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2024年11月19日火曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part5

 ●第7ターン

 今ターンも冒頭に激しい射撃戦が行われたが、砲兵、弓兵ともに数で勝るブルゴーニュ軍はより多くの損害を敵に与えた。

 だがスイス軍はFaucingnyが敵右翼(マップ下方)を切り崩す。弓兵の防御射撃をものともせず白兵戦で敗走させ、さらに連鎖敗走でブルゴーニュ軍弓兵が逃げ切れずに壊滅した。そして総指揮官Scharnachtalが兵力をかき集めて中央部で攻撃に出る。射撃では不利でも、白兵戦となるとスイス軍は強い。ブルゴーニュ軍を押しに押し、マップ中央の得点源であるConciseの村をついに占領した。マップ上方ではRedingが前ターンに反撃してきた敵騎兵の後方に回り込み敗走させる。やはりReding狂暴。敗走するブルゴーニュ騎兵につられて兵たちが浮足立ち同じく敗走するところだったが、指揮官のChâteau-Guyonが叱咤激励しなんとか踏みとどまった。

 右翼(マップ下方)で劣勢に立っているブルゴーニュ軍は、Conciseの村を奪還したいものの反撃に出る余裕がない。各部隊が弓兵の射撃をするのみ。サイの目が振るわずなかなか効果が出ないが、執拗な射撃にスイス軍はじわじわと損害を被っていった。

 スイス軍は左翼(マップ下方)のEptingenの騎兵が、その移動力を生かして台地上のブルゴーニュ軍砲兵の背後に回り込む。スイス軍はほとんどが歩兵で構成されているのだが、Eptingenの部隊だけは騎兵を2ユニット含んでいるのだ。Eptingenの騎兵が砲兵と弓兵のスタックを背後から襲撃、壊滅させた。


 ちなみにこのEptingenの部隊は、スイスと同じく反ブルゴーニュ側に立っていたアルザスの都市ストラスブールの兵を含んでいたらしい。Au fil de l'épéeシリーズでは各部隊の識別のために部隊ごとの紋章(Blason d'identification)がユニットにつけられているのだが、Eptingen部隊の紋章はストラスブールのもの。この紋章は当時Eptingenに授けられていたそうだ。


 ブルゴーニュ軍は防衛の要であるマップ下方のHochbergの砲兵部隊を切り崩されていき、右翼(マップ下方)はかなり厳しくなってきている。だがマップ上方ではCampobassoが射撃でRedingを敗走させる。この方面は両軍ともボロボロだが、スイス軍の消耗が激しいためブルゴーニュ軍は防御にやや余裕が出てきた。一方、スイス軍は得点源の村を死守しつつ、マップ下方からの攻撃に期待するしかない。

 回復フェイズではブルゴーニュ軍の槍兵が盤外に、そしてマップ下端では敗走できずに弓兵が壊滅した。一方、スイス軍は猛将Redingの怒鳴り声も耳に入らず兵たちがさらに敗走、我先に逃げる兵たちの流れにRedingも巻き込まれてしまった。このゲームでは回復に失敗した敗走ユニットは自軍マップ端に向けて全力で敗走移動するのだが、スタックしている指揮官も一緒に移動しなければならないのだ。このため、前線に残っているReding部隊の残余が指揮範囲外になってしまった。これで次ターンは行動がかなり制限されてしまう。さらに、スイス軍もついに敗走歩兵が盤外へ。マップ下方では敗走する歩兵に巻き込まれて砲兵が壊滅、火縄銃兵がマップ外に逃げ去った。


 両軍とも消耗が激しいが、このターン終了時点でユニット壊滅による勝利得点はスイスがブルゴーニュを10点リードしている。スイス歩兵は強力だが壊滅しても槍兵と同じ2PVにしかならず、一方騎兵は3PVなのだ。さらにスイス軍は中央の村Conciseを占領しており、ゲーム終了時まで保持すると5PVを得られる。勝利得点的にはスイス軍がかなり有利。ブルゴーニュ軍はマップ下端の敵の攻撃をしのぎつつ、村を奪還しさらに敵に打撃を与えられるか。


つづく

2024年11月13日水曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part4

 ●第5ターン

 前ターン、後方から前進してきたブルゴーニュ軍予備による反撃によって消耗したスイス軍。敵が戦列を立て直したのを見て、このターンは回復に努める。マップ下方では前ターンにEptingenの8ユニットが登場したが、これらの多くは戦力2の歩兵やあまり攻撃には使えない火縄銃兵である。敵Hochbergの砲撃に対する弾除けに使いつつ、Faucingnyの部隊をマップ下端、砲撃を受けない方面に迂回させて敵右翼端を攻撃するのがスイス軍のプランなのだが、今ターンはそれは無理。次ターンにマップ上方と下方から一斉に攻撃するため、今ターンは自重して態勢を整えるのが賢明だ。

 そう判断したスイス軍プレイヤーだが、マップ上端では攻撃を行う。ここは敵総指揮官シャルルの指揮範囲外なのでブルゴーニュ軍は有効な反撃が行いづらいのだ。総指揮官Scharnachtalの指揮のもと、Redingが猛攻、Campassoの槍兵を敗走させる。さらにRedingが活性化しCompassoに追い打ちをかける。スイス軍の攻撃に敗走した自軍の槍兵を見て、後方にいた火縄銃兵も敗走、ブルゴーニュ軍の左翼端(マップ上方)にRedingの2ユニットが大きく食い込んでいく。この方面のブルゴーニュ軍はほとんど士気低下か敗走状態のユニットになってしまった。


 ブルゴーニュ軍はシャルルの指揮の下、弓兵で敵に連続射撃をくらわす。たまらずRedingが敗走、マップ下方でも砲撃でスイス軍が士気低下し、Orangeの弓兵が前進してきたFaucingyの歩兵を射撃で敗走させた。これに対しスイス軍はマップ上方でGoldiの部隊を投入、敵槍兵を2ユニット敗走させる。やはり白兵戦になると槍兵はスイス兵の敵ではない。


 回復フェイズではブルゴーニュ軍は敗走からの回復に失敗し続け、騎兵1ユニットが盤外に消え去ってしまった。敗走の結果盤外に出たユニットは壊滅と同じく敵にPVを献上するのだが、騎兵は3ポイントと高価なので痛い。だがスイス軍も敗走からの回復に失敗、巻き込まれてさらに1ユニットが敗走してしまった。



●第6ターン

 ターン冒頭、各部隊の活性化の前にある射撃フェイズで激しい射撃戦が繰り広げられた。砲弾を撃ち込まれた両軍はあるいは士気が低下、あるいは敗走していく。

「珍しくスイスの砲兵が活躍したけど、射撃戦ではこっちに分があるんだよね」

とブルゴーニュに多数いる弓兵が矢の雨を降り注いだ。たまらず敗走していくスイス兵。だが密集している陣形のため味方に阻まれて壊滅してしまう。

 このターン、イニシアティブを握ったのはブルゴーニュ軍だった。マップ上方では前ターンのスイス軍の攻撃とブルゴーニュ軍の反撃によって両軍ともに大きく消耗している。やられる前にやれ、とブルゴーニュ軍は満身創痍のCompassoの部隊で攻撃をしかけた。だがスイス軍は激しく抵抗、Compassoの槍兵が疲労状態となってしまった。

 スイス軍も消耗が激しく、もともとユニット数が多くないRedingとGoldiの部隊は使える兵力がほとんどないのだが、総指揮官の指揮の下それらの部隊を一斉投入。ブルゴーニュ軍に各所で損害を与えていく。Redingがまたもその凶暴なまでの能力を発揮し、疲労状態の兵を叱咤激励、Compassoの2ユニットにダメージを与えた。


 ブルゴーニュ軍はHochbergの砲撃でScharnachtalを敗走させるものの、スイス軍は怯まずマップ上方でRedingがCompassoに追い打ち、消耗が激しいCompobasso隊はRedingの猛攻を支えきれず敗走してしまう。

 この戦い前半でほぼ半壊状態になり時間をかけて回復していたブルゴーニュのChâteau-Guyonの騎兵部隊だが、自軍左翼(マップ上方)の危機的状況を見て回復ユニットを投入、Redingの軽歩兵を蹴散らす。だがマップ下方ではスイス軍が本格的な攻勢を開始、敵最右端に回り込んだFaucingyの部隊が敵戦列の間隙を縫って突進、この方面のOrange部隊を次々と敗走させていく。特にブルゴーニュ軍にとって反撃の要となる弓兵を壊滅させた。

「ここってHochbergの砲撃でカバーできないところでしょ。やばいんじゃないの?」

と煽るスイス軍プレイヤーだが、シャルル・ル・テメレールは冷静に対応。弓兵を巧妙に使って中央でRedingとGoldiの兵を敗走させる。そして右翼(マップ下方)を立て直そうと、Orange隊は突出してきたFaucingyの歩兵に反撃、なんとか損害を与えた。一方、スイス軍は敵右翼の砲兵前面に展開していた弾除けのEptingen部隊も攻撃に投入、火縄銃兵が至近距離の射撃で敵槍兵を敗走させた。

 そしてこのターン、またもブルゴーニュ軍は敗走状態からの回復に失敗し、騎兵と火縄銃兵が戦場から逃げ去ってしまった。一方、スイス軍はその高い兵質を利用して次々と回復、次ターンも再び一斉攻撃をしかけられる態勢となった。


つづく

2024年11月10日日曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part3

 ●第4ターン

 このゲームでは各ターンの最初に両軍の射撃フェイズがあるのだが、このターンはブルゴーニュ軍の射撃が冴えた。ブルゴーニュ軍弓兵は2へクス先の標的に対し30%の確率で士気低下、同じく30%の確率で敗走を引き起こす。強烈な射撃に耐えられずスイス歩兵が敗走、だが続々と後方から詰め寄せていた友軍に敗走を阻まれ、壊滅してしまった。

 スイス軍は歩兵なので移動力が低く、少しでも早く増援を前線に投入しようとすると、地形の問題もありどうしても密集状態になりやすい。そのため、敗走ができずに壊滅ということが起きてしまうのである。


 このターン、イニシアティブを得たスイス軍は総指揮官Scharnachtalが右翼(マップ上部)でブルゴーニュ軍に襲いかかる。敵騎兵部隊の間隙をついて騎兵を包囲、さらに敵後方のCampobassoの槍兵にも攻撃。敵に次々と損害を与えていった。そして高い指揮ボーナスを誇るRedingがブルゴーニュ軍騎兵部隊指揮官Château-Guyonを攻撃して敗走させた。

