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2025年6月29日日曜日

『黒太子』

  黒太子っていったらもうね、説明の必要もないくらいの名将ですよね。ポワティエで寡兵でもってフランス軍を叩きのめし仏王ジャン2世を捕虜にしたのを筆頭に、ナヘラでは敵を側面から奇襲して完勝、10代半ばにしてクレシーでも戦っていてるという、百年戦争時代のイングランド軍を代表する指揮官の一人。黒太子っていう呼び名もなんかカッコいいし。

 でも、上記の戦い以外は騎行でフランスの領土を荒らしまわったとか、ナヘラで勝ったはいいけど財政的にはかなり厳しくなったとか、そういうことぐらいしか知りませんでした。なんかいい本ないかなと思っていたところに見つけたのがこれ。タイトルもそのまんまの『The Black Prince』です。

 鎧関係の博物館の売店で売っていて、ここがおすすめしているんだったらあんまり外れの本ではないだろうと買ってみました。と思ったらその約一週間後にcou papaさんが「」Men of Iron」の「ナヘラ」をプレイしたってつぶやいていたんですよね。

 おお、こんな偶然があるなんて、早く読めという天の導きに違いない。でも、自分は読むのが遅いので結構時間がたってしまいましたよ。とほほ。


 この本は黒太子の生誕から死去までを追っているんですが、太子の生涯においては父王との結構問題のある関係が影響していて、そのことをより良く理解するためには父王エドワード三世の人生、とくにエドワード三世が大人になるときに起こったことをまずは知っておいた方がいい、なんて筆者は冒頭に言っています。そのため時代をさかのぼって黒太子が生まれる5年前から書き始めているんですが、エドワード三世の父と母の確執から始まって、対スコットランド戦の大敗とそのリターンマッチ、そしていよいよ対仏戦に乗り出して絶妙な機動を繰り広げてクレシーで仏軍を迎える……あれ? エドワード三世の本を読んでいたんだっけ? なんて思えるぐらい、黒太子の父王について書かれています。まあ、エドワード三世の話も面白いからいいんですけどね。クレシーの戦いでは当然、黒太子が苦戦に陥ったときのエドワード三世の台詞「let the boy win his spurs」も紹介されています。しかしまあ、スパルタ親父ですな。そのおかげで黒太子も鍛えられたと思うんですが。

 

 でもちゃんと途中から黒太子が主人公になっていろいろと熱い展開があるんですが、1355年の南仏での騎行なんて、敵の裏をかく行軍でさすが黒太子、かっけーと思いましたよ。ポワティエ戦の前、黒太子の軍が仏領で孤立する一方で仏王の大軍が接近してきていたときは、the Prince always an instinctive commander, felt that his men's morale was faltering and that the best remedy was to involve them in some action.と、敵の城塞を激しい攻撃で陥落させることで軍の士気を引き締めたりしています。ポワティエ戦が始まろうとしている時も、斥候が戦場を埋め尽くすような敵の大軍について報告すると、黒太子は簡潔にlet us now study how we shall fight with them to our advantageと答えた、と書かれています。うーん、かっこいい。……しかし自分、カッコいいしか書いていなくて結構バカっぽい? でも黒太子カッケーと読んでいて何度も思ったのは事実なんですよ。

 それと、財政的に大きな負担になったナヘラ戦を含むカスティーリャへの軍事介入ですが、もともと黒太子は反対していたそうで、父王エドワード三世の命令で仕方なくピレネーを越えて遠征したって描写されています。ここに限らず、エドワード三世の老害っぷりが次第にひどくなっていくんですよね。その一方で黒太子の病がどんどん進んでいって、ナヘラ以降は読んでいくのが結構つらくなりました。

 

 でも黒太子をほめまくっているわけではなく、出費には鷹揚で臣下にも大盤振る舞いをしたということが繰り返し書かれています。とはいえ、黒太子の汚点として伝えられている晩年のリモージュの住民虐殺については、The 'blackening' of his reputation, in part through the insinuations of Jean Froissart, can now be righted.と、このことについて下記残しているフロワサールを批判していますね。The chronicler Jean Froissart presents a challenge for every historian: at his best, he is well sourced and brings the period to life; however, he can also be unreliable and cavalier with the facts.なんて書いているですが、cavalierって言葉をこういうふうに使うんだ、うまいなーって思いました。


