreyのMen-at-Armsシリーズ『El Cid and the Reconquista 1050-1492』によると、ムラービト軍の歩兵はもともと、ファランクスのような密集陣形で戦っていたらしい。第一列が長い槍、大きな盾で守り、その後方からジャベリンを投げる。機動性はないががっちりと守るというイメージか。

 

●4ターン目(第6ターン)

―キリスト教軍ターン

 敵主力が遂に側面から現れた。敵の奇襲にお約束で驚愕するキリスト教軍プレイヤー。これ以上の攻勢は無理だと判断したキリスト教軍は後退を始める。

 3ターン目(第5ターン)終了時で両軍の勝利得点はキリスト教軍77、イスラム教軍33と、いまだ2倍以上の開きがある。敵騎兵集団のいるマップ左方の部隊を足止めに使い、その他の方面ではなるべくユニットを温存しながら、アルフォンソ脱出が可能になる7ターン目(第9ターン)まで粘るしかない。

 

 だがこのゲームでは、敵ユニットの正面ヘクスにいるユニットは1へクスしか移動できない。そのため、遅々とした後退になってしまう。


 幸い、キリスト教軍騎兵は練度・戦闘力ともに高く、混乱状態でもほとんどのユニットがC4だ。諸タイファ軍のB4ユニットやムラービト軍歩兵のA3ユニットが攻撃する場合、DRM+1にしかならないうえ、戦闘結果で混乱が出てもすでに混乱状態のユニットには影響がない。損害を受ける確率は8分の3、37.5%で、攻撃側が混乱する確率は8分の2、25%あるため、攻撃側にとって大きく有利なわけではない。しかも正常状態のキリスト教軍騎兵が守る場合はさらに攻撃成功の可能性が低くなる。中央やマップ右方では何とか守りながら後退していけるだろうというのがキリスト教軍プレイヤーの希望的観測である。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年9月27日火曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ③

 ●初回ターン(第3ターン)

―イスラム教軍ターン

 このゲームでは、移動フェイズの最初に潰走ユニットは自軍マップ端に向かって全移動力を使って移動しなければならない。しかも通常の移動力は3だが、潰走中は4に増える。必死に逃げているんでしょうなあ。

 マップ外へ移動したユニットは壊滅あつかいとなる。また潰走中、移動先に自軍ユニットがいる場合、その自軍ユニットは後退し潰走が続くが、後退できない場合は潰走ユニットは壊滅する。必死に逃げているのに味方が避けてくれなくて部隊が散り散りになった、という感じか。がっちりと後方で戦列を組んでいたムラービト軍歩兵に阻まれ、潰走していた2ユニットが壊滅した。


 敵の重騎兵集団の強烈な突撃をくらったイスラム教軍だが、ムラービト軍歩兵を前進させ、積極的に反撃を行う。キリスト教軍騎兵は突撃で混乱状態になっていたが、ほとんどの反撃を跳ね返す。だがそれでも2ユニットが壊滅、1ユニットが潰走した。8面体ダイスって、10面体ほどじゃないけど極端な目がでることがありますよね。

 さらに左翼の高地でムラービト朝の君主ユースフ率いる騎兵集団が前進。キリスト教軍の側面を脅かし始めた。




 数では優位に立っているイスラム教軍は、左翼のムラービト軍騎兵集団を最初から投入すればキリスト教軍を圧倒できるはずだ。だが史実では、ムラービト朝君主ユースフはキリスト教軍と諸タイファ軍を戦わせている間に側面に回り込んでいる。ユースフにとっては諸タイファは信頼のおける同盟相手とはいいがたく、キリスト教軍と諸タイファの軍勢がつぶしあっていくのを冷静に眺めていたらしい。

 ムラービト軍騎兵が早い段階で投入されるのを抑制するために、このゲームでは騎兵集団が丘を降り始めるとキリスト教軍の援軍の登場が早まるというルールがある。敵の奇襲に気が付いたアルフォンソ六世が、後方の野営地に残してきた歩兵を急いで戦場に呼び寄せる、ということらしい。