 さらにスイス軍はRedingの部隊を活性化させ追い打ちをかける。ブルゴーニュ騎兵が1ユニット敗走、1ユニット壊滅。Château-Guyonのブルゴーニュ騎兵部隊はすべてのユニットが壊滅もしくは敗走状態となってしまった。


 友軍の危機を見てブルゴーニュ軍Hochbergの弓兵がスイス軍中央に懸命に射撃、少しでも敵の勢いをとどめようとする。一方、前ターンに増援としてマップ下方に登場したスイス軍のFaucingyの部隊はHochbergの砲兵の射程を慎重に避けながら前進。このゲームの砲兵は結構強力で、4へクス離れていても40%の確率で敵に損害を与えることができるのだ。実際、練習でソロプレイしていると、うかつに接近したスイス軍はHochbergの砲兵4ユニットの砲撃によって次々と士気低下・敗走していきスイス軍左翼が崩壊、という事態になったりしていた。

 マップ上部で押されているブルゴーニュ軍だが、後方から駆け付けた予備のCrèvecoeurの弓兵が連続射撃で敵中央の歩兵を敗走させ、さらに総指揮官シャルル・ル・テメレールが反撃に出る。シャルルの指揮範囲は4と広くないものの、戦場の中央に陣取っているため多くのユニットを指揮範囲に収めている。CrèvecoeurやCampobassoの弓兵を使って敵を士気低下状態にしたのち、Campobassonoの槍兵2ユニットが白兵戦で攻撃。先述のようにブルゴーニュ軍の槍兵は戦力、兵質、兵種いずれもスイス軍に劣るのだが、こうやって射撃&複数ユニットによる白兵戦という連携攻撃にはさすがのスイス兵も持ちこたえられず敗走した。

 スイス軍は敵の反撃で消耗していた右翼(マップ上方)にGoldiの部隊を支援として派遣、そしてマップ下方からは増援のEptingen部隊が登場する。一方のブルゴーニュ軍はCampobassoの弓兵が士気低下し疲労状態のRedingのスイス兵ユニットを狙い撃ち、敗走させた。

 スイス軍は続々と増援が登場したものの、ブルゴーニュ軍も後方の予備3部隊が投入されたため、数的には両軍それほど変わらない状態となってきた。

 ターン最後にある回復フェイズでブルゴーニュ軍騎兵は多くが敗走状態から回復。だがこのターンはブルゴーニュ軍は騎兵による攻撃ができなかったためPVペナルティを受けてしまった。Château-Guyonの騎兵部隊は先述のようにすべて壊滅、もしくは敗走状態にあったので仕方ない。シャルル直属の騎兵で攻撃をするという選択肢もあるが、シャルルの騎兵は兵質6と精鋭であるもののスイス歩兵と互角であるにすぎず、2ユニットしかいないためたいした攻撃はできないうえ、シャルルが戦闘に巻き込まれて移動の自由を失う可能性もある。さらに特別ルールで、シャルル直属部隊の騎兵が敗走もしくは壊滅するごとに、予備3部隊のうちどれか1部隊が丸ごとマップ上から取り除かれてしまうのである。総指揮官がやばくなったのを見て我先に戦場から逃げ出す、ということなのだろうけれど、そんなリスクを冒す余裕はブルゴーニュ軍にはないため、シャルルの部隊による攻撃にはかなり慎重にならざるを得ない。


つづく

2024年11月4日月曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part2

 ●第1ターン

 このターンはスイス軍の活性化から始まる。スイス軍は前進して丘陵地帯の隘路出口で防御を固めた。

「猪口才な。スイスの農民どもなんぞ蹴散らしてくれるわ!」

とブルゴーニュ軍プレイヤーが気炎を上げる。一斉に襲い掛かると思いきや、敵右翼端(マップ上方)のみを攻撃、損害を与えて後退させるに終わった。

「あれ、威勢がよかったはずなのに一カ所だけしか攻撃しないなんて、しょぼくない?」

「すんません、それは無理っす」

 先述のようにスイス兵は戦闘力、兵質ともに高く兵種としては騎兵と同等のため、1ユニット同士の白兵戦ではブルゴーニュ軍が不利になる。このゲームでは白兵戦をするユニットは正面ヘクスにいるすべての敵ユニットが攻撃されるようにしないといけないため、きっちりと戦列を組んでいる相手に一斉攻撃をしようとするとどうしても1ユニット同士の白兵戦が生じてしまう。さらにはスイス軍は地形効果も得られるユニットもあるわけで、ブルゴーニュ軍としては一斉攻撃をして次々と撃退されるという事態を避けるために敵戦列の端に2ユニットを投入し、さらに騎兵部隊指揮官Château-Guyonの指揮ボーナス(Bonus)で+2DRMを得て何とか有利な形で攻撃ができたのである。


●第2ターン

 スイス軍には増援のRedingの部隊が登場。この部隊は現在のスイス中央部の兵からなる。ちなみに初期配置されているScharnachtalの部隊はベルンの兵である。

 ブルゴーニュ軍は敵の指揮官Scharnachtalを攻撃、疲弊状態(Fatiguée)で後退させた。だがScharnachtalは怯まず、戦闘後前進で突出した敵騎兵を包囲、袋叩きにして敗走させる。ちなみにこのゲームでは戦闘後前進は強制である。うかつに攻撃するとこのように反撃をくらうことが多い。

 スイス軍の反撃を受けたブルゴーニュ軍は騎兵部隊を支援するためHochbergの弓兵が射撃で敵に損害を与えるものの、騎兵部隊とHochberg隊だけでは増援が登場したスイス軍を積極的に攻撃していくには兵力が足りない。

「予備がいっぱいいるんだから、早く投入させてよ~。デザイナーの意地悪~」

と嘆くブルゴーニュ軍プレイヤーである。


●第3ターン

 イニシアティブを得たブルゴーニュ軍は先手を取って騎兵が攻撃。すでに疲弊状態だったスイス兵ユニットを士気低下状態(Découragée)にして後退させた。

 スイス軍は総指揮官(chef d’armée)Scharnachtalのもと、一斉に反撃。このゲームでは基本的に部隊ごとに活性化するが、総指揮官は自分の指揮範囲内にいる他の部隊のユニットも活性化できる。Scharnachtalは6という広い指揮範囲にものを言わせて前ターンに登場したRedingの部隊も投入、敵戦列の間隙から浸透しブルゴーニュ騎兵に強力な攻撃を行う。特にRedingは指揮ボーナス3と強烈なDRMを持つのだ。包囲されていたブルゴーニュ騎兵はたまらず敗走していった。さらにScharnachtalに続いてRedingが活性化。敵に追い打ちをかけていく。

 そしてスイス軍には今ターンも増援が登場。Redingの後を追ってマップ上部からGoldiの4ユニットが、そして丘陵地下方の道からはFaucingnyの強力な歩兵部隊が現れた。

 頼みの騎兵が次々とスイス軍に撃破され、敵には続々と増援が現れるのを見たシャルル・ル・テメレール。Hochbergの弓兵の射撃で敵を牽制しつつ、後方にいた予備の3部隊を動かした。

「いやー、早いとこ騎兵が2ユニット敗走してくれてよかった。これで予備が投入できるもんね」

「それ、一軍の将が言うセリフじゃないと思うぞ」


 このシナリオでは先述のように、ブルゴーニュ軍は騎兵が2ユニット敗走するまでは予備の3部隊は活性化できない。そのため無理は承知で騎兵部隊で攻撃をかけていったのである。それにブルゴーニュ軍は騎兵が攻撃しなかったターンごとに1勝利得点(PV)をスイス軍に献上してしまう(最大で累計5PV)。そのため、史実同様騎兵で攻撃を仕掛けうるよう誘導される仕組みとなっている。


つづく

2024年11月1日金曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part1

  先日やった「Alsace 1944」が面白かったので、アルザス関連のゲームをやってみた。プレイしたのはGrandsonの戦い。場所は現在のスイス北西部で1476年、スイスとブルゴーニュの両軍が衝突した……

 いやいや全然アルザスじゃないだろ! と思われるかもしれないけど、そうじゃないんですよ。この当時、領土拡大を続けるブルゴーニュ公国はアルザスをめぐってスイスやその他の勢力といわゆるブルゴーニュ戦争を戦っていて、その一環で起こったのがGandsonの戦いなんですね。なのでアルザスと結構関係があるんですよ。ははは…。

 まあ苦しい言い訳はこれぐらいにして、要はプレイしてみたかったからプレイしただけなんですけどね。ゲームはVaeVictis誌81号付録の「Epées et Hallebardes 1315-1476」に収録されている3つのシナリオのうちの一つ。中世の会戦をシミュレートしたAu fil de l'épéeシリーズに属し、同じシリーズでは以前、Guinegatteの戦いのAARを書いたなあ

 初期配置を見ると兵力でブルゴーニュ軍が圧倒しているように見える。だがデザイナーによるとこの戦いでブルゴーニュ公シャルルは騎兵と砲でスイス軍を打ち破れると思っていたそうで、ゲームでは後方の3つの部隊は予備となっていてブルゴーニュ軍騎兵が2ユニット敗走もしくは壊滅するまでは動かせない。一方のスイス軍は続々と増援が登場するため、数のうえでの不利さはなくなる。

 さらにスイス軍の多くは戦闘力(Facteur de combat)が8と強力で兵質(Qualité)でも敵に勝っている。それにほとんどのスイス軍ユニットの兵種はスイス兵(Suisses, Su)で、騎士(Chevaliers, Ch)や重装騎兵(Hommes d'Armes, Ha)と白兵戦で互角、ブルゴーニュ軍に多数いる槍兵(Piqiers, Pi)に対しては有利なDRMがつく。

 とまあこれだけでもスイス軍の優秀さがうかがえるのだが、さらにこのシナリオでは、スイス兵はブルゴーニュ騎兵の突撃を実質的に無効化してしまうのである。Au fil de l'épéeシリーズでは騎兵の突撃は+3のDRMが付くのだが、だがこのシナリオではスイス兵に対する突撃にはDRMがゼロである(複数方向からの突撃でやっとDRM+1)。

 優秀なスイス兵に対し、ブルゴーニュ軍は右翼(マップ下方)の台地上に砲兵を4ユニット配置しており、さらに弓兵を多数保持している。白兵戦で優位に立つスイス軍に対し、ブルゴーニュ軍がいかに砲兵と弓兵を活用できるかが勝敗のカギとなるだろう。


 実際の戦いでは続々と山地から登場するスイス軍に対しブルゴーニュ軍は平野部に退いて態勢を整えようとしたところ、そのまま押し切られてしまったらしい。ちなみにこの当時のスイスは8つの州や都市が同盟を組んでおり、ドイツ語だとAlte Eidgenossenschaft、フランス語だとConfédération des huit cantonsと呼ばれていて、当然VaeVictis誌でもそう表記されている。日本語ではなんて訳されているんですかね。

