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2025年1月19日日曜日

欧州のウォーゲーム界が熱い! 『EuroWarGames』

  ウォーゲームと言ったら昔はSPIやAvalon Hillなどアメリカが本場って感じがあったみたいですよね。でも最近はスペインをはじめフランス、ドイツ、イタリアで規模は小さいながらもいろんなパブリッシャーが生まれていて、なんかヨーロッパが元気みたい。と思っていたら、『EuroWarGames』という本が出たので読んでみました。いや、正確に言うとKickstarterで思わず蹴ってしまってそれが届いたので読んでみたんですけどね。


 この本にはThe history, state and future of professional and public (war)gaming in Europeって副題っぽいのが付いていて、様々な国から十数人の執筆者が寄稿しています。ですが、それよりも裏表紙にあったWargaming is on the rise again. Or did it never falter?っていう惹句的なものに惹かれてしまいました。

 過去二、三十年の間、ユーロゲームの流行によってウォーゲームは陰りが見えてきた。その一方で、ヨーロッパのウォーゲームのコミュニティは地理的にはお互い近くに集中しているのに言語的障害と歴史的要因から国境によって分断されてきていた。その結果、ヨーロッパの多様で豊かなウォーゲームの活動は世界的には知られてこなかった…

 なんてことも裏表紙に書かれているんですけど、「ユーロゲーム」って言葉、自分は聞いたことあるけどその定義はよく知らなくて、ここんとこ流行っている(らしい)ボードゲームのことなんだろうなって漠然と思ってるんですけど、あってる?すんません、カタンぐらいしかしたことありません…。

 日本でもゲームマーケットが盛況だったりボドゲカフェが各地にできていたりしますが、ユーロゲームの流行は世界的なものらしいです。ウォーゲームは当然その影響を受けているようですが、その是非が一番最初の章「Attack of the Hybrids! Wargames and Eurogames-derived mechanics」で論じられています。ユーロゲームの影響を受けたウォーゲームが多く出てくることで、多くのハードコアなウォーゲーマー(grognardって呼んでますね)はfeel threatened by this sudden evolution, fearing that such an approach could "betray" the purity of age-old mechanics and conventionsなんて書かれています。日本でもそういうウォーゲーマー、結構いるんじゃないでしょうか。Euro-invaders of the simulation worldなんて表現もありました。でもこの執筆者は、ユーロゲームとウォーゲームのハイブリッドについて、デザイナーにとって簡単ではないがthe challenge surely is worth the try if we want to persevere in the oldest tradition of wargame design: innovationって言っています。

 他にもいろいろと面白い章があったのですが、真っ先に目を引かれたのはスペイン関連の記事。スペインのウォーゲーム業界ってほんと、元気がありますよね。この本に収録されているのは、Bellotasというタイトルの章で執筆者はLevy&CampaignやCoinシリーズのデザイナーVolko Ruhnke氏です。BellotaConという毎年1月にスペイン南西部の街Badajozで開かれているウォーゲームコンベンションについて、2018年の第一回から参加したときのことを書いています。

 ちなみにBellotaConはこの1月23日~26日に第8回が予定されています。おお、もう直前じゃん。

https://bellotacon.es/

 この章では、スペインでも何十年にわたってウォーゲーム界を悩ませてきた問題、すなわち高齢化がある、なんてなことも書かれていて、これは日本とも共通なのかな。でもその一方で、昔ボードゲームを遊んだ世代はもう子供が独立し仕事も安定しているので、ウォーゲームに戻ってきているんだそうです。それだけでなく、ヨーロッパ全体と比較してスペインではウォーゲーマーが高い割合で増えていっているという根拠もいろいろあるんだとか。うーん、いいなあ。

 それと、BellotaConのBellotaってスペイン語でドングリという意味ですが、ドングリを食べさせた豚から作るハムがこの地域は有名だそうで、そこからこのコンベンションの名前をとったと書かれていました。へー、知らんかったよ。BellotaConはもともと少人数のウォーゲーム愛好家たちが始めたもので、そういった人たちの献身的なコミットメントがあってこそ成立していたとのこと。どんどん成功して参加者が増えるにつれ、長期的にはパブリッシャーも単にサポートするだけでなく積極的にかかわっていく必要がある、ということは以前から指摘されていたそうです。でもCOVIDの時期をDiscordなどオンラインでの開催で乗り越えていったとのこと。今年の第8回も盛況になることでしょう。

 

 ほかには、イタリアでのウォーゲームの盛り上がりについても書かれた章がありました。たまたまこれを読んでいたので、先日ブログで紹介したユーチューブも興味深く視聴することができましたよ。ちなみにあのユーチューブ動画のRiccardo Masini氏は『EuroWarGames』の編者の一人に名前が入っています。

 イタリアでは月に計2万5000部売れているゲームマガジンがあるって書かれているんですが、マジ? そして一般的なボードゲームとウォーゲームのオーバーラップが見られるそうで、ウォーゲーマーの数は限られているとのこと。イタリア産のウォーゲームの強みとしてはクリエイティビティを挙げています。アメリカの主要パブリッシャーと競争するのは意味がないため、ほとんどのイタリアのパブリッシャーは第二次世界大戦の独ソ戦やアルデンヌ、ゲティスバーグやワーテルローといったメジャーなものは作っておらず、様々なテーマで多様なシステムを採用していて、そういったニッチさからクリエイティビティに価値を置くことになっている、とのこと。イタリアのウォーゲームがユニークなテーマを扱っていることに惹かれて、外国の業者が取り扱うようになるというトレンドが生まれているそうです。

 面白かったのは、イタリア統一戦争と第一次世界大戦は軍事面に関してはほとんど知られていないとのこと。イタリア人にカポレットやソルフェリーノがどこにあるか聞いても答えられないんだそうです。そのため、記事の執筆者はゲームが歴史の知識を広めるのにも役立つと指摘しています。


 ところでヨーロッパのウォーゲームと言えば、小さなウォーゲーム屋さんが精力的に輸入、日本に紹介していますね。と思っていたら、こんなことが書かれていました。

half of Europa is courting Bonsai Games to translate Yasushi Nakaguro's games

へー、Bonsai Gamesはヨーロッパでモテモテなんですね。


 あと、たかさわさんが紹介していたこの記事を併せて読むともっと面白いと思います。ちなみにセイビン教授はこの本でも言及されています。



 とまあ、いろいろと勉強になったんですが、一番印象に残っているのはイントロダクションの最後の方に書かれていたこの言葉。

our hope is that this initiative(この本のことですね) will be of further encouragement for all the different national wargaming communities to strengthen their connections, multiply their contacts, share their experiences in a scenario of mutual growth and cooperation.

ほんと、そんなふうになるといいなあと思います。

2025年1月17日金曜日

イタリアで語る、日本のウォーゲーム事情

  つい最近、ヨーロッパのウォーゲーム事情についての本を読んだんですけど、たまたまイタリアのウォーゲーマーが日本のウォーゲームについてユーチューブで語るというをTwitterで見つけたので見てみました。

10歳の時からウォーゲームをしているというRiccardo Masini氏の番組に、日本のウォーゲームに詳しいAndrea Pavanさんが登場。ちなみにAndrea Pavanさんは去年の夏に日本に来ていたようです。

それと、武士ライフ第伍號の「和田合戦」をイタリア語に訳したりしています。いやー、武士ライフ好きとしては嬉しいなー。

 Riccardo Masiniさんは動画の中でもいくつか日本のウォーゲームを取り出してましたが、ウォーゲームだけでなく歴史にも詳しいみたいで、今後出るであろうゲームの話題の中で日本と中国の戦争のもの、とAndreaさんが言ったら、それって日露戦争の前の戦争、それとも後?って即座に聞いていました。日清戦争ってマイナーだと勝手に思っていたんですけど、知っている人は知っているんですね。

 この動画ではざっと日本のウォーゲームの歴史を振り返ったりしていましたが、鈴木 銀一郎、黒田 幸弘、中黒靖、中村テツヤ、山崎雅弘、福田誠といった日本人デザイナーが挙がっていました。今後注目するデザイナーを聞かれたAndreaさんは、堀場わたるって答えてましたね。子猫のゲームを作ったりするけどって笑ってましたけど。でもこの動画を通して一番よく触れられていた名前はナカグーロでした。

 日本のウォーゲーム雑誌もBANZAIを中心に紹介されていたんですけど、「武士ライフ」も出てきて嬉しかったです。ミニ雑誌だけど、コンパクトなゲームと、関連した歴史的な記事がついているって紹介していましたね。こういった中世の日本を扱ったものは、我々には手が届かないニッチなマーケットだって言っていました。あと、「A Victory Lost」(激闘!マンシュタイン軍集団)や「Most Dangerous Time」(信長最大の危機)は海外でもよく知られているようですが、これらはもともと雑誌付録だったとAndreaさんが言うと、Riccardoさんには意外だったようですね。

 日本のウォーゲームの特徴として、シンプルさというウォーゲームの古典的な部分と革新的なものを組み合わせている、と言っていましたね。シンプルさについては、少ないルールで誰でもプレイできるようになっているけれども、歴史性の深みも兼ね備えている、と。革新的なものは、「激闘!マンシュタイン軍集団」や「ワルシャワ1920」が挙げられていました。それとBANZAI20号の「ロンメルがゴーグルを拾うとき」は、すごく要求の高いプレイヤーでも楽しめるだろうって言ってましたね。あ、もちろん日本のウォーゲームの品質の高さもほめていて、見た目が美しいだけでなくちゃんとテストプレイもしている、ってことも指摘していました。

 ところでウォーゲームとは関係ないけどTakeshi's Castleって言葉がちらっと出てきて二人とも笑っていたんだけど、これって「風雲たけし城」のことですよね。イタリアでも放送されていたのかなあ。

 あと、RiccardoさんはBANZAIを取り出して、日本語はわからないけどグーグル・レンズで訳して読んでいるって言っていました。こうやって自動翻訳が便利になり普及していくのを見ると、言語の障害がどんどんなくなっていろんな言語圏との交流から新しい流れが出てくるといいな、なんて思いました。とにかく二人が楽しそうに日本のウォーゲームについて語るのを見ていると、日本のいちウォーゲーマーとしては嬉しい限りでした。「武士ライフ」とかがいろんな国で紹介されてプレイされるといいなあ。


2024年12月17日火曜日

Ouvrons grand les wargames!