 それよりなにより、ムラービト軍騎兵の投入はゲームの終了に大きくかかわる。このゲームはアルフォンソ六世がマップ上端からマップ外に離脱したターンに終了する(もしくは10ターン目、第12ターンに終了)。離脱が可能になるのは騎兵集団が高地を降り始めてから4ターン後、もしくは7ターン目(第9ターン)からだ。

 アルフォンソがいつまで粘るかにもよるが、騎兵集団が敵を補足して攻撃するのに使える時間は多くない。そのためイスラム教軍としてはいつ騎兵集団を投入し、そのうちどれだけをマップ上端から突破させるのか考えなくてはならない。デザイナーズ・ノートにも書かれているが、イスラム教軍が早い段階で騎兵集団に丘を下らせてしまったら、キリスト教軍は最初の諸タイファ軍への攻撃で得た勝利得点を維持してさっさとマップ外に離脱してしまえばよくなるのだ。

 逆にキリスト教軍は1ターン目の突撃から継続しての攻撃で多くの敵ユニットを除去して得点を稼いだあと、どのタイミングで守勢に回るかを見極める必要がある。なお、キリスト教軍はアルフォンソがマップ外に脱出したターン数と同じVPを得られる(そのため、開始ターンを第3ターンにしてキリスト教軍が得られるVPを加算していると思われる)。いつ守りに入るかだけでなく、いつまで粘るのかを判断するのもキリスト教軍プレイヤーの楽しみ(苦しみ?)である。


●2ターン目(第4ターン)

―キリスト教軍ターン

 初回ターンの突撃のモメンタムを維持するのだ。どうせ守りに回っても敵に捕捉され、側面から騎兵集団の攻撃をうけるだけ。ならば優勢ないまのうちに少しでも多くの敵を除去しておいたほうがいい。

 そう考えたキリスト教軍プレイヤーは、後続の騎兵集団の一部も投入しこのターンも攻撃に出る。敵に隣接しているため突撃が行えないユニットがほとんどだったが、2ユニットを壊滅、中央部では1ユニットを潰走させた。


 さらに回復フェイズで混乱状態の3ユニットが回復。だが潰走ユニットはリーダーと同じもしくは隣接するヘクスにいないと回復が行えない。マップ上端を目指して潰走していたユニットにアルフォンソ六世が駆け付け、我先にと逃げる兵たちを押しとどめようとしたが失敗に終わった。



 このアルフォンソはキリスト教軍プレイヤーの配置ミスで別のリーダー、アルバル・ファニェスのユニットとなっている。

「偽物の王様っぽくて兵たちも言うことを聞かないんだよ。やっぱり最前線にいるリーダーをアルフォンソってことにする?」

「すんません、それだけは勘弁してください…」


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年9月23日金曜日

(幕間)Sagrajas 1086(ALEA38)ヒストリカルノートの和訳

  サグラハスの戦いがあった11世紀後半のイベリア半島の状況ってほんと、ぜんぜん知らないのでALEA誌のヒストリカルノートを訳してみました。

 小さなウォーゲーム屋さんにマストアタックで和訳を公開してもいいですかと聞いてみたら、版元Ludopressまでわざわざ確認してくました。ありがたや。お手間を増やして恐縮しました。

 で、Ludopressの公式ツイッターで拙訳をシェアしてくれました。ご興味ある方はどうぞ。

 ヒストリカルノートを読んでみると、イスラムのタイファ諸国が内輪もめばっかりしていて、なんだか十字軍の時期の中東と似た印象。ムラービト朝って名前しか知らなくて勝手にマイナーな印象をもっていたけど、イケイケだったアルフォンソの野望をくじいたってのをこのヒストリカルノートで初めて知りました。

 それと、スペインの主要都市といったらマドリードで、トレドは(というかトレドも)名前しか知らなかったけど、イベリア半島中央部に位置する重要都市だったんですね。サグラハスの前年にアルフォンソにとられるんだけど、そのショックでタイファ諸国が一応手を組んでキリスト教勢力に対抗した、ということから逆説的にトレドの重要性がよくわかる。数百年前に西ゴート王国の首都になっていたというのも知りませんでした。


