2024年3月25日月曜日

日本のウォーゲームは質が高いのになぜ英語版があまり出ない?などなど、ウォーゲーム英訳者が語ってくれました

  先日、ゲームジャーナルの「フランス革命 1789」を英訳したっていうツイートを見たんですが、そうつぶやいたScott Muldoon氏はこれまで日本のゲームを多く英語に訳してきたそうなんですね。そのScott氏がYouTubeで日本のウォーゲームについて語るってツィートを見て、お、これは見なくては、と思ったんですけど、日本時間早朝5時のライブ配信。こりゃ無理だわ、ライブ視聴はあきらめて後で見ようって日和ってたんですが、結局、生で見てしまいました。

 Scott氏が登場したのは、ウォーゲームのデザイナーとトークしたりするHomo LudenceというYouTubeチャンネル。「Exploring Japanese Tabletop Wargames」というタイトルで、1時間強にわたるトークセッションとなりました。眠かったけど面白かったので最後まで見ましたよ。

 今回のトークはいろんな話題に飛んだんですが、日本のウォーゲームの歴史についてもざっと説明してくれていました。鈴木銀一郎のことはgrandfather of Japanese wargamesって言ってましたね。あと、ウォーゲームが冬の時代を迎えた後「ゲームジャーナル」と「コマンドマガジン」が創刊されたというのは日本のウォーゲーマーだったらたいてい知っていると思うんですけど、out of ashesなんて表現を使っていました。たしかにあのころはウォーゲーム業界は悲惨な状況だったみたいですからね。それと、Tetsuya NakamuraとYasushi Nakaguroの二人は海外で最も知られているデザイナーだそうです。(でも、「ふ~ら~中村」とは言わないのね。)

 「コマンドマガジン」と「ゲームジャーナル」について結構話していて、それにBonsaiゲームズのゲームについては何回か触れられていたけど、BANZAIマガジンへの言及は無かった気が。惜しい。あと、和栗南華氏という若いウォーゲーム・デザイナーが出てきてることも紹介してほしかったなー。(あ、別に自分はBANZAIマガジンの回し者じゃありませんよ)

 日本のゲームは質が高いのに、なぜあまり英語化されないのか?という質問が出たんですけど、この業界の人手不足(というか収益体制の問題かな?)があるようです。Scott氏が一緒に仕事をしたウォーゲームのパブリッシャーの多くはフルタイムの社員がほとんどいなかったとのこと。ウォーゲーム業界はこのホビーを愛する人たちによって支えられており、そういった人たちが自分の時間とエネルギーをつぎ込むことでこの業界は成り立っているみたいですね。Scott氏も、仕事としてよりもまずは自分がプレイしたいと思ったゲームを訳してみるって言っていました。

 それと、日本の歴史があまり欧米では知られていないから関心を引かない、という点も指摘されていました。戦国時代や明治維新っていったら日本で人気ですが、アメリカで知っている人は多くない、と。でも、この番組のホストのFrédéric Serval氏が、最近はユニークな題材のゲームが出てきていて、バルジやスターリングラード以外のものをプレイしたいという新しい層が現れているって言っていましたね。その潮流が強まれば、日本史ゲームや、武士ライフなんかも英語化される可能性が出てくるのかな?

 Scott氏が手掛けたゲームで次に出るのは、という質問に、一ヶ月ほど前、中村氏の激闘シリーズの「激闘!ロンメル軍集団」と「激闘!マッカーサー国連軍」を訳したって答えたら、Frédéric Serval氏が「今すぐプレイしたい!」って突っ込んでいました。やっぱり「Victory Lost」に始まる激闘シリーズは海外でも人気なんでしょうね。今回のトークでも結構激闘シリーズについて語っていました。それと、「フランス革命 1789」もちょうど最近英訳したってScott氏が言ったら、「誘惑するのはやめてくれ」ってFrédéric氏が笑ってました。うーん、やっぱりゲームのことを聞くとプレイしたくなるよね。もっと日本のウォーゲームが英語で出ないかなー。

 すっごく好きで、英語版が出てほしい日本のウォーゲームは?と聞かれて、好きなのがありすぎて選べないってScott氏が答えたんだけど、とりあえず今一つだけ選ぶとしたら、と重ねて聞かれると、Bonsaiゲームズの「ライズ・オブ・ブリッツクリーク」を挙げていました。1940年の西部戦線を扱ったゲームはたいてい独軍が強力だけど、このゲームは、仏軍が数的にも優勢なのになぜ負けたのかということをシミュレートしている数少ないゲームだそうです。へー。でもこのゲームは英語化がもう決まっているそうですね。

 あと、最後の方で日本のウォーゲームのグラフィックの特徴は、という質問から、日本はゆるい(relaxed)っていう指摘が出て、あるカードゲームの英語版は実際の歴史的な写真を使っているのに、オリジナルの方はアニメギャルがビキニを着ていて、なんて例が出されていたけど、「ばるば★ろっさ」かな。でもあれって英語版あったっけ。で、その話の流れで「ぱんつぁー・ふぉー」の1と2が出されてきて、そのうち「MC☆あくしず」も登場するんじゃないかとひやひやしましたよ。いや、別に日本の雑誌として紹介していただいても問題ないんですけどね。それと、ゲームジャーナルのリプレイマンガでは毎回、冒頭に女性のイラストが描かれていることについても、言葉を選んで話していて批判的な印象は受けなかったですね。

 と、1時間ちょっとのトークショー、結構楽しめました。日本人のウォーゲーマーだったら興味を持てる内容が結構あると思うので、よければ視聴してみてください。

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