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2023年3月11日土曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ⑥

  クヌートの機を逃さない猛攻で斜面のエアドリックの防衛線は崩壊、エアドリック隊は約半数が壊滅した。苦しくなってきたアングロサクソン軍。こうなったらクヌートはうち捨てておけ。トルケルの首をとるのだ! 剛勇王エドモンドが消耗したトルケルの部隊に襲いかかる。

 エドモンドはさらに、先ほど自軍にまわってきたイニシアティブマーカーを使用。ダブルターンでヴァイキングたちに対応する隙を与えずさらなる猛攻を加える。猛将エドモンドの麾下の兵たちが一斉攻撃し、トルケルの部隊は約6割が壊滅した。残るユニットも高地上から追いやられたうえ、すべてステップロスという惨憺たる状態だ。


 おし、エアドリックの残存部隊でクヌートの相手をさせておいて、その間にトルケルにとどめを! そう勢い込んだアングロサクソン軍だったが、なんとここで2つ目の裏切りチットが引かれる。痛恨のエアドリック寝返り! エアドリックの残存部隊は我先にと逃げ去り、戦場から消えていった。

「このタイミングで、マジかよ! エアドリック許すまじ!!」

「ふっ。余の計算どおりの展開となったな」(←ヴァイキング・プレイヤーが小野賢章のクヌートっぽく言おうと頑張ってました)


 裏切りが生じた時点で、ゲーム開始時に両軍がカップに入れたチットを確認して勝利得点が計算される。それに壊滅させたエドモンド部隊の4ユニットの得点を加えると、ヴァイキングは30点となり勝利条件を満たして勝ちとなった。


 こうしてクヌートはイングランド王となり、以後約20年にわたって君臨。イングランドやデンマークのみならずノルウェー、スウェーデンに勢力を拡大して北海帝国を築くのでした。その間、トルフィンは自由の身になってアイスランドに戻ったと思ったらバルト海やらミクラガルドに行ったりするわけですね。キエフを経由してミクラガルドまで行く様子を外伝みたいな感じで描いてくれないかなー。そこにアンナ・コムネナ様も登場したら自分としては言うことありません。


 ところでこのゲームのタイトルThe Great Heathen Armyは「大異教徒軍」とも訳されるそうだけど、865年に大挙してイングランドに押し寄せたヴァイキングのこと。ヴァイキングは787年から繰り返しイングランドを襲撃していて、大異教徒軍襲来はその約90年後のことだけど、デーン人が支配下においたイングランド東部はデーンロウと呼ばれるようになります。876年にはアルフレッド大王がエサンドゥンの戦いでデーン人に大勝(ちなみにこの戦いも「The Great Heathen Army」に収録されています。エディントンの戦いとも呼ばれているようですね)したりするけど、基本的にイングランドの東半分はデーン人の支配下のまま。937年にはブルンナンブルフの戦いでイングランド側が決定的な勝利を収めデーン勢力は追っ払われますが、980年にはまたデーン人が来襲するようになり、トルフィンの時代を迎えるわけですね。

 デーン人の攻撃にさらされて、エドモンド剛勇王の父エゼルレッドはデーンゲルドと呼ばれる大金を支払ってデーン人から平和を買いますが、エゼルレッドは無策王(the Unready)と呼ばれる無能な王様だったようで、1002年にはイングランドにいるデーン人を皆殺しにしようとします。おいおい、そんな無茶したらいかんだろ。

 ヴィンランド・サガ第一巻の終わりにも、「その日は土曜日でヴァイキングたちは土曜日に風呂に入る。彼らのその習慣をイングランド人は知っていた」と、イングランド軍がヴァイキングに襲い掛かる様子が描かれていますね。村に斥候に出て負傷したトルフィンを助けたイングランドの女性も、洗濯しながらエゼルレッドのことを批判したりしてますし。「逃げろって言っただろ?! イングランド語でちゃんと!!」とトルフィンが叫ぶあの女性です。ああ、いかん、また物語に引きずり込まれる…。


 なお、「The Great Heathen Army」はWargame VaultでPnP版を買いました。8つのシナリオが入って$12なのでお財布に優しい。ユニットとマップを自作するのも楽しかったりします。ウォーゲーマーの中でヴィンランド・サガ好きの人がどれくらいいるかわかりませんが、歴史書を読むのもいいけどあの漫画を読んでからこのゲームをプレイすると盛り上がること間違いなしじゃないかと思います。