 と、本文400ページ強の中でここがよかったぜーという部分はもっといろいろあるんですが、キリがないのでこの辺で。この本は私のように黒太子についてもっと知りたいっていう場合にはピッタリだと思います。それに百年戦争に興味がある人も読んでみると面白いんじゃないでしょうか。


2022年10月7日金曜日

軍事メインの百年戦争通史

  百年戦争といったらアストラギウス銀河で繰り広げられたギルガメスとバララントの戦争。はじめは局地戦が続いていたが、そのうち戦線が拡大し二つの星系に属する200あまりの惑星が戦火に巻き込まれていった……じゃなーい!! 英仏間の戦争のほうですよ。14世紀から15世紀にかけての。ル・シャッコとかロッチナとか出てきませんからね。装甲騎兵が活躍したというのは同じだけど。

 この戦争について読みやすい本だと、中公新書の『百年戦争』と集英社新書の『英仏百年戦争』があるけど、ほかにないかなと探していて見つけたのが『A Brief History of the Hundred Years War』。ただどんな基準で買おうと思ったのか自分でも覚えていない。たぶん酔っ払いながらアマゾンを見ててよく考えずにポチってしまったんじゃないかと。そのせいか長いこと積読になっていたけど、最近本棚に埋もれているのを発見して読んでみました。



 読んでいると、この作者は軍事が好きなんだなーというのが随所で感じられて、どんどんページが進みます。例えばクレシーの戦いはその前後の状況も含めると10ページ近くを割いて描写している。あの戦いでは一翼を任されていた16歳の黒太子が苦境に陥り、父王エドワード三世に援軍を求めるが王は却下。そのとき王が言ったという有名なセリフ「Let the boy win his spurs(あやつに手柄を立てさせよ)」もちゃんと紹介されています。ただし、王は救援を派遣したと書かれている年代記もある、ということも指摘しているけど。資料によって言っていることが違うという、中世あるあるですな。ほかにもエドワード三世の戦略を、三方面からの小規模だが協調の取れた攻勢だと分析したりとか、イングランド軍の略奪・焦土戦術chevauchée(騎行)について南北戦争のシャーマンのジョージアへの侵攻との類似点を挙げたりとか、ウォーゲーマーが喜びそうな内容が結構書かれていています。


 個人的にはヘンリー5世が1422年に急逝した後はイングランド軍はダメダメだったというイメージがぼんやりとあったんだけど、1424年のヴェルヌイユ(Verneuil)の戦いが第二のアジャンクールって感じで紹介してあったりして、百年戦争後半はジャンヌ・ダルクだけじゃねーぜ、ということがよくわかります。というか軍事面が好きな作者だからだろうけれど、ジャンヌ・ダルクに関しては結構あっさりした叙述でした。まあ、そうなるよね。ヴェルヌイユの戦いは戦況図まで載せて説明してあるうえに、イングランド軍の総指揮官ベッドフォード公がポール・アックスをふるって奮戦したなんて逸話も載せていて、あーこの作者は戦いが好きなんだろうなと思いました。しかしベッドフォード公がフランスで苦労しているのに弟のグロスター公ときたらいらんことやりよって…。


 あと、クレシーやポワティエ、アジャンクールなどイングランドが大勝したことで知られている戦いも、余裕で勝ったわけではなく場合によっては結果が逆になっていたかもしれないということが書かれていて面白かったです。それに百年戦争って陸戦ばかりという印象だったけど、結構フランス側が制海権を握ることがあってイングランドでは襲撃や侵攻におびえていたというのも意外。フランス側にスコットランド兵が加わって大陸で一緒に戦っていたこともよくわかりました。


 それと面白かったのが、イングランド軍はフランスでの略奪や身代金でかなり儲かったということ。特に百年戦争前半は景気が良くて、イングランドの貧しい身分の人も喜んで戦争に加わって一財産築いたとか。草木一本残さず奪って荒らしまくる焦土戦術は黒太子のchevauchée(騎行)のイメージが強かったけど、イングランド軍の常套手段だったんですね。エドワード三世も借金まみれだったようだし、人口が少ないイングランドとしては豊かなフランスに攻めていって奪えるだけ奪うのが戦争経済上、効率よかったのかな。税制をきちんと整備して領邦国家としての体制を整えていったフランスと好対照。そりゃイングランドが最終的には負けるわけですよ。

 