 一方のブルゴーニュ軍を率いるのはブルゴーニュ公シャルル。Charles le Téméraireとも呼ばれていて、シャルル勇胆公や突進公、猪突公とかいろいろと訳されているようだけど、le Téméraireは悪い意味も含まれているようで、辞書を見てもtéméraireという単語の意味としてune hardiesse imprudente ou inconsidérée(無謀だったり思慮の足りない大胆さ)なんてなことが書いてある。でもブルゴーニュ関係の本を読んでいると、téméraireではなくhardi(大胆)と変えたい、téméraireと呼んでいるとシャルルの業績や人格に対し史実と反する印象を与えてしまう、と言っている研究者がいるって書いてあった。その本の筆者は同意しつつも、やっぱりCharles le Téméraireというすでに定着している呼び名は維持したい、と書いていたけど。まあ自分にはフランス語のニュアンスはわかりませんが、シャルル関連の本を読んでいるとそんなに猪突猛進って感じは受けないので、このAARではle Téméraireを訳さずにル・テメレールと呼ぶことにします。


つづく


2024年10月16日水曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part5

 ●第6ターン(11月24ー25日) (続き)

 仏軍三個師団の突出にドイツ軍の包囲・反撃と、戦場は両軍入り乱れての混戦状態の様相を呈してきた。

「うげー、なんかZOCばっかりでどこに動かせるのかわかんねー」

と作戦級に不慣れな両プレイヤーである。

 独軍は増援の装甲・機械化部隊が次々と前線に到着。戦闘力は1や2と低いものの、兵数に劣るドイツ軍としてはありがたい。そして勝利得点源の街Altkirch奪還に向けてさらなる反撃を繰り広げた。


●第7ターン(11月26ー27日)

 仏軍は包囲されている三個師団が補給切れ(Non ravitaillé)となってしまった。

「ええっと、補給切れって……げ、攻撃できなくなるの?!」

と今さらながらにルールを確認して驚く仏軍プレイヤー。

「いや、だっていつもやっているゲームは補給ルールなんてないし…」

 常日頃は中世の会戦やってますからね、一日で終わった戦いばかりだから補給ルールなんてありませんよ。

 このゲームでは補給が続かない状態が2ターン目となると補給切れ状態となり、攻撃は不可、防御力と移動力が半減する。被包囲下の3個師団はもう自力での脱出は不可能である。仏軍は要塞地帯の掃蕩、それにAltkirchの防衛に傾注、前ターンに増援として登場した戦力4の歩兵連隊を、トラック輸送(camion)を使ってAltkirchに急派する。仏軍は第3ターン以降、毎ターン歩兵1ユニットにトラック輸送を適用して移動力を6から8に増やせるのである。

「あれ、機甲師団を見捨てちゃうの?」

「ふん、あいつらを助けなくても仏軍は勝てるんだよ。第5ターンに突出させたのは、ドイツ軍兵力を誘引するための罠だったのさ。3個師団を封じ込めるためにかなり戦力をかき集めないといけなかっただろ? ふふん」

「いや、それ絶対うそ」

 仏軍は勝利得点13で戦術的勝利(victoire tactique)を得られる。要塞地帯で12、それにAltkirchで13となるため、無理に友軍を救出する必要はないわけである。でもアルザス解放を目指した仏軍の大攻勢のはずなのに、そんなふうに守りに入っていいのか。


 独軍は前ターンに続きAltkirchへ熾烈な攻撃を続ける。だが混戦状態のため、敵三個師団封じ込めに配置していた多くのユニットを有効に活用できず、第106装甲旅団以外は強力な攻撃ができないのが痛い。


 ちなみに焦点となっているAltkirchだが、ドイツ語だと「古い教会」の意味になる。アルザスは現代ではフランス領内だが歴史的に見てドイツとのつながりが強く、ドイツ語の名残を地名にも見ることができる。


●第8ターン(11月28ー29日)

 マップ左方の要塞地帯で唯一残っていたBelfortの街を仏軍が攻撃。ここは要塞かつ都市なので4コラムシフト、さらに三方が攻撃力半減となる河川(Rivière)が流れているため、要害堅固の地なのだ。だが仏軍は兵力を集中、衆寡敵せずBelforは陥落した。

 そしてドイツ軍の最後の攻撃。Altkirchを落とせるかどうかが勝負の分かれ目となる。かき集められるだけの戦力を投入、支援砲撃も加えて攻撃。結果は強制退却、と思いきや、前ターンに仏軍が急派した歩兵連隊の兵質はB。兵質AとBのユニットは強制退却の結果をステップロスに置き換えられるのである。危ういところで仏軍は踏みとどまり、この戦いは仏軍の戦術的勝利に終わった。


 いやー、面白かった。仏軍の突破に危ういところで駆け付けるドイツ軍の援軍、そして精鋭の装甲旅団による反撃と、結構面白い展開。それにコマンド部隊の要塞の強襲とか、いろいろと細かいギミックで味付けがしてあるのが楽しい。

 でもゲームバランス的には仏軍が有利だと思う。仏軍としては地道に要塞地帯を掃討してあと一つ勝利得点源をとれば戦術的勝利となるので、史実のようにアルザス解放と敵軍包囲を目指した機甲部隊の突進、なんてのをやらなくても済むのだ。まあ、そういう手堅いプレイが好きな人もいるとは思うけど。戦術的勝利の基準を1点か2点引き上げて、仏軍は無理にでもライン川方面に向けて攻勢をし続けるようにした方が面白いんじゃないかな。それと、今回のプレイでは仏軍が陣地帯への攻撃に慎重だったので掃蕩に時間がかかったけど、このゲームでは攻撃側は退却で損害を回避できるので、低比率でもどんどん攻撃していけばもっと早く陣地帯は完全占領できたはず。そうすればもうちょっと仏軍は平野部への攻撃に兵力を回せたと思う。まあ、作戦級には不慣れなプレイヤーの意見ですが。

 あと要塞は2コラムシフトと強力ではあるものの、強制退却はステップロスに置き換えられるというようにしたほうが抵抗力が上がって、仏軍は要塞地帯と東方への戦力の振り分けがもっと悩ましいものになって面白くなるんじゃないかな。

 まあいずれにせよあんまりゲーム化されていない戦いなので、興味持たれたらプレイしてみてはいかがでしょう。









2024年10月12日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part4

 ●第5ターン(11月22ー23日)

 陣地帯では前ターン撃退された仏歩兵部隊が再び陣地帯上部を攻撃。だが独軍歩兵がまたも奮戦、兵質Cだが1コラムシフトを得る一方、兵質Aのユニットを含む仏軍はコラムシフトなし、さらに攻撃のサイの目が振るわず、今回も攻撃は撃退された。だが陣地帯下部では使えるだけの支援砲撃をたたき込み、同一師団効果や諸兵科連合効果なども駆使して敵を駆逐していく。守備隊ユニットは退却できないため、強制退却の結果がでる壊滅してしまうのが独軍には痛い。

 一方マップ右上方のMulhouse前面では、増援として現れた独軍2個歩兵師団に機甲師団のスピアヘッドが抑えられている状態。だが機甲部隊の敵ZOC浸透能力を活かして歩兵1個師団を包囲する。さらにマップ中央から機甲部隊に追いついた歩兵師団も投入、機甲と歩兵計3個師団で独軍歩兵師団を攻撃。独軍も支援砲撃で懸命に防御するが、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果が効いて戦力比は7:1に。独軍はたまらず損害を被って3へクス退却、仏3個師団が大きく戦闘後前進する。その結果、陣地地帯からマップ中央にかけてのドイツ軍主力が大きく包囲される危険性が出てきた。

「ぐははは、仏軍が本気になったら歩兵師団ぐらいで抑えられるはずがなかろうが!」と調子に乗る仏軍プレイヤーである。


 ちなみに史実でも仏機甲部隊がMulhouse近くまで突出している。ドイツ軍は必死の防御をするのだが、ヒストリカルノートによると「アルンヘムの英第一空挺師団と同じ目にあわせてやる」なんて書いたビラまで撒いたらしい。モンティも自分の失敗がこんな形で利用されるなんて思っていなかったんじゃないかなあ。あと、M3A3がパンツァーシュレックによって炎上した、みたいなドイツ軍の抵抗の激しさを感じさせる描写もちょくちょくあってヒストリカルノート読んでいると気分が上がります。M3A3ってM3ブラッドリーだよね、あんまり知らないけど。


 強力な攻撃を繰り広げる仏軍に対し、ドイツ軍は兵力をかき集めて敵主力3個師団を包囲する。戦闘力1と弱小ではあるものの敵機甲部隊のZOC浸透能力を抑えられる偵察大隊2個を巧妙に配置、仏機甲師団の動きを封じ込めた。そして増援として登場した第106装甲旅団が第30SS武装擲弾兵師団の1個連隊の支援の下、弱小兵力しか配置していなかった敵主力側面を攻撃、戦闘後前進で包囲網をさらに強化した。


 この第106装甲旅団、2ユニットしかなく戦闘力も2と一見貧弱だが、兵質はAであるうえ仏機甲師団同様に同一師団効果で2シフト有利に、さらに歩兵と共同で攻撃すれば諸兵科連合効果も得られるため、3シフトや4シフトとなって結構強力な攻撃ができる。そのうえ、同装甲旅団の戦車大隊は対装甲効果も持つため、敵機甲ユニットとの戦闘ではさらに1シフト有利になるという優れもの。ちなみにユニットのイラストはおそらくパンターである。あ、でも戦車詳しくないんで間違っていたらごめんなさい。


●第6ターン(11月24ー25日)

 このゲームでは自軍ターンの最初に補給を確認する。包囲された3個師団は孤立状態(Isolé)となり攻撃力が半減した。

「ふん! 包囲されることなど想定内。雑多な部隊の寄せ集めの独軍包囲網など食い破ってやる」

 先述のように独軍は偵察大隊を配置しており、通常であれば偵察大隊も歩兵と一緒だと諸兵科連合効果を得られるのだが、敵に機甲ユニットがいるとその効果は得られない。まあ、偵察大隊ってそんなに強力じゃない装甲車両だろうから、戦車相手だと歯が立たないってことですかね。逆に仏軍第1機甲師団は諸兵科連合効果と同一師団効果で計3コラムシフト、さらに支援砲撃で戦闘比を5コラム上げて敵を蹴散らした。