 (この記事は「War-Gamers Advent Calendar 2024」用に書きました。もともと12月20日にエントリーしていたんですが、16日と17日がずっと空いていて、主催のHarpoonArrowさんが責任感を持って執筆されるようだったので微力ながら慌てて書いてみた次第です。で、最初にお断りしておきますがビール飲んでいます。なのでちゃんと考えて書いたブログじゃありません。ウォーゲーム界のことをよく知らないのにこんなこと書きやがって、と思われる方がいても許して。) 


 いやー、今年も多くのウォーゲームが出ましたね。自分的に今年買ったもので一番気に入っているのはこれ。

 でもこれだけ多くの作品が出ると目移りしてしょうがないんですが、ウィリーさんの書かれた「師走に書いても鬼は笑うか?」というブログ記事でこういう指摘がありまして。


来年も日本を含め、シミュレーションゲーム界のゲーム出版ラッシュは続くと思われます。10年前でも、コマンド日本版にゲームジャーナルだけで年10作でした。近年はこれにバンザイマガジンが年4作程度加わってるので、日本の雑誌付録ゲームだけで月一プレイだと消化しきれない量になりました。これに海外ゲーム付雑誌の和訳のあるものが加わります。その上にボックスゲームはまた別枠で存在してます。プレイするゲームは可能な限り絞らないとプレイしきれない時代です。

(中略)

何度もプレイして研究してもらえるゲームなんて初見で引き込めた一握りの作品になるでしょう。自戒をこめて書くのですが、何度もプレイしなければおもしろさが伝わらないゲームは初見で捨てられちゃうのです。


 うーん、これは作り手としての問題意識もあると思うのですが、確かにプレイしきれない時代ですよね…。でもクリス・アンダーソンがロングテール理論を提唱して早20年、消費者が多種多様な商品にアクセスできるのは当たり前になっていますよね。ウォーゲームもその埒外にあるわけではなく、逆に多数の作品が出されるのをポジティブにとらえたほうが楽しいんじゃないかと個人的には思います。

 でもポジティブって具体的にどういうことよ、って話なんですけど、最近は出版数が増えているだけでなくテーマというか取り扱う時代・地域も多様化していますよね。日本ではWWⅡ以外はあんまりウケない、他に強いて言うならナポレオニック?みたいな印象が個人的にあるんですが、それもじわじわと変わってきているんじゃないでしょうか。例えば2017年のこのインタビューでは

日本での定番と言えば,戦国時代と東部戦線,太平洋戦争です。最近は日中戦争も意外とイケるテーマになりましたが,当時は厳しい状況でした。一方,米国では南北戦争と独立戦争が定番で,それらは日本市場でウケが悪い。

と書かれていましたが、南北戦争、いまは結構受け入れられていますよね。

 こういったウォーゲームの多様化は海外でも見られるようで、以前ブログでも紹介しましたがあるユーチューブ番組のホストが、最近はユニークな題材のゲームが出てきていて、バルジやスターリングラード以外のものをプレイしたいという新しい層が現れているって言っていました。


 実際、ウォーゲームではマイナーな中世を扱ったLevy&Campaignシリーズは続々と新作が出ていますし、19世紀半ばの会戦をシミュレートするLes Grandes Batailles du temps de Napoléon IIIシリーズは今年も一作でたうえに、ついにケーニヒグレーツも出されるようですし。


 で、この多様化っていうのが先日ジブセイルゲームズさんが書かれたブログ記事「ラストワンフィート:ウォーゲームの普及に関する話」の内容とリンクするんじゃないかと。というかリンクさせられたらいいなあという願望があるんですが。記事にはこんなことが書かれています。


決して少数でない“若い世代”が“男女を問わず”足を運んでくれます。その場限りになってしまう人が多数ではありますが、その後、毎回お会いすることになる若い世代もいらっしゃいます(さすがに少数ではありますが)。


 いやー、嬉しいなー。たぶんですけど、ジブセイルゲームズさんが書かれている若い層の方々が興味を持つウォーゲームは、WWⅡに限らないんじゃないかと。バルジやバルバロッサ、ミッドウェーといった、1960年代後半から1970年代前半生まれのウォーゲーマーの間における定番テーマ、いわば共通言語ですけど、それを当然のものとして共有せず、様々な時代や地域の戦いをフラットな目で見られるんじゃないかなあと。もしそうだとしたら、ウォーゲームの多様化はこういった若い層にアピールするんじゃないでしょうか。でもまったくのあて推量で、というかかなり願望はいっているんですけど、実際どうなんでしょうかね。


 なんてことを考えていると、


ぜひ即売会に自分のブースを構えられて“ラストワンフィート”の知見をされてはいかがでしょうか


 っていう一文がグサッと刺さってきて、いや、自分、売れるようなもの作れないし…と日和ってしまいました。それに辺鄙なところに住んでいるので即売会に参加する物理的ハードルが高いんですよね。東京に出るのに移動で丸一日消えてしまうんですよ。ははは…。


 でも先日女子大で授業をやる機会があって、授業のテーマが民族問題だったもんですから強引にでもウォーゲームを紹介できるのでは、と妄想を膨らましていたんですが。チキンな自分には無理でしたよ…。だって女子大生の集団にウォーゲーム紹介って、無理ゲーでしょ?! (こういった固定観念にとらわれていてはいけないとわかっているのですが)。それに、民族対立ではなく民族共生の話をしちゃったし。というかですね、ワンフィートどころか、リモート授業だったんで文字どおり生徒さんとの距離感がつかめなかったんですよね。でも何とか機会を見つけて、新しく出てきている層に接することはできないかなと思っています。そして中世に興味がある人がいればMen of Ironを熱く押したい!なんて夢想しています。


2024年3月25日月曜日

日本のウォーゲームは質が高いのになぜ英語版があまり出ない?などなど、ウォーゲーム英訳者が語ってくれました

  先日、ゲームジャーナルの「フランス革命 1789」を英訳したっていうツイートを見たんですが、そうつぶやいたScott Muldoon氏はこれまで日本のゲームを多く英語に訳してきたそうなんですね。そのScott氏がYouTubeで日本のウォーゲームについて語るってツィートを見て、お、これは見なくては、と思ったんですけど、日本時間早朝5時のライブ配信。こりゃ無理だわ、ライブ視聴はあきらめて後で見ようって日和ってたんですが、結局、生で見てしまいました。

 Scott氏が登場したのは、ウォーゲームのデザイナーとトークしたりするHomo LudenceというYouTubeチャンネル。「Exploring Japanese Tabletop Wargames」というタイトルで、1時間強にわたるトークセッションとなりました。眠かったけど面白かったので最後まで見ましたよ。

 今回のトークはいろんな話題に飛んだんですが、日本のウォーゲームの歴史についてもざっと説明してくれていました。鈴木銀一郎のことはgrandfather of Japanese wargamesって言ってましたね。あと、ウォーゲームが冬の時代を迎えた後「ゲームジャーナル」と「コマンドマガジン」が創刊されたというのは日本のウォーゲーマーだったらたいてい知っていると思うんですけど、out of ashesなんて表現を使っていました。たしかにあのころはウォーゲーム業界は悲惨な状況だったみたいですからね。それと、Tetsuya NakamuraとYasushi Nakaguroの二人は海外で最も知られているデザイナーだそうです。(でも、「ふ~ら~中村」とは言わないのね。)

 「コマンドマガジン」と「ゲームジャーナル」について結構話していて、それにBonsaiゲームズのゲームについては何回か触れられていたけど、BANZAIマガジンへの言及は無かった気が。惜しい。あと、和栗南華氏という若いウォーゲーム・デザイナーが出てきてることも紹介してほしかったなー。(あ、別に自分はBANZAIマガジンの回し者じゃありませんよ)

 日本のゲームは質が高いのに、なぜあまり英語化されないのか?という質問が出たんですけど、この業界の人手不足(というか収益体制の問題かな?)があるようです。Scott氏が一緒に仕事をしたウォーゲームのパブリッシャーの多くはフルタイムの社員がほとんどいなかったとのこと。ウォーゲーム業界はこのホビーを愛する人たちによって支えられており、そういった人たちが自分の時間とエネルギーをつぎ込むことでこの業界は成り立っているみたいですね。Scott氏も、仕事としてよりもまずは自分がプレイしたいと思ったゲームを訳してみるって言っていました。

 それと、日本の歴史があまり欧米では知られていないから関心を引かない、という点も指摘されていました。戦国時代や明治維新っていったら日本で人気ですが、アメリカで知っている人は多くない、と。でも、この番組のホストのFrédéric Serval氏が、最近はユニークな題材のゲームが出てきていて、バルジやスターリングラード以外のものをプレイしたいという新しい層が現れているって言っていましたね。その潮流が強まれば、日本史ゲームや、武士ライフなんかも英語化される可能性が出てくるのかな?

 Scott氏が手掛けたゲームで次に出るのは、という質問に、一ヶ月ほど前、中村氏の激闘シリーズの「激闘!ロンメル軍集団」と「激闘!マッカーサー国連軍」を訳したって答えたら、Frédéric Serval氏が「今すぐプレイしたい!」って突っ込んでいました。やっぱり「Victory Lost」に始まる激闘シリーズは海外でも人気なんでしょうね。今回のトークでも結構激闘シリーズについて語っていました。それと、「フランス革命 1789」もちょうど最近英訳したってScott氏が言ったら、「誘惑するのはやめてくれ」ってFrédéric氏が笑ってました。うーん、やっぱりゲームのことを聞くとプレイしたくなるよね。もっと日本のウォーゲームが英語で出ないかなー。

 すっごく好きで、英語版が出てほしい日本のウォーゲームは?と聞かれて、好きなのがありすぎて選べないってScott氏が答えたんだけど、とりあえず今一つだけ選ぶとしたら、と重ねて聞かれると、Bonsaiゲームズの「ライズ・オブ・ブリッツクリーク」を挙げていました。1940年の西部戦線を扱ったゲームはたいてい独軍が強力だけど、このゲームは、仏軍が数的にも優勢なのになぜ負けたのかということをシミュレートしている数少ないゲームだそうです。へー。でもこのゲームは英語化がもう決まっているそうですね。

 あと、最後の方で日本のウォーゲームのグラフィックの特徴は、という質問から、日本はゆるい(relaxed)っていう指摘が出て、あるカードゲームの英語版は実際の歴史的な写真を使っているのに、オリジナルの方はアニメギャルがビキニを着ていて、なんて例が出されていたけど、「ばるば★ろっさ」かな。でもあれって英語版あったっけ。で、その話の流れで「ぱんつぁー・ふぉー」の1と2が出されてきて、そのうち「MC☆あくしず」も登場するんじゃないかとひやひやしましたよ。いや、別に日本の雑誌として紹介していただいても問題ないんですけどね。それと、ゲームジャーナルのリプレイマンガでは毎回、冒頭に女性のイラストが描かれていることについても、言葉を選んで話していて批判的な印象は受けなかったですね。

 と、1時間ちょっとのトークショー、結構楽しめました。日本人のウォーゲーマーだったら興味を持てる内容が結構あると思うので、よければ視聴してみてください。

2022年11月25日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑩

 ●第5ターン(続き)

 ロゲの部隊(赤)の二度目の活性化が回ってきた。老親衛隊最後の攻撃である。砲身も焼けよとばかりに熾烈な砲撃を加え、老親衛隊が突進する。鬼神のごとく暴れまわるVieille Gardeを前にして、隊列の乱れていた英連合軍が持ちこたえられるはずもなく多くのユニットが潰走する。さらには命からがら逃げようとする自軍の兵たちに巻き込まれて潰走するユニットも出てきた。

 JdGでは自軍ユニットを通過して潰走することができるが、通過されたユニットは士気チェックを行い失敗すると潰走してしまうのである。中世の会戦ゲームだとよくあるやつですね。

「ちょ、この老親衛隊の強さ、おかしくない? ワーテルローって最後は『La Garde recule!(親衛隊が後退している!)』ってなるんじゃないの?」

「勘違いしちゃいけない。このゲームは『La Garde avance!』なんだよ」


 ちなみに、ワーテルローのことを全然知らないのはまずいと思ってこのAARを書き進めながらOspreyシリーズの『Waterloo 1815』を読んでみました。イラスト豊富でページが少なくサクッと読了できるのでOsprey好き。で、親衛隊が敗退するシーンが結構よかったので引用しておきます。

The entire attack had been repelled. The perfect formations of just a few minutes before were now a single confused blue mass, highlighted with the glint of slashing steel as Vivian's and Vandeleur's light cavalry hacked within its midst. The impossible had happened. The invincible had been vanquished. A great, incredible sob spread along the French lines - 'La Garde recule! Sauve qui peut!'