 筆者のDesmond Sewardはフランス生まれでケンブリッジ大学を卒業しており、中世を中心に歴史の本を数多く書いている。今年亡くなったみたい。軍事好きと勝手に思っていたけど、カラヴァッジョの伝記とか、日本語訳も出ている『ワインと修道院』なんて本も出しています。


 今回読んだ『A Brief History of the Hundred Years War』は、もともとは1978年に"The Hundred Years War"という書名で出ていたんだけど、A Brief History of(略史)という文言がタイトルの前について再版されたものらしい。略史ってつけたほうが読者が気軽に手に取ると考えたのかな。実際、ペーパーバック版の判型は日本の新書版を一回り大きくしたぐらいで、ページ数も実質260ページぐらいと、内容量は新書と変わらない感じ。でも索引がちゃんとついていて、この辺は日本の新書も見習ってほしいですな。編集の手間がかかるから値段が上がっちゃうだろうけど。


 というわけで、期待せずに読んだわりには満足できる本でした。今度MoIでクレシーかポワティエをやってみるかな。イングランド軍が苦戦したら「Let the boy win his spurs!」と気合を入れることにします。








(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)



2022年6月17日金曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-pack (GMT) AAR ⑤

  デュ・ゲクラン隊(青)の攻撃を受けたイングランド軍のパーシー隊(水色)が反撃。混乱状態の重装騎兵を重装歩兵のDM2ユニットが攻撃する。楽勝だぜ成仏しな傭兵ども、と思いきや、No result。さらに別の重装騎兵にDM2ユニットで側面攻撃をしかけたのだが、サイの目ゼロで攻撃側混乱。おいおい、ずっと放置されていてやっと回ってきたチャンスなんだからいいところ見せろよパーシー。


 活性化値が3と比較的低いパーシーを自由活性化で攻撃させた後、活性継続で黒太子隊の態勢を立て直させようとイングランド軍はもくろんでいたのだが、活性継続に失敗。え、やばいんでないの。騎兵集団の攻撃で結構な損害を被っていたのに。黒太子を守っているDMは混乱状態だし、黒太子隊とパーシー隊の間には戦列の隙間が生じているし。不甲斐ないパーシーなんかを自由活性化で動かさずに、黒太子隊を優先していればよかった。


 そんなイングランド軍のミスを見逃さず、カスティーリャ軍のデニア伯の部隊(茶)が黒太子隊に再び襲い掛かる。クロスボウの射撃でイングランド軍DMを敗走させ、さらに最強DMとスタックしている黒太子へ重装騎兵MMが突撃する。前回は踏みとどまったDMだが今回は耐えきれずに壊滅、黒太子がついに討ち死にか?! と思われたが、危ういところで逃げ延びた。

 さらにデュ・ゲクラン隊(青)がパーシー隊(水色)を攻撃。クロスボウで長弓兵を排除してから、重装騎兵がパーシーに突撃。パーシーとスタックしていたDMが壊滅する。だが黒太子同様、パーシーは戦死チェックを生き延びた。


 カスティーリャ軍の連続攻撃を受け、イングランド軍左翼が危うい。このままカスティーリャ軍が押し切り、まさかの黒太子敗北か。だがイングランド軍は動じない。イングランド軍の敗走ポイントFPはいまだに21。敗走レベルの45までかなり余裕がある。なんなら黒太子を見殺しにしても負けそうにない。そんなこと、しませんけどね。一方、出血を顧みない攻撃によってカスティーリャ軍のFPはすでに52に上っており、崩壊目前なのだ。

 イングランド軍はまず最右翼のジャン隊(白)の射撃プラス白兵戦で敵ユニットを着実に壊滅させる。そして黒太子隊が反撃。混乱状態になっていたテージョ隊(赤)の重装騎兵2ユニットを壊滅させた。これによってカスティーリャ軍のFPは60となり、負けが確実となったため投了した。



 敵軍の側面を攻撃という奇襲状態にもかかわらず、慎重に攻めたことがイングランド軍の勝因か。一方、カスティーリャ軍は活性化値の高いデュ・ゲクランを積極的に動かして敵左翼にプレッシャーをかけるとともに、もう少し早い段階で攻勢に出て混戦に持ち込むべきだったか。今回もマップ左方に退避していたエンリケ王の騎兵部隊を投入する前にカスティーリャ軍は負けてしまったし。