 そして他の2個師団も敵の包囲網の一角を集中攻撃。戦闘力半減状態とはいえ総計17戦闘力となり、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果も加えて6:1にまでもっていく。だが兵質チェックで痛恨の1が出て、マイナス2コラムシフト。ここの2個師団は戦闘力は高いものの、すべて兵質Cなので兵質チェックでは6分の1の確率でこのようなことが起こるのである。結果、敵を1へクス後退させるにとどまり包囲網を破るには至らなかった。

 かたや、マップ左方の要塞地帯では順調に掃蕩が進む。この調子だと最終ターンまでにはこの地帯のすべての得点源へクスは占領できるだろう。


つづく

2024年10月5日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part3

 ●第3ターン(11月18ー19日) つづき

 このターン、ドイツ軍には歩兵2個師団がマップ右上から増援として登場したものの、戦線にたどり着くことができない。マップ下方のスイス国境近くではこれまで敵の攻撃のサイの目が振るわず何とか機甲部隊の突破を防いでいるものの、もう限界である。ドイツ軍はマップ上方にむかって大きく後退。河川沿いに防御ラインを敷いた。


●第4ターン(11月20ー21日)

 フランス軍はマップ左方の陣地帯への着実な攻撃を続ける。しかもマップ左上に初期配置されていた仏軍歩兵4ユニットが、このターンに移動制限解除。陣地帯上部に襲いかかる。だがドイツ軍には陣地と荒地の地形効果、さらに歩兵の攻撃に対しては1コラムシフトが得られる機関銃大隊がいたため、1.5:1の低比率となり攻撃は撃退された。

「ふん、フランス軍の見せ場は陣地帯じゃなくて平野部での突破なんだよ」 

と、仏機甲2個師団がマップ右上の重要都市Mulhouseにむかって突進。平地に出ればこっちのもんである。そして前ターンに増援として現れた独歩兵師団を集中攻撃。退却する敵を追撃する。陣地帯からマップ中央にかけてドイツ軍を大きく包囲しようとする勢いである。


  危うい状況となったドイツ軍には増援が他戦線から急遽送り込まれてくる。このゲームではマップ右上にある主要都市Mulhouse4へクス以内に仏軍が近づくとそのターンに第30SS武装擲弾兵師団などが、またマップ右側約3分の1のあたりまで仏軍が進出すると次ターンには第106装甲旅団などが登場する。今ターン、仏機甲部隊が大きく前進したため、独軍は増援を得られることになった。


 史実でもフランス軍の急進に対し、独軍は増援をかき集めて何とか防御線を敷いたらしい。バイエルンの駐屯地からは駆逐戦車大隊が、オランダからは突撃砲大隊が急遽送られてきた。またMulhouse近くのCernayという街には武装SSの訓練施設があり主にフランス語圏出身の下士官が訓練を受けていたのだが、ヒストリカルノートによると仏軍がMulhouse近くにまで進出するとここの訓練生も防御に投入されたそうだ。それだけドイツ軍も必死だったってことですね。

 また、このターン増援として現れた第30SS武装擲弾兵師団はベラルーシなどの「義勇兵」から編成されていたのだが、反乱を起こしドイツ人士官を処刑、フランス軍に加わった部隊もあったそうだ。そりゃわざわざソ連圏でドイツ軍に加わる兵はソ連と戦いたいのであって、西側連合軍と敵対なんかしたくなかったでしょうに。


 増援を得たドイツ軍だが、突出してきた機甲部隊にどう対処するか。前ターンに登場した歩兵2個師団と併せて、単独でいる仏コンバット・コマンドに反撃して敵の衝力をそぐべきか。だがいまだほとんど歩兵しかいないドイツ軍は、ZOC浸透能力を持つ敵機甲ユニットに対して有効な防御線を張るには心もとない。それに陣地帯が早々に包囲されると敵の兵力運用の自由度が増してしまうので、陣地帯との連絡回廊部分の防衛に兵力を割くべきだろう。ずっとやられっぱなしでストレスがたまっていたドイツ軍プレイヤーだったが、状況を冷静に分析して反撃は時期尚早と自重、仏機甲師団の前面の防御を固めた。


  史実では第4ターンにあたる11月21日から独軍が反撃を開始している。ヒストリカルノートによると、この時の状況を仏第一軍指揮官のde LattreはU,I,Oと回顧録に書いているそうだ。独軍突出部を取り囲むように仏軍はU字型の戦線を形成しているが、ドイツ軍は仏軍の中で一番脆弱な南方で反撃してIの形にもっていこうとし、フランス軍はこれに対してU字を閉じてO字型の包囲網を形成しようとしていたそうだ。なんか、戦況図を動画で作ってU,I,Oの文字を載せたくなる。


つづく

2024年9月30日月曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part2

 ●第1ターン(11月14ー15日)続き

 ドイツ軍はマップ下方の敵の突破を見て、部隊を大きく後退。史実ではこの陣地帯の守備のために、聴覚障碍者で大隊を編成して投入することまでしたらしい。このゲームでも、ドイツ語でOhren(耳)と書かれたカンプグルッペユニットが登場する。

 陣地帯の防衛もさることながら、仏機甲部隊の平野部への突破を防ぐのに必死のドイツ軍。平野部に敵が進出すると戦線が広がって防御に不利になるだけでなく、仏軍機甲ユニットは平地では歩兵のZOCをすり抜けられる。ほとんど歩兵しかいないドイツ軍は森林地帯で極力敵を食い止めておかないと、ただでさえ兵力劣勢なのにさらに苦しい戦いとなる。


●第2ターン(11月16ー17日)

 フランス軍には第1,第5機甲師団の計3ユニットが増援として登場する。フランス軍の増援はマップ西端か南端から登場させられるのだが、もちろんマップ南端のスイス寄り、前ターンで突破した方面に投入してさらに激しくドイツ軍を攻撃する。仏軍は最大限の支援砲撃を投入、ここを抜かれるわけにいかないドイツ軍はなけなしの支援砲撃で応じる。河川越えの攻撃のため攻撃力は半減するものの、同一師団効果と諸兵科連合効果のコンボで戦闘比を上げた仏軍だったが、兵質チェックで失敗。敵を1へクス後退させるだけに終わった。


 このゲームでは各ユニットが兵質(Qualité)をもち、戦闘の際には攻防両軍が兵質チェックを行う。ずっと防戦が続く独軍も、なんとかここをこらえてくれ、とサイコロを振ることができるのだ。サイの目によって有利なコラムシフトを得たり逆に不利になったりするのだが、仏軍第一機甲師団のユニットの兵質はB。3分の1の確率で1コラム有利に、6分の1で不利になるのだが、その6分の1の目が出たわけである。


 フランス軍は機甲部隊がマップ右方面への突破を図る一方で、歩兵を中心に陣地帯を攻撃していく。そして独軍の守備が手薄な陣地を狙ってコマンド部隊2ユニットが襲撃する。

 マップ上に9つある陣地へクスには守備隊(garnison)が1ユニットずつ配置されているのだが、守備隊しかいない陣地へクスに対し仏軍コマンド(commando)は襲撃(raid)を行える。守備隊は戦力未確認状態で配置され約4割が戦闘力ゼロ。コマンドが襲撃して守備隊が戦闘力ゼロの場合は成功、戦闘力が1以上の場合、1D6で1-4で成功だ。成功すると陣地は占領、失敗するとコマンドユニットは除去される。

「いやー、少数精鋭のコマンド部隊が敵陣地を電光石火の襲撃で占領って、ロマンがあるよね」

「使えるものは使えるうちに使っておけってだけでしょ。ドイツ軍が前線を縮小したら守備隊が他のユニットとスタックするだろうから」

 結局、コマンド部隊2ユニットの襲撃は1カ所成功、もう一カ所は失敗に終わった。


 ドイツ軍は陣地帯の左方と下方からできる限り兵力を撤退させる。だがこのゲームでは敵ZOCからの離脱に2移動力を消費するため、6移動力しかない歩兵は思うように後方に回せない。敵機甲ユニットのZOC浸透能力を防ぐ機械化・自動車化ユニットはドイツ軍には偵察大隊1ユニットしかないのだが、その偵察大隊をスイス国境近くの前線左端に派遣して敵機甲ユニットの動きを止めようとする。だがフランス軍が平野部に突破するのは時間の問題だろう。


●第3ターン(11月18ー19日)

 フランス軍にはさらに機甲ユニットが増援として登場するが、交通渋滞で前線までたどり着けない。このゲームでは第3ターン以降、ドイツ軍は交差点などに交通渋滞(Embouteillage)マーカーを一つ置くことができ、仏軍機械化・自動車化ユニットに1移動力追加で消費させることができるのだ。

 このターンもスイス軍はスイス国境近くの右翼に機甲ユニットを集中。だが前ターンに続き今回も兵質チェックに失敗、大きく突破とはならなかった。

「おいおい、フランス軍の第1機甲師団ってどうなってんだ?!」

とぼやく仏軍プレイヤー。このゲーム、諸兵科連合効果など多くのコラムシフト要素があるだけでなく、兵質チェックでさらに戦闘比が動く可能性があるので、戦闘結果が結構読めなかったりする。


 陣地帯近くではフランス軍が包囲していた敵歩兵を掃討、だが陣地への攻撃は独軍が奮戦し損害を受けつつも踏みとどまる。マップ左上に配置されている仏軍歩兵4ユニットは第3ターンまで移動できず、高比率で陣地帯を攻撃しようとすると多くのヘクスを攻撃できないのだが、低比率になることを恐れずにもっと積極的に攻撃すべきだったかもしれない。


つづく

2024年9月27日金曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part1

  この9月はマーケット・ガーデンの80周年で、ということは今年バルジも80周年? おお、西部戦線が呼んでいるぜ、というわけで、先日ブログでも書いたVV175号のAlsace1944をやってみることにした。やっぱりウォーゲームの王道はWWⅡの作戦級だもんね。

 ……でも、いつも中世の会戦級ばっかりやっているメンツなのでちょっと不安。まあいわゆるIGOUGOシステムを基本とした簡単なルールなのでなんとかなるでしょう。それにね、ヒストリカルノートを読んでみるとドイツ軍はヤークトパンターをかき集めて必死に反撃する様子が描かれていて、654 sPz Jgなんてユニットを見つけると、あー、このイラストがヤークトパンターなんだろうなーと気分が上がるわけです。

 このゲームについては以前のブログである程度説明したとおり、バルジの約一か月前、フランス南東でのフランス第一軍の攻勢をシミュレートしている。仏軍は南仏からの進軍で消耗しているうえに天候が悪化しており、ドイツ軍は敵の攻撃はないものと思っていた。仏第一軍指揮官も前線視察に来たチャーチルに対し、「こんな天候下では攻撃には出ません!」と断言していたが、その翌日に奇襲をかけた、という戦いである。チャーチル、嘘つかれて怒んなかったのかな。