("Waterloo 1815", p81)

(拙訳: すべての攻撃が撃退されていた。ほんの数分前には完璧な隊形を組んでいた諸隊が、今や混乱した青い一つの塊となっており、VivianとVandeleurの軽騎兵がその中を切り裂いていくと鋼鉄の刃のきらめきが見る者の目を奪った。あり得ないことが起こったのだ。常勝の兵が打ち負かされたのだ。フランス軍の戦列に沿って、大きく、信じ難いどよめきが広がっていった―「親衛隊が退却! みな我が身を守れ!」)

 なんかこの辺り、筆者も思わず力が入ったんじゃないですかねっていう印象。ワーテルローのクライマックスですからね。ナポレオンやフランス兵たちの愕然とした気持ちが伝わってきます。そういえば「La Garde Recule!」っていうゲームもありますよね。


 それはさておき。フランス軍はロゲの部隊(赤)以外はボロボロであるものの、老親衛隊に続けとばかりに最後の気力を振り絞って奮戦する。ネイの部隊(青)の生き残りの砲兵が、至近距離からの砲撃で敵騎兵を混乱状態に。そして左翼ではバシュリュの潰走ユニットがまさかの回復。さらに右翼のドンズロの部隊(緑)が続く。砲撃で敵騎兵を混乱状態にし、そこに騎兵がシャルジュ! 潰走していく敵騎兵を追撃して壊滅させた。

 ここでやっと英連合軍の中央部隊(青)の活性化。英連合軍で最大兵力を擁していた中央部隊だが、もう反撃するための歩兵が残っていない。残存砲兵で砲撃をするものの老親衛隊は耐えた。英連合軍の指揮官たちは敗走する歩兵たちを押しとどめようと声を張り上げる。そんななか、騎兵が奮戦し老親衛隊を1ユニット潰走させた。

 そしてターン最後の潰走移動。英連合軍予備部隊(緑)の2ユニットがマップ外に消えていった。


 こうしてナポレオン最後の賭け、親衛隊の攻撃は幕を閉じた。最終結果は、英連合軍15点、フランス軍21点。その差6点で惜しくも引き分けとなった。


 今回の対戦はJours de Gloireシリーズどころかナポレオニック初心者同士のプレイだったけど、両者とも楽しめました。なんといってもフランス軍は老親衛隊を指揮する高揚感を得られますからね。悲壮感もたっぷりだけど。英連合軍も簡単ではなく、どこまで守っていつ反撃するかの判断を迫られます。チットプルによる先の読めなさ、それに非命令下で攻撃に出るかどうかという迷いが、ずっと緊張感を与えてくれますね。

 それに何といっても秀逸なのが、マップをワーテルローの戦場の中央に限定して親衛隊の攻撃にフォーカスを当てたこと。ウーグモンとラ・エイ・サントは進入不可でZOCを持つヘクスというバッサリとした処理によって、プレイが中央の高地をめぐる戦いに集中されます。ワーテルローの他のゲームはほとんど知りませんが(BANZAI 15号はクロノさんから購入済みだけど、事情があって手にするのはかなり先の予定)、「La Garde Avance!」はワーテルロー戦の中でも独特の雰囲気になっているんじゃないかなと思います。


 あとでネットを見ていたら、デザイナーのFrédéric Beyが英連合軍の戦い方として、初期配置では複数の戦術グループに分割されている騎兵部隊と予備部隊を反撃のためにそれぞれ一つにまとめるようアドバイスしていました。今度試してみようかな。それよりもフランス軍の戦い方のヒントを教えてほしいんだけど、それを考えるものこの「La Garde Avance!」の楽しみなんでしょう。


2022年11月20日日曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑨

 ●第5ターン

 最終ターンである。このゲームでは、壊滅させたり潰走状態で残っている敵ユニットの数に応じて勝利得点が得られ、相手より7点以上多いほうが勝利する。ただしフランス軍にだけ重要ポイントの占領による得点があり、マップ上部の左のほうにある白線の街道(route)とオレンジ線の小道(chemin)が交差するヘクスをゲーム終了時に占領していれば7点得られる。

 ちなみにこの街道とマップ右端を走る街道がモン・サン・ジャンという町というか集落で交わってブリュッセルまで続いているようなので、この街道までフランス軍が進出するというのは英連合軍にとっては結構やばいってことなんでしょう。

 今のことろ損害数ではフランス軍が2ユニット多いが、老親衛隊の攻撃で英連合軍は混乱状態のユニットが多い。ゲーム前半とは逆に、ウェリントンにとっては精神的に厳しい状況になってきた。


 ターン最初の戦略イニシアティブ(initiative stratégique)を決めるサイコロに、両プレイヤーとも力が入る。イニシアティブをとったほうが最初に活性化する部隊を選べるのだ。フランス軍としては敵に態勢を立て直す余裕を与えることなく老親衛隊で攻撃を続行したいし、英連合軍は残存兵力で防御ラインを引くとともになるべく多くのユニットを回復する必要がある。

  両プレイヤーがふったサイの目は、仏軍4、英連合軍3でフランス軍がイニシアティブをとった。Vive l'Empereur!! 当然、ロゲ(赤)率いる老親衛隊が動く。

 このままの勢いで邁進して7点のボーナスポイントを得られる交差点ヘクスを狙うか。だがそうすると、ユニット数に劣る老親衛隊は回復してきた敵の包囲攻撃を受けるかもしれない。それよりは弱体化している英連合軍に老親衛隊をぶつけて敵戦力の撃滅を図ったほうが確実だ。

「え、このゲームってワーテルロー最後に親衛隊を投入してのナポレオンの賭けなんでしょ。ここは男らしく突破を狙わないの?」

「うるさい。老親衛隊は割高なんだよ」

 通常のユニットは壊滅すると2点だが、老親衛隊と親衛隊騎兵(Cavalerie de la Garde)は3点なので、無理に突進したはいいものの包囲攻撃を受けて退却できずに壊滅、という事態は極力避けたいところである。しかしプロイセン軍が右翼から攻撃しているというギリギリの状況で安パイを狙っていいのか、ナポレオン。


 そんな批判をよそに、ロゲ率いる老親衛隊が猛威を振るう。士気の高い精鋭部隊の攻撃をうけた英連合軍は、あるいは混乱して退却、あるいは潰走、壊滅していく。見る見るうちに高地中央部の自軍ユニットが掃討されていくのをみて顔が引きつる英連合軍プレイヤー。

「ふん、これぐらいで動揺してたらウェリントンたる資格はないわ!」

と強がりを言うものの、前ターンの後半でせっかく多くのユニットが回復したのに元の木阿弥どころか状況は悪化している。


 英連合軍はほとんどの歩兵が混乱状態になった今、ここは騎兵を使うしかない。ロゲ部隊(赤)の壮年親衛隊に向かって、戦力9,士気5の精鋭騎兵がチャージ! 

 この壮年親衛隊は砲撃で混乱した後に回復していたため、方陣は解かれていた。「La Garde Avance!」では特別ルールで親衛隊は自発的に方陣を解くことが禁じられていると先述したが、混乱状態になると方陣でなくなるのである。方陣を解いた歩兵は騎兵の突撃に対して不利となるが、さすがは親衛隊、敵騎兵が迫ってきたのを見るや、即座に方陣を組む。

 JdGでは、突撃された歩兵は正常状態であれば方陣を組むことができる。1d10で士気以下が出れば成功なのだが、失敗すると混乱状態になる。突撃してくる騎兵を前にして方陣を組もうとして失敗し、逆に隊列が乱れた、という感じか。

 方陣に対する突撃は、突撃のDRMボーナスが無くなるどころか-2の不利な修正となる。ファランクスやシルトロン、Gewalthaufenなど、がっちり守る歩兵への突撃が自殺行為なのは古来変わらずですな。

 だがJdGでは、突撃の標的ユニットが方陣を組んだ場合、突撃の中止(rappel de la cavalerie)ができる。兵質チェック(test d’engagement)を行い、成功した場合は1へクス後退、失敗した場合はそのまま突っ込むことになる。

 突撃してきた英連合軍の騎兵は兵質(Valeur d'engagement)が5と高く、親衛隊が方陣を組んだのを見るや突進を止めて後退した。いやー、こういう攻守の駆け引きも結構好きです。ちなみに突撃しようとした騎兵はVivianの部隊で、史実のワーテルローの戦いでは後退する親衛隊に突撃してとどめをくらわしたらしい。

 

 続けて英連合軍は予備部隊(緑)で反撃。敵右翼(マップ右方)で弱体化しているドンズロの部隊に追い打ちをかけ潰走させた。それに先ほどの攻撃で、後退する敵を追って高地から駆け下りてきた老親衛隊の第二猟兵連隊第二大隊が側面をさらけ出している。好機、いつまでも老親衛隊の好きにさせてたまるか!と攻撃すると、さすがの老親衛隊も後退。

 その後退した先は英連合軍ユニットの前面ZOCで、混乱状態になってしまう。さらに戦闘結果で士気チェックが課せられていたため失敗すると潰走になるところだったが、混乱状態でも5という高い士気を維持する老親衛隊は踏みとどまった。


 英連合軍は多くの歩兵が混乱状態であるものの、フランス軍も両翼がほぼ崩壊しさすがの老親衛隊にも損害がでている。両者ともにフラフラになりながらの最後の殴り合いである。


つづく

2022年11月16日水曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑧

 ●第4ターン(続き)

 老親衛隊の攻撃であれよあれよという間に多くの歩兵が損害を受け、さらには反撃も失敗に終わった英連合軍だが、砲撃で敵を牽制しつつ中央に歩兵をかき集める一方、混乱状態のユニットの回復に努める。だがもともと歩兵の数に余裕があったわけではないため苦しい状況で、騎兵までもが防御に駆り出される。


 実は両プレイヤー共、いつも中世の会戦級ばかりプレイしていてこの時代の騎兵の運用についてはほとんど無知である。

「いつもみたいに、歩兵なんぞ相手になるか! みたいな感じで暴れさせちゃ、いけないんだよね?」

「うーん、数百年違うからね。というかみんな槍や剣じゃなくて銃持っているし、ちゃんと組織だった行動するよう訓練受けた軍隊だからね、やっぱまずいんじゃないの」

と妙に慎重になってしまう。実際、JdGでは騎兵が突撃をせずにショック攻撃を行う場合、-2の不利なDRMが課される。

 だが今、英連合軍最左翼(マップ右端)の騎兵の前には混乱状態となったドンズロ隊の歩兵がいる。ここで突撃しないんだったら馬に乗る資格なし、というシチュエーションだ。当然、突撃である。


 JdGの騎兵の突撃(charge-仏軍がやるときは「シャルジュ」と言ってあげてください)は強力で、重騎兵は+3のDRM、通常の騎兵は+1を得られるうえ、このDRMボーナスを維持しながら行われる追撃(poursuite)の回数に制限がない。混乱状態や潰走している敵集団に突撃すると、ガンガン追撃が続くのでやられる側は泣きそうになる。

 ちなみに重騎兵ユニットにはLと書かれているのだが、lightの意味にとってしまって思わず軽騎兵扱いしてしまいそうになる。lourd(重)のLですからね。でもフランス語では軽はlégèrで、こっちも頭文字がLだからややこしい。あ、cavalerie(騎兵)は女性名詞なんでlourdeとlégèreか。こういう細かい文法、マジ苦手。



 混乱状態で騎兵の突撃を受けたドンズロ隊の歩兵は恐慌状態に陥り潰走していった。だが英連合軍騎兵が調子に乗って追撃した先には砲兵と騎兵のスタックが待ち構えており、逆に混乱状態になって撃退された。


 そしてロゲの部隊の活性化が回ってくる。砲撃で敵に損害を与えたのち、高地中央部で不用意に突出していた英連合軍騎兵を包囲攻撃して壊滅させる。さらには老親衛隊が暴れまわり英連合軍の歩兵2ユニットが混乱状態に。ウェリントンは使える歩兵がいよいよ枯渇してきた。


 だがこの後は英連合軍の活性化が続いた。まずボロボロになっている中央部隊(青)で4ユニットが回復。そして予備部隊(緑)の歩兵が老親衛隊を攻撃。必死の反撃に老親衛隊も後退を余儀なくされる。だが後退した先は英連合軍ユニットの前面へクス。JdGでは敵の前面へクスに退却ができるものの、混乱の結果を被ってしまうのだ。そのため老親衛隊も混乱。ショック戦闘で老親衛隊初の損害である。そして反撃が成功したのを見て兵たちが奮い立ったか、予備部隊(緑)でも混乱ユニットが回復していった。

 そして、まだまだ終わりじゃないぜと言わんばかりに英連合軍の騎兵部隊(灰色)の活性化が回ってくる。歩兵の反撃で老親衛隊に損害を与え、さらには続々と兵たちが回復してきていて英連合軍が盛り上がっているとき。そのタイミングで、さっき一回突撃しただけでこれまで見せ場がほとんどなかった騎兵部隊にやっと活躍のチャンスが回ってきたのだ。老親衛隊は確かに強力だが、その両隣の弱小部隊を蹴散らしてやる。英連合軍の左右両翼にいる騎兵計3ユニットがチャージ! 

