2023年4月28日金曜日
第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ⑤
2023年4月22日土曜日
第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ④
敵中央部隊の攻撃で自軍が分断された十字軍だが、左翼(マップ右方)のゴドフロア隊(青)で反撃する。騎士の威力を見せてやる!と+3DRMで攻撃するものの、サイの目はゼロでまさかの攻撃側混乱。だがそれ以外では敵右翼の槍兵と中騎兵に損害を与えていった。
このゴドフロア隊だが、フランス南東部のブルゴーニュとロレーヌ地方の兵から成る。「Infidel」の十字軍ユニットには出身というか所属地方が書いてあるのだが、ロベール隊(赤)はノルマンディとフランドル、レーモンはフランス南西部のアキテーヌと南部のプロヴァンスの兵から成っている。どこの兵かはルール上は全く関係ないのだが、WW2のゲームで師団名が書かれていると気分が盛り上がるのと同じような感じかな。
第一回十字軍は、教皇ウルバヌス二世がフランス中央のクレルモンで開かれた公会議で呼びかけたことで始まったこともあって、フランスからの参加が主だった。ウルバヌス二世もフランスの地方貴族の家の出で、フランスにあるクリュニー修道院に入っているから、フランスの騎士たちに訴えかけやすかったんだろうなあ。
ちなみに兵站が未発達のこの時代に万単位の軍を遠征させること自体が難事業だったそうだ。ローマ帝国のころとえらい違いだけど。前回紹介した『Victory in the East』によると、パリから南伊経由でギリシアのテッサロニキまでですでに約2,400kmと、鹿児島から稚内よりも約600km遠い。さらにそこから十字軍主力はアンナ様のいるコンスタンティノープル経由でイェルサレムに向かったわけで、その距離約2,000km。つまりフランスからやってきた兵たちは約4,000kmの行軍をしていて、しかも小アジアに渡って以降は敵地の真っただ中、かつ険しい地形や酷暑に悩まされていた。そういう苦難に負けないぐらい聖地奪還への宗教的使命にみなさん燃えていたんでしょうな。イスラム側からしたらとんでもない厄災だけど。
ゴドフロア隊に続いて右翼(マップ左方)のレーモン隊(黒)が攻撃。混乱状態の中騎兵を狙って騎士や槍兵が白兵戦をしかける。たまらず中騎兵1ユニットが自軍の軍旗目指して逃げ出し、さらには2ユニットが壊滅した。砂浜から側面に回り込み混乱状態の中騎兵を攻撃したレーモン隊の槍兵は、騎兵を蹴散らした勢いに乗って継続攻撃(Continued Attack)。だがそこでベルベル中騎兵の中でも防御力の高いユニットにぶつかり、逆に混乱状態となるというおまけつき。指揮官のレーモンは騎士とともに敵に囲まれていたが、隣接する槍兵を瞬殺。ファーティマ朝軍の累積敗走ポイントは18に上った。
このシナリオでのファーティマ朝軍の敗走レベル(Flight Level)は25で、累積敗走ポイントに10面体サイコロの目を足した数がこれを超えると負けてしまう。焦るファーティマ朝軍。一方、十字軍の累積敗走ポイントはいまだに2だ。だがこれまでの戦闘で混乱状態のユニットが増えてきているため、楽観視はできない。
ここでファーティマ朝軍に自由活性が回ってくる。中央の弓兵部隊で、弱体化している敵ロベール隊(赤)に追い打ち。さらには左右の敵部隊にも射撃によって損害を与えていく。十字軍はまだ累積敗走ポイントが5にとどまっているものの、3部隊とも消耗が激しい。騎士9ユニットのうち正常状態で残っているのは最左翼(マップ右方)で突出しているゴドフロア隊(青)の1ユニットのみとなった。
ころはよし、とファーティマ朝軍は後方で温存していたマムルーク重騎兵を解き放つ。マップ右方のゴドフロア隊に向かってチャージ、チャージ、チャージ!! さすがの騎士もこれまでの戦いで疲労していたか、砂塵を巻き上げながら突進してくるマムルークの突撃を受け止めきれずに2ユニットが壊滅した。騎士は壊滅時の敗走ポイントが3なので結構な痛手である。
マムルークとは奴隷の意味らしいが、奴隷は奴隷でも軍人奴隷で、実際は騎兵のエリート軍人層。多くは遊牧民の出身で忠誠心も強かったそうだ。10世紀あたりからイランやシリア、エジプトなどのイスラム圏で有力な軍事力となり、サラディンもマムルークを活用している。1250年にはエジプトでマムルーク朝が成立しているけど、そのバイバルスがモンゴル軍を破ったのは有名なんじゃないかな。
つづく
2023年4月14日金曜日
(幕間) 第一回十字軍の軍事史 - 『東方における勝利』
十字軍って中世の歴史の中では日本でも比較的メジャーなようで、読みやすい本としては塩野七生の『十字軍物語』やダン・ジョーンズの『十字軍全史』とかがある。でももうちょっと詳しく知りたいな、と思って、「Infidel」のシナリオ集「Battle Book」に参考資料として載っていたJohn Franceの『Victory in the East』を読んでみました。