2023年3月6日月曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ⑤

  ついにクヌートが動いた。エドモンドに命ぜられて反撃したエアドリックだったが、クヌート直属部隊の攻撃に動揺したのだろう。裏切りチットが初めて引かれた。


 このシナリオではゲーム開始時、ヴァイキング側が裏切りチットを、アングロサクソン軍が忠誠チットを、何個選んだか相手にわからないようにして同じカップにいれる。アングロサクソン軍ターンの終了時にランダムに一つ引き、裏切りチットが2回引かれた時点でエアドリックの裏切りが生じるため、裏切りチットが多いほうがエアドリックが早く消える可能性が高くなるし、逆に忠誠チットが多いとなかなか裏切らない。その一方で、多くのチットを入れれば入れるほど相手プレイヤーの勝利得点になるので、単に多く入れればいいわけではない。


 なお忠誠チット、裏切りチットというのは便宜的に訳しただけで、実際は忠誠チットは射撃の際に使うsuppression markerを流用し、忠誠チットはraven markerという特殊なマーカーを使う。

 ravenはワタリカラスで、ヴァイキングにとってカラスは特別な鳥。北欧神話の主神オーディンには2羽のカラスが付き添っていて世界中の情報をもたらす。それにヴァイキングは航海にカラスを連れていき、陸地がどこにあるかわからなくなるとカラスを放したらしい。カラスは本能的に陸地に向かって飛んでいくので、そうやって陸地の方向を知ったそうだ。

 このようにカラスは知恵の象徴みたいなものだったようで、このゲームで敵を裏切らせるのがraven markerなのもなんか納得。なお、raven makerはAssandun 1016が収録されている「The Great Heathen Army」の他のシナリオでもいろんなイベントを引き起こすチットとして使われている。

 そういえば映画「The Northman」でもカラスがいい仕事をしていましたね。ヴィンランド・サガのシーズン1のオープニング曲でも歌詞にカラスが入っているし。というかそもそも曲名が「Dark Crow」か。


 裏切りチットが引かれたのを見て、「敵は動揺しているぞ、たたみこめ!」とクヌートが一斉攻撃の命を下す。エアドリックの古参兵2ユニットが壊滅。エアドリックも必死に反撃し敵を道連れにしていった。


 損害を受けてもクヌートは攻撃の手を緩めず、エアドリック隊の戦列に穴をあける。だが斜面上への攻撃のため戦闘後前進ができない。ヴァイキングたちが丘の上になだれ込んでくる前にエアドリックは後方のユニットを投入して斜面の防衛ラインを維持しようとしたのだが、ここでヴァイキング・プレイヤーが待ったをかけた。これまで温存していたイニシアティブ・マーカーを使用。連続してヴァイキングのターンとなった。


 「Shields & Swords II」シリーズでは、イニシアティブ・マーカーを持っているプレイヤーは自軍ターン終了時に使用することで、もう一度自軍ターンを行うことができる。いわばダブルターンである。容易に想像できるようにタイミングよく使用すると破壊的な効果が生じる。なお、使用するとイニシアティブ・マーカーは相手プレイヤーに渡ってしまうため、今度は相手からダブルターンをくらう可能性がある。このマーカーをどう使うかでプレイヤーの性格というかプレイスタイルが結構あらわれるんじゃないかな。


 変節漢エアドリックはこの戦いも及び腰で参加していたのだろう。クヌートの激しい攻撃にエアドリックは怯んでしまい、クヌートはその隙を突く ― という形になったイニシアティブマーカーの使用。敵の士気は低いぞ、このまま雪崩こめ、とばかりに敵戦列の裂け目から兵たちが斜面を駆け上がり、猛攻撃を加える。エアドリックの部隊の被害は甚大になり、残るは徴集兵のみとなった。



つづく


2023年3月1日水曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ④

  両軍の古参兵が相打ちになって生じた間隙からトルケルの兵が斜面を駆け上がり、ついに丘の上に進入。さらに徴集兵がエドモンドのステップロスしている古参兵を攻撃する。

 この徴集兵は兵質Cで、「Shields & Swords II」シリーズ(S&S)の中では下から二番目に弱い。だが戦闘結果はEX。消耗していた古参兵は壊滅し、王冠付きだったので4点をヴァイキングに献上してしまった。愕然とするアングロサクソン軍プレイヤー。