 あと、今年4月に出たGMTのLevy & Campaignシリーズの新作『Almoravid』が1085-1086年のスペインを扱っていて、時代と地域がこのヒストリカルノートとかなり重なるんじゃないかと。


 中世のスペイン、で思い出すのが英雄エル・シド。といっても名前はなんか聞いたことがあるな、ぐらいなんだけど、チャールトン・ヘストン主演で映画になったりしている。OspreyのMen-at-Armsシリーズでは『El Cid and Reconquista 1050-1492』っていう本が出ていて、400年以上続いたレコンキスタよりもエル・シドが先にくるタイトルですよ。欧米ではそんなに有名なんですかね。エル・シドを描いた叙事詩は『エル・シードの歌』というタイトルで和訳が岩波文庫から出ているけど。

 そのエル・シドはちょうどサグラハスの戦いの時期の11世紀後半の人物で、サグラハスでは大活躍、と思いきや、この戦いには参加していない。なんで加わっていなかかったのかもヒストリカルノートのコラムで説明がしてあります。 


 Sagrajas 1086のデザイナーズノートは英訳されていて、公式サイトからダウンロードできます(英文ルールの最後についています)。ご興味ある方はどうぞ。

https://alealudopress.com/wp-content/uploads/2022/03/Sagrajas1086-ENG-rules.pdf


 ちなみに、Sagrajas1086がついているALEA誌38号には『Red Storm』(GMT)の機種カード6枚と追加ユニットが含まれています。

 ALEA誌の前号37号では第二次世界大戦のトーチ作戦の後、連合国軍がスペイン保護領モロッコに侵攻した『Operation Backbone』が付録ゲームになっています。36号では1921年のモロッコでのスペイン軍の戦いを再現した戦術級ゲーム『Cuestion de Honor』がついていて、サグラハスも含めご当地スペインのパブリッシャーならではのラインアップ。過去にはテルシオの16世紀の戦いも出していてもう絶版のようだけど、イタリア戦争あたりのゲームを出してくれないかな。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年9月17日土曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ②

●初回ターン(第3ターン)

―キリスト教軍ターン

 ゲームは第3ターン、キリスト教軍のターンから始まる。なんで第1ターンにしないかというと勝利得点に関係してくるからだと思うんだけど、それはまた後述する予定。


 キリスト教軍は当然、重騎兵集団が怒涛の突撃。烏合の衆など敵ではないわ! と突っ込んでくる騎兵に、グラナダ、セビリア、バダホスの諸タイファ軍は吹っ飛んでいった。敵を蹴散らしていくこの快感。初回ターンの突撃だけでもキリスト教軍やっててよかったと思えるんじゃないかな。


 Sagrajas1086では各ユニットは、A~Cの練度と、数字で表された戦闘力を持つ。戦闘の際は攻撃側と防御側の練度と戦闘力の差をDRMとするのだが、使うサイコロが8面体ダイスなのである。BGGでは、8面体ダイスなんて誰が持っているんだよという書き込みがあったけど、ほんと、8面体ダイス持っている人ってどれくらいいるんでしょうね。でもその書き込みは続けて「俺はRPGやるから持っているけど」なんて書いている。持ってるんかい。自分は10面体で代用しました(0や9の目が出たときは振りなおし)。


 キリスト教軍の騎兵の多くはA5(練度・戦闘力。以下同じ)で、突撃能力を持つ。突撃をするとDRM+2で実質的に戦闘力が2アップする。対して諸タイファ軍ユニットは基本的にB4で、キリスト教軍のA5騎兵が突撃をすると8分の5、62.5%の確率で防御側は壊滅だ。潰走の結果も含めれれば75%の確率で防御ユニットが吹き飛ぶことになる。


 これだけでもキリスト教軍の騎兵の突撃は恐ろしいのだが、突撃によってユニットが壊滅すると周辺のユニットの潰走も引き起こす可能性がある。このゲームではユニットが戦闘で壊滅すると、隣接する友軍ユニットはすべて士気判定を行い、6面体ダイスを振って自軍の士気以上の目が出るとそのユニットは潰走する。