塩野七生の『十字軍物語』は読みやすいし入手も容易なのでいいんだけど、西欧中心の視点だし、筆者の選り好みを結構感じてしまうんですよね。あくまで個人的な感想ですが。まあ、「物語」だしね。ダン・ジョーンズの『十字軍全史』もかなり面白いんだけど、地理的にも年代的にもかなり広範囲にカバーしているから、アスカロンの戦いで終わった第一回十字軍のことを詳しく知りたいのにいろんなところに話が広がって迷子になりそう。
というかですね、『Victory in the East』の表紙にはa military historyなんて書かれてあって、ウォーゲーマーだったら読みたくなるじゃないですか。『東方における勝利』というタイトルには、極東の民草の一人としてちょっと引っ掛かりますけど。
『Victory in the East』は一冊すべて第一回十字軍関連。「Infidel」に入っているアンティオキアのシナリオはこの本の記述に基づいたそうで、実際、アンティオキアの戦いについては攻囲戦も含めると約100ページに渡って詳述している。
個人的にはセルジューク・トルコのことも結構書いてくれているのがうれしい。あとビザンツについても触れられていて、アンナ様も出てきます。「アレクシアス」を参照した部分もたっぷり。第一回十字軍の歴史を書くうえで「アレクシオス」 は避けて通れないから当然と言えば当然か。でも筆者のジョン・フランス先生、ちょこっとアンナ様に対して辛口のコメントのようなものを入れたりしていますね。ほかに、民衆十字軍はただの非戦闘員の集まりではなかったとか、いろいろと面白い分析もありました。
でもね、この本、第一回十字軍そのものだけじゃなくて、その時代背景についても結構書いてくれているんですよ。第2章「War in the West」から第3章「Campaigns, generals and leadership」にかけて11世紀の西欧の軍事事情についてかなり書かれていて、十字軍の本を読んでいるってことを忘れるぐらい。現代の我々はクラウゼヴィッツの影響を受けていて、決戦による敵戦力の撃滅を重視するが中世はそうではなかったとか、そういういことを書いてくれています。あと、1066年のノルマン・コンクエストについて結構分析することでこの時代の動員・兵站の負担とか戦術とかを説明してくれるんだけどかなり詳述していて、あれ、この本って征服王ウィリアム一世についての本だったったけ、と思ってしまいました。面白かったですけどね。
あと、ローマ時代の軍事思想家ウェゲティウスにも結構触れています。「平和を欲さば、戦への備えをせよ」という警句ができるもとになったと言われている人ですね。ちなみに「戦への備えをせよ」はラテン語でpara bellumですけど、イタリアのウォーゲーム誌「Para Bellum」っていうのがありますね。最新の11号の付録ゲームはご当地ネタ、第一次世界大戦のイゾンツォの戦い。
筆者のジョン・フランスは十字軍研究の専門家。イギリスの大学の名誉教授のようで、アメリカのウェスト・ポイントでも教えていたらしい。『Victory in the East』には主要参考文献リストにあたる(のかな?)Select bibliographyっていう項目というか章があって、それが25ページもあってクラクラしてきました。selectって言っているんだからもうちょっと厳選して数を減らしてくれないと、初心者としては次に何読んでいいかわからないですよ。まあ、研究者向けに書いているんでしょうけれど。
約30年前に出た本なので最近の研究ではまた新たな発見や分析がされているのかもしれないけど、第一回十字軍でどのような軍事行動が展開されたのかに興味がある方にはこの本がおススメ。読みやすい英語で書かれているし、本文は実質300数十ページなのでまあ負担にならない分量と言えるかと。で、「Infidel」をぜひプレイしてみてください。
2023年4月9日日曜日
第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ③
十字軍の左右両翼の部隊から攻撃を受けたファーティマ朝軍は左翼のベルベル中騎兵で反撃。さらに右翼でも反撃を、と言いたいところなのだが、継続活性に失敗する。
このシナリオのファーティマ朝軍は弓兵、槍兵、重騎兵など兵種ごとに5つの部隊に分けられているのだが、登場する指揮官はアル・アフダルのみで、どの部隊も活性化にはアル・アフダルの活性化値を使う。
なぜ指揮官が一人しか登場しないかというと、イスラム側の資料で入手できるものが非常に限られているからだそうだ。日本語でもイスラムに関する資料って(少なくとも一般人にとっては)限られている印象だけど、英語でもそうらしい。そういえば、GMTのLevy&Campaignシリーズの新作として11世紀半ば、アナトリアでのセルジューク・トルコとビザンツ帝国の衝突をシミュレートした「Seljuk: Byzantium Besieged, 1068-1071」がP500に入っているけど、このゲームのデザイナーも英語で手に入るイスラム側の資料ってかぎられているんだよねって言っていたな。Andrew C.S. Peacockっていう学者の著書を教えてもらったけど。