 WWⅡの陸戦ゲームは数多く出ているけど、フランス軍の攻勢を扱ったのってあんまりないんじゃないかと思う。VV120号に、同じゲームシステムで1945年1月~2月のColmar包囲戦を扱ったものがあるけど。あ、ちなみに「ファレーズ、再び?」っていうのは以前のブログにも書いたけど、ヒストリカルノートにそういう意味の小見出し(Un Falaise-bis?)があったのでパク…参考にさせていただきました。でもファレーズ戦は規模も大きいし包囲されたのもドイツ軍の精鋭を多く含んでいたし、それと比べるのは大げさなんじゃないですかね。まあこの戦いでも独軍1万ほどが包囲されたそうだけど。

 この戦いは過去にVaeVictisで一度ゲーム化されているが、もっと短時間でプレイできるものを、ということで今回のゲームとなったってデザイナーズノートに書いてあった。実際、ルールも簡単で全8ターンと短く、マップも小さくユニット数も多くないので結構手軽にプレイすることができる。展開も仏軍機甲部隊の突破からドイツ軍の反撃と変化に富んでいるので、仏軍ファンのウォーゲーム初心者(いるのか?)を引きずり込むのに適している。

 マップの右3分の1ぐらいがアルザスで、右端にライン川が見える。つまりドイツはほんの目の前である。右下はスイスだ。

 マップ左方に山地や荒地、森林と防御に有利な地形沿いに前線が伸びているが、マップ右方は平地が広がっている。また前線後方にはBelfortという街を中核にした陣地帯があり、そこに陣地や都市など得点源が集中している。だがフランス軍はそれらすべてを占領しても勝利にはならず、最低でもあとどこか一つ得点源を占領する必要がある。なお仏軍はマップ右上から突破しても得点が得られるが、そういう事態になったらもうドイツ軍はぼろ負けなんじゃないかな。


●第1ターン(11月14ー15日)

 「チャーチルに言ったことなんぞ知るか! 攻勢開始だ、アルザスを取り戻せ!」と仏軍プレイヤーが気炎を上げゲームスタート。仏軍が攻勢を開始する。

 最南端、スイス国境に隣接している地点で山岳歩兵連隊がZOC浸透能力を発揮して敵歩兵の後方に進出し包囲したうえで、増援として現れる第5機甲師団の2ユニットをここに投入。第1ターンの奇襲効果である+2DRMも相まって、仏軍機甲部隊が敵前線を突破した。


 この時期のフランス軍機甲師団はアメリカ軍の編成に準じていたようで、このゲームで登場する2個機甲師団はいずれも3個コンバット・コマンドで構成されている。コンバット・コマンドって言葉、そういえばバルジゲームで見たなあ。このゲームでは歩兵と装甲ユニットが同じ戦闘に参加していると諸兵科連合効果で1シフト有利になるのだが、コンバット・コマンドは単独でも諸兵科連合効果を得られる。そもそもコンバット・コマンドはどのユニットも戦闘力が5とゲーム中最強のうえ、同一師団効果で2シフト有利になったりするので、仏軍機甲師団はかなり強力である。


 機甲部隊が集中攻撃をかけた左隣でも仏軍が司令部からの支援砲撃、それに同一師団効果などを活かして攻撃、マップ下方のドイツ軍前線はほぼ崩壊した。前線中央や上方は仏軍の兵力が潤沢ではないもの、攻撃をしかけて敵にプレシャーをかけた。 


つづく


2024年7月26日金曜日

チャーチルに「こんな悪天候下では攻撃に出ません!」といった翌日に攻勢開始 Alsace1944 (VV175)

  VaeVictis最新号のゲームAlsace1944は、みんな大好きWWⅡの作戦級。1944年の西部戦線って言ったらノルマンディー、マーケットガーデン、バルジぐらいしか思い浮かばないんだけど、このゲームはバルジの約1カ月前の11月中旬から始まる仏軍の攻勢をシミュレートしている。舞台は仏東部のスイスに隣接する地域で、もうすぐライン川に到達しそうなところである。

 南仏のプロバンス地方から進撃してきた仏軍はこのヴォージュ山脈の地域まで来た時点でかなり消耗しており、補給状況も悪化していた。さらにはもう雪が降り始め地面は泥濘となり、弱体化したドイツ軍も仏軍の攻勢はないものと判断して一息ついていた。実際、この方面のフランス第一軍を指揮するde Lattreは前線視察に来たチャーチルに対し、「こんな天候下では攻撃には出ません!」と断言したそうだ。

 だがde Lattreは攻勢準備を巧妙に隠蔽しており、チャーチルにそう言った翌日に攻勢に出たらしい。この地域のドイツ軍の防御ラインは薄く、1個国民擲弾兵師団が30kmをカバーしているような状態。Vogenstellungという陣地線はあってパンターの砲塔とかで補強されていたけれど、不意を突かれたドイツ軍は危うく包囲されそうになる。ヒストリカルノートでも「ファレーズ再び?」なんて小見出しがあったりする。だがドイツ軍は援軍をかき集めて果敢に反撃、アルザス地域の解放を目指す仏軍の攻勢はなんとか押しとどめられた、という戦いだったらしい。

 久しぶりにWWⅡ関連のヒストリカルノート読んだけど、ヤークトパンターとか出てきて結構わくわく。1944年も11月ということで、ドイツ軍が雑多な部隊をかき集めて必死に反撃するところがなんとも…。ゲームのマップにも含まれているCornayという街には武装SSの訓練施設というか士官学校のようなものがあったそうで、そこから士官候補生も前線に投入された、なんて書かれているし。突出してきた仏第一戦車師団に対して、アルンヘムの英第一空挺師団と同じ運命をもたらしてやる、なんてビラをまいたっていうエピソードもあった。武装SS第30師団なんてのも登場するんだけど、ベラルーシなどの義勇兵から編成されていたそうで、反乱を起こして一部の兵は自由フランス軍に加わっていたらしい。あと、東部戦線で捕獲されたBA-6も投入された、なんてトリビアも嬉しい。

 付録ゲームのAlsace1944なんだけど、いわゆるIGOUGOシステムで、戦闘は戦力比というオーソドックスなもの。ユニットは基本的に連隊規模、1ターン二日、1へクス約4kmという規模。簡単なルールなので初心者でもとっつきやすい。過去のVaeVictisで、同じルールでヴェリキエ・ルキの戦いその他もゲーム化されている。このアルザス戦は以前にVaeVictisで別ルールでゲーム化されていたんだけど、もっと短い時間でプレイできるものを、ということでこのシステムを採用したってデザイナーズノートに書かれていた。

 ちょっと特徴的なのが、各ユニットには戦闘力のほかに兵質(Qualité)を持つ点。戦闘の際に両プレイヤーともサイコロを振り、兵質に応じて戦力比が有利になったり不利になったりするのだ。最高の兵質Aだと2コラムシフトを得られる可能性があり、Cだと2コラム不利になったりする。1944年という時期からしてしょうがないんだけど、ドイツ軍の多くは兵質Cである。ただ第106装甲旅団のユニットはAなのが嬉しい。あと、フランス軍には外人部隊のユニットも登場するのがちょっと個人的にはポイントだったかな。


 早速プレイを、と思いつつ、作戦級ってしばらくやってないや…と二の足を踏んでしまいカウンターも未カットのまま。だれかプレイしてAARなり感想を書いてくれないかなあ。


2024年7月7日日曜日

戊辰戦争の2年前の欧州で Münchengrätz 1866(VV174) AAR ⑤

 ●第6ターン (13:00)

 今ターンに全軍盤外に撤退したいオーストリア軍、かたやその前に敵を補足したいプロイセン軍。活性化チット(marqueur d'activation)を引く手に力が入る。最初に引かれたのは…プロイセン軍のHorn。だがこの部隊は、前ターンのMusky山占領を優先したため、丘陵地では移動力が足らずオーストリア軍を捕まえることができない。

 続いて引かれたのはFransecky。敵を逃がすわけにはいかない。オーストリア軍は斜面や村で防御ラインを引いているが、戦力やサイの目修正を考え、一番防御が弱い歩兵と砲兵のスタックを攻撃。だが斜面上からの防御射撃に砲兵の至近距離の射撃が加わって、Franseckyの2ユニットとも撃退されてしまった。

 プロイセン軍の攻撃を退けている間にAbeleの部隊が盤外に脱出していく。このままLeningenも、と思いきや、運命の女神はプロイセン軍に微笑んだ。Leningenよりも先にSchölerのチットが引かれる。これまで渡渉地点を見つけられなかったプロイセン軍の騎兵だが、今回は成功! マップ南端の向こう岸にZoCを及ぼす。そしてSchölerの主力は消火された橋、それに架橋された地点を通って渡河、南下してLeningenの部隊を拘束する。渡渉地点を見つけた騎兵のZoCと相まって、Leningenの今ターンの盤外への撤退は不可能になってしまった。

 Leningenは至近距離からの砲撃でSchölerの歩兵を混乱させるものの、敵ZoCに拘束されていること、丘陵地での移動コスト、それに移動力の低い砲兵がいることから、包囲を避けマップ南端に後退するのが精いっぱいである。


  Les Grandes Batailles du temps de Napoléon III(ナポレオン三世時代の主要会戦)シリーズでは、敵ZoCの離脱には全移動力の半分を、混乱状態だと全移動力を消費する。高度差があるヘクスサイドを通過する場合は移動コストが+1(ただし街道沿いだとゼロ、道沿いだと+0.5)で、砲兵は街道か道が通っていなければ高度差のある移動はできない。そもそも砲兵は移動力が低いため、敵に隣接された場合丘陵地での後退はかなり困難になるのである。

 ちなみにこのシリーズではユニットの配置には向きがあり、ユニットはヘクスのいずれかの辺に向けて置く。ユニット周辺の隣接6へクスのうち3へクスにみZoCが発生し、後方3へクスにはZoCは及ばない。


●第7ターン (14:00)

 最終ターンである。プロイセン軍はあえて攻撃することはせず、敵を拘束するにとどめる。オーストリア軍はゲーム終了時にマップ上に残っているオーストリア軍2ユニットごとに1VPを失うのだ。それに、プロイセン軍はゲーム終了時に混乱状態の自軍ユニットがいるとVPが減る。防御射撃で損害を受け回復も失敗、ということもあり得るので、あえて攻撃に出るリスクを冒さないのである。