 士気はキリスト教軍の騎兵、歩兵、ムラービト軍の騎兵、歩兵、それに各タイファ軍ごとにそれぞれ設定されており、グラナダは7、他の2タイファは8と比較的低い。しかも所属ユニットが壊滅するごとに士気は下がっていくため、味方がやられていくのを見て士気喪失していき、つられてすぐに潰走してしまう、という状況になる。特にグラナダ・タイファ軍は1ユニット壊滅するだけで士気が6に下がり、隣接ユニットは6分の1の確率で潰走するのだ。


 結果、計14ユニットの突撃で諸タイファ軍は8ユニットが壊滅し、4ユニットが潰走した。恐ろしや。アルフォンソ六世がタイファの軍勢をなめていたのもよくわかる。


 突撃をしたユニットは自動的に混乱状態となり、練度と戦闘力が下がる。例えばA5の騎兵は混乱状態だとC4だ。さらに突撃能力もなくなるため、攻撃の威力がかなり落ちる。だが戦闘フェイズの後に回復フェイズがあり、正面2へクスに敵ユニットがいなければ4分の1の確率で回復するのだ。突撃を行った騎兵集団のうち3ユニットが回復した。


 Sagrajas1086での勝利得点は基本的に、壊滅した敵ユニットの戦闘力の総計、それにイスラム教軍はマップ上端からマップ外に突破した騎兵1ユニットにつき2点獲得し、相手より10点以上多い側が勝利する。お互いにより多くの敵を撃破し、イスラム教軍は多くの騎兵をマップ外に突破させないといけない。そのためキリスト教軍は初回ターンで全力で突撃しなるべく多くの敵ユニットを壊滅させたわけである。


なお、レオン・カスティーリャ王アルフォンソ六世もしくはムラービト朝君主ユースフが戦死したらその時点でサドンデスである。リーダーは戦闘に参加すると6分の1の確率で戦死するので、アルフォンソもユースフも最前線には投入できない。

「でも、あれ、騎兵と一緒に突撃してきたの、アルフォンソじゃない?」とイスラム教軍プレイヤー。

「え、うそ。アルフォンソはちゃんと後方に配置したはず……げ、間違えた!」

 キリスト教軍にはアルフォンソ六世とアルバル・ファニェスの2人のリーダーがいるのだが、アルフォンソを最前線に置いてしまったらしい。なお、能力に違いはない。

「陣頭に立っているのは王の影武者ということで、なにとぞご容赦を」

「うーん、どうしよっかな~。まあすぐにゲームが終わってもつまらないから、後方にいるのを本物のアルフォンソってことにしてあげるけど、面白いからリーダーユニットはこのままで」

 相手をいじるネタができて喜ぶイスラム教軍プレイヤーである。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年9月15日木曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ①

  SNSの知り合いnyaoさんに教えていただいた『十字軍全史』という本でイベリア半島のレコンキスタについても書かれていて、そこで1086年のサグラハスの戦いにもちらっと触れられていた。サグラハスってどっかで聞いたことあるな。そうだ、ウォーゲーム誌Alea38号の付録ゲームだ。スペインのLudopressというところが出していて、小さなウォーゲーム屋さんで和訳ルール付きで売っている


 1086年と言ったら第一回十字軍の約10年前で、コンスタンティノープルではアンナ・コムネナ様がまだ幼児。20年前にはノルマンディーからイギリスを征服したノルマン・コンクエストがあって、という時代なんだけど、当時のイベリア半島の状況って全然知らない。

 8世紀前半にイスラム勢力のウマイヤ朝が北アフリカからヨーロッパに攻め込み西ゴート王国を亡ぼしたものの、732年にトゥール・ポワティエ間の戦いでフランク王国のカール・マルテルが撃退した、ということは世界史で習ったけど、そのあとは1492年のグラナダ陥落でレコンキスタの完了、ぐらいしか覚えていなくて、700年ぐらいすっぽりと知識が抜けている。日本だったら平安時代から鎌倉、室町ですよ。