ちなみにファーティマ朝は北アフリカのベルベル人を支持基盤として東西に領土を広げ、モロッコからシリアまでを支配していた。ファーティマ朝の時代にカイロが建設されて繫栄する。この王朝はイスラム教のシーア派で、創始された11世紀初頭にはバグダッドでアッバース朝君主がイスラム教最高指導者カリフとなっていたが、ファーティマ朝の君主もカリフを名乗る。同時期、イベリア半島で後ウマイヤ朝もカリフを名乗っていたため、11世紀前半は3カリフ鼎立の時代となっていた。ちなみにアッバース朝は歴史が長く、1258年にモンゴルのフレグに滅ぼされるまで宗教的権威を保っていたらしい。あと、第一回十字軍より300年ほど前にアッバース朝が751年にタラス河畔の戦いで唐軍を打ち破り、製紙法が西方世界に伝わることになりましたね。
このファーティマ朝軍の指揮官アル・アフダルだが、活性化値が3と凡庸なのである。そのため連続して部隊を活性化することがそれほど期待できず、イスラム側としては数的な優勢を活かすのは難しい。一方の十字軍は中央のロベールが3だが、左翼(マップ右方)のゴドフロアは4,右翼のレーモンは5と高く連続攻撃がやりやすくなっている。
連携の取れていないファーティマ朝軍がまごついている間に、十字軍は左翼(マップ右方)のゴドフロア隊(青)、そして右翼のレーモン隊(黒)と連続攻撃。マップ右方に展開していたゴドフロアの部隊はさらに右方にシフトし、脆弱な槍兵や中騎兵に次々と損害を与えていく。続いて右翼(マップ左方)のレーモン隊(黒)は、突出していた騎士に槍兵が追いつき敵中騎兵を攻撃。包囲されている騎士を救出した。
ファーティマ朝軍は両翼で押され気味となる。やはり中騎兵では、騎士を基軸にした敵の攻撃をしのぐのには無理がある。後方で待機しているマムルーク重騎兵であれば白兵戦でも騎士とある程度互角にやりあえるうえ、総計10ユニットもある。十字軍に寝込みを襲われたもののすでに混乱状態から回復している重騎兵部隊を両翼に投入すべきか。
だがファーティマ朝軍プレイヤーは重騎兵温存を選択する。今両翼の救援に回しても中騎兵ユニットと混在してしまい効果的な攻撃は行えない。それに重騎兵は敗走ポイント(Flight Points, FP)が3と高い。一方中央の弓兵の敗走ポイントは1で、重騎兵が壊滅した際に弓兵の3倍の勝利得点を敵に献上するような形になる。焦ってマムルークを投入するよりもまずは弓兵で消耗戦に持ち込むべし。敵の両翼部隊が自軍中騎兵部隊を突破したその瞬間に、重騎兵はその機動力と数、それに突撃の破壊力を活かして敵のスピアヘッドを叩き潰せばいい。
そのような方針のもと、ファーティマ朝軍最前列中央の弓兵部隊が敵ロベール隊(赤)に向かって前進。弓兵の射撃の援護を受けながらスーダン弓兵がフレイルを振り回して白兵戦を仕掛ける。ロベール隊は1ユニットが敗走(Retired)、もう1ユニットが壊滅した。十字軍初の壊滅である。
さらにファーティマ朝軍は、十字軍の両翼部隊がマップの左右にシフトしていった結果、中央ロベール隊との間が手薄になっているのを見逃さなかった。敵部隊の間隙にスーダン弓兵が突進していく。十字軍は3つの部隊が分断された形となった。
つづく
2023年4月1日土曜日
第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ②
このシナリオでは最初に両プレイヤーがサイコロを振り、大きい目を出した側から活性化が始まる。アッラーの恩寵か、最初の活性化を獲得したのはファーティマ朝軍となった。十字軍が接近! 眠りこけているマムルーク重騎兵部隊(紫)に警報を与えてたたき起こす。
十字軍は、敵が態勢を整える前に一気呵成に攻撃しようと中央のノルマンディー公ロベール二世(Robert II, Duke of Normandy)の部隊(赤)を前進させるが、後が続かない。対照的にファーティマ朝軍は先ほど警報を与えたマムルーク重騎兵を混乱状態から回復させ、続いてその前面に布陣しているのベルベル中騎兵部隊(緑)も回復させる。
さらにファーティマ朝軍は、混乱から回復したベルベル中騎兵部隊を左翼に展開、歩兵部隊の側面を守らせる。一方の十字軍は各隊をやっと攻撃できる距離まで前進させた。あれ、イスラム側は虚を突かれたんじゃなかったっけ。こりゃ奇襲失敗だろ。
着々と防御態勢を整ていくイスラムの軍勢を見て焦る十字軍は、中央のロベール隊(赤)に攻撃を命ずる。まずは敵のスーダン弓兵に射撃戦を仕掛けた。このスーダン弓兵はフレイルを装備した弓兵(Archers with Flails, AF)という、特殊な弓兵となっている。
ファーティマ朝の軍には多くのスーダン人が含まれていて、その弓兵はフレイルというチェーンでつながった棍棒のようなものを持っていた。まあ、たぶんこんな感じ↓でしょうね。