 だが騎兵部隊は非命令下で、兵質チェック(test d’engagement)に成功しないと突撃ができず、1ユニットのみチェックに成功。おい~、いいところなのに~。なんとか突撃した騎兵は、これまでの砲撃で混乱状態になっていたバシュリュの歩兵と砲兵のスタックを壊滅させた。



 ここで第4ターンが終了。残るは1ターンのみ。老親衛隊は敵陣を突破して皇帝陛下に栄光をもたらすことができるのか。それとも歴史は繰り返されるのか。


つづく

2022年11月7日月曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑥

 ●第3ターン

 Jours de Gloire(JdG)シリーズでは毎ターン冒頭、活性化チットを引く前に戦略イニシアティブ(initiative stratégique)フェイズがあり、両軍1d10を振って自軍総指揮官のダイス修正値(Modificateur au dé, MD)を足し、大きい数のほうのプレイヤーは一番最初に活性化する部隊を選べる。ナポレオンとウェリントンのダイス修正値は同じなので、単純にサイの目勝負となる。


 このターンのイニシアティブは英連合軍が得た。当然、最大兵力を擁する中央部隊(青)を活性化し、老親衛隊を砲撃する。だが老親衛隊は7や8という高い士気を誇るのだ。士気チェックの結果が出ても、80-90%の確率で無傷なのである。

 中央部隊の砲撃に微動だにしない老親衛隊。その右翼に位置するドンズロの部隊(緑)は、ナポレオンの命令を受けていなかったが親衛隊の姿を見て意気があがったか、歩兵が高地に向かって攻撃、奮戦のうえ敵を後退させた。



 JdGでは各ターン最初に命令フェイズ(Phase d’ordres)があり、各プレイヤーはどの部隊を命令下(Ordres Reçus)にするか相手にわからないように決める。命令下にできるのは総指揮官の命令値(Potentiel d’ordre)の数まで。ナポレオンとウェリントンの命令値は2である。それ以外の部隊は非命令下(Sans Ordres)となり、行動が制限される(命令下にできる部隊数についてはもう少し規定があるのだが、後述する)。なお、命令下、非命令下のマーカーはターンの最初に相手プレイヤーにどの部隊が命令下かわからないように裏返しにしてユニットの上に置くのだが、このAARでは見た目重視でユニットの下に置いています。

 このターンのドンズロの部隊は非命令下だったため、歩兵がショック攻撃を行う際に兵質チェック(test d’engagement)を行い、1d10を振ってそのユニットの兵質(Valeur d'engagement)以下を出さないと攻撃できない。ドンズロの歩兵の兵質は4で成功の確率は50%だったが、皇帝陛下の親衛隊を支援するという使命感に燃えたのか命令なしに攻撃できたのである。



 砲撃で必死に防戦する英連合軍は、ロゲの部隊に1ユニットだけ含まれている壮年親衛隊の第三擲弾兵連隊第二大隊を何とか混乱させ、仏軍左翼のバシュリュの歩兵にも損害を与えた。だがついに老親衛隊が英連合軍の戦列にとりつき、その破壊力を発揮する。


 JdGのショック攻撃では、戦力比、士気差、地形などをDRMとして1d10を振って大きな数が出るほど攻撃側に有利な結果となる。同じデザイナーのAu fil de l'épéeシリーズの白兵戦と似たようなシステムである。老親衛隊は戦闘力が3や4と低いため、戦力比から不利なDRMとなることが多い。例えば攻撃:防御が1:2の場合、DRMは-2。だが士気差がそのままDRMとなるため、士気7の親衛隊が4の歩兵を攻撃した場合DRM+3となって、2倍の兵力の敵を攻撃する不利を簡単にひっくり返してしまうのだ。


 老親衛隊の第二猟兵連隊第二大隊と第二擲弾兵連隊第二大隊の2ユニットが、右翼の丘に布陣する予備部隊歩兵を攻撃。斜面を登る攻撃でありながらも、老親衛隊の高い士気と正面と横からの連携攻撃のおかげでDRMは+5となり、戦闘結果は突破(choc de rupture)となった。JdGのショック戦闘では、DRMを適用したサイの目が10以上だと攻撃側は突破となり、戦闘後前進をしてさらに攻撃ができる。さらに、このゲームの特別ルールで親衛隊は自分から方陣を解くことができないのだが、例外的に突破を行うと方陣を解除できる。混乱状態となって後退する敵歩兵を目にして、老親衛隊は方陣から脱して猛追、潰走させた。



 左翼(マップ右方)が予想以上の損害を受けた英連合軍。予備部隊(緑)が活性化となったため、中央部にいる予備部隊を投入して反撃しようとするが問題があった。命令は部隊ごとに割り当てると上述したが、もし部隊が拡散している場合、戦術グループ(groupe tactique)に分けられ、戦術グループ単位で命令下、非命令下となる。具体的には、自部隊の他のユニットから3へクス以上離れているユニットは別の戦術グループになる。このターン、英連合軍はマップ右方の予備部隊の戦術グループを命令下としており、中央の戦術グループは非命令下だったのだ。


 非命令下だとショック攻撃の際に兵質チェックが必要など行動が制限される。だが戦術グループごとに1d10を振って活性化チット(Marqueur d’Activation, MA)のイニシアティブ値(valeur d’initiative)以下を出すと、その戦術グループのすべてのユニットが命令下と同じ状態になる。ただ失敗すると回復以外何もできなくなるため、ある意味ギャンブルである。イニシアティブ値はその部隊の指揮官がどれだけイニシアティブをとるかを表しているようだが、英連合軍の多くは4であるのに対し、ワーテルローの激戦で消耗しているドンズロは3,バシュリュは2とかなり低い。


 中央部にいる予備部隊(緑)の戦術グループはイニシアティブのチェックに無事成功、老親衛隊に反撃する。だがさすがは老親衛隊、ショック攻撃を受けて士気チェックの結果が出ても、7という高い士気のおかげで整然と1へクス後退するのみに終わった。一方、マップ右端のドンズロの部隊への反撃は成功。ドンズロ部隊が持つ歩兵は2ユニットとも混乱状態となった。



 

つづく

2022年11月4日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑤

 ●第2ターン


 第1ターンの英連合軍の反撃によって高地上に残っている壮年親衛隊は第三猟兵連隊第一大隊のみとなっていた。ところでChasseurって、猟兵でOK? まあとにかく、1ユニットしか残っていない親衛隊を英連合軍は袋叩きにして壊滅させる。さらに前ターンの親衛隊の砲撃と攻撃で多くのユニットが混乱状態になっていた英連合軍の中央部隊だが、順調に回復していった。


 JdGでは各部隊の活性化は、砲撃、移動、攻撃、回復という手順になっている。活性化中に何も行動をせず敵に隣接していないユニットは回復(ralliement)を試みることができ、1d10を振って士気以下が出れば混乱ユニットは回復する(潰走ユニットの場合はサイの目が1不利になる)。

 つまり士気の高いユニットほど回復しやすい。当然親衛隊はすぐに回復する、と思いきや、壮年親衛隊ユニットは混乱状態だと士気がガクンと落ちるのである。通常のユニットは混乱状態だと士気が1下がるだけだが、壮年親衛隊は3も低くなる。高い士気を誇る精鋭だが、いったん混乱状態になると脆弱で回復もしにくくなるのだ。有能だけど怒られるとすぐに気弱になっちゃう子、という感じか。デザイナーズノートによると、この局面での壮年親衛隊の士気は明らかに揺らいでいて、それを反映しているそうだ。



 ここでロゲの老親衛隊(赤)の活性化が回ってくる。ネイの部隊の攻撃によって一時は危うくなった英連合軍はほぼ回復し、壮年親衛隊の攻撃なんかあったっけ、と思わせるような強固な防御ラインが高地上に再び構築されている。こんな相手に攻撃を仕掛け突破しないといけないのか。心折れそう。気持ちが沈む仏軍プレイヤーに対し、

「あきらめたら、そこで試合終了ですよ…?」

と、そっとささやく英連合軍プレイヤー。そのセリフ、こういう状況で敵から言われるとマジむかつく―‼ だが前進するしかない。じりじりと進む老親衛隊。ネイの部隊の砲兵がそれを援護する。敵中央部隊の歩兵を集中砲撃によって潰走させた。


 中央部隊(青)の活性化となった英連合軍。歩兵の援護なしに中央高地上で孤立している敵砲兵を屠るか。だがその後、まず確実に老親衛隊が襲ってくる。ここは守備を固めるべき。そう考えた英連合軍プレイヤーは突出している歩兵を後退させ、混乱しているユニットの回復に努めた。


 ネイの壮年親衛隊が事実上壊滅した以上、老親衛隊の他に仏軍が使えるのは右翼のドンズロの部隊(緑)と左翼のバシュリュの部隊(黄色)。どちらの歩兵も戦闘力は8や9と高いものの、ユニット数が少ないうえ、バシュリュの歩兵は士気が3と低いため粘り強く戦うことは期待できない。もう夕方の7時ですからね、予備としてとっておかれていた親衛隊とは違って、そりゃ疲れていますよ。さらに左翼は平地が広がっており、敵の砲撃で混乱したところに騎兵の突撃をくらったら確実にアウトである。

 だが右翼は激戦の末に占領したラ・エイ・サントがある。このヘクスは両軍とも進入不可で、英連合軍に対しては周囲にZOCも及ぼす。右翼でドンズロの部隊が不利な状態になってもすぐには総崩れにならないだろう。しかも砲撃の応酬で敵最左翼(マップ右方)の砲兵が混乱状態となっている。好機と見た仏軍は、老親衛隊を支援するためにドンズロの歩兵を前進させ、敵の最左翼スタックに攻撃をしかける。攻撃を受けた英連合軍は歩兵が混乱状態になって後退、砲兵は潰走した。

 いいぞ、ドンズロ。ラ・エイ・サントの攻防戦で兵たちはすでに疲れ切っているはずなのによくやった。こうやって右翼でプレッシャーをかけている間に、老親衛隊はさらに前進。次ターンには敵戦列にとりついてその真価を発揮することだろう。





つづく

2022年11月1日火曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ④

 ●第1ターン(続き)


 JdGの砲撃では、砲兵ユニットの砲撃力(capacité de tir)や地形効果がDRMとなって1d10を振って解決する。砲撃力は砲門数を反映しているそうだが、このゲームでの英連合軍砲兵の砲撃力はほとんどが3で、方陣を組んでいる親衛隊が砲撃された場合10%の確率で混乱(désordre)し、40%の確率で士気チェック(test de cohésion, TdC)となる。士気チェックでは1d10を振ってそのユニットの士気(Cohésion)以下だと損害無し、そうでなければ混乱となるが、壮年親衛隊の士気は6あるため混乱する確率は30%。つまりなんやかんや合計すると22%の確率で砲撃を受けた親衛隊は混乱することになる(計算あってる?)。

 なので一回の砲撃で損害を受ける可能性自体はそれほど高くはないのだが、英連合軍の砲撃のサイの目や活性化チットの引かれた順番によっては、壮年親衛隊が砲撃で次々と損害を受け、それでも残存部隊が悲壮なまでの攻撃を行う(でも反撃でボロボロにされて仏軍プレイヤーのモラル崩壊)、というケースも珍しくない。