 一方のオーストリア軍は最後の反撃を試みる。砲撃でSchölerの歩兵を混乱、敵に一矢を報いた。そして歩兵1ユニットがからくも盤外へ脱出していった。

 こうしてゲームは終了。勝利得点は1点差でプロイセン軍の限定的勝利(victoire mineure)に終わった。


 正直、プレイバランス的にはオーストリア軍に厳しい。兵力劣勢なうえ、第5ターンまでMusky山やミュンヘングレーツの占領を極力阻止しないといけないし、オーストリア軍は第6ターンに撤退したユニットのみがVPに貢献するし。そのうえ損害は避けないといけない。史実では3点差でプロイセン軍の勝利だったそうで、そりゃ厳しいのも当たり前か。

 ただ今回のプレイではHornは1回しか活性化に失敗しなかったし、Schölerは毎回成功していたけど、確率的にはゲーム中Hornは2回、Schölerは一回は失敗するわけで、特にSchölerがIser川を渡河して全力追撃って場面で活性化できないとプロイセン軍には結構痛いはず。あとは地形の利用と砲兵の運用・撤退をうまくやればオーストリア軍にも勝ち目はあるんじゃないかと思います。チットプルなんで、活性化チットの引き順も結構影響するけど。

 VV174号にはこのMünchengrätzの翌日に起こったGitschinの戦いもついている。ちなみにGitschinもオーストリア軍の撤退戦だ。両ゲームの連結シナリオも収録されているし、将来的にはケーニヒグレーツの戦いも同じLes Grandes Batailles du temps de Napoléon III(ナポレオン三世時代の主要会戦) シリーズで出るらしい。1860年代っていったらアメリカの南北戦争がウォーゲーム的にはメジャーだけど、普墺戦争を扱ったゲームは希少価値があるんじゃないかな。戊辰戦争と同時代ということでプレイしてみてはどうでしょう。

2024年7月3日水曜日

戊辰戦争の2年前の欧州で Münchengrätz 1866(VV174) AAR ④

 ●第4ターン (11:00)

 今ターン、最初の活性化となったのはオーストリア軍左翼のLeningen。前ターンに撃退したSchölerが再び動く前に、Iser川の橋に火を放つ。橋にプロイセン軍がどれくらい近づいているかで成功の確率が変わってくるのだが、これまでSchölerの攻撃を繰り返し撃退してきたLeningen、ここでもサイの目がさえ、橋は目論見通り燃え始め通行不可になった。

 Schölerは急いで橋の消火にあたる。だが消火のためには橋に隣接したユニットが1ターン何もしないことが条件となっており、火が消えるのは次ターンに持ち越されてしまった。橋が再び通行可能になるのを待っている間、前ターンからマップ下方に向けて派遣していた騎兵がIser川にたどり着き、渡渉可能地点を探す。1ターンに一回、Iser川に隣接するプロイセン軍ユニットは1移動力を消費して渡渉地点(Gué sur l'Iser)を探すことができ、1D6で4以上の目が出れば発見に成功する。だが今回は失敗。Schöler部隊はIser川の対岸で遊兵となってしまった。

 Schölerが動けないのであればマップ右方でプレッシャーをかけろ、というプロイセン軍プレイヤーの叱咤にもかかわらず、Hornが活性化失敗。その隙にオーストリア軍右翼のAbele隊が後退していく。プロイセン軍Franseckyは次ターンのミュンヘングレーツ占領を目指して左方に転進、混乱状態だったユニットも回復した。

 オーストリア軍は各部隊の活性化の最初に行える砲撃(tir de barrage)以外、攻撃らしい攻撃をしていない。これは兵力的に劣勢だということもあるが、損害を出すのを極力避けるためでもある。防御射撃や攻撃側の強襲の結果は、効果なし以外では士気チェック、もしくは混乱状態になって退却だ(なお5以上の戦闘力だと敵にステップロスを強いる可能性が出てくる)。士気チェックに失敗するとやはり混乱状態になって退却となる。混乱状態のユニットがさらに混乱の結果を受けるとステップロスなのだが、ステップロスをすると敵のVPになるだけでなく、ステップロスの累計が部隊ごとに設定されている士気喪失閾値(seuil de démoralisation)に達した部隊は士気喪失(démoralisée)となる。士気喪失した部隊は、移動は自軍マップ端方向にしかできず、士気チェックでも不利なDRMがつくうえ、敵がVPを得るのだ。

 ということで部隊の士気喪失は避けないといけないのだが、このシナリオの場合Leningen部隊の士気喪失閾値は2,Abeleにいたってはたったの1である。ステップロスをしないよう、混乱状態のユニットは後方に下げ回復に努めるのがオーストリア軍には精いっぱいなのだ。

 また、プロイセン軍歩兵は防御射撃の際、ドライゼ銃効果で1シフト有利になる。これもまたオーストリア軍に攻撃を躊躇させる要素だったりする。


●第5ターン (12:00)

 このターンまでにプロイセン軍はMusky山を占領すると2VP,ミュンヘングレーツは1へクスごとに1VPを得られる。前ターン活性化に失敗したHornがMusky山を、Franseckyがミュンヘングレーツの北へクスを占領した。ミュンヘングレーツの南へクスはLeningenが歩兵と猟兵ともに守っているため手が出せない。

 Iser川の対岸ではSchölerが橋の消火に当たる一方で、他の地点で架橋(Ponton)を始める。対岸に敵ユニットがいない場所で1ターン何もしなければ架橋ができるのだ。だが今ターンも騎兵は渡渉地点を見つけられず。Schölerの部隊はなかなかIser川を渡ることができない。

 敵のプレッシャーが弱まっている隙に、オーストリア軍はさらに後退。次ターンに盤外への脱出を目指す。オーストリア軍は次ターン、第6ターンにマップ外に撤退した3ユニットごとに1VPが得られるのだ。

 ターン終了時には橋が消化し、架橋も完成した。次ターン、オーストリア軍が撤退する前にSchölerの部隊はIser川を渡河して敵を補足できるか。

つづく


2024年6月28日金曜日

(幕間)19世紀の仏軍事理論家ドゥ・ピックの「戦闘の研究」

  VaeVictisの今号の付録「Münchengrätz-Gitschin 1866」のルール、というかLes Grandes Batailles du temps de Napoléon III(ナポレオン三世時代の主要会戦)シリーズのルールは、このシリーズが扱っている時代の仏軍将校で軍事理論家だったアルダン・ドゥ・ピックArdant du Picqの考えから着想を得た、なんてなことがルールの冒頭に書いてあった。火力のみでは勝利は確実なものとはならず、強力な突撃によって敵の士気を喪失させる必要があるのだ、という考えだそうだ。突撃は白兵戦に至る前に、失敗に終わるか敵が逃げ出すかどちらかだ、とのこと。

 ドゥ・ピックは1821年生まれで1870年に普仏戦争で戦死しているという、まさに「Les Grandes Batailles du temps de Napoléon III」の同時代人。「Études sur le Combat(戦闘の研究)」という本を書いていて、フランスの国立図書館のサイトでスキャンデータが公開されているので読んでみた。ちなみにいくつか版が出ているようだけど、読んだのは一番最初に目についた1880年版。なお、「Études sur le Combat」は和訳も出ていて、小さなウォーゲーム屋さんで売っている。

https://petitslg.shop-pro.jp/?pid=161457780 (オリジナルの仏語からではなく、英訳からの重訳のようです。)


 ドゥ・ピックは人間心理を重視したようで、人間の心理こそが戦争のすべての出発点なのだ、という18世紀の軍人ド・サックス元帥の言葉を最初のほうで引用している。戦争のことを学ぶためには、人間の心を学ばなければならない、と。

 ちなみにドゥ・ピックの上記の部分の原文はLe cœur humain est donc, pour employer le mot du marechal de Saxe, point de depart en toutes choses de la guerre; pour connaitre de celles-ci, il le faut etudier.って書かれているんだけど、このド・サックスの言葉で検索してみたらフランス陸軍の指揮に関する文書が出てきて、冒頭で引用されていた。有名な言葉なのかな。

L’exercice du commandement dans l’armée de Terre


 

 それはさておき、このドゥ・ピックの「Études sur le Combat」は二部構成で、第一部は古代の戦闘、第二部は近代の戦闘について分析している。古代の戦闘では士気について結構書かれているんだけど、第二部の近代(ドゥ・ピックにとっては現代)でも、兵器は進化しても人間は変わらないと述べている。兵器だけでなく人間そのものについてもちゃんとわかっていないといけないってことなんでしょうな。l'homme ne change pas(人間は変わらない)の部分を斜体で強調しているし。軍隊における規律やsolidaritéの重要性を説いていたけど、この場合solidaritéって連帯というよりは団結って訳したほうがいいのかな。それと、勝つためには敵の不安cranteを恐怖terreurに変えないといけない、とか述べている。


 で、ドゥ・ピックの考えがLes Grandes Batailles du temps de Napoléon IIIシリーズのルールにどう反映されているかというと、うーん、正直自分にはあんまりわかんなかったな。戦闘ユニットが戦闘力のほかに士気値を持つっていうのは他の時代のゲームにも結構あるし。ファイアパワーで防御側が先に射撃、というのもまあ、そんなに珍しくないと思うし。戦闘結果が基本的に混乱+退却で、混乱から回復してまた攻撃できるっていうのが、物理的損害よりも心理面を重要視していることになる、のかなあ。もしかしたら、個々のルールではなくルール総体なのかもしれないけれど。この時代の軍隊や戦い方、それにそもそもウォーゲーム全般に関して知識がないのですみません…。でもまあ、ドゥ・ピックの考えは世紀をまたいで第一次世界大戦の仏軍にも影響を与えたようなので、ご興味ある方は読んでみてください。で、ルールのこういうところにドゥ・ピックの考えが反映されているんだよって教えてね。

2024年6月23日日曜日

戊辰戦争の2年前の欧州で Münchengrätz 1866(VV174) AAR ③

 ●第1ターン (8:00) つづき

 各ターンの最後、すべての部隊の活性化が終了した後に回復フェイズ(Phase de ralliement)がある。非混乱状態の敵ユニットのZoCにいない限り、混乱状態からの回復を試みることができ、1D6に士気値を足して6以上だと成功だ。例えば士気2の歩兵だと2分の1の確率で回復するのだが、指揮官とスタック・隣接していると有利なDRMが付く。今ターンのSchölerの攻撃で混乱状態だったLeningenの歩兵は、指揮官の叱咤激励で回復した。


●第2ターン (9:00)

 前ターンに続いて平野部ではプロイセン軍のFransecky部隊がマップ中央のミュンヘングレーツに向けて急進、Hornの部隊はMusky山を目指した。

 右翼から敵が迫ってくるのを見たオーストリア軍は、左翼方面のSchölerに対しては指揮官のLeningenと兵力の一部を足止めとしてとどめ、残りをミュンヘングレーツに向けて後退させる。そして前ターン活性化に失敗したAbeleだが今回は成功し、Musky山に向かって登ってくるHornの部隊に山上から砲撃を浴びせる。だが効果はなく、Hornに連絡線を断ち切られる前に山上の部隊は撤退を始める。そしてミュンヘングレーツの右方をカバーするために部隊を前進させた。