接近戦ではこのフレイルを振り回して敵をぶん殴っていたらしい。当たったら鎧もろとも骨を砕かれそうで怖い。Men of Ironシリーズ(MoI)では通常の弓兵は白兵戦では脆弱なのだが、スーダン弓兵はこんな狂暴な武器を持っているため強力で、攻防ともに槍兵に勝る。
ただし、スーダン弓兵は射撃をしてしまうとその活性化中は弓兵扱いとなり白兵戦では脆くなる。スーダン弓兵は弓兵同様、敵から射撃を受けると応射(Return Fire)ができるのだが、その直後に白兵戦に巻き込まれると不利なのだ。そのためまず十字軍は射撃戦を仕掛けたのち、すぐに騎士3ユニットを突撃させた。
射撃をしていたスーダン弓兵はフレイルに持ち帰る余裕もなく騎士の突撃を受ける。MoIでは弓兵は前面に敵が移動してきたら対応射撃(Reaction Fire)ができるのだが至近距離からの射撃をものともせず騎士が突っ込む。聖地を奪還して士気が最高潮の騎士が異教徒の弓矢に怯むわけがないだろうが! だが突撃のサイの目が振るわず、3ユニットのうち2つが混乱状態となってしまった。
残りの2隊もロベール隊に続くのだ。高い活性化値の真価を見せろ!! と十字軍プレイヤーが両翼の部隊を叱咤するも、継続活性失敗。キリスト教徒たちが躊躇している隙にファーティマ朝軍の弓兵部隊がロベール隊に弓矢の雨を降らせ、次々と混乱させていった。
自軍中央部隊の苦境を見て奮い立ったか、左翼のゴドフロワ・ド・ブイヨン(Godfrey of Bouillon)、そして右翼(マップ左方)のトゥールーズ伯レーモン・ド・サン・ジル(Raymond IV, Count of Toulouse)が動く。まずはゴドフロアの部隊(青)が射撃戦、そして騎士が突撃。たまらずスーダン弓兵が蹴散らされる。レーモンの騎士もベルベル中騎兵に突撃。敵陣に切り込んでいった。
左右両翼から十字軍の猛攻を受けたファーティマ朝軍は左翼のベルベル中騎兵を動かす。先ほどの突撃で突出してるレーモン隊(黒)の騎士を4ユニットで包囲攻撃。強力な騎士も数の暴力には勝てず、損害を被る。
以前アンティオキアのAARでも書いたが、騎士はすさまじいほど強力なのに中騎兵は弱い。どれくらい弱いかというと槍兵と同程度であり、足の速い歩兵、ぐらいの感じである。騎士に対抗する手段としては、突出してきた相手を多くのユニットで包囲して袋叩きにする、ぐらいしかないのだ。
つづく
2023年3月26日日曜日
第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ①
漫画『アンナ・コムネナ』の第3巻発売を記念してアンナ様関連のゲームがしたくなってきた。発売はもう2か月以上前だろ、なんてツッコミは置いておいて、あの漫画、知り合いの女性が読むと元気になると言っていたので未読の方はぜひ。
漫画を読み返してて第一回十字軍はアンナ・コムネナの父アレクシオスI世が呼び寄せたことを思い出したんだけど、Men of Ironシリーズ(MoI)のInfidelには第一回十字軍の戦いが3つ収録されている。アンナ様のお父様を苦しめた憎っくきボエモンドもDorylaeum 1097とAntioch 1098の二つのシナリオに登場するが、残る1つが今回プレイするAscalon 1099である。
ところでアンナと言ったら「幸せな家族はどれもみな似通っているが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」で有名なあの人ですよね。
……いや、違うから! あのアンナさんも世界的に有名だけど、そうじゃなくてビザンツの皇女のほう。数百年、時代が違うからね。でも正教でつながっていると言えば言えるのかな。
正教と言えば数年前、プーチンが正教会の聖地であるギリシャのアトス山の修道院を訪れていて、正教の力を利用して旧ロシア帝国への回帰を想起させることで国内外への影響力の強化を狙っている、みたいな記事があったな。当然今はウクライナとロシアの正教会は関係が断絶していて、アンナ様がこの現状を見たらどう思うんですかね。というか、そもそもモスクワが第三のローマなんて名乗るなんておこがましい、みたいなツッコミを500年ぐらい前にしてそうだけど。それよりなにより、早くウクライナの戦争が終わることを祈っています。
あれ、何の話してたんだっけ。そうそう、アスカロン。このアスカロンの戦いは第一回十字軍最後の戦いとも言われている。遠く西欧からやってきた十字軍がアンナ様のいるコンスタンティノープルを経由して聖地を目指し進軍。敵地で食糧不足などに苦しみながらも1099年7月にイェルサレムを陥落させる(その際にすんごい住民殺戮が行われるんですがね…)。同市の奪還のためにエジプトのファーティマ朝の宰相アル・アフダルAl-Afdalが軍勢を率いてイェルサレムに迫るものの、十字軍はアスカロンで迎え撃ち散々に打ち破って西欧勢のパレスティナ地域の支配を確立させた、という戦いである。