 ただ、ワーテルローのこの最終局面では英連合軍の砲撃の威力はかなり落ちていたのでは、と書いているAARもあった。弾薬が不足していたうえ、数と長距離射撃力で上回る仏軍砲兵からの砲撃で消耗していたし、仏軍騎兵の突撃で砲撃手が退却して多くは戻っていなかったことを考えると、もっと英連合軍の砲撃力を制限したほうがいいのでは、と提案している。自分はワーテルローのことは全然知らないんですけど、多くの資料ではそう書いてあるんですかね。



 第1ターンの仏軍だが、壮年親衛隊は無理に突っ込まずに後方の老親衛隊を待てばいいのでは、と思えるかもしれない。だが特別ルールで、壮年親衛隊がショック戦闘を行った次のターンからロゲ率いる老親衛隊の活性化が可能になるのだ。老親衛隊も壮年親衛隊同様に方陣を組んでいるので前線にたどり着くまでに時間がかかる。5ターンしかないこのゲームでは1ターンでも惜しく、第2ターンから老親衛隊を活性化させたい。そのため、ネイの部隊は敵戦列に全力で(とはいえ方陣だからゆっくりとだけど)向かっていったのだ。まあ、たまたま今回はかなり運に恵まれて壮年親衛隊が悲惨な状況にならずにすんだけど。



 余裕で守れると思っていたらいきなりピンチとなった英連合軍。ひるむな、反撃するのだ! 予備部隊(緑)が動く。戦列中央部で砲兵の援護を受けつつ歩兵が攻撃をしかけると、さしもの壮年親衛隊も耐え切れずに後退する。続けて中央部隊(青)の砲門が火を噴く。至近距離から砲弾を浴びて次々と混乱していく親衛隊。そこに英連合軍が歩兵をかき集めて包囲、攻撃すると親衛隊は後退できずに2ユニットが壊滅。さらには2ユニットが潰走(déroute)した。




「い、いいのさ。老親衛隊の封印を解くために壮年親衛隊は犠牲になる運命なんだから」

と平静を装う仏軍プレイヤー。やっぱりこのゲーム、フランス軍をやるには強靭な精神力が必要である。


 先述のように親衛隊はすべて方陣を組んでいるが、方陣だとZOCを持たないため、するすると敵軍が親衛隊ユニットの間隙を縫って来たり背後に回ってきたりするのだ。さらに移動力が低いうえ砲撃やショック攻撃を受けるとサイの目が1不利になるため、方陣を解かせてよ!と思いたくなる場面は多い。

 だが一応、方陣にもメリットがある。JdGにはユニットの向きがあって周囲6へクスのうち前面(front)2へクス以外は背面(arrière)となり、背面から攻撃を受けると不利になるのだが、方陣を組んでいるとこのルールの適用は受けなくなる。さらにショック攻撃は前面へクスに対してのみ行えるのだが、方陣だと周囲すべてが前面へクスとみなされるため攻撃方向に制限がない。乱戦上等、どっからでもかかってきやがれ!という感じである。


つづく


2022年10月29日土曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ③

 ●第1ターン


 ネイ率いる壮年親衛隊(青)が前進を開始する。「La Garde Avance!」の特別ルールで、第1ターンの活性化はネイの部隊から始まるのだ。高地上に布陣している英連合軍はずらっと砲門を並べているため、方陣を組んでゆっくりと進んで攻撃だなんてなんの罰ゲームだよと仏軍プレイヤーが愚痴る。このゲーム、仏軍をプレイしているとほんと精神力が試されます。守る英連合軍プレイヤーは

「クレシー、ポワティエ、アジャンクールと、有利な防御地形に拠っている英軍に対して臆せず果敢に攻撃していった輝かしい伝統がフランス軍にはあるじゃないですか。祖先を見習わないと」

と挑発。いやそれ、全部フランス軍がお手本にしちゃダメなやつだから。


 じわじわと前進する親衛隊に対し、英連合軍は中央部隊(青)の全砲門が一斉に火を噴く。次々と敗走するフランス兵、と思いきや、砲撃を受けても士気の高い親衛隊の隊列は全く崩れない。


 Jours de Gloire(JdG)ではユニットは、兵数を反映している戦闘力(Points de force)の他に、CohésionとValeur d'engagementという数値を持っている。Cohésionは砲撃や戦闘で損害を受けるかどうかや混乱からの回復チェックなどに使い、Valeur d'engagementは総指揮官から命令を受けていない状態(後述する予定)でも攻撃や突撃ができるかのチェックに使われる。

 それぞれ直訳っぽく訳すと結束値と交戦値となるかなと思うんだけど、なんか雰囲気が出ないと感じるのでこのAARではCohésionは士気、Valeur d'engagementは兵質と表記することにする。おかしいと思われた方は結束値や団結力など好きな言葉に置き換えて読んでくださいコムヴヴレ。

 士気は英連合軍の歩兵ユニットのうち約7割が4,残り3割が5なのに対して、壮年親衛隊はすべて6と高い。そのため砲撃をくらって士気チェック(test de cohésion, TdC)の結果が出ても損害が出ない可能性が高いのだ。


 ところで訳語といえば、JdGでは近接戦闘にあたるChocという攻撃があるんだけど、どう訳せばいいんでしょうね。ルールには「Chocは歩兵によって行われる場合は近距離射撃と銃剣による突撃の組み合わせで、chocにおいて歩兵は戦闘そして白兵戦に参加することができる。騎兵も歩兵同様にchocを行うことができる」って書かれている。個人的には白兵戦と表記したいんだけど、それだと射撃が含まれないし、「近接戦闘」とかだとなんか勢いを感じさせないし。まあ無理に訳さずにそのまま音読して「ショック」でもいいのかもしれないけど。じゃあformationは「フォルマシオン」でOK? 


 と思っていたら、BGGにJdGシリーズのルールの日本語訳をあげてくれている人がいました

2021年版ルールとのことで、「La Garde Avance!」をやる分には問題ないんじゃないでしょうか。なお、このAARでは自分の好きな訳語を使っているのでこの日本語訳ルールとは言葉が違う場合があると思います。


 それと、Vae Victisの公式サイトには「La Garde Avance!」の特別ルールの英訳がアップされています

前述のJdG共通ルール日本訳と併せてこれを読めば、フランス語を読まなくてもプレイできると思います。特別ルールは実質1ページなので読む負担はかなり軽いかと。(上記サイトにはJdG共通ルールの英語版もあります)


 閑話休題。自軍砲撃のあまりのサイの目の悪さに茫然とする英連合軍プレイヤーだったが、追い打ちをかけるようにネイの部隊の活性化チットが引かれて愕然としてしまう。このゲームでは各部隊ごとに2枚の活性化チット(Marqueur d’Activation, MA)が用意されており、基本的に1ターンに2回活性化できるのだ。

「マジ? 無傷の親衛隊が攻撃してくんの!?」

 仏軍はまず砲撃で敵中央部を混乱させたのち、壮年親衛隊が突撃。砲兵はショック攻撃を受けると防御射撃(tir de réaction)ができるため、砲兵スタックへの攻撃はリスクがあるのだが、至近距離からの砲撃をものともせず親衛隊が突っ込んでいく。

 防御側の英連合軍ユニットは高地上で戦列を引いているが、実際の戦いでは稜線の向こう側で身をかがめてフランス軍の視界から隠れていたらしい。そのため、特別ルールでゲーム当初はこれらのヘクスは平地(Clear)ではなく荒地(Difficile/Coupé)とみなされ防御に有利になる。だが高い士気を誇る親衛隊は待ち構えていた敵にひるむことなく猛攻。精鋭部隊の攻撃に英連合軍はたまらず混乱状態になり退却を余儀なくされた。いきなり中央突破か?




つづく

2022年10月27日木曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ②

  「La Garde Avance!」の初期配置は写真の通り。このゲームは1ターン20分で1へクス100mと、JdGシリーズの他のゲームよりは規模が小さくなっている。なお、親衛隊は最初から方陣(carré)を組んでいるので方陣マーカーをユニット上に載せるんだけど、見ため的にユニットが現れているほうがいいのでマーカーは下に置いている。このやり方はネットで見つけたAARからパクり……見習わせてもらいました。



 ところでナポレオニックの言葉って定訳があると思うんだけど、ぜんぜん自信がありません。だって、家にあるナポレオン関連の書籍っていったら池田理代子の『エロイカ』ぐらいなんですよ。詳しい方、優しく教えてくださいシルヴプレ。Vieille Gardeは老親衛隊でOK? で、Moyenne Gardeは中年親衛隊?? でも「中年親衛隊」って聞くと、アイドルにはまったおっさん集団が推しのライブで夢中になっている絵が思い浮かぶんだけど……あわわわわ、皇帝陛下の親衛隊を茶化すようなこと言ってすみません。自分が馬鹿でした。ナポレオニック好きの方、怒らないで! バヨネットをこっちに向けないで! ヴィーヴ・ランペルール! La Garde meurt mais ne se rend pas!! 

まあ、Vieille Gardeは老親衛隊と書くのが自分的にはしっくりくるので、Moyenne Gardeのほうは壮年親衛隊と書くことにします。ただvieilleとかmoyenneというのは所属する兵の年齢ではなくて、編成された時期から来ているみたいですね。だったら「古参」「中堅」とかのほうがいいのかな。というか、gardeって女性名詞だったのね。


 で初期配置のフランス軍のほうだけど、ネイ率いる壮年親衛隊の後方にロゲ(Roguet)の老親衛隊が控えており、右には第一軍団ドンズロ(Donzelot)師団の残余、左には第二軍団バシュリュ(Bachelu)師団がいる。これを迎え撃つ英連合軍(Anglo-allies)のほうは高地を占めている。JdGはチットプルで部隊(formation)ごとに活性化するのだが、フランス軍は上記4部隊に、英連合軍は中央(青)、予備(緑)、騎兵(灰色)の三つの部隊に分けられており、ユニットの上部の線の色で所属部隊を識別する。なお両軍の総指揮官(général en chef)のナポレオンとウェリントンのレーティングは同じである。

 マップ右端のラ・エイ・サントはフランス軍が占領しておりZOC(Zone de Contrôle)も及ぼす。ただし両軍とも進入不可。逆に左端にあるウーグモンは英連合軍が持ちこたえており同様にZOCを持つ。

 

 前述のとおり親衛隊はすべて方陣を組んでいる。JdGでは方陣を組むと移動や攻撃ができなくなるのだが、「La Garde Avance!」には特別ルールがあり、方陣を組んだ親衛隊ユニットは移動と攻撃が可能となっている。ヒストリカルノートによると親衛隊の大隊はすべてcarré ouvertという方陣を組んで前進した。散兵を配置せず、仏騎兵がほとんど消耗していたため敵騎兵の攻撃に対する防御の備えをしながら戦ったらしい。carré ouvertって「開かれた方陣」といった意味になるけど、定訳をご存じの方教えてくださいメルシーダヴァンス。

 まあとにかく、このゲームの親衛隊は方陣を組んだまま前進、攻撃をしなくてはならないのだが、移動力が半減して2になるうえに砲撃を受けるとサイの目が1不利になる。自分から方陣を解くことは禁じられており、さらには敵砲兵の射程内に配置されているため、のろのろと前進する親衛隊は砲撃のいいカモである。だがグルーシーは現れず右翼からブリュッヒャーが迫る今、フランス軍の勝利のためには敵の中央戦列を打ち破るしかないのだ。断じて行えば鬼神も之を避く。デザイナーズノートでも、フランス軍プレイヤーが敵陣を突破するのは現実的に不可能ではないと書かれているではないか。