 マップ左方で早くIser川を渡河したいプロイセン軍Schölerは、こちら岸の村にとどまっているLeningenを歩兵2ユニットの計6戦闘力で攻撃する。守るLeningenは歩兵、猟兵1ユニットずつの総戦闘力4。だが猟兵は村に対する攻撃であれば攻防いずれの側でも+1DRMの有利な修正を得られる。Leiningenの陣頭指揮によるDRMも加わって、プロイセン軍歩兵は両ユニットとも激しい防御射撃に耐えられず退却してしまった。


 このシナリオでは猟兵(Jäger)は、戦闘力も士気・ステップ数も1しかない(歩兵は通常、戦闘力3で士気・ステップ数は2)。Jägerといっても立体機動して巨人を駆逐したりは到底できないのだけれども、スタック制限は通常2ユニット+猟兵のところ、村へクスでは1ユニット+猟兵と減るので、先述の村の戦闘でのDRMと相まって、村の防御を増強したいときには結構重宝するのである。


●第3ターン (10:00)

 このターン最初に活性化が回ってきたのは、ミュンヘングレーツに向けて街道を急進してきたプロイセン軍Franseckyの部隊だった。歩兵2ユニットに指揮官の戦闘ボーナス2という強力な戦力でもって攻撃をしかけたいFransecky。だが前ターンに敵オーストリア軍は村を利用して防御ラインを構築しただけでなく、後方から砲兵の支援も受けられるように布陣していた。このゲームでは戦闘の際、砲兵ユニットは同じ部隊に所属している友軍ユニットが攻撃されている場合、防御射撃に自身の戦闘力を加えることができる(ただし射程は半分になる)。

 ミュンヘングレーツ、それにその右方のAbeleがいる村へクスも、攻撃するなら敵後方からの激しい砲撃にさらされることになる。ミュンヘングレーツを目指していたFranseckyは敵の布陣を見てマップ右方に転進、敵防御ラインの右翼に位置する一番弱いスタックを攻撃した。ここも村ではあるものの、守るのは猟兵のほかは戦闘力1の弱小歩兵。このシナリオでは主戦力となる戦闘力3の歩兵はオーストリア軍には3ユニットしかなく、防御ラインに弱点が生じやすいのだ。Franseckyの兵たちは敵の砲兵の視界外に回り込んで村を強襲、1ユニットが防御射撃で撃退されたもののオーストリア軍を退却に追い込んだ。

 Franseckyの攻撃を受けたオーストリア軍はマップ下方へできる限り後退。LeningenもIser川の対岸から撤退した。このシナリオでのオーストリア軍は守り切ることではなく、時間を稼ぎつつ全軍を盤外に撤退させることにある。強力なプロイセン軍に対し無理は禁物だ。

 敵を逃がすか、とSchölerは前ターンに続いてLeningenを攻撃。だがまたも撃退されてしまい、Iser川渡河ならず。プロイセン軍は続く回復フェイズでも混乱状態からの回復に失敗するユニットが多く、次ターンの攻撃力が低下してしまった。


つづく


2024年6月19日水曜日

戊辰戦争の2年前の欧州で Münchengrätz 1866(VV174) AAR②

 ●第1ターン (8:00)

 このターンのみ、プロイセン軍が一番最初に活性化する部隊(formation)を選べる。プロイセン軍はマップ左方の山地に位置するSchölerの部隊を動かした。村を守備しているオーストリア軍歩兵を、歩兵2ユニットと猟兵(Jäger)で攻撃する。

攻撃するSchölerの部隊。ユニット左下が戦闘力。中央は士気・ステップ数

 

 このゲームシリーズでは、複数のユニットによる同時攻撃は連携攻撃(Combat coordonné)となって、部隊指揮官(chef de formation)が戦闘に参加している必要があり、1D6を振り指揮官の指揮値(Valeur de commandement)を足して6以上となると連携攻撃が可能となる。Schölerの指揮値は4なので6分の5の確率で成功だ。

 戦闘は防御射撃(Tir Défensif)の後、攻撃側による強襲(Attaque)を行うのだが、防御射撃によって退却しなかった攻撃ユニットのみが強襲できる。つまり攻撃側は防御射撃に耐えられたら攻撃ができるのだ。(なお、ルールの訳語は自分の感覚で適当にやっているので読まれる方は自分の好きな言葉に置き換えてください。)

 防御射撃だが、今回のように連携攻撃で複数のユニットから攻撃された防御側は、その戦闘力(Potentiel de combat)を敵攻撃ユニットに割り振る。例えば3戦闘力の防御ユニットが2ユニットに攻撃された場合、一方を1,もう一方を2で射撃できる。ここで特徴的なのは、ゼロ戦闘力でも防御射撃が可能なため、例えば攻撃2ユニットのうち一方をゼロ、もう一方を3で射撃のように、特定の敵ユニットに防御射撃を集中することもできるのだ。


 Schöler指揮下の連携攻撃を受けたオーストリア軍Leningen部隊の歩兵はその火力を脆弱なプロイセン軍猟兵に集中、混乱して退却させた。プロイセン軍は残る歩兵2ユニットで敵陣に突撃、村の防御効果で戦闘力が半減したものの、指揮官Schölerの戦闘ボーナス(Bonus de combat)2によるDRMにも助けられ、オーストリア軍歩兵は混乱して退却した。

 オーストリア軍のLeningenはミュンヘングレーツに駐留していた歩兵部隊をIser川の対岸に派遣し友軍の撤退を援護させる。そしてLeningenの右方をカバーするため、オーストリア軍のもう一方の部隊を指揮するAbeleが兵を前進させようとするも、活性化に失敗してしまう。


 総指揮官(commandant en chef)の指揮範囲にない部隊指揮官は、活性化の際にチェックをしなければならない。1D6を振り指揮値を足して6以上だと成功だ。Abeleの指揮値は3なので3分の2の確率で成功する。活性化に失敗した場合、指揮官は動けず配下のユニットは指揮官にむかってのみ半分の移動力で移動ができる。

 このシナリオではオーストリア軍に総指揮官は登場しないので毎回活性化チェックが必要、と思いきや、特別ルールでLeningenは常に活性化でき、AbeleはLeningenの指揮範囲にいれば活性化チェックは不要となる。ただ初期配置では指揮範囲外なのでチェックが必要で、失敗したのである。

 プロイセン軍にも総指揮官は登場せず、3人いる部隊指揮官は毎回活性化チェックを行うことになる。Franseckyは指揮値5なので常に成功、Schölerは4で6分の5の確率で成功なのだが、Hornは3なので3分の1の確率で失敗する。

指揮官ユニットの左下が指揮値。右端中央は戦闘ボーナス

 ぐずぐずしているオーストリア軍を後目に、平野部をプロイセン軍が前進する。このゲームでは街道(Route)を2ヘックス連続で通過すると移動力が+1される。Hornの部隊は街道沿いに急進、増援としてマップ右上から登場したFransecky率いる部隊がそれに続いた。

つづく

2024年6月15日土曜日

戊辰戦争の2年前の欧州で Münchengrätz 1866(VV174) AAR ①

  「1868 戊辰戦争」が発売されたと思ったらあっという間に完売して、ウォーゲーム界では戊辰戦争が盛り上がっているようだけれども、VaeVictisの最新号の付録ゲームは1866年の普墺戦争の会戦。おお、1866年と言えば戊辰戦争と同時代じゃないですか。いつもは中世の会戦ばっかりやっていてこの時代のゲームは全くと言ってやったことがないメンツだけれど、便乗するしかないだろこの戊辰戦争のビッグウェーブに! ということでプレイしてみた。

 今回VaeVictisでゲームになっているのはミュンヘングレーツMünchengrätzとギッチンGitschinの二つの戦い。ズデーテン山地を越えボヘミア(現在のチェコ)の中心部に向けて急進してくるプロイセン軍に対し、オーストリア軍は後退し戦力を集中しようともくろむ……ということらしいけど、普墺戦争ってモルトケ無双っていうイメージとケーニヒグレーツの戦いぐらいしか知らない。ミュンヘングレーツとギッチンはそのケーニヒグレーツの数日前に起こっていて、VVのヒストリカルノートも「ケーニヒグレーツの前の最後の戦い(Derniers combats avant Sadowa)」ってサブタイトルが付いている。ちなみにケーニヒグレーツの戦いってSadowaの戦いとも言うんですね。知らんかった。


 プレイしたのはミュンヘングレーツの戦いで、オーストリア軍は損害を抑えつつ撤退できるかというもの。ゲームはLes Grandes Batailles du temps de Napoléon III(ナポレオン三世時代の主要会戦) シリーズで、これまでもこのシリーズはVaeVictisの付録で何作か出ている。

 チットプルで部隊ごとに活性化し、砲撃・移動・戦闘を行うという比較的シンプルなルール。戦闘解決方法がやや特徴的だが、これは後述する予定。1ターン1時間、1へクス800m、高度レベルは1ごとに約50mの差。シリーズの作品によって規模が違うのかな、未確認なんだけど、ミュンヘングレーツとギッチンは1ユニットが連隊もしくは大隊で、1戦闘力が歩兵700-800名、騎兵だと500-600騎ほどを表している。

 初期配置は写真のとおり。マップの右上から左下にかけて流れるIser川が平野部と左上の山地を区切っている。このIser川はマップ右上の橋を除けば基本的にミュンヘングレーツ左方にある橋でのみ渡河が可能で、マップ中央の上と下にある橋は破壊されていて通行不可。また、ミュンヘングレーツ近くの橋はオーストリア軍が火を放つと通行不可になる。ただしプロイセン軍は橋の消火が可能なほか、渡渉点を探したり架橋することもできる。

 兵力的に劣勢なオーストリア軍は地形を利用して時間を稼ぎつつ秩序だった退却を行わなければならない。第6ターンにマップ南端の道路からマップ外に撤退するとユニット数に応じてVPが得られるが、逆にゲーム終了時にマップ上にユニットが残っているとVPが減少する。一方のプロイセン軍は敵の撤退を阻止しつつ、ミュンヘングレーツの村へクス、および制高点であるMusky山を5ターンまでに占領するとVPを得られる。