プレイで使ったゲームはいつものとおりGMTのMen of Iron Tri-pack版。このゲーム、ずっと品切れになっていたんだけど、なんと2nd printがP500に入りました! うひょ~。これで、欲しくて手に入れられなかった方々も一安心ですよ。そういう人たちがどれくらい知らないけど、MoIの魅力を世に広めることへのモチベーションが爆上がりです。
それと、Men of Ironシリーズの第五作目にあたる「Norman Conquests」もP500で順調に位を上げて行っていて、早く発売にならないかなー。ノルマン・コンクエストと言ったらヘイスティングスだけど、それ以外にもノルマン人関係の戦いがいろいろと収録されているようで、たった一人のバイキングが敵を食い止めた逸話の残るStamford Bridgeとか、Civitateの戦いだったらSchwabenの騎士たちの最後の奮戦とか、もう楽しみで楽しみで…。
あれ、何の話してたんだっけ。そうそう、アスカロン。このシナリオの十字軍は3つの部隊(Battle)からなる。各部隊とも騎士、弓兵、槍兵と兵種のバランスが取れた構成であるが、歩兵には重装歩兵(Men-at-Arms, MA)は含まれておらず、強力な騎士も各部隊に3ユニットとやや少ない。
一方のファーティマ朝軍は最前列に弓兵がずらっと並び、その後方に槍兵、そしてさらに後方には騎兵部隊がいる。
十字軍が相手にした東方系の軍隊は騎馬弓兵が特徴で、そのヒットアンドアウェイに十字軍は悩まされ続けたそうだ。Infidelに入っているシナリオのほとんどでも騎馬弓兵がイスラム勢力側の主力となっている。だがファーティマ朝は騎馬弓兵を利用していなかったらしく、このシナリオでも騎馬弓兵は登場しない。
ファーティマ朝はもともとチュニジアのほうから興ってエジプトまで進出しただけに、中央アジアの遊牧系の流れをくむセルジューク・トルコとかとは違うようですね。まあ、重武装の十字軍vs騎馬弓兵主体のイスラム軍っていう対照的な軍隊の戦いは他のシナリオで十分味わえるからいいんですけど。
このアスカロンの戦いは十字軍がファーティマ朝軍の不意を突いたらしく、後方のベルベル中騎兵とマムルーク重騎兵の二部隊はゲーム開始時は混乱状態である。MoIでは混乱状態から回復するにはその部隊の活性化中に何もしないことが条件になるため、この二部隊はすぐには投入できない。さらに十字軍の奇襲時にはマムルークの兵たちはまだ寝ていたらしくて、このシナリオの特別ルールで同部隊は自由活性を使って警報を与えないと混乱状態から回復できない。つまり重騎兵部隊は2回活性化してやっと正常状態になれるのだ。
ユニット数ではファーティマ朝軍が十字軍の1.5倍以上あるが、上述のように騎兵2部隊が混乱状態で始まることから数的優勢を活用するには時間がかかる。さらに十字軍の指揮官は活性化値が高いため、ファーティマ朝軍が対応しきれないうちに十字軍のペースで戦いが展開する可能性が高い。
つづく
2022年7月21日木曜日
アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack(GMT) AAR ⑥
トルコ軍の騎兵集団の前に、歩兵部隊が危うくなっている十字軍。増援としてマップ右端から現れたサン・ジル隊がトルコ軍左翼のハサン隊に突撃する。接近戦に弱いトルコ軍は騎士によって瞬殺され、敗走していく。異教徒どもめ、騎士の威力を見たか。反撃ののろしだ!
トルコ軍はサン・ジルの攻撃を受けたハサン隊が反撃。騎士の集団相手に戦っても負けることは目に見えているのだが、少しでも損害を与え攻撃力をそぎ、時間を稼ぐのだ。その間に中央の部隊が十字軍の歩兵どもを駆逐してくれるはず。ハサンよ、頼む。
トルコ軍はさらに気合で継続活性に成功。中央主力のアルスラン隊が射撃と白兵戦で歩兵部隊を次々に壊滅させていく。ロベール隊もついに全滅し、十字軍の累積FP65に上った。10面体サイコロを振って出た目を足して、敗走レベルの70を越えれば十字軍の負けとなり、トルコ軍は勝利するのである。
一方トルコ軍の累積FPはいまだ21。敗走レベルの45まではまだ余裕がある。左翼のハサン隊が敵増援部隊を足止めしている間に十字軍にとどめを刺すのだ。
このままではやばい十字軍。全力で攻撃しなくては。アデマール隊が突撃でハサン隊の軽弓騎兵を壊滅させていく。自由活性の際の敗北チェックものりきり、サン・ジル隊が継続活性に成功。アデマール隊に続きハサン隊に突撃していき、トルコ軍の累積FPは27に。
このまま十字軍騎士集団に好きなようにさせていてはまずい。トルコ軍はSeizureカウンターを使用して継続奪取(Seizure)を試みる。成功確率70%だったが、失敗。十字軍が自由活性を得て、アデマールが再び突撃でハサン隊に壊滅的打撃を与える。ハサン隊の軍旗まで敗走していた2ユニットも壊滅。トルコ軍のFPは33に上った。
自由活性化のあとの敗北チェックに望みをつなぐトルコ軍。だがサイの目は4で十字軍は崩壊せず。早くこっちに活性化が回ってきてくれと焦るトルコ軍だが、サン・ジルが継続活性に成功する。活性化値5は伊達じゃない。騎士の破壊力を見せてやる!