つづく

2022年10月24日月曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ①

  ワーテルローの戦いの最終局面、親衛隊による攻撃をシミュレートしている「La Garde Avance!」はナポレオニックの会戦級のゲームJours de Gloire(栄光の日々)シリーズの最新作で、今年3月に出たVae Victis161号の付録ゲーム。ウェリントンの粘り強い防御に消耗していくフランス軍。その右翼にはブリュッヒャー率いるプロイセン軍が迫る。だが激戦の末に戦場中央部の要衝ラ・エイ・サントを陥落させたナポレオンは、親衛隊を投入して中央突破の賭けに出る。果たして親衛隊は英連合軍の戦列を抜くことができるのか、という燃えるシチュエーションである。



 Jours de Gloire(JdG)シリーズはVae Victisの付録のほか、単体ゲームなどで計30作以上出ているらしい。その中で「La Garde Avance!」はマップが小さいうえ5ターンしかなく、プレイ時間は1時間とのことだから自分のようなJdG初心者でも気軽に遊べる。

 とはいえ、JdGでは命令を受けている部隊とそうでない部隊ではできることが違ったりとか、うーん、自分の脳みそのキャパではちゃんと理解できているか不安……と思っていたら、JdGの解説動画がユーチューブにありました。動画で説明してもらうとわかりやすいっす。いやルール読めばいいだろ、という話なんですけど、ふんだんに図で例示してもらえるとハードルが下がります。2014年にアップされたみたいでルールの細部は変更があるかもだけど、ルールやゲームの手順をざっくり把握するのに役立ちました。


 それにしてもワーテルローなんてメジャーテーマのゲーム、長い間怖くて手が出せていなかった。でもBANZAIマガジンの次号はワーテルローだ。乗るしかないだろこの波に! ということで「La Garde Avance!」をやってみた。

←ウソです、ごめんなさい。BANZAIマガジンのことはプレイしてこのAARを書き始めた後に知りました。

 「La Garde Avance!」をやってみたのは、たまたま前回プレイしたAu fil de l'épéeシリーズ(AFdE)のデザイナーFrédéric Beyがデザインしたゲームだから。だってFrédéric Bey先生、AFdEは2018年から新しいのを出してないし。Vae Victisでは162号でビザンツについて記事を執筆したりしているのになー。でも、別のデザイナーのゲームだけどA la Charge!シリーズは今年5年ぶりに新作が出たし、Bey先生、あきらめずに待ってますよ! それとBANZAI次号も期待してます。

 BANZAI次号の付録ゲームはSSワーテルローの再版らしい。SSシリーズといえばたしか昔シミュレイター誌に、中黒氏がSS川中島を日本のワーテルローだと言ってアメリカ人に売り込んでいたって書かれていた(自分の記憶違いだったらごめんなさい)。若い頃から国際的なマーケティングセンスがあることをうかがわせるエピソードで、栴檀は双葉より芳しというやつですか。


 というわけで「La Garde Avance!」なんだけれども、ナポレオン戦争は、まあその、なんだ、よく知らないんですよ。すみません。なのでまずはヒストリカルノートを読んでみた。Vae Victis161号には"L'infanterie de la Vieille Garde au combat"というタイトルで、親衛隊について1799年の執政親衛隊の創設からワーテルローでの敗戦までが6ページにわたって描かれている。筆者は「La Garde Avance!」のデザイナーFrédéric Bey。親衛隊は二百年以上たった今でも、ナポレオン軍の中でもっとも敬意を払われ研究されている、なんてこと書かれていたら読むしかないじゃないですか。親衛隊って精鋭部隊だよねぐらいの漠然としたイメージしか自分は持ってなかったけど、いろいろと勉強になりました。ということでヒストリカルノートを和訳してみました。ご興味ある方は下記リンクからどうぞ。





……なんてなことはしてません。だって、ナポレオン関連の文献は日本語でふんだんにあるでしょうからね。親衛隊のことを含めナポレオニックについてあんまり知らない自分がウォーゲーマーの中ではマイノリティなんだろうなあ。それと、デザイナーズノートでは親衛隊の士気などについて説明されていて面白かったです。


つづく

2022年10月22日土曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ⑥

 ●第10ターン 

 ブルゴーニュ軍の両端は兵力が足らず間隙が生じており、フランス軍の両騎兵部隊はそこに浸透。背後から白兵戦をしかけブルゴーニュ軍騎兵はたまらず潰走していく。フランス軍騎兵部隊がマップ右端へと前線を押しこんでいるため、中央のマクシミリアンの指揮が届かずブルゴーニュ軍は有効な対応が打てない。


 もうボロボロになったブルゴーニュ軍左翼騎兵部隊を率いるPhilippe de Clevesは、ギネガテの戦いの前からフランドル地方を治めフランスと戦っていた。ブルゴーニュ公シャルルが残した一人娘の公女マリーは領民たちから「美しき姫君」や「我らのお姫さま」と慕われていたのだが、Philippe de Clevesは幼い頃はそのマリーの遊び相手だったらしい。マクシミリアンとマリーの夫婦仲はよかったが、マリーは若くして亡くなる。その後マクシミリアンは神聖ローマ皇帝になり、ブルゴーニュ領ネーデルラントを帝国の勢力圏内に組み込もうとしたらしく、Philippe de Clevesはそんなマクシミリアンに対して反旗を翻す。あくまでブルゴーニュ公家そして幼馴染のお姫様マリーに忠節を貫いたということか。


 ブルゴーニュ軍は中央でもフランス軍の射撃によってじわじわと士気低下、はては潰走するユニットが出る。両翼の敵騎兵部隊に対応する必要があるため、ゲーム前半のときのように中央で積極的に攻勢に出ることができないのだ。マクシミリアンとしては耐えるしかない。



 

 最後の騎士と呼ばれたマクシミリアンはさまざまなエピソードを残しているのだが、狩猟で銃を使うのは卑怯、と弓矢でカモシカ猟をしていたそうだ。そういうこだわりが最後の騎士と呼ばれた所以ですかね。ある日、お供のものもついて行けないほどの峻険な岩山をものともせず一人でガンガン上っていき、狭い岩角に片足をかけ、弓矢を放っていた。だがあまりにも険しい場所だったためそこから動くことができず片足で立ったままになっていたという。いやなんかそれ、騎士というよりはギャグですか、という印象を受けるんですけど…。そうすること三日目、いずこともなく牧人が現れマクシミリアンを安全な場所に導いた。いまもインスブルックにはマルティンの岩壁という場所があり、これがマクシミリアンが三日間立ち尽くしていたところだと言われている。マクシミリアンを助けた牧人は天使だったとも伝えられているらしい。なんか、こういうおちゃめなエピソードが何百年も語り継がれているところに、マクシミリアンが人々に敬愛されたということがうかがえますな。

 ちなみに岩山で立ち往生、という話を聞くと、落石事故で右腕が岩に挟まれ、5日間の苦闘ののちに自ら腕をナイフで切断して脱出したアーロン・ラルストンを思い出す。母校のスピーチでもこの経験をポジティブに語っていて、すげーなーと。




●第11ターン 

 ターン最初の射撃戦で双方に潰走ユニットが出る。もともとユニット数が敵よりも少ないブルゴーニュ軍としては痛い。

 そしてフランス軍騎兵部隊の攻撃。目指すはブルゴーニュ軍の荷車列、お宝を奪うのだ! 欲に疲れも忘れたか、次々と敵騎兵を潰走、壊滅させていく。

 フランス軍右翼の騎兵部隊を率いる、フランス軍総指揮官Philippe de Crèvecœurは若い頃はブルゴーニュ側で仏王ルイ11世と戦ったりしていたが、マクシミリアンの舅ブルゴーニュ公シャルルが1477年に戦死するとフランスに寝返ったらしい。ギネガテの戦いのたった2年前ですね。この戦いの4年後にはフランス元帥(Maréchal de France)になっている。


 フランス軍は騎兵部隊と連動して中央の歩兵部隊も攻撃に出る。集中射撃で敵槍兵を潰走させた。フランス軍は得点を伸ばしていき、壊滅ユニットによる得点の差は2にまで縮まった。


●第12ターン

 最終ターンである。お宝頂戴! と全力で駆けるフランス軍騎兵だったが、おしくも一歩及ばず。だがフランス軍総指揮官率いる騎兵主力部隊が敵歩兵を壊滅させていく。


 中央では両軍ともに指揮官たちが陣頭に立って最後の死闘を繰り広げる。フランス軍の歩兵部隊を率いるAntoine de Choursesに至っては、指揮官自ら騎兵を率いて突撃。たまらず戦列を乱して後退するブルゴーニュ軍の歩兵。マクシミリアンを中心に、残り少ない兵力で必死に防戦、反撃する。




 そして長時間にわたった戦闘も終わりを迎えた。勝利得点は、フランス軍は51。ブルゴーニュ軍は敵ユニット壊滅によって同じく51、だがそれに加え、潰走状態の敵軍1ユニットにつき1点を得られるので、計55。両者の差は4で、この戦いは引き分けとなった。

2022年10月21日金曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ⑤

●第8ターン

 マップ下方でフランス軍騎兵部隊の攻撃が続き、この方面のブルゴーニュ軍騎兵部隊は半減、残存2ユニットとなった。ブルゴーニュ軍は中央から兵力を割いたものの、機動力の低い歩兵では敵騎兵による延翼運動への対応が遅れてしまう。さらには、ブルゴーニュ軍が潰走した際にはマップ右端に向かって逃走するのだが、そちら方面にフランス軍騎兵が回り込んできているため潰走できずに壊滅するユニットが出てきた。


 マップ上方でもフランス軍騎兵部隊の攻撃にブルゴーニュ軍騎兵だけでは対応しきれなくなってきている。ただしここは幸い、通行不能の川によってフランス軍騎兵の迂回運動は妨げられているため、歩兵部隊が支援に駆け付け反撃を行う。

 

 こちら方面のブルゴーニュ軍歩兵部隊を率いているのはNassau-Dillenbourg伯Engilbert二世。ギネガテの戦いのときはまだ20代の青年だったが、ブルゴーニュ公国の金羊毛騎士団に序列されている。1487年にはフランス軍の捕虜となり、莫大な身代金と引き換えに解放されているが、その後も長くフランドル地方でフランスに対抗した。


 ブルゴーニュ軍にとっては両翼の危機が続くが、総指揮官であるマクシミリアンは中央で動かない。なるべく多くの自軍ユニットを総指揮官の指揮範囲内にとどめ、柔軟な対応ができる態勢を維持するのだ。


 マクシミリアンはブルゴーニュ公シャルルの戦死後、いわば入り婿のような形でハプスブルグ家からブルゴーニュ公国に入っている。結婚相手であるマリーはシャルルの一人娘で、ブルゴーニュ家の人々にとっては我らがお姫様。その結婚相手だからマクシミリアンも一応受け入れたらしい。だがよそ者だったマクシミリアンは領内を精力的に回り率先して庶民と気軽に語り合おうとする姿勢を見せたため、次第に人々から好意を寄せられるようになったそうだ。

 ちなみにオーストリアから来たマクシミリアンはブルゴーニュ家で話されていたフランス語が分からず、マリーはドイツ語が話せないため二人は最初のうちは、当時のヨーロッパの共通語だったラテン語で会話をしていたそうだ。婚姻の際にマクシミリアンがマリーにダイヤの指輪を贈っており、婚約の際にダイヤの指輪を贈るという慣習のもとになったと言われている。いらんことしよってからに、と高価な婚約指輪をねだられた男性は思うんですかね。


●第9ターン 

 ブルゴーニュ軍の中央歩兵部隊の弓兵と槍兵の積極的な攻撃によって弱体化していたフランス軍中央歩兵部隊だったが、再編成に努め次第に戦力が回復してきている。白兵戦で攻撃に出るには戦力が足りないものの、射撃によってブルゴーニュ軍中央にじわじわと損害を与える。そしてフランス軍両翼の騎兵は敵後方への突破を目指して猛攻。ブルゴーニュ軍の損害が増え、気がついたら点差は11に縮まっていた。