「なんで貧弱で下賤な兵たちに貴族が討ち取られるんだよ~。What went wrooong?」

「そのフレーズ、トルフィン以外に使ったらヴィンランド・サガのファンに怒られるよ。というか、俺が怒る」


 ちなみにヴィンランド・サガのシーズン1のオープニング曲ですが、オリジナルももちろんすごくいいんですけど、英語の(勝手にやっている?)カバーは女性ボーカルの高い声が悲劇性を増しているような感じがして好きです。


 のっぽのトルケルと剛勇王エドモンドの間で斜面上での攻防が続く。攻め上がるトルケルの部隊は消耗が激しい。3分の1の兵力が壊滅し、残存ユニットもほとんどがステップロス状態だ。だがエドモンドの部隊も損害が溜まってきている。


 これまでトルケルに自由に暴れさせるままにしておき冷静に戦況を観察していたクヌートだったが、ここで動いた。そろそろトルケルも満足であろう。余の部隊にも攻撃をさせよと号令一下、兵たちが整然と前進。エアドリックの部隊に攻撃をしかける。


 先述のように裏切りが生じるとエアドリックの部隊のすべてのユニットが消えるのだが、そうやって取り除かれるユニットだけでなくそれまでに除去された同部隊のユニットも勝利得点にはカウントされない。つまりヴァイキング側としては自軍が損害を受けるリスクを冒してまでエアドリックのユニットを除去していくメリットはない。

 そのためクヌートもエアドリックへの攻撃を控えていたのだが、もともとイングランド国王への忠誠が低いエアドリックだ。アシンドンの戦いの前までエドモンドがクヌート相手に善戦したためイングランド側に戻ったが、この戦いでも有利な方につこうと日和見をしているはず。トルケルとの激戦でエドモンドの部隊に損害が蓄積している今、クヌートから攻撃を受ければあの変節漢は動揺して戦場から逃げ去るだろう。 — というのがヴァイキング・プレイヤーの読みである。


「そんなかっこいいこと言ってるけど、ほんとはトルケルの部隊がやばいからクヌートの兵を投入せざるを得なくなったんでしょ」

と図星を突くアングロサクソン軍プレイヤー。このシナリオでは移動と戦闘の命令マーカーが一つずつしか与えられていないため、二つある部隊のうちどちらかしか移動や攻撃ができない。アングロサクソン軍がクヌートへの対応を優先してエアドリックの部隊に命令を与えると、エドモンドの部隊が思うように移動や戦闘ができずトルケルへの圧力が減るのだ。

 

 クヌートから攻撃を受け、アングロサクソン軍に迷いが生じる。クヌートが攻めてくるままにして、トルケルにとどめを刺すことに集中するか。それともクヌート軍が斜面の下にいる今のうちに反撃をしておくか。

 トルケルはかなり消耗しているのでいつでも始末ができる。エアドリックの部隊がまだ健在のうちに、有利な地形からクヌートに反撃をして相打ちでもいいから敵に打撃を与えておいた方がいい。そう判断したエドモンドはエアドリックに反撃を命じた。斜面上からの攻撃でクヌートの古参兵に損害が生じるものの、エアドリックの古参兵も消耗しているので痛み分けといった状態である。




つづく

2023年2月24日金曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ③

  盾の壁を組んでいるエドモンドに対し繰り返し攻撃をしかけるトルケル。斜面上の攻防で両軍ともじわじわと損害が出るが、トルケルの部隊最前列の約半数がステップロスとなったタイミングを見計らって、アングロサクソン軍は盾の壁を解いて一斉攻撃に出た。


 「Shields & Swords II」シリーズ(S&S)の命令マーカーには移動や攻撃のほかにボーナスというものがあり、他の命令マーカーと組み合わせることで特殊な効果が生じる。戦闘の命令マーカーと一緒に使うと、戦闘を二回もしくは一斉攻撃(Pitched Battle)が行える。一斉攻撃だと兵質が1上がるのだ。

 一斉攻撃に加え、斜面下への攻撃でも兵質が1上がるためエドモンドの部隊は兵質が2アップ、例えば兵質Bだったら最上級のAAでの攻撃となる。斜面を駆け下りながら一斉攻撃をしかけるアングロサクソン軍によって、トルケルの部隊に大きな損害が出る。最前列で無傷なのは1ユニットのみという状態となった。