十字軍の増援騎士集団の連続攻撃でハサン隊はほぼ壊滅。トルコ軍の左翼は崩壊した。増援部隊の活性化値の高さを生かした4回連続の騎士集団の攻撃はすさまじく、トルコ軍の累計FPは21から一気に37になった。
やっと自由活性を得たトルコ軍。右翼(マップ左方)ダニシメンド隊の軽弓騎兵で囲んでボエモンドの最後の騎士を射撃で壊滅させようとするが、スカ。ボエモンド隊最後の意地を見せる。だが歩兵を射撃で混乱させていった。
ここで敗北チェック。トルコ軍の累計FPは37,敗走レベルは45だ。振ったサイの目は8でぎりぎりセーフ。あぶねー。そして二度敗北チェックをしのいだ十字軍だが、累積FPが65でサイの目は、6。十字軍の敗北となった。
今回はトルコ軍が勝てたけど、いやー、もう、騎士凶悪。突撃から継続攻撃で切り込んでくるのは当たり前だし。十字軍側の継続活性のサイの目が悪くて、初期配置のロベール隊とエドモンド隊が連携して反撃できていなかったけど、もしこの二つの騎士集団が連続して攻撃できていたら早い段階でトルコ軍もかなりの損害を受けていたはず。それに十字軍の援軍の登場がもう少し早かったら勝敗はどうなっていたことかわからない。ヒヤヒヤものの勝利でした。
アンナは歴史書「アクレシアス」でこの戦いについて、ローマとケルトの勝利って書いている。ローマはビザンツ、ケルトは西欧人のことだけど、ほとんどビザンツ軍は参加してないじゃん。今回のようにトルコ軍の勝利に終わっていたら、ラテン(西欧のこと)の蛮族たちはお父様の賢明な忠告を聞かずに攻めていき、トルコの蛮族に敗れたって書くのかな。何はともあれ、このあと第四回十字軍によってコンスタンティノープルを取られたり、ずっと四方を蛮族に囲まれたりしながらもビザンツ帝国は生き残り、さらに約350年の命脈を保つのでした。
2022年7月17日日曜日
アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ⑤
援軍があと少しで来る。それまで耐えるんだ! と、十字軍のロベール隊が必死の反撃。混乱状態での攻撃だったがさすがは騎士、2ユニットを敗走させた。
だがトルコ軍主力のアルスラン隊が数の暴力をふるう。騎士が3ユニット壊滅し、十字軍の累計FPは46に上った。もう騎士もほとんど残っていない。あとは歩兵どもを駆逐するのみ。この開けた地形で、騎士の援護のない歩兵など赤子同然よ。
窮地に立たされた十字軍だが、トルコ軍が継続活性に失敗し、自由活性を得た。増援登場チェックである。これまで4回失敗しているためサイの目7以上で成功する。主よ、我らを異教徒どもから救いたまえ! と振ったサイコロは8。おおおおお、援軍が来たぞ‼
活性化値5を誇るサン・ジルが騎士6ユニットを率いて駆け付けた。援軍の登場に勇気づけられたか、ボエモンド隊が突撃、さらに継続攻撃で敵軍深くに切り込んでいく。これまでさんざん袋叩きにしてくれたな。増援さえくればこっちのもんじゃー‼
増援は1部隊ごとに自由活性を使わないと登場できないため、逐次投入となる。トルコ軍としては敵が本格的な反撃に出る前に、十字軍を崩壊に追いやらなければ勝利は望めない。
トルコ軍はロベールやボエモンドの残存騎士ユニットに射撃と白兵戦をしかけるものの、多くが失敗。1ユニットを壊滅させるにおわった。だが数の多さを利用して、ほかの中弓騎兵は十字軍歩兵部隊に攻撃をしかける。射撃で混乱させた後、白兵戦で敵陣に突入。十字軍なんぞ、騎士以外は恐るるに足らんわ!
トルコ軍が十字軍の歩兵部隊に迫り、「きゃー、ラテンの蛮族はやられてもいいから、ローマの軍隊は無事でいてー!!」とアンナちゃんが言いそうなシチュエーションである(当時、ビザンツでは自分たちをローマ、西欧人をラテンと呼んでいました)。この戦いの十字軍の歩兵部隊には、ビザンツが道案内としてつけたタティキオス(Tatikios)の小部隊もいる。漫画「アンナ・コムネナ」では皇帝アレクシオスがタッちゃんって言っていますね。
アンナ・コムネナの著書「アレクシオス」では西欧人のことをときどき蛮族って呼んでいて、金に貪欲って何回も繰り返し書いているし、アンナ様はかなり西欧人のことが嫌いだったんでしょうなあ。
十字軍はサン・ジルに続いて騎士9ユニットを率いて司教アデマールが到着。だが登場エリアには歩兵部隊がいて増援が一気に展開できない。
このマップ右下の増援登場エリア近くにいる歩兵部隊は、隠者ピエールの率いていた民衆十字軍である。諸侯たちの軍隊が来るより先にやってきたのだが、ほとんどが農民や都市の下層民で武器も持たず、コンスタンティノープルに来る途中でも略奪を繰り返していたらしい。漫画「アンナ・コムネナ」では「村を襲って住民を串刺しにしたり火あぶりにしたり赤ちゃんを切り刻んだりするなんて!」と十字軍にドン引きしているけれど、「アレクシアス」では隠者ピエールに率いられた十字軍のこととして書いている。このドリュラエウムの戦いの前に皇帝アレクシオスの忠告も聞かずにアナトリア半島に渡ってトルコ軍に虐殺されており、その生き残りが第一回十字軍について行っていたのだ。
このゲームでは民衆十字軍は足手まといというかはっきり言って邪魔で、一部槍兵(Pike, PK)がいるものの、多くはCamp Followerといって要は軍隊について行っている一般民衆だから戦闘の役に立つことはほぼ皆無。十字軍プレイヤーとしてはクレシーのクロスボウのごとく騎士で踏みつぶしていきたいのだが、巡礼を守るはずの十字軍がそれじゃ本末転倒でしょ。