 フランス軍が敵後方への突破をもくろむのは中央歩兵部隊と連携して敵を挟み撃ちするためだけではない。ブルゴーニュ軍がはるか後方に退避させている荷車4ユニットが標的なのだ。実際のギネガテの戦いではフランス軍騎兵は敵荷車の略奪に夢中になってしまい勝機を逸したが、このゲームではその誘導のためか、フランス軍は騎兵によって荷車を破壊すると10点のボーナスが得られる。荷車自体も1ユニット壊滅するごとに2点なので、一気に18点取って逆転する可能性があるのだ。フランス軍騎兵がどちらかの翼で突破した場合、騎兵がほとんど残っていないブルゴーニュ軍は荷車を防御するすべがないため、少しでも粘って戦列を維持するしかない。残りはあと3ターン。戦況は時間との戦いの様相を見せてきた。





つづく




2022年10月19日水曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ④

 ●第6ターン

ブルゴーニュ軍の射撃で、フランス軍歩兵部隊の指揮官Jean de Baudricourtとスタックしている騎兵が潰走。これは痛い。スタックしているユニットが潰走すると指揮官は一緒に潰走するのだ。だがフランス軍は右翼(マップ下方)にいる総指揮官の指揮のもと、歩兵部隊が反撃する。弓兵の集中射撃によってマクシミリアン直属部隊の弓兵が潰走した。さらにフランス軍右翼の騎兵部隊が正面のブルゴーニュ軍騎兵部隊を攻撃、2ユニットを士気低下状態で退却させる。そして左翼の騎兵部隊も機動力を生かして敵ユニットの間隙から背後に進入し攻撃。ブルゴーニュ軍騎兵部隊指揮官は士気低下状態となった騎兵とともに退却を余儀なくされた。


 ブルゴーニュ軍はここで総指揮官マクシミリアンの活性化が回ってくる。このままでは敵騎兵部隊が両翼を突破してくる可能性が高い。特に、左翼(マップ下方)は自軍歩兵主力と離れているうえにスペースも広く敵の騎兵部隊に圧倒される危険性がある。たしかに前ターンの攻撃で敵中央の歩兵部隊にはかなりの損害を与えた。だが敵騎兵が自軍後方に回り込んできた場合、敵中央に攻勢をしかけている主力部隊の歩兵はすぐに対応することは難しいだろう。そうだとすると、早めに守りを固めるべきか。


 しばし迷ったブルゴーニュ軍プレイヤーだが、思い切って中央での攻撃を続けることを決断する。中央は総指揮官マクシミリアンがいるため二回活性化できる。一方、中央の敵歩兵2部隊のうち、マップ上方の部隊は敵総指揮官から離れているため1回の活性化しかできない。しかも、もう一つの歩兵部隊は指揮官が潰走している。今のうちに敵歩兵部隊に強烈な打撃を与えておくのだ。

 

 そう考えたブルゴーニュ軍は中央で全力で攻撃を加える。中央上部に進出してきている敵騎兵にも反撃を加え、士気低下状態にして撃退した。騎兵が戦場を支配する時代はとっくの昔に終わったということを思い知らせてやる。実際、「最後の騎士」と呼ばれたマクシミリアンだが、ギネガテの戦いでは騎乗せずに歩兵とともに戦っている。このゲームでもフランス軍の歩兵部隊指揮官は二人とも騎兵ユニットとスタックしているのに対し、マクシミリアンとスタックしているユニットは下馬騎士(Ch à pied)である。


 多くのユニットが潰走したフランス軍だが、ターン終了時の回復フェイズで多くが回復した。だが、指揮官がスタックしている潰走騎兵は回復に失敗。必死に押しとどめようとする指揮官の言うことを聞かず、恐怖にかられた兵たちは安全な場所を目指して逃走し、その波に飲み込まれて指揮官も一緒に後方に下がっていってしまった。その結果、次ターンはこの歩兵部隊の多くが指揮範囲外になる。これは痛い。ADdEではターン冒頭に各ユニットが指揮官の指揮範囲にいるかどうかのチェックがあり、指揮範囲外になるとそのターンは攻撃ができないなどかなり行動が制限されてしまうのだ。





●第7ターン


 フランス軍は両翼での攻撃を続ける。騎兵は質も量もフランス軍が上なのだ。そのうちブルゴーニュ軍が限界を迎えるはず。そしてボロボロになっている中央歩兵部隊は残存している弓兵で射撃を加えるとともに、再編成に努める。

 そんなフランス軍に容赦なく射撃を加えるブルゴーニュ軍。歩兵の潰走に巻き込まれて、仏軍中央上方の歩兵部隊を率いるAntoine de Choursesまでもが潰走してしまった。ターン終了時に回復はしたものの、フランス軍中央はかなり弱体化している。

 このゲームでは両プレイヤーとも勝利得点は基本的に壊滅した敵ユニットによって得られる。得点は兵種によって異なり、騎兵は4や5と高く、槍兵は2だ。第7ターン終了の時点でブルゴーニュ軍はフランス軍より24点リード。ゲーム終了時に相手より7点以上得点が上のプレイヤーが勝利する。フランス軍は敵の大量リードを縮めることができるのか。





つづく

2022年10月17日月曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ③

●第4ターン
 射撃戦で両軍ともに損害を受ける。前ターンに引き続きブルゴーニュ軍は中央で押していくが、両翼、とくに左翼(マップ下)では敵騎兵部隊によって劣勢に立たされている。

 AFdEでは各ターンの最後に回復(Ralliements)フェイズがあり、ブルゴーニュ軍の潰走や士気低下状態ユニットの多くが回復した。回復フェイズでは接敵していないユニットは士気低下状態や潰走状態からの回復を試みることができる。各ユニットには戦闘力(Facteur de combat)のほかに兵質(Qualité)という数値を持っており、10面体サイコロを振って兵質以下の目が出れば士気低下状態から回復できる。ブルゴーニュ歩兵は3分の2が兵質5,残りが4だ。一方フランス軍歩兵の兵質は6割が4,残りが3と、ブルゴーニュ歩兵のほうが高い。
 なおフランスは、百年戦争中の1445年には常備軍の走りとなる勅令隊(compagnies d'ordonnance)が、1448年には各教区ごとに平民が一人を民兵を出すという国民弓兵隊(francs archers)が創設されている。このゲームでのフランス軍の歩兵ユニットには勅令隊と国民弓兵隊が含まれているが、兵質は勅令隊のほうが国民弓兵隊より1高く、常備軍と民兵の違いが現わされていると思われる。

 ブルゴーニュ軍は多くのユニットが回復したものの、フランス軍で遅れ気味だった中央上方のAntoine de Chourses率いる歩兵部隊が戦闘に参加してきているため、中央の多数の敵歩兵部隊に適宜反撃しつつ両翼の騎兵部隊にどう対処するかが悩ましい。逆にフランス軍は中央でプレッシャーをかけつつ両翼の騎兵部隊で早く突破したいところだ。




●第5ターン
 中央の射撃戦で両軍とも大きな損害が出る。兵数で劣っているブルゴーニュ軍としてはこうして消耗戦となるのが痛い。
だがこのターンはブルゴーニュ軍がイニシアティブを握った。マクシミリアンの指揮のもと、中央の仏歩兵部隊に総攻撃を仕掛ける。砲撃で吹き飛ぶフランス軍歩兵。ブルゴーニュ軍は歩兵部隊の指揮官Romont伯が陣頭にたち、仏軍弓兵の防御射撃を受けながらも果敢に白兵戦をしかける。フランス軍の歩兵戦列は崩れ多数が潰走、騎兵部隊も損害を受けた。

 ブルゴーニュ軍を指揮するマクシミリアンだが、ハプスブルグ家の神聖ローマ皇帝フリードリヒ三世を父に持つ。ハプスブルグ家といったらその後何世紀にもわたってヨーロッパにおける有力な王朝となるが、フリードリヒ三世の時代はそれほど勢力が飛び抜けていたわけではないらしい。分裂状態のドイツにおいて、毒にもなにもならない無能者とみなされていたからこそ神聖ローマ皇帝の君主に選ばれた、なんてなことが書いてある文献もある。だがフリードリヒ三世は50年以上の長きにわたって統治し、その子マクシミリアンは初めて教皇による戴冠を受けぬまま神聖ローマ皇帝となり、以来神聖ローマ帝国の君主はローマに出向いて教皇から戴冠を受ける、ということをしないまま皇帝になる。つまりマクシミリアンの代になってドイツの皇帝となったと言えるらしい。
 しかし神聖ローマ帝国ってほんと、ややこしい。大空位時代や金印勅令とか世界史の授業で習った覚えがあるけど。まあとにかくずっと分裂状態で、三十年戦争が有名だけどその前から何世紀も諸侯がずっと勝手なことやっていて、18世紀にはヴォルテールが「神聖でなければローマでもなく、帝国でもない」という有名な言葉を残していますね。

 フランス軍は両翼の騎兵で攻勢を続けるものの、戦果が上がらない。だが後方からゆっくりと進んできた砲兵がやっと戦列に参加、砲撃で敵弓兵を士気低下させた。さらに多くの損害を受けている歩兵部隊では、指揮官を士気低下状態のユニットに隣接させる。指揮官は指揮ボーナス(Bonus)という値を持ち、指揮官と隣接もしくはスタックしているユニットは回復チェックの際、指揮ボーナス分サイの目が有利になるのだ。戦場から逃げ出そうとしている兵たちに指揮官が駆け寄って叱咤激励、士気回復させるというやつである。
 



つづく

2022年10月13日木曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ②

 ●第1ターン

 フランス軍が前進を開始、一方ブルゴーニュ軍は少し後退して防御を固める姿勢を見せる。マップ下方の開けた地形がブルゴーニュ軍の弱点なのだが、後退することでマップの下方から右端にかけて流れる小川との距離を短くし防御しやすくするのが狙いである。


 Au fil de l'épéeシリーズ(長いのでAFdEと省略します)はターン制で、部隊ごとに活性化する。部隊の識別はカウンター左上に描かれた紋章(bannière)で区別するんだけど、中世っぽい雰囲気を感じてしまいます。

 また両軍ともに総指揮官(chef d’armée)がいるが、総指揮官を活性化するとその部隊だけでなく、他の部隊に所属しているユニットも総指揮官の士気範囲(rayon de commandement)内にいれば活性化できる。つまりユニットが総指揮官の周辺にいると自分の指揮官と総指揮官の活性化で二度動けることになる。

 フランス軍の総指揮官Philippe de Crèvecœurは最右翼(マップ下方)の騎兵部隊を指揮しており、総指揮官の部隊に隣接する歩兵部隊は2度活性化できる。敵が後退したのを見て、騎兵は持ち味の快速、歩兵は2度の活性化を生かしてフランス軍右翼(マップ下方)は全力で前進した。

 AFdEでは中世の会戦級のゲームによくあるようにユニットに向きがあり、前面にしか移動できない。向きを変えるのにも移動力を消費するため速やかな後退は容易ではない。接敵していると離脱や向きの変更に追加の移動コストがかかるため、さらに後退が難しくなる。そのため、フランス軍は早い段階で敵左翼(マップ下方)を補足し有利な防御態勢に持ち込ませないようにしようともくろんだのだ。



●第2ターン

 フランス軍は引き続き急進、総指揮官直属の騎兵部隊は敵左翼(マップ下方)に回りこもうとするとともに、騎兵部隊の隣のJean de Baudricourt率いる歩兵部隊が前進、弓兵による射撃でブルゴーニュ軍に損害を与える。

 