 でもね、デュ・ゲクランは確かに優秀だけどユニット数が少ないのでイングランド軍とガチンコ勝負はできないうえ、ほかのカスティーリャ軍の指揮官は活性化値が低いので連携して動くなんて期待できない。まあ、自軍部隊が思うように動いてくれないところがこのシリーズの面白さだとは思います。とりあえず黒太子が戦死しなくてよかったよかった。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月15日水曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ④

 テージョ隊(赤)の自殺的とも言っていい攻撃で損害を受けた黒太子隊だが、冷静に対処する。16歳でクレシーの戦いを経験し、以来約20年の戦歴を重ねてきているのだ。これぐらいの攻撃でうろたえるはずがなかろうが。


 カスティーリャ軍はテージョ隊に続けとデニア伯の騎兵部隊(茶)を前進させつつ、これまで忘れられていた観のあるデュ・ゲクラン隊(青)を動かす。いや、放置していたわけじゃないんだよデュ・ゲクラン君。君の活性化値5っていうのはうちのやる気のない諸将の中ではピカイチなので、切り札としてとっておいただけだよ。デュ・ゲクラン隊は正面のパーシー隊(青)を攻撃。損害を与える。



 ところでこのトーマス・パーシーだが、どこかで見たことのある名前だと思ったらボスワースの戦いのノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーと同じパーシー家じゃないですか。薔薇戦争を終結させた1485年のボスワースの戦いで、ヘンリー・パーシーはリチャード3世の側にいながら動かなかったのだが、一族の日和見行為を天国のトーマスはどういう風に見ていたんだろう。ランカスターとヨークどちらが王座を確保するかわからない状況では、貴族が生き残るためには当然のこと、とでも思っただろうか。というかこの時代、多くの諸侯にとってはお家大事で、王に忠実に仕えるなんて二の次だったんでしょうな。何せトーマス・パーシー自身がナヘラの戦いの三十数年後に兄弟や甥と一緒にイングランド王ヘンリー4世に対して反乱を起こしているし。


 デュ・ゲクラン隊に続いてその右隣のデニア伯の騎兵部隊(茶)が黒太子隊に攻撃をしかける。今回もイングランド軍の長弓兵によって次々と損害を受けていく投槍騎兵。8ユニットのうち半数が壊滅したが、黒太子隊の長弓兵1ユニットが壊滅。残り1ユニットも混乱状態になった。さらには、黒太子とスタックしている重装歩兵DMは最強の防御力を誇る精鋭なのだが、投槍騎兵の波状攻撃で混乱状態に。

よくやった投槍騎兵ども、お前らの犠牲は無駄にはしない、と重装騎兵が突撃。目指すは黒太子の首だ!   だが最強DMが奮戦、踏みとどまった。



 カスティーリャ軍は活性継続をしていたためさらに活性継続は難しい、と思いきや、ここでデュ・ゲクランの活性化値の高さが生きる。ゲクラン隊(青)が再び活性化、正面のパーシー隊(水色)の長弓兵を1ユニット壊滅させる。もっとデュ・ゲクラン隊に兵力があればイングランド軍にひと泡ふかせることができるはずなんだが…。

 デュ・ゲクランは小説『双頭の鷲』の主人公。低い出自で、「鎧を着た豚」と呼ばれたこともあったが、その軍事的能力が評価されフランス王軍の司令官にまでのし上がっている。このナヘラの戦いではイングランド軍の捕虜になっており、のちに身代金と引き換えに解放されている。エンリケがデュ・ゲクランの助言を聞いてナヘラでの黒太子との決戦を避けていれば、捕虜になんかならなくて済んだだろうにね。まあデュ・ゲクランはエンリケを支援しているフランスからの援軍、というか傭兵隊の指揮官という立場だから、カスティーリャ王であるエンリケの考えのほうが優先されざるを得なかったんだろうけれど。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月13日月曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ③

  ゴメス隊(紫)の右(マップ下方向)にいたエンリケの騎兵部隊(緑)を後退させたカスティーリャ軍は、そこにできたスペースにサンチョ(Sancho Alfonso)の歩兵部隊(黒)を前進させる。サンチョ隊は数は多いので、ゴメス隊の歩兵のロスをカバーしイングランド軍と殴り合いに持ち込むことをもくろむ。

 また、ほとんど騎兵で構成されているデニア伯アルフォンソ(Alfonso of Aragón and Foix, Count of Denia)の部隊(茶)が右翼に展開。うまくテージョ隊(赤)やゲクラン隊(青)と連携して、敵左翼の黒太子隊を攻撃できれば。