ステップロス状態のユニットは黄色い帯が入った面となる


 トルケルと相対しているイングランド王エドモンドだが、剛勇王(the Ironside)の異名を持つ、優秀な将軍だったらしい。活躍した期間は短いが、クヌート軍に4連勝している。Ironsideって際立った強さや勇敢さを持つ人につけられるあだ名のようで、クロムウェルの鉄騎隊もIronsideと呼ばれていましたね。

 そのエドモンドだけど、ヴィンランド・サガでもシーズン2の第五話で

「エセルレッドの死後、その息子エドモンドが王位を継承する。善戦しクヌートを大いに苦しめるも7カ月後の同年11月やはり「病没」する」

ってナレーションが入っていましたよね。漫画だと第9巻。

 そういえばトルケルが初めて登場したときも、ロンドン橋の上からフローキに向かってイングランド兵が弱いってことを言ってた時に「お前らとまともにやれる将軍なんざエドモンド王子くらいだったよ」ってセリフがありました。シーズン1の第9話、漫画だと第3巻です。


 このようにヴィンランド・サガでもその強さに言及されている剛勇王エドモンド。その一斉攻撃で大きな損害を受けたトルケルの部隊だが、

 「これぐらいの損害でトルケルが怯むわけないでしょ。やられたらやり返せ!」

と、ヴァイキング・プレイヤーはトルケルの部隊に一斉攻撃を命じる。「いくぜ野郎ども! ガハハハハーッ!!」と斧を振り回すトルケルが目に浮かびますな。あ、声は大塚明夫でお願いします。

 トルケルの反撃にたまらずエドモンド麾下の兵たちが後退する。だが斜面下からの攻撃のため戦闘後前進ができない間に、エドモンドが素早く対応、戦列に空いた穴を埋めた。そして斜面の上から反撃し、トルケルの兵たちを押し返す。さらには両軍の古参兵(Veteran)同士が激突しEX(両者損害)。死力を尽くした斜面での攻防でどちらのユニットも壊滅した。



 S&Sではいくつかの兵種があるが、このシナリオでは古参兵(Veteran)と徴集兵(Levy)の2つが登場する。古参兵のほうが強力で、壊滅した際の勝利得点は古参兵が2,徴集兵は1と古参兵の方が高い。また古参兵の中には裏面に王冠がついているものがあって、有力貴族に率いられていることを示しており、そのユニットが壊滅した場合さらに勝利得点が+2となる。つまり王冠付き古参兵は徴集兵に比べるといわば4倍高価なのだが、有力貴族を捕虜にして莫大な身代金を得るということがよくあった中世の慣習を反映しているらしい。


つづく


2023年2月19日日曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ②

  アシンドンの戦いは、アングロサクソン軍のマーシア伯エアドリックが裏切って戦場から去ったことによってデーン軍の大勝となった。このシナリオでもアングロサクソン軍ターンの終了時にエアドリックの裏切りチェックがあり、裏切るとエアドリックの部隊がすべて消えてしまう。


 このエアドリックなんですけど、ヴィンランド・サガでクヌートに大金を積んで帰ってもらおうとしたら「安いな」と一蹴された人物なんですよ。漫画だと第9巻、アニメだとシーズン2の第5話です。

 ヴィンランド・サガではさらに、ノルマンディーに亡命しているイングランド王エセルレッドを毒殺するようにクヌートから指嗾されていますね。史実ではアシンドンの戦いの前にクヌート側に寝返った後、アングロサクソン軍が連勝しロンドンをデーン軍の包囲から解放するとイングランド側に戻ったという変節漢。この戦いの翌年、1017年のクリスマスにクヌートによって殺されたみたいですね。

 あと、デーン軍とかヴァイキングとか書いていますが、このAARでは両者同じものと考えてください。また勢力に関してはアングロサクソンをイングランド側として書いています。


 それはさておき、エアドリックの裏切りルールによってこのシナリオはゲームバランスが悪くなっていて、アングロサクソン軍に不利になっていると思う。ヴァイキング側はひたすらエアドリックが裏切るまで時間を稼げばいいのだ。

 ターン数に制限がないためヴァイキングは焦る必要がなく、アングロサクソン軍の約半数を構成するエアドリックの兵が消え去った後で、敵の2倍の兵力でエドモンドを叩き潰せばいい。