 部隊の活性化の順番は基本的に、両軍の区別なく指揮官(chef)の指揮値(Valeur)の順なので、どの部隊の次にどの部隊が動くかはほぼ計算ができ、フランス軍の左右両翼の騎兵部隊が最初に、逆にブルゴーニュ軍の両翼の騎兵部隊は最後に活性化することになる。ただし各ターンの活性化の前にイニシアティブの決定があり、両プレイヤーがそれぞれ2D6を振ってその差によっては活性化の順序を変えることができるので、完全に順序が固定しているわけではない。


 後退する姿勢を見せていたブルゴーニュ軍左翼(マップ下方)のPhilippe de Clèves指揮下の騎兵部隊だが、敵騎兵部隊が全力で前進してきたのを見るや迎撃、敵部隊先頭のユニットを叩いた。




●第3ターン

 AFdEでは各ターン、部隊活性の前に射撃フェイズがあり、両軍とも接敵していない弓兵(Archers, Ar)と砲兵(Artillerie, At)は射撃を行える。ブルゴーニュ軍は突出してきたフランス軍右翼(マップ下方)の騎兵部隊に砲撃をくらわせ、装甲騎兵(Hommes d’armes ou sergents, Ha)が潰走(déroute)した。また弓兵の射撃で槍兵(Piquiers, Pi)も潰走、それに巻き込まれて背後にいた弓兵も潰走したうえ、潰走した槍兵は後続部隊が密集していため逃げ場がなく除去されてしまった。フランス軍も応射。サイの目が走りブルゴーニュ軍の弓兵2ユニットが潰走した。

 AFdEでは潰走の場合、自軍マップ端に向かって2へクス後退しないといけないが、その際通過された味方ユニットは潰走する可能性がある。また2へクス後退できない場合は潰走ユニットは除去となるのだが、部隊が密集していると起こりがちである。計画的に部隊を展開させないとね、と経験者は語る。

 

 フランス軍は左右両翼の騎兵部隊が攻撃に出る。左翼(マップ上方)では騎兵3ユニットが突撃。ブルゴーニュ軍騎兵もカウンターチャージで応じる。騎兵同士の激突は質に劣るブルゴーニュ軍の後退に終わった。また、突撃を受けた槍兵は士気低下(découragé)して後退、フランス軍の騎兵は追い打ちをかけ槍兵は壊滅した。AFdEでは突撃は強力で、最大で連続3回の攻撃ができるのだ。


 両翼で損害を受けたブルゴーニュ軍は総指揮官マクシミリアンの指揮のもと、先ほど突撃してきた敵騎兵を撃退。さらに中央では弓兵の射撃で敵を士気低下させ白兵戦(mêlée)で槍兵を壊滅させた。フランス軍は弓兵の射撃でブルゴーニュ軍の反撃に対応しようとするが、損害にかまわず白兵戦を仕掛けてくるブルゴーニュ軍中央歩兵戦列によって押され気味となる。一方、フランス軍が優勢なマップ下方ではブルゴーニュ軍騎兵部隊が後退を余儀なくされた。




つづく

2022年10月11日火曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée (Ludifolie) AAR ①

  「中世最後の騎士」、と聞くと大仰というか中二? と個人的には思ってしまうんだけど、こう呼ばれたのが神聖ローマ皇帝マクシミリアン一世。スペイン王国と神聖ローマ帝国の両大国を治めたカール五世(スペイン王としてはカルロス一世)、GMTの「Here I Stand」でも登場する有名人だけど、マクシミリアンはカール5世のおじいちゃんにあたる。

 マクシミリアンは武芸に優れるだけでなく、芸術にも理解を示すという騎士の理想像を体現していたことから、「中世最後の騎士」と呼ばれたそうだ。「勇猛果敢な胆力」とか「権謀術数を知りながら自ら裏切ることをしなかった」とかいろいろと称賛されている。活躍したのは中世から近世に移り変わっていく15世紀末から16世紀初頭で、まさに中世の終わりである。


 このマクシミリアンが神聖ローマ皇帝になる前、まだ20歳の時にブルゴーニュ軍を率いてフランス軍を打ち破ったのが1479年のギネガテの戦いなんだけれども、百年戦争関連の本を読んでいて、そういやブルゴーニュはどうなったと思ってギネガテの戦いをプレイすることにしてみた。

 中世のブルゴーニュはざっくりいうとフランスの王権を認めながらも半ば独立した公国となっていたらしい。百年戦争の後半ではフランス側はアルマニャック派とブルゴーニュ派に分かれて内紛を繰り返していたけど、百年戦争に勝利してイングランド勢力をほぼ大陸から追い出した後、フランスはブルゴーニュ公国にも手を伸ばす。当時のブルゴーニュは現在のオランダからフランス南東部にかけてを支配下に置き、宮廷文化が爛熟していたそうだ。ホイジンガの『中世の秋』にその辺は詳しいそうだけど、昔読んだはずなのに忘れちゃったな。1430年には金羊毛騎士団なんてのも創設されている。

 百年戦争ののち、1467年にブルゴーニュ公となった突進公シャルル(Charles le Téméraire)がフランスやスイスとガンガン戦争したんだけど1477年にナンシーの戦いで戦死、その一人娘マリーと結婚したマクシミリアンがフランス軍を迎え撃ったのがギネガテの戦いである。ちなみにこの時期、イギリスは薔薇戦争の真っ最中で1470年には白薔薇ヨークのイングランド王エドワード四世が1470年に亡命してきたりしている。


 ゲームは「La Trêve ou l'Epée」(Ludifolie)で、Au fil de l'épée(剣の刃によって)という中世の会戦を扱うシリーズの一つ。このシリーズはVae Victis誌の付録で何作か出されていたけど、DTPやジップロックの単体ゲームとしてもいくつか出ている。比較的ルールが簡単でプレイ時間が短いものが多い。ちなみにあれかな、Au fil de l'épéeってド・ゴールの著書「Le fil de l'épée」(剣の刃)にかけてんのかな。「La Trêve ou l'Epée」は直訳すると「停戦か剣か」。今回プレイするギネガテの戦いのほかに、ブランシュタックの浅瀬の戦いも収録されている。これは仮想戦で、1475年にイングランドのエドワード四世がフランスに遠征するとルイ十一世は戦うことなく金を払ってお引き取りを願ったのだが、もし両者がソンム川の浅瀬でぶつかっていたら、というものである。



 ギネガテの戦いの初期配置は写真の通り。槍兵(Piquiers, Pi)では質量ともにブルゴーニュ軍が上だが、弓兵(Archers, Ar)はフランス軍が質では劣るものの数ではブルゴーニュ軍の1.5倍で5ユニット多く、騎兵に至ってはフランス軍がブルゴーニュ軍の2倍の数を擁するうえ質も高い。しかもマップ下方はスペースが開けており、フランス軍騎兵が数と機動力を生かしやすいようになっている。この戦いは12ターンとAu fil de l'épéeシリーズの中では長丁場になっており、数に劣るブルゴーニュ軍が果たして守り切れるかどうか。


つづく


2022年10月3日月曜日

重騎兵の突撃、そして側面からの奇襲 Sagrajas 1086 (Alea 38) AAR ⑥

 ●6ターン目(第8ターン)

―キリスト教軍ターン

 増援の歩兵4ユニットがマップ上端から登場し、がら空きになっていた側面をカバーする。このままやりたいようにさせてたまるか。騎兵と共同して敵の弓騎兵を壊滅させた。




―イスラム教軍ターン

 ムラービト軍騎兵集団が数の猛威を振るう。たった4ユニットの増援など焼け石に水よ。弓騎兵が大群で射撃をして敵を混乱させる。そして白兵戦。次々とキリスト教軍が壊滅していく。


 だがキリスト教軍の中央ではリーダーのアルバル・ファニェスが奮戦し、敵の大軍相手に戦列を維持する。リーダーが参加している戦闘はDRMが1有利になるのだ。このアルバル・ファニェスは初期配置ミスで国王アルフォンソ六世のユニットとなっている。やはり王を目にすると兵たちも奮闘するのか。

「そうだよ。だからさ、やっぱりこっちのほうが本物のアルフォンソってことにしようよ」

「いやほんと、それだけは勘弁してください…」


●7ターン目(第9ターン)

―キリスト教軍ターン

 このターンからアルフォンソはマップ外に離脱できる。すでに述べているが、キリスト教軍はアルフォンソ六世が離脱したターン数と同じ勝利得点が得られる。さらに最終ターン(10ターン目、第12ターン)までマップにとどまっていれば15点獲得する。ただ最終ターンまでアルフォンソ六世が生き延びるのはかなり難しいと思われる。また、1ターン粘っても1点しか得られないので、敵騎兵集団によって自軍ユニットが壊滅して数ポイント献上するぐらいだったら、アルフォンソはとっととマップ外に逃げてゲーム終了にしたほうがいいのではないだろうか。

 ということで、アルフォンソはマップ外に離脱。残るはイスラム教軍のターンのみとなる。


 なおアルフォンソ六世はこのAARでは全く活躍していないが、勇敢王(El Bravo)の異名を持ち当時のイベリア半島のキリスト教諸国の中では突出した君主で、全ヒスパニアの皇帝(imperator totius Hispaniae)とも名乗った。実際に支配していたのはイベリア半島の北部だったけどね。このサグラハスの戦いでは負傷しながらも逃げ延び、それから20年以上も王として君臨、バレンシアも手に入れている。ちなみに生涯で5回も結婚している。う、うらやましくなんかないんだからね。


―イスラム教軍ターン

 これが最後の攻撃となる。敵る限り多くのユニットをマップ状態に突破させるとともに、騎兵集団の猛攻で敵3ユニットを壊滅させた。盤上に残っているキリスト教軍はわずか5ユニットである。史実同様、惨憺たる敗戦となった。




 そして勝利得点の集計。キリスト教軍は敵ユニットの壊滅で87点、さらにアルフォンソが第9ターンに脱出したので合計96点。そしてイスラム教軍は敵ユニットの壊滅で88点、そして8ユニットが突破で16点、計104点。敵に10点以上差をつけられなかったので、引き分けとなった。

「いやー、最終ターンに勝利得点を細かいところまで計算して突破とかさせていたら勝てたと思うんだけどね。そういうの好きじゃないんだよねー」とイスラム教軍プレイヤー。

「いやいや、ただの計算ミスでしょ。数字が3桁いくとわからなくなるという」

「国王を間違って配置するなんていう凡ミスしたやつが言うか」


 このSagrajas1086、ルールは簡単なので中世の会戦級が未経験の人でもすぐにプレイできると思います。ただ移動に関して規定が甘く、移動しなくても向きだけ変えることは可能なのかとか疑問が少し出てきましたが、プレイヤー同士で決めればいいかと。あと、トルナフエやヒット&ランは移動中に行うのですが、両戦術を使う際はユニットの向きを自由に変えられるという規定があるけど、そういう戦術が使える軽騎兵なんだから通常の移動中も向きが変えられるとしたほうがいいんじゃないかなと思います。まあこれは好みですが。BGGではデザイナーが次のゲームで移動ルールを見直すと書いているので、次回作を期待したいです。


 なんにせよこのゲーム、キリスト教軍は最初の強烈な突撃、そのあとは圧倒的な敵兵力の攻撃にさらされながらの後退と、劇的な状況の変化が味わえます。イスラム教軍はその逆で、諸タイファ軍が次々と消えていくのに耐えた後は、騎兵集団でキリスト教軍を崩壊させるお楽しみが待っています。いずれにせよ両軍とも激しく攻撃することになるので、殴り合いが好きな方におススメです。





(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

共和国軍の攻勢から反乱軍の反撃、そして機動戦から消耗戦へ Brunete 1937 (Alea43) AAR part5

 ●第5ターン  残り2ターンである。このゲーム、序盤は共和国軍が圧倒的に優勢であるものの、反乱軍には続々と増援が登場する。下の写真はこのショートシナリオが扱う第1~6ターンの両軍の増援で、一目瞭然、共和国軍には微々たる数しか現れないのに対し、反乱軍は大量の援軍を受け取る。ヒスト...