 一方イングランド軍は右翼のジャン隊(白)の長弓兵で着実にゴメス隊(紫)に損害を与えていく。ジャン隊に隣接するチャンドス隊(青)がそれに連携して前進してくれればいいのだが、継続活性に失敗し続ける。

 チャンドスは鉄人の異名を持ち、クレシーやポワティエなど戦場の経験も豊富なのに、動いてくれないとジャン隊がそのうち孤立してしまう。お願い動いて鉄人チャンドス、というイングランド軍の思いが通じたのか、やっと継続活性に成功。チャンドス隊が前進、ジャン隊の左翼をカバーする。

 また、カスティーリャ軍の騎兵集団がマップ下方に回り込んでいるのを見て、イングランド軍最左翼に位置する黒太子は防御態勢に入った。



 前進してきたチャンドス隊にカスティーリャ軍のサンチョ隊(黒)が攻撃をしかける。サンチョ隊の槍兵はイングランド軍の重装備の歩兵DMよりやや劣るが、チャンドス隊左翼(マップ下方向)に攻撃を集中。少しでも敵戦列を乱して混戦状態に持ち込むのだ。そうすればこちらの数の優位が生かせる。

 だがイングランド軍は冷静に対応。長弓兵でカスティーリャ軍に損害を与えつつ、歩兵は戦列を維持し攻撃を自重する。このゲームでは戦闘後前進が強制されるため、攻撃に成功して追撃したはいいもののその後敵に囲まれてしまう、ということがよくあるのだ。


 歩兵部隊ではらちが明かないと見るや、カスティーリャ軍はマップ下方に展開した騎兵集団で攻勢に出る。このままではじり貧だ。きれいに並んだイングランド軍の重装歩兵DMの戦列に槍兵で攻撃をしかけても、防御力の高いDMによって跳ね返されてしまうだろう。そしてにらみ合っているだけでは、長弓兵によって歩兵部隊が削り取られていくのを見ていくだけになりかねない。

 マップ下方の黒太子の部隊(黄)は長弓兵でかっちり防御態勢を敷いていて、投槍騎兵が正面から攻撃せざるを得ない。隣接した時点で長弓兵の対応射撃を受け、70%の確率で損害を受ける。そのあとに投槍で攻撃しても、同時に長弓兵から応射(Return Fire)されてしまう。つまり長弓兵を投槍で攻撃すると2回射撃を受けることになるのだ。

 だがテージョ隊(赤)には投槍騎兵が8ユニットいる。黒太子隊左翼の長弓兵2ユニットに的を絞って、全滅もいとわず連続攻撃をしかければ長弓兵を排除できるはず。そのあとに重装騎兵MMで突撃をかければさすがのイングランド軍も大きな被害を被るに違いない。


 テージョ隊(赤)の投槍騎兵が次から次へと黒太子隊の長弓兵に襲い掛かる。こいつらはクレシーやポワティエを知らんのか、とイングランド軍は射撃を加える。だが、バタバタと倒れていく味方の兵を顧みることなく攻撃を続けるソビエト軍、じゃなかったカスティーリャ軍。投槍騎兵は8ユニットのうち半数が壊滅したが、長弓兵も1ユニットが敗走、1ユニットが壊滅した。

 長弓兵のスクリーンを排除したところにテージョ隊(赤)の重装騎兵が突撃。損害を被りつつも、黒太子隊のDMを混乱状態にした。



 この時点でカスティーリャ軍の累積敗走ポイントは33。敗走レベルの60まではまだまだ余裕がある。黒太子隊に対応する余裕を与えることなく攻撃を続けることができるか。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月11日土曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ②

  マップ右端上部からカスティーリャ軍の側面を突く形で現れたイングランド軍は、右翼(マップ上方)から順にジャン(Jean III de Grailly, Captal de Buch)、チャンドス(Sir John Chandos)、パーシー(Sir Thomas Percy)、黒太子と展開。

 活性化値は上から順にジャン3,チャンドス4,パーシー3,黒太子4だ。最右翼のジャン隊(白)の右側は渡河不可の川で守られているため、活性化値が低めのジャンでもなんとかなるだろう。

 最左翼はパーシー隊(水色)が登場するのだが、オープンスペースとなっているため機動力に勝るスペイン軍が優位になるかもしれず、活性化値3のパーシーでは今一つ心配だ。そのため、パーシー隊のさらに左翼に黒太子隊を展開させる。やや交通渋滞気味になりながらも、イングランド軍は攻撃を焦ることなく戦列を整えることを優先する。