 早速プレイ開始、と言いたいところなんだけど本当に普墺戦争については全く知らないので、ヒストリカルノートとデザイナーズノートを読んでみた。VaeVictisのヒストリカルノートはたいていコラムがいくつかついているんだけれど、今回は5ページがっつりコラムなしの本文で勉強になりました。しかし、普墺戦争の開始時にプロイセンはザクセン王国に侵攻しているんだけど、オーストリア軍はザクセン軍をボヘミアに撤退させているんだよね。自国領土を一時的にせよ見捨てさせるほどオーストリアに統率力があったのかな。それと、普墺戦争ってドイツ語でDeutscher Krieg(ドイツの戦争)とも呼ばれるらしいんだけど、そういえばこの時期ドイツ統一をめぐってプロイセン中心の小ドイツ主義とオーストリア中心の代ドイツ主義の対立があったって世界史で習ったのを思い出しました。Deutscher Kriegっていうのはドイツのあり方を決める戦争だったってことなんですかね。


つづく

2024年5月1日水曜日

天からデンマーク国旗が降ってきた Lyndanise 1219(VV118) AAR③

 ●第3ターン

 デンマーク軍の反撃が始まったがエストニア軍としても攻撃の手を緩めるわけにはいかない。上方では先ほどの攻撃で損害を被っていた敵歩兵にとどめを刺し、下方では指揮官やダンネブロのいる強力なユニットは避けて中央の2戦闘力の歩兵を攻撃。たまらず後退するデンマーク軍を追撃する。あと一押しでデンマーク軍の士気は崩壊する。敵の防御態勢を突き崩すのだ。


 デンマーク軍ターンになって、やっとヴァルデマールの位置が判明。3つある指揮官ユニットのうち2つはダミーで、両軍ともどれがヴァルデマールかわからない状態で初期配置をしていたのだが、国王がいたのは下方左。デンマーク歩兵と一緒だった。このゲームのデンマーク軍は、デンマーク部隊のほか、Roskildeのデンマーク兵、Lundのドイツ兵、Schleswigのドイツ兵、Rügenのスラブ兵から構成されている。やっぱり国王はデンマーク本隊と一緒にいたということか。ちなみにRügenはバルト海南西の島だが、12世紀にデンマーク軍の侵攻を受けこのLyndaniseの戦いの少し前にデンマーク王に臣従している。


 なお、指揮官ユニットをエストニア軍が討ち取ったとしても、やはり第3ターンになるまでそれがダミーなのかヴァルデマールなのかわからないことになっている。史実ではデンマーク軍野営地を襲撃したエストニア軍はエストニア司教を殺害したが、デンマーク王だと思っていたそうで、このことを反映したルールとなっているらしい。指揮官ユニットが除去された場合、4戦闘力分の除去となるのでかなり大きいのだが、エストニア軍はせっかく敵指揮官を討ち取ったと思ったらダミーでポイントにはならない、ということもありうるため、両軍ともに第3ターンのデンマーク軍ターンまで気が抜けないようになっている。


 デンマーク軍は前ターンに続き上方で反撃を続ける。消耗していたエストニア歩兵が壊滅。この勢いでさらに敵を蹴散らせ、と3対1で2戦闘力の歩兵を攻撃するものの、逆に撃退されてしまった。そしてマップ下方。先ほどの攻撃で突出してきていたエストニア軍ユニットを包囲、ヴァルデマールが陣頭に立ちダンネブロの効果も得て最大比率である4対1で攻撃、壊滅させた。これでエストニア軍の累積損害は7。エストニア軍は損害が16に達すると負けである。


●第4ターン

 エストニア軍の熾烈な攻撃が続く。マップ上部ではデンマーク軍のルンド騎兵をステップロスさせた。エストニア軍としては敵騎兵が上部に展開した結果生じた隙間に右側面からつけこみたいのだが、すべて歩兵であるため移動力が足りず、下方中央の敵に10戦力を集中して攻撃する。デンマーク軍はダンネブロを掲げ果敢に防御するものの衆寡敵せず後退。その後方にいた歩兵は、ダンネブロが敵の攻撃を撃退してくれないことに衝撃を受け、隊列を乱して退却してしまった。

 このゲームでは味方ユニットのいるヘクスに後退した場合、連鎖退却が起き、連鎖退却となったユニットは士気チェックが課される。今回はダンネブロとスタックしたユニットが後退しその後方の歩兵ユニットが連鎖退却、士気チェックに失敗してステップロスした、という形である。


 デンマーク軍は上方で攻撃を続ける。騎兵の集中攻撃、それに弓兵の支援のもとでのスラブ歩兵の攻撃で2ユニットをステップロスさせ、この方面のエストニア軍をかなり消耗させた。


●第5ターン

 最終ターンである。あと3戦闘力、壊滅させればエストニア軍の勝ちだ。海の向こうから侵略してきて我々の信ずる神々まで奪おうとする敵を打ち破るのだ。デンマーク軍の騎兵2ユニットを包囲、攻撃する。スラブ騎兵は出血しつつも攻撃に耐えたものの、すでに消耗していたルンド騎兵が壊滅してしまった。


 デンマーク軍の累積損害は20になり、士気崩壊閾値に達してしまった。エストニア軍の損害が同軍閾値の16に達しない限り負けてしまう。いや、我々には神のご加護があるのだ。異教徒どもに負けるはずがない!

 デンマーク軍は必死に最後の攻撃を行う。先ほど包囲攻撃を受けたスラブ騎兵が弓兵の支援を得て反撃、敵を壊滅させる。さらにダンネブロを掲げたRoskilde騎兵が突進、敵を蹴散らす。これでエストニア軍の累積損害は14。よし、ここで勝負をつける! ヴァルデマール自らが陣頭に立ち、渾身の一撃をくらわす。だが民族の自由と独立に燃えたエストニア兵が奮起、損害を被りつつも壊滅には至らなかった。

 こうしてデンマーク軍の侵攻は撃退された。だがバルト海の制海権を握り勢力拡大を目指すデンマーク王は再び遠征してることだろう。南部からはリヴォニア帯剣騎士団、後にはドイツ騎士団の攻撃が続きキリスト教化が進められ、Lyndaniseの約20年後には「Nevsky」の時代を迎えるのである。


 ミニゲームだけど最後まで両プレイヤーとも楽しめました。以前も書いたと思うけど、A la Chargeシリーズは中世の会戦を扱いつつ、移動・戦闘のシンプルなターン構成、ZOCあり、戦闘力比での解決と、ウォーゲームの基本的なルールを使っています。なので、中世に興味のあるウォーゲーム未経験者にプレイしてもらって、そこから「ドイツ戦車軍団」とかWWⅡに引きずり込むのに使えるんじゃないかなーと思っています。


2024年4月24日水曜日

天からデンマーク国旗が降ってきた Lyndanise 1219(VV118) AAR②

 ●第1ターン(続き)

 エストニア軍の奇襲で大きな損害を受けたデンマーク軍だが、ダンネブロをゲット。このマーカーは、同じヘクスおよび隣接へクスのユニットの戦闘力と士気に1プラスする。このゲームではスタック禁止で多くのユニットが戦闘力2か3なので、+1となるのは大きい。


 奇襲効果で1ステップロスで配置されたデンマーク軍だが、自軍開始時に敵と隣接している場合は自動的に正常状態に戻る。それ以外のユニットは自軍ターン開始時にサイコロを振り、第1ターンは3分の1の確率で混乱から回復する。第2ターンは3分の2の確率、そして第3ターンはすべて回復するため、デンマーク軍にとっては最初は損害を抑えつつ時間を稼ぐのが重要となる。逆にエストニア軍としては敵が奇襲効果が続いているうちになるべく多くの敵を壊滅させる必要がある。


 このターンでは騎兵を中心としてデンマーク軍の一部が混乱から回復した。 エストニア軍の強力な部隊はマップ右下方面にいるので、デンマーク軍は左方に部隊を後退させる。まだ混乱しているユニットが回復するまで時間を稼ぐのだ。その一方で、ダンネブロを得て戦力が向上している騎兵部隊が敵歩兵に反撃、損害を与える。さらに先ほどの攻撃失敗でステップロスしていた敵を、デンマーク軍指揮官が壊滅させた。

 このゲーム「Lyndanise 1219」が属する「A la Charge!」シリーズでは、低比率でも防御側士気チェック(DT)を含め攻撃側が有利な戦闘結果が出る確率が高い。戦闘力=士気なので、戦闘力の低いユニットはすぐにチェックに失敗して損害を被ってしまう。逆に戦闘力が高いユニットや指揮官とスタックしているユニットは士気チェックに成功する可能性が高く、DTの結果を被っても無傷でいられる。そのため、敵の強力なユニットに対して戦力をかき集めて高比率で攻撃するよりも、低比率で戦闘力1や2のユニットを狙い撃ちにして攻撃し敵にじわじわと出血を強いる、という戦い方も有効である。


 ちなみに、このターンにデンマーク軍が撤退したマップ右下に展開する強力なエストニア軍だが、Revalaの部隊。このゲームのエストニア軍のユニットにはエストニアの旧地方名が書かれて、Revalaと言ったらこの戦いのあったLyndanise、今のタリンを含む地方だ。地元なだけに多くの兵を集められたということか。なおタリンはドイツ語では、地方名のRevalaからRevalと呼ばれていた。タリンはエストニア語で「デーン人の城」という意味だったらしく、ヴァルデマールが築いた城に由来する。


●第2ターン

 後退していくデンマーク軍をエストニア軍が猛追する。マップ上方で先ほど混乱から回復したばかりの敵歩兵を3対1の集中攻撃で壊滅させた。マップ下方では、ダンネブロを得たもののまだ混乱状態から回復していない騎兵を攻撃、後退させる。さらに戦闘力4と3の強力なユニットの攻撃で敵歩兵に損害を与えた。


 第1ターンから大きな損害を被っているデンマーク軍の累積損害は15。20に達したら負けである。だがこのターン、混乱状態で残っていたユニットがすべて回復した。敵の包囲網が縮まり行動の自由が奪われてしまう前に反撃すべし。マップ下方の敵は比較的強力だが、上方はほとんどが戦力2のユニットだ。狙うならそれらの弱小ユニット。下方の守りを指揮官とダンネブロに任せればいい。ダンネブロとスタックした騎兵ユニットには指揮官もいて、合計5戦闘力になるため下方からの敵を食い止める支柱になるだろう。デンマーク軍は騎兵を中心にして上方の敵に反撃を開始。敵1ユニットに損害を与えたものの、こちらも歩兵がステップロスと痛み分けに終わった。


つづく


ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part5

 ●第7ターン  今ターンも冒頭に激しい射撃戦が行われたが、砲兵、弓兵ともに数で勝るブルゴーニュ軍はより多くの損害を敵に与えた。  だがスイス軍はFaucingnyが敵右翼(マップ下方)を切り崩す。弓兵の防御射撃をものともせず白兵戦で敗走させ、さらに連鎖敗走でブルゴーニュ軍弓兵が...