つづく
2022年7月15日金曜日
(幕間)アンナ・コムネナのお父様の若かりし頃 - Kalavryai 1078 (VaeVictis 87)
ドリュラエウムの戦いのAARが途中だけれども、ちょっとアンナ様ネタを。
十字軍とセルジューク・トルコ軍が衝突したドリュラエウムの戦いの約20年前。まだ20代の将軍だったアレクシオス・コムネノスは、バルカン半島で起きたビザンツ帝国に対する反乱の討伐に派遣される。兵の数でも質でも劣っていたにもかかわらず、カラヴリエの戦いで反乱軍を打ち破ったこの若き将軍が、のちの皇帝アレクシオス一世、つまりアンナ・コムネナの父親である。
反乱を起こしたニケフォロス・ブリュエンニオスは一万二千の兵を集め、しかもその多くは戦闘経験豊かな兵士。一方、アレクシオス側は二、三百のノルマン人傭兵のほか、アナトリアから派遣された部隊やセルジューク・トルコからの援軍二千など雑多な部隊で構成されていた。アンナによると、不死隊と呼ばれる部隊もいたそうだけど、名前だけで戦闘経験はほぼゼロだったそうだ。ビザンツの最盛期となったバシレイオス2世の治世から約50年、帝国の栄光は過去の遠いものとなり、実際このカラヴリエの戦いの数年前にあったマンジケルトの戦いではビザンツ軍はセルジューク・トルコに大敗している。
だがカラヴリエの戦いではブリュエンニオス側の同盟者である遊牧民ペチュネグ人が勝手に略奪行為に走ったり、アレクシオスが待ち伏せ攻撃をしかけたりして皇帝軍の勝利となる。アンナの書いた歴史書「アレクシアス」では結構な分量を割いてこの戦闘について描写しているけど、そりゃお父様の活躍場面ですからね。
ちなみに負けたニケフォロス・ブリュエンニオスは当時の皇帝の命令で目をつぶされるが、その同名の孫がアンナ・コムネナの夫なのである。このことは漫画「アンナ・コムネナ」でも触れられていますね。
このカラヴリエの戦いがVae Victis誌87号の付録ゲームとなっている。買った当時、ユニットを自作して2,3回プレイした記憶はあるけれど、ふーん、ビザンツね、まあいろいろ反乱があったでしょうね、ぐらいにしか思っていなかった。アンナ様、ごめんなさい、あなたのお父様だなんて思っていませんでした。で、今回nyaoさんが漫画「アンナ・コムネナ」を紹介してくれたおかげで久しぶりに取り出してみる気になったわけである。
ゲーム自体はÀ la charge(犠牲において)というシリーズの最初期のもので、中世の会戦を簡単なルールで再現している。ユニット数は20数個、マップも小さいミニゲームだ。皇帝軍の伏兵やペチュネグ人の裏切りルールもある。アンナのパパの野戦修正値(スタックしているユニットの戦闘力にプラスする)は2で、敵のブリュエンニオスは1。やっぱりお父様、若い時からすごいんだわ! とアンナ様が喜びそうなレーティングである。
漫画「アンナ・コムネナ」は早々に売り切れて重版出来となったみたいだから、VaeVictisもこのゲームを再販して「アンナ・コムネナのお父様の活躍がここに!」みたいな感じで宣伝すればあの漫画のファンに売れるはず。いや、売れないだろうな…。
2022年7月13日水曜日
アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack(GMT) AAR ④
トルコ軍の弓騎兵の大群によってさすがの十字軍の騎士も次々と壊滅し、騎士集団の指揮官が二人とも討ち死にしてしまった。Men of Ironシリーズでは指揮官が戦死した場合、副官(Replacement leader)が次の自軍移動フェイズに登場する(副官が用意されていない指揮官もいる)。活性化値が1低いため、副官に率いられた部隊は積極的な行動がしにくくなる。
副官の指揮のもと、ロベール隊は右翼が後退、左翼は混乱状態のユニットの回復に努める。自隊の活性化中に敵に接敵せずに移動も何もしなければ混乱状態から回復できるのだが、ボエモンド隊が多大な損害を被りつつも積極的に反撃してくれていたおかげでロベール隊とトルコ軍弓騎兵の間にわずかながら間合いが生じていたのだ。騎士が正常状態になれば、突撃にカウンターチャージなど再び強烈な攻撃力を発揮することができる。
一方トルコ軍は、騎士たちに反撃の機会を与えてはならないと、中央主力のアルスラン隊でロベール隊に膨大な量の弓矢を降り注ぐ。ロベール隊戦列最右翼の騎士を混乱させ退却させれば、戦列の亀裂が広がってそこからなだれ込めるのだ。だが、7回射撃を行っても騎士は無傷。ええい、連邦のモビルスーツは化け物か!! 結局、包囲して騎士を1ユニット屠ったものの、射撃・白兵戦ともにサイの目が振るわず思うように十字軍に損害を与えられない。
トルコ軍は続けて右翼(マップ左方)のダニシメンドの軽弓騎兵を動かす。ダニシメンドはトルコ軍中央主力を率いるアルスランとは仇敵の間柄だったそうで、それを反映してか活性化値が2と低い。だがMen of Ironシリーズでは総指揮官(Overall Commander, OC)には活性修正(effectiveness)という値があり、士気範囲にいる他の指揮官の活性化チェックのサイの目を有利にする。トルコ軍の総指揮官アルスランは活性修正は-1(サイの目が1有利になる)なので、トルコ軍は両翼の部隊指揮官がアルスランの士気範囲にいるように部隊を展開しているのだ。