 一方カスティーリャ軍は機動力を生かしてテージョ(Tello Alfonso of Castile)の部隊(赤)がマップ下方に回りこむことをもくろむ。活性化値の高いゲクラン隊(青)は黒太子隊が最左翼に出ようと団子状態になっているときに先制攻撃をかけるか迷ったが、デュ・ゲクラン指揮下のユニット数が少ないため、自重して後方に下げておく 。こっちは側面を突かれて不利な態勢なのだ。無理に攻勢に出るよりは、騎兵部隊をマップ下方に迂回させてプレッシャーをかけつつ歩兵部隊の正面転換を目指す。



 イングランド軍は右翼(マップ上方)のジャン隊(白)から前進。長弓兵による射撃でゴメス(Gomez Carillo)の部隊(紫)の左翼にいたクロスボウに損害を与える。そしてジャンの左横のチャンドス隊(青)も前進。さらに黒太子(黄)も前進。東方(マップ右下)を向いて布陣していたカスティーリャ軍が方向転換する前に距離を詰めていく。


 ここでカスティーリャ軍のゴメス隊(紫)が動いた。ほとんどが槍兵で構成されているゴメス隊は数の優位を生かし、犠牲をいとわずイングランド軍の長弓兵に攻撃を仕掛ける。接敵すると長弓兵の対応射撃によって70%の確率で混乱状態になるのだが、白兵戦になったら混乱状態であっても長弓兵相手に互角以上に戦える。だが、肝心の白兵戦でNo resultの連発。おいおい、やる気あんのかー。

 すぐにジャン隊(白)が対応。長弓兵を下げ重武装の歩兵DMでゴメス隊(紫)の槍兵を攻撃していく。ゴメス隊もやり返し、チャンドス隊(青)の長弓兵を壊滅させる。


 カスティーリャ軍は継続活性でエンリケ王の騎兵部隊(緑)でチャンドス隊(青)を攻撃するか迷う。チャンドス隊の左翼には長弓兵がいないため、対応射撃を気にすることなくエンリケ隊の投槍騎兵でチャンドス隊のDMに攻撃を仕掛けることができる。だがその後が問題だ。一度投槍を使ってしまった騎兵は脆弱になるうえ、敵に自由活性が移ったらチャンドス隊の左側にいるパーシー隊(水色)が確実にエンリケ隊をしとめに来るだろう。活性化値の高いゲクラン隊(青)がエンリケの左翼から支援にいけるが、その正面には黒太子がいる。ここは無理せず、最初の方針の通りテージョをマップ下方に展開させてイングランド軍の左翼を脅かすことを目指す。




 イングランド軍は右翼のジャン隊(白)とチャンドス隊(青)で着実にゴメス隊(紫)に損害を与えていく。そんなもの、カスティーリャ軍にとっては計算のうちさ。ゴメス隊が時間を稼いでいる間にテージョ隊(赤)が敵の左翼に回りこむとともに、エンリケ隊(緑)はいったんマップ左方に後退して自軍の他の部隊とともにイングランド軍を待ち受ける体制を整える。




 この戦いは両軍のユニット数が多いことを反映してか、敗走レベルが高い。カスティーリャ軍は60もある。カスティーリャ軍のほとんどのユニットは敗走ポイント(FP)が2なので、20数ユニットまでの損害に耐えらえるのだ。

 一方のイングランド軍の敗走レベルは45。これも比較的高いが、イングランド軍の主力を構成するDMのFPは3だ。カスティーリャ軍としては戦列を広げて機動力と数の優位を生かせるようにし、そのうえで殴り合いの消耗戦に持ち込めば勝機が見えてくるはず。


 Men of Ironにはルールブックとは別に、収録の6つの戦いのセットアップや特別ルールが書いてあるBattle Bookという冊子があるのだけれども、そこにはイングランド軍が簡単に勝っちゃうよね、みたいなことが書かれてある。でもネットでAARをちらほら読んでみるとイングランド軍の負けとなったものもある。しかも黒太子が戦死した、なんてものまであった。実際、練習としてソロプレイしてみたんだけど、イングランド軍が調子に乗ってどんどん攻撃していくと、突出したチャンドス隊が騎兵に包囲され壊滅し指揮官が捕虜になる、なんてことが起きてしまった。イングランド軍が簡単にワンサイドゲームで勝てるというわけではないはずだ。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月9日木曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ①

