2022年11月25日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑩

 ●第5ターン(続き)

 ロゲの部隊(赤)の二度目の活性化が回ってきた。老親衛隊最後の攻撃である。砲身も焼けよとばかりに熾烈な砲撃を加え、老親衛隊が突進する。鬼神のごとく暴れまわるVieille Gardeを前にして、隊列の乱れていた英連合軍が持ちこたえられるはずもなく多くのユニットが潰走する。さらには命からがら逃げようとする自軍の兵たちに巻き込まれて潰走するユニットも出てきた。

 JdGでは自軍ユニットを通過して潰走することができるが、通過されたユニットは士気チェックを行い失敗すると潰走してしまうのである。中世の会戦ゲームだとよくあるやつですね。

「ちょ、この老親衛隊の強さ、おかしくない? ワーテルローって最後は『La Garde recule!(親衛隊が後退している!)』ってなるんじゃないの?」

「勘違いしちゃいけない。このゲームは『La Garde avance!』なんだよ」


 ちなみに、ワーテルローのことを全然知らないのはまずいと思ってこのAARを書き進めながらOspreyシリーズの『Waterloo 1815』を読んでみました。イラスト豊富でページが少なくサクッと読了できるのでOsprey好き。で、親衛隊が敗退するシーンが結構よかったので引用しておきます。

The entire attack had been repelled. The perfect formations of just a few minutes before were now a single confused blue mass, highlighted with the glint of slashing steel as Vivian's and Vandeleur's light cavalry hacked within its midst. The impossible had happened. The invincible had been vanquished. A great, incredible sob spread along the French lines - 'La Garde recule! Sauve qui peut!'

("Waterloo 1815", p81)

(拙訳: すべての攻撃が撃退されていた。ほんの数分前には完璧な隊形を組んでいた諸隊が、今や混乱した青い一つの塊となっており、VivianとVandeleurの軽騎兵がその中を切り裂いていくと鋼鉄の刃のきらめきが見る者の目を奪った。あり得ないことが起こったのだ。常勝の兵が打ち負かされたのだ。フランス軍の戦列に沿って、大きく、信じ難いどよめきが広がっていった―「親衛隊が退却! みな我が身を守れ!」)

 なんかこの辺り、筆者も思わず力が入ったんじゃないですかねっていう印象。ワーテルローのクライマックスですからね。ナポレオンやフランス兵たちの愕然とした気持ちが伝わってきます。そういえば「La Garde Recule!」っていうゲームもありますよね。


 それはさておき。フランス軍はロゲの部隊(赤)以外はボロボロであるものの、老親衛隊に続けとばかりに最後の気力を振り絞って奮戦する。ネイの部隊(青)の生き残りの砲兵が、至近距離からの砲撃で敵騎兵を混乱状態に。そして左翼ではバシュリュの潰走ユニットがまさかの回復。さらに右翼のドンズロの部隊(緑)が続く。砲撃で敵騎兵を混乱状態にし、そこに騎兵がシャルジュ! 潰走していく敵騎兵を追撃して壊滅させた。

 ここでやっと英連合軍の中央部隊(青)の活性化。英連合軍で最大兵力を擁していた中央部隊だが、もう反撃するための歩兵が残っていない。残存砲兵で砲撃をするものの老親衛隊は耐えた。英連合軍の指揮官たちは敗走する歩兵たちを押しとどめようと声を張り上げる。そんななか、騎兵が奮戦し老親衛隊を1ユニット潰走させた。

 そしてターン最後の潰走移動。英連合軍予備部隊(緑)の2ユニットがマップ外に消えていった。


 こうしてナポレオン最後の賭け、親衛隊の攻撃は幕を閉じた。最終結果は、英連合軍15点、フランス軍21点。その差6点で惜しくも引き分けとなった。


 今回の対戦はJours de Gloireシリーズどころかナポレオニック初心者同士のプレイだったけど、両者とも楽しめました。なんといってもフランス軍は老親衛隊を指揮する高揚感を得られますからね。悲壮感もたっぷりだけど。英連合軍も簡単ではなく、どこまで守っていつ反撃するかの判断を迫られます。チットプルによる先の読めなさ、それに非命令下で攻撃に出るかどうかという迷いが、ずっと緊張感を与えてくれますね。

 それに何といっても秀逸なのが、マップをワーテルローの戦場の中央に限定して親衛隊の攻撃にフォーカスを当てたこと。ウーグモンとラ・エイ・サントは進入不可でZOCを持つヘクスというバッサリとした処理によって、プレイが中央の高地をめぐる戦いに集中されます。ワーテルローの他のゲームはほとんど知りませんが(BANZAI 15号はクロノさんから購入済みだけど、事情があって手にするのはかなり先の予定)、「La Garde Avance!」はワーテルロー戦の中でも独特の雰囲気になっているんじゃないかなと思います。


 あとでネットを見ていたら、デザイナーのFrédéric Beyが英連合軍の戦い方として、初期配置では複数の戦術グループに分割されている騎兵部隊と予備部隊を反撃のためにそれぞれ一つにまとめるようアドバイスしていました。今度試してみようかな。それよりもフランス軍の戦い方のヒントを教えてほしいんだけど、それを考えるものこの「La Garde Avance!」の楽しみなんでしょう。


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