2023年2月19日日曜日

トルケルとクヌートを前に、尽きるかイングランドの命運  Assandun 1016 - The Great Heathen Army(Hollandspiele) AAR ②

  アシンドンの戦いは、アングロサクソン軍のマーシア伯エアドリックが裏切って戦場から去ったことによってデーン軍の大勝となった。このシナリオでもアングロサクソン軍ターンの終了時にエアドリックの裏切りチェックがあり、裏切るとエアドリックの部隊がすべて消えてしまう。


 このエアドリックなんですけど、ヴィンランド・サガでクヌートに大金を積んで帰ってもらおうとしたら「安いな」と一蹴された人物なんですよ。漫画だと第9巻、アニメだとシーズン2の第5話です。

 ヴィンランド・サガではさらに、ノルマンディーに亡命しているイングランド王エセルレッドを毒殺するようにクヌートから指嗾されていますね。史実ではアシンドンの戦いの前にクヌート側に寝返った後、アングロサクソン軍が連勝しロンドンをデーン軍の包囲から解放するとイングランド側に戻ったという変節漢。この戦いの翌年、1017年のクリスマスにクヌートによって殺されたみたいですね。

 あと、デーン軍とかヴァイキングとか書いていますが、このAARでは両者同じものと考えてください。また勢力に関してはアングロサクソンをイングランド側として書いています。


 それはさておき、エアドリックの裏切りルールによってこのシナリオはゲームバランスが悪くなっていて、アングロサクソン軍に不利になっていると思う。ヴァイキング側はひたすらエアドリックが裏切るまで時間を稼げばいいのだ。

 ターン数に制限がないためヴァイキングは焦る必要がなく、アングロサクソン軍の約半数を構成するエアドリックの兵が消え去った後で、敵の2倍の兵力でエドモンドを叩き潰せばいい。

 このゲームでは両軍とも基本的に除去した敵ユニットに応じて勝利得点が得られ、各軍に設定された点数に達すると勝利する。アングロサクソン軍はエアドリックが裏切る前に全力で攻撃をしかけて多くの敵を撃破し勝利条件を達成する、という選択肢があるが、両軍の兵力差はあまりないうえ、ヴァイキング側は基本的に攻撃に有利なサイの目修正を得られるため、アングロサクソン軍が積極的に攻撃をしかけていっても殴り合いでアングロサクソン側のほうが損害が大きくなっていく可能性が高い。

 実際、ソロプレイしてみたらアングロサクソン軍は必死に攻撃するものの、ヴァイキングが余裕をもって対応している間にエアドリックが裏切り。残ったエドモンドの部隊が袋叩きにあうというパターンばかりだった。まあそれはそれで面白いけど。


 高地に陣取っているアングロサクソン軍が焦って攻撃のために下ってくるというはなんだか腑に落ちないし、そもそも相手が裏切るまで守りに回るなんて戦い方、トルケルが満足しないのは目に見えている。

 トルケルがフラストレーションをためるとやっかいなので、両プレイヤー合意のもとで裏切りチェックはヴァイキング側が攻撃をした次のアングロサクソン軍ターンのみにすることにした。ヴァイキングの猛攻に恐れをなしてエアドリックが寝返る、というイメージ。関ヶ原でも家康が小早川秀秋に裏切りを促すために恫喝として鉄砲を撃ちかけた、なんて話が伝わっていますよね。この改変ルールだとトルケルも思う存分暴れられるので満足なんじゃないかな。


 ということでプレイ開始。アングロサクソン軍は斜面の上に陣を敷いているためただでさえ攻めるヴァイキングには厄介なのだが、エドモンドの部隊は「盾の壁」(Shield Wall)を組んでさらに守りを堅する。ちなみに両軍とも弓矢を持ったイラストのユニットが登場するが、このシナリオでは射撃はできず、盾の壁を組めない徴集兵(Levy)扱いとなる。要はザコですな。

 ヴァイキング・プレイヤーは「敵が手ごわければ手ごわいほど喜ぶのがトルケルなんだよ。斜面に盾の壁だったらちょうどいいハンデだぜ。おりゃー!!」とトルケルの部隊を前進。エドモンドの部隊にとりつき、攻撃をしかけた。

 

 S&Sの戦闘は基本的に攻撃側有利でブラッディである。攻防ユニットの兵種(Unit Type)の組み合わせでサイの目修正が決まり、8面体ダイスを振って攻撃側の兵質(Combat Class)に応じた戦闘結果表に当てはめる。兵質には最高のAAから最低のDまでがあるが、いくら防御側は兵質が高くても結果には影響しないのだ。さらには斜面の上に向かっての攻撃でも不利は生じない(ただしそこが敵ZOCの場合、戦闘後前進はできない)。

 また基本的に4分の1の確率でEXが出て攻防ともに1ステップロスとなる。そのためEXを狙って弱小ユニットが強力な敵を攻撃する、というのも有効な戦術だったりする。


 一斉に攻撃をしかけたトルケルだったが、エドモンドの堅い守りに阻まれてほとんど戦果なしに終わった。防御側が盾の壁を組んでいると、防御側は後退の戦闘結果を無視できるだけでなく、攻撃側の兵質が1つ落ちるのだ。戦力比のCRTで左に1シフト、みたいな感じか。


つづく

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