  英仏百年戦争という比較的マイナーな戦争の中で、まだ名前が知られているのがエドワード黒太子じゃないだろうか。あ、ジャンヌ・ダルクがいたな。でもウォーゲーマー的には、ポワティエの戦いで寡兵でもってフランス軍を完膚なきまでに叩きのめした黒太子のほうが琴線に触れるんじゃないのかな。

 今回プレイするのはエドワード黒太子が大勝した戦いの一つ、ナヘラである。ゲームはMen of Iron Tri-pack。時代は百年戦争の前半にあたり、場所はスペインの太平洋側、ピレネー山脈近くのところ。


 イギリスとフランスが戦争していたのになんでスペインで戦い? と思って調べてみたら、1360年に英仏間で講和が結ばれていたが、スペインでは中央部のカスティーリャ王国の王位をめぐって英仏の代理戦争が行われていたらしい。確かGJの英仏百年戦争でもこの地域は含まれていたはず。カスティーリャ王ペドロ1世の異母弟トラスタマラ伯エンリケがフランスの支援を受けて王位を狙い、ペドロは当時フランス南部のアキテーヌ地方を支配してたエドワード黒太子に助けを求めた、というお家騒動である。

 この戦いには小説「双頭の鷲」の主人公、デュ・ゲクランも参加している。1360年の和平のあと、仕事にあぶれた傭兵たちがフランス国内で盗賊化していたため、その厄介払いも兼ねてデュ・ゲクラン指揮下のもとカスティーリャに派遣されていたからだ。


 街道沿いに東から進軍してくるイングランド軍に対しもっと有利な態勢で戦えるようデュ・ゲクランは退却を進言したが、エンリケはナヘラの町から川を渡って平原で迎え撃つことを決める。だが黒太子は山道を使って迂回し、エンリケ軍の側面に現れたのだった。

 初期配置では、エンリケ軍は東(マップ右下)を向いて布陣している。見事に川を背にしていて、あなた、韓信ですか。この戦いの一週間ほど前にイングランド軍の一部隊を壊滅させているから、相手をなめていたのかな。



 イングランド軍はエンリケ軍の左翼、マップ右端上方から登場するのである。エンリケは完全に虚を突かれている。さすが黒太子、グッジョブ。


 イングランド軍は数は少ないものの、重武装の歩兵(Dismounted Men-at-Arms, DM)と、百年戦争を通してその威力を発揮した長弓兵で構成されている。

 前衛であるチャンドスの部隊(青)から登場し、主力である3部隊が続く。4人の指揮官のうち半分が活性化値4,残りが3。後衛としてマヨルカ王ジャウメ4世の部隊(緑)がありイングランド軍の中では貴重な騎兵主体の部隊となっているが、活性化値が2と低いため登場させない(させられない)かもしれない。



 一方のエンリケ軍、というかこれ以降はMen of Ironの表記に従ってカスティーリャ軍と書くことにする。この戦いのときにはペドロを追い出してエンリケ2世としてカスティーリャ王になってたようだしね。そのカスティーリャ軍だが、指揮官の活性化値はデュ・ゲクランが5と突出して高いものの、ほかは3が3人、2が2人だ。活性化値が低めの指揮官を使ってこれだけの大軍の正面をイングランド軍側に転換しないといけないため、下手をすると大混乱が起きてしまう。


 しかも20ユニット以上ある投槍騎兵は移動力は8もあるものの、接敵しないと槍を投げられず、一度投げてしまうと再装備するまでかなり脆弱になる。さらに再装備には敵から3へクス以上離れた状態で何もしないせずに一活性化を使うことが必要で、つまり一度攻撃すると1回か2回の活性化を経ないと再び攻撃できるようになれない。イベリア半島で主な敵だったイスラム教徒相手にはある程度有効だったこの兵種は、イングランド軍にはほとんど通用しなかったらしい。どうなることやら。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

共和国軍の攻勢から反乱軍の反撃、そして機動戦から消耗戦へ Brunete 1937 (Alea43) AAR part5

 ●第5ターン  残り2ターンである。このゲーム、序盤は共和国軍が圧倒的に優勢であるものの、反乱軍には続々と増援が登場する。下の写真はこのショートシナリオが扱う第1~6ターンの両軍の増援で、一目瞭然、共和国軍には微々たる数しか現れないのに対し、反乱軍は大量の援軍を受け取る。ヒスト...