 このゲームでは両軍とも基本的に除去した敵ユニットに応じて勝利得点が得られ、各軍に設定された点数に達すると勝利する。アングロサクソン軍はエアドリックが裏切る前に全力で攻撃をしかけて多くの敵を撃破し勝利条件を達成する、という選択肢があるが、両軍の兵力差はあまりないうえ、ヴァイキング側は基本的に攻撃に有利なサイの目修正を得られるため、アングロサクソン軍が積極的に攻撃をしかけていっても殴り合いでアングロサクソン側のほうが損害が大きくなっていく可能性が高い。

 実際、ソロプレイしてみたらアングロサクソン軍は必死に攻撃するものの、ヴァイキングが余裕をもって対応している間にエアドリックが裏切り。残ったエドモンドの部隊が袋叩きにあうというパターンばかりだった。まあそれはそれで面白いけど。


 高地に陣取っているアングロサクソン軍が焦って攻撃のために下ってくるというはなんだか腑に落ちないし、そもそも相手が裏切るまで守りに回るなんて戦い方、トルケルが満足しないのは目に見えている。

 トルケルがフラストレーションをためるとやっかいなので、両プレイヤー合意のもとで裏切りチェックはヴァイキング側が攻撃をした次のアングロサクソン軍ターンのみにすることにした。ヴァイキングの猛攻に恐れをなしてエアドリックが寝返る、というイメージ。関ヶ原でも家康が小早川秀秋に裏切りを促すために恫喝として鉄砲を撃ちかけた、なんて話が伝わっていますよね。この改変ルールだとトルケルも思う存分暴れられるので満足なんじゃないかな。


 ということでプレイ開始。アングロサクソン軍は斜面の上に陣を敷いているためただでさえ攻めるヴァイキングには厄介なのだが、エドモンドの部隊は「盾の壁」(Shield Wall)を組んでさらに守りを堅する。ちなみに両軍とも弓矢を持ったイラストのユニットが登場するが、このシナリオでは射撃はできず、盾の壁を組めない徴集兵(Levy)扱いとなる。要はザコですな。

 ヴァイキング・プレイヤーは「敵が手ごわければ手ごわいほど喜ぶのがトルケルなんだよ。斜面に盾の壁だったらちょうどいいハンデだぜ。おりゃー!!」とトルケルの部隊を前進。エドモンドの部隊にとりつき、攻撃をしかけた。

 

 S&Sの戦闘は基本的に攻撃側有利でブラッディである。攻防ユニットの兵種(Unit Type)の組み合わせでサイの目修正が決まり、8面体ダイスを振って攻撃側の兵質(Combat Class)に応じた戦闘結果表に当てはめる。兵質には最高のAAから最低のDまでがあるが、いくら防御側は兵質が高くても結果には影響しないのだ。さらには斜面の上に向かっての攻撃でも不利は生じない(ただしそこが敵ZOCの場合、戦闘後前進はできない)。

 また基本的に4分の1の確率でEXが出て攻防ともに1ステップロスとなる。そのためEXを狙って弱小ユニットが強力な敵を攻撃する、というのも有効な戦術だったりする。


 一斉に攻撃をしかけたトルケルだったが、エドモンドの堅い守りに阻まれてほとんど戦果なしに終わった。防御側が盾の壁を組んでいると、防御側は後退の戦闘結果を無視できるだけでなく、攻撃側の兵質が1つ落ちるのだ。戦力比のCRTで左に1シフト、みたいな感じか。


つづく

2023年2月14日火曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ①

  「ヴィンランド・サガ」のシーズン2、大旦那様も登場しましたね。じわじわと物語が動いている感じがして、いやー、毎週楽しみです。前にも書いたけど、このいわゆる農場編がヴィンランド・サガの中では一番ひかれるんですよ。予備知識なしにいきなりシーズン2を見るとつらいですけどね。


 アニメを見ていて気分が盛り上がったので、ヴィンランド・サガに関連するゲームはないかなーと探してみたら、なんとクヌートとトルケルが登場するのを発見。「The Great Heathen Army」というゲームの、Assandun 1016というシナリオ。

 1016年といったらヴィンランド・サガ的史実ではちょうどシーズン2にあたり、トルフィンがデンマークの農場で奴隷としてエイナルと一緒に働いているころですね。1014年のデンマーク王スヴェンの急死後、後を継いだクヌートが1016年にイングランドに侵攻。アングロサクソン勢力を打ち破ってデーン朝を開くのですが、クヌートのイングランド征服の最後の戦いがAssandunです。時期的には漫画だと第9巻、アニメだとシーズン2の第5話のあたりですね。