 ということでAlea誌のヒストリカルノートを読んでみた。この当時イベリア半島は北部はキリスト教、南部はイスラム教の勢力下にあったんだけれど、単純にキリスト教とイスラム教が対立していたわけではない。イスラム教側はタイファと呼ばれる小王国に分裂しそれぞれ対立、一方でキリスト教側もカスティーリャ、レオン、アラゴンなどいくつかの王国に分裂していた。タイファはキリスト教国にパリアと呼ばれる軍事貢納金を支払うことで平和を買う一方でキリスト教勢力の軍事力を利用しており、スペインの英雄エル・シドもイスラム側の傭兵隊長として一時期活躍している。

 だがレオンとカスティーリャ両国の国王となったアルフォンソ六世によってイベリア半島中央部の重要都市トレドが陥落。危機感を抱いたタイファ諸国は、当時北西アフリカで台頭しつつあった同じイスラム教勢力であるムラービト朝に救援を求める。アルフォンソ六世の軍と、ムラービト軍の援軍を加えた諸タイファの軍がぶつかったのが、今回プレイするサグラハスの戦いである。


 ゲームはターン制でお互いに移動・戦闘を繰り返すオーソドックスなもの。ルールの難易度は高くなく、日本語ルールはチャートを入れて7ページしかない。ユニット数は両軍で約90,たいてい7ターンでゲームが終了するので、長考しないプレイヤーであれば1時間半もあれば1ゲームできると思う。



 初期配置は写真のとおり。キリスト教軍は騎兵がずらっと並び、敵に向いている。なおこのゲームでは中世の会戦を扱ったゲームでよくあるように、ユニットの配置に向きがある。ユニットは常にヘクス内の一つの角に上辺を向けて配置し、その角に接する2へクスが正面となり、そこにのみいわゆるZOCが及ぶ。

 一方、イスラム教軍はグラナダ(黄色)、セビリア(青)、バダホス(茶色)の諸タイファ軍が第一線を、その後方に赤いユニットのムラービト軍歩兵が第二線を構成し、左翼の丘にはムラービト軍の騎兵集団が控えている。


 実際の戦いでは、アルフォンソ六世は自軍騎兵の突撃の威力を過信し、敵イスラム軍はいつもどおり弱いと侮って突撃を命じる。諸タイファ軍が次々と打ち破られ、ムラービト軍歩兵が何とか戦列を維持。そうして時間を稼いでいる間に、ムラービト軍騎兵が側面に回り込む。勝ちを確信していたところに奇襲を受けたキリスト教軍は散々に打ち破られた、というのがだいたいの流れである。


 側面から敵騎兵集団が攻撃してくるのだから、キリスト教軍は史実のように突撃はせずに後退して防御態勢を取ればいいのでは、と思うかもしれない。だがこのゲームの移動ルールでは、基本的に正面にしか移動できず、向きは移動終了時にしか変えられない。そのため、後退しようとして向きを変えるとそこで移動終了で、敵に追いつかれ背面から攻撃される危険性がある。初期配置ではキリスト教軍騎兵は諸タイファ軍に向かって配置されているため、そのまま突撃していったほうが有利なのだ。巧緻な機動よりもとにかく目の前の敵を叩きのめす、というのが中世っぽい。


 ちなみに移動に関して和訳ルールに疑問点があったので、小さなウォーゲーム屋さんに問い合わせたところ速攻で回答が来てびびりました。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

共和国軍の攻勢から反乱軍の反撃、そして機動戦から消耗戦へ Brunete 1937 (Alea43) AAR part5

 ●第5ターン  残り2ターンである。このゲーム、序盤は共和国軍が圧倒的に優勢であるものの、反乱軍には続々と増援が登場する。下の写真はこのショートシナリオが扱う第1~6ターンの両軍の増援で、一目瞭然、共和国軍には微々たる数しか現れないのに対し、反乱軍は大量の援軍を受け取る。ヒスト...