 しかしスヴェン王の急死といったら、トーガ(をイメージしているんじゃいかな、あれは)を身にまとって思い切った行動に出るアシェラッド、そしてナイフを落としてしまうトルフィンが目に浮かんでしまいます。シーズン1のラストってほんと、よかった……。いかんいかん、ヴィンランド・サガのことばっかり書いてしまって全然AARに進まんではないですか。


 ところでAssandunなんですけど、発音がよくわからん、と思っていたら、『消えたイングランド王国』という本では「アシンドン」と表記しているのでそれに従います。この本、ヴィンランド・サガが描いているデーン人のイングランド侵攻を50ページぐらいでわかりやすく解説しているので、ヴィンランド・サガが好きな人には参考文献としておススメです。他にいい本をご存じ方、いらっしゃったら教えてもらえると嬉しいです。

 

 ゲームの「The Great Heathen Army」は、中世の会戦を簡単なルールでシミュレートする「Shields & Swords II」シリーズ(S&S)の一つで、9世紀後半から11世紀初頭にかけてのヴァイキングの戦いが8つ収録されている。ルールは実質6ページで、中世の会戦級にありがちなユニットの向きもないうえ、Assandun 1016では騎兵も弓兵も登場しない(ただし弓矢を持ったイラストのユニットはある)ので、騎兵に関するルールや射撃ルールも読まなくてもいいのがうれしい。

 S&Sでは基本的にプレイヤーごとにターンを繰り返していくのだけれども、特徴的なのが命令システム。各軍は部隊(Wing)にわかれ、ターン最初に移動や戦闘などの命令(Command)マーカーを部隊に割り当てる。移動フェイズには移動の命令を受けた部隊だけ移動でき、同様に戦闘フェイズには戦闘の命令を受けた部隊だけが攻撃できる。命令マーカーの総数や1部隊が受け取れるマーカーの数に制限があるため、どの部隊にどの命令を与えるかがプレイヤーの腕の見せどころとなる。



 Assandun 1016の初期配置は写真のとおり。高地に拠るアングロサクソン軍にヴァイキングが攻めかかるという形になる。なお「The Great Heathen Army」ではどのシナリオも初期配置はかなり自由。アングロサクソン軍はエドモンド剛勇王(Edmund Ironsides)とマーシア伯エアドリック(Eadric Streona)の2部隊からなる。ヴァイキング側も同じく2部隊だが、率いているのがクヌートとトルケルなんである。

 S&Sでは指揮官ユニットは登場しないんだけど、クヌートとトルケルのユニットを自作する誘惑にかられましたよ。もちろんクヌートは美少女風ではなくて短髪で頬に傷跡のある顔、トルケルは左目に眼帯を付けたやつですね。


つづく



2023年1月9日月曜日

「ヴィンランド・サガ」シーズン2がいよいよスタート! で、ヴァイキングならこの映画も

 「ヴィンランド・サガ」シーズン2が今日から始まりますね。いやー、楽しみ。ところでヴァイキングの最近の映画と言えば「The Northman」。昨年アメリカなどで公開したけど、日本では「ノースマン 導かれし復讐者」というタイトルで1月20日から公開するみたい。「ヴィンランド・サガ」とのコラボ企画もやっていますね。


 その「The Northman」ですが、日本で公開になるとはつゆ知らず、結構長時間乗る飛行機の中で、あー暇だなーと映画のリストをスクロールしていたらあったので見てみました。

 いやもうね、知っていたけど、とにかく血で血を洗う復讐劇。さわやかな要素がみじんもない。トルフィンを見習えよと言いたい。



 今のロシアかウクライナの方の集落を襲撃して、住民は捕まえて奴隷にしちゃうところもヴァイキング。奴隷を売り払う先として、ウプサラ、キエフ、コンスタンティノープルとか言っていて、ヴァイキングの商売がよくわかります。生きのいいやつはアイスランドに連れていくとかって感じで選別していたな。あ、ウプサラというのはスウェーデンの古都ですね。しかしコンスタンティノープルはミクラガルドって言ってほしかったなー。


 ちなみに映画の主な舞台はアイスランド。となると敵役はやっぱりハーフダン、ではありません。別の名前の人です。この映画を見ていると、武器だけでなく住居、生活道具それに祭祀なんかも、いろいろと知っている人はもっと楽しめるんだろーなーと思いました。古ノルド語の呪文みたいのも確か出てきてたし。

 祭祀と言えば、グリーンランドのレイフさんはクリスチャンだし、グズリーズも十字架を下げているよね。ヒルドさんもクリスチャンのはず。でもこの映画の時代のアイスランドではまだまだキリスト教が浸透していなくて、奴隷として連れてこられたであろうクリスチャンをののしる言葉が出てきます。「The Northman」の時代設定は10世紀末でトルフィンたちの時代の20年ほど前のようですね。


 ところで映画の中ではkingとかkingdomとか言っていて、アイスランドに王がいるような印象を与えるんだけど、中世のアイスランドって王がいたの? あの時代のヨーロッパではまれに見る民主的な社会だった、みたいなことをどこかの本で読んだ覚えがあるんだけど、自分の記憶違いかな。シング(民会)で自治を行っていて、全島集会のアルシングも開かれていて、アルシングのときには演説する人はログベルぐっていう石の上に立ってやっていたはず。たしかトルフィンがヴィンランドへの移民参加希望者を募るときも、この石の上に立って話していたような。

 でもまあ、The Northmanはフィクションですからね。王の息子だった主人公アムレートが復讐をする、というほうがストーリー的には盛り上がるんでしょうな。一応英語のWikiでは、アムレートの父はアイスランドではなくて架空の島の王で、仇がアイスランドで農場を営んでいてそこに復讐しに行く、みたいな説明になっていたけど。

 というか、日本語字幕で見てみたいっす。ヴァイキングに興味がある人は見ておいて損はない映画だと思います。


*後日また飛行機に乗った時にこの映画を見返したんだけど、時代を百年ほど間違っていました。そりゃまだまだアイスランドにはクリスチャンはいないですわ。あとkingの件ですが、主人公の仇はノルウェイ王に王国を追い払われて今じゃアイスランドで羊を飼ってるぜ、みたいなセリフがあったので、アイスランドに王がいるという設定ではないようです。このセリフ、聞き逃してたのかな。ほんと、日本語字幕で見たいです。

2022年12月30日金曜日

「ヴィンランド・サガ」が待ちきれない? ヴァイキングならこれを読め!

  1月から「ヴィンランド・サガ」のアニメのシーズン2が始まりますね。いわゆる農場編を描くようで、いやー、待ち遠しい。自分はこの漫画のストーリーの中でトルフィンが農場で働いているころが一番好き、というか一番内容に深みを感じるんだけど、クヌートは黒いし、トルケルもあんまり活躍しないし、もちろんアシェラッドはもう生きていないし、ウェールズやローマといった遠い歴史につながることもないし、ということでアニメになるとシーズン1のような派手さがなくなるはず。どんな感じになるのかな。


 「ヴィンランド・サガ」と言えばヴァイキングだけど、ヴァイキング関係の本を探していたらたまたま見つけたのが、この本『The Long Ships』。あんまり期待せずに読み始めたら、イベリア半島から現在のウクライナまで物語が展開して、結構のめりこんでしまいました。もともとスウェーデン語で書かれた小説で、自分はスウェーデン語はわからないので読んだのは英訳本。ペーパーバックだけど500ページ以上あるので読み応えたっぷりでした。



 今のデンマークに暮らしていた主人公Ormの一代記なんだけど、いきなり主人公がヴァイキングにさらわれて遠征に連れていかれる。ほんと、ヴァイキングって乱暴なんだから…というのは昔のイメージで、最近はいろいろと研究が進んで、ただの荒くれ集団ではない側面がわかってきているようですね。それはさておき、イベリア半島に略奪遠征に行ったと思ったらイスラム勢力につかまってガレー船のこぎ手にさせられてしまいます。

 でも腕っぷしを認められて太守の親衛隊みたいな感じになるのはさすが。ビザンツ帝国ではノルマン人をヴァリャーギ親衛隊にしていたけど、イスラムでもそういうことあったのかな。その後なんとか北欧に戻るんだけど、また遠征。ヴァイキングだからね。今度はイングランドで、それで落ち着くかと思ったら今度は地元でいざこざ。ところで「ヴィンランド・サガ」ではデーン人がキリスト教化しつつある様子がうかがえるようになっていますが、この小説でもキリスト教がスウェーデン南部に広がっていくのが描写されています。で、最後の冒険はキエフの南に隠されたビザンツ皇帝の財宝探しで終わります。


 時代的にはトルフィンが活躍するちょい前、10世紀末から11世紀初頭なんだけど、ノルマン人が全ヨーロッパをまたにかけて活躍していたことがよくわかります。トルフィンだってバルト海からキエフ経由でミクラガルド(コンスタンティノープル)まで行っているしね。この小説では主人公はミクラガルドまで行かないものの、ビザンツ皇帝に使えたという人物も登場します。

 ヴァイキングは海だけでなく河川も利用して内陸部でも活動してたってのは聞いていたけど、バルト海からミクラガルドに行くルートでは西ドヴィナ川とドニエプル川を利用していたみたいなんですね。この小説でもそのルートを通っていて、両河川の間は船を押していくんだけどそれがまた大変だったらしい。この時のために特別なエールを用意しておく、なんてエピソードが出てきます。無茶苦茶苦しい時に酒の力を借りるってことですな。この本の地図では、西ドヴィナ川とドニエプル川をつなぐ陸路はThe Great Portageって書かれているんだけど、どうやら今のスモレンスクあたりのようです。


  「ヴィンランドサガ」の人気キャラ(だと自分は思っているんだけど)の、のっぽのトルケルも出てきます。主人公Ormは一緒にイングランドに遠征に行って、モルドンの戦いに参加するんだけど、「ヴィンランド・サガ」でもアシェラッドが「あれはモールドンの戦だったか」ってトルケルのことを回想していますね。(漫画だと第六巻です。)

 イングランドの歴史では重要な戦いのようで、散文詩「モルドンの戦い」というのが残っていて、その叙情と拡張の高さから「ベーオウルフ」以上とも称賛されているらしい。なんてこと聞いてもちんぷんかんぷんですが、とにかく無名の戦いではないそうです。


 この時代、10世紀末と言えば、日本は平安時代で紫式部がいてもうすぐ「源氏物語」を書くころ。イギリスの作家ヴァージニア・ウルフは「源氏物語」を称賛していて、この作品の時代を「アングロ・サクソン人がまだ野蛮であった頃」って書いたそうだけど、日本では優雅な王朝文化が花開いていたころ、イギリスは野蛮だったわけですね。

 アシェラッドがイングランドの兵に対し、「オレらデーン人がケダモノだってんなら、お前らアングロ・サクソンも相当ケダモノなんだぜ。お前たちは暴力でこの地を奪った。オレたちデーン人はお前ら以上の暴力でこの地を奪う。まさか文句はあるめえな?」みたいなこと言ってて、数百年前のローマンブリテンへのアングロ・サクソン人の侵略にもふれているけど、それ以来イングランドはほぼ分裂状態が続いてたはずで、そこににデーン人がやってきて、さらに野蛮になっていたんでしょうなあ。

 でも、たしかにこの本に登場するヴァイキングたちは野蛮でみんな喧嘩っ早いし、しかもただの喧嘩じゃなくて剣を抜いて殺し合いになるという結構乱暴な世界なんだけど、そんな荒くれものたちが結構、即興で詩を詠むんですよね。なんか意外と思ったけど、武士が和歌をたしなむようなもんなんですかね。


 ところで「ヴァイキングならこれを読め!」なんて偉そうなタイトルにしましたが、これ私が言っているんじゃないんです。本の表紙にNo one should go a-vinking without itって惹句というか推薦の言葉が書かれていて、それを超訳しただけです。いや誰も略奪遠征に行かないから、とツッコミを入れてあげましょう。


 と、いいことばっかり書いてきたけど、難を言うなら英語が固い。千年前の雰囲気を出すために意図的にやっているのかもしれないけど。でも内容は面白いし、最後にはクヌートにも触れていますよ。「ヴィンランド・サガ」にはまってヴァイキングの本を読みたい、という人はぜひ。


共和国軍の攻勢から反乱軍の反撃、そして機動戦から消耗戦へ Brunete 1937 (Alea43) AAR part5

 ●第5ターン  残り2ターンである。このゲーム、序盤は共和国軍が圧倒的に優勢であるものの、反乱軍には続々と増援が登場する。下の写真はこのショートシナリオが扱う第1~6ターンの両軍の増援で、一目瞭然、共和国軍には微々たる数しか現れないのに対し、反乱軍は大量の援軍を受け取る。ヒスト...