ゲーム開始直後からトルコ軍の怒涛の攻撃を受け、十字軍は20ユニットある騎士の半数以上が壊滅した。残っているユニットも多くが混乱状態だ。このままではトルコ軍騎兵集団の波に飲み込まれてしまう。
だが、十字軍には援軍があるのだ。実際のドリュラエウムの戦いでも、離れた位置にいた十字軍の別動隊が駆け付け、ボエモンドたちの窮地を救いトルコ軍を敗走させている。
このゲームの十字軍の援軍は強力で、5部隊で計32ユニットもあり、しかもそれがすべて騎士なのである。
指揮官の活性化値も高く、トゥールーズ伯レーモン・ド・サン・ジル(Raymond IV, Count of Toulouse)にいたっては5だ。この援軍とまともに戦ってはトルコ軍に勝ち目はない。初っ端から全力で攻撃したのも、増援が現れる前に十字軍に大きな損害を与えておく必要があったからだ。
アンナ・コムネナの著書「アレクシアス」には、増援部隊を率いる指揮官たちも登場する。第一回十字軍はビザンツ皇帝の要請から始まったということもあって、まずはコンスタンティノープルにやってきたのだが、ゲームで増援部隊として登場するロレーヌ公ゴドフロワ・ド・ブイヨン(Godfrey of Bouillon)は皇帝に忠誠を誓うことを要求されたが従わず、コンスタンティノープルを攻め始めるということをしている。
漫画「アンナ・コムネナ」にもその辺のことが結構描かれていますね。十字軍を迎え撃つ夫ブリュエンニオスの凛々しい甲冑姿を見て「え? なに? 今の誰? アポローン!?」と美男の代名詞になっていたらしい古代ギリシアの神にたとえているシーンがあるけれど、歴史書「アレクシアス」でもちゃんとそういうことを書き残しています。ブリュエンニオス君、十年ぐらい前だったらリア充爆発しろって書き込まれてたでしょうな。
アンナは、十字軍の中にはエルサレムに巡礼に行くふりをしながら皇帝を失脚させコンスタンティノープルを奪おうとしている連中もいる(特にボエモンド)とまで書いている。このゲームで増援部隊として登場するフランス王弟のユーグ(Hugh Capet, Count of Vermandois)なんかは、えらく尊大な態度だったらしい。でもコンスタンティノープルを攻めるゴドフロワを止めようとしたそうです。
トゥールーズ伯レーモン・ド・サン・ジルに関しては、どんな時でも真実を尊重し、どの西欧人よりもあらゆる面で優れていると例外的にべた褒めだ。塩野七生は人望がなかったって書いてるけど。
このゲームでは十字軍は自由活性を得るたびに増援の登場チェックを行える。10面体サイコロを振って11以上が出たら援軍到着である。え、11なんて出ないでしょ、と思ってしまうんだけど、チェックに失敗するたびにサイの目が1ずつ有利になるため、時間がたてばたつほど増援が現れる可能性が高くなるのだ。
十字軍は騎士集団が半壊し、残るユニットもほとんどが混乱状態で反撃能力は激減してしまった。そして後方の歩兵部隊にトルコ軍の騎兵が迫る。
十字軍の救援部隊は間に合うのか?!
つづく
2022年7月9日土曜日
アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ③
中央の主力アルスラン隊30ユニットが全力で攻撃をしかけたトルコ軍。ここでさらにたたみかけられればいいのだが、予想どおり他の指揮官は動かず、十字軍に自由活性が移る。
十字軍騎士集団の第二列、ボエモンド(Bohemund I, Prince of Taranto)の部隊が左右に大きく展開、アルスラン隊を両翼から攻撃する。騎士の攻撃はすさまじく、継続攻撃(Continued Attack)も得てトルコ軍に次々に損害を与えていった。ほんと、中弓騎兵ってまともに戦ったら騎士には全くかなわない。騎士の集団って怖いよー。
だがトルコ軍もやり返す。なにせハイパーアグレッシブに攻撃しないといけないからね。反撃してきたボエモンド隊の騎士をアルスラン隊が囲み、数にものを言わせて壊滅させていく。さらには左翼(マップ右方)のハサン(Hasan, Emir of Cappadocia)の部隊が前進、十字軍右翼に圧力をかける。
ボエモンド隊は果敢に反撃。殴られたら殴り返す。ノルマン人をなめんじゃねえぞ。騎士3ユニットの突撃、継続攻撃でトルコ軍中央アルスラン隊の右翼が大損害を受けた。
漫画「アンナ・コムネナ」ではアンナが十字軍の残虐行為にドン引きし、十字軍本隊が来ても信用しちゃダメ、と父アレクシオスに言うシーンがあって、
「中にはお父様の宿敵だったノルマン人ロベール・ギスカールの息子もいるんでしょ? 奴は絶対にこの都市の女王(コンスタンティノープル)を奪おうとたくらんでいるわ!」
というセリフがある。ここで言われているロベール・ギスカールの息子というのが、このボエモンドである。
ロベール・ギスカールは兄弟でシチリア島と南伊を征服しさらにギリシアに攻めていくのだが、当時の南伊の先っぽとギリシアはビザンツ領で、ビザンツ帝国にとってはロベール・ギスカールは西から襲来した蛮族。その息子のボエモンドも父に従ってギリシアでビザンツ軍とガンガンやりあっていた。
アンナの著書「アレクシアス」でもそのへんのことが書かれている。当然ボエモンドのことをよく描いているはずがなく、生まれつき嘘つきで信用なんかできなくて、十字軍に参加している性悪な連中のなかでも特に悪い、と言いたい放題。ただ見た目に関してはいい感じで描写しているけど。
ところで塩野七生の「十字軍物語」ではボエモンドのことをプーリア公と書いていて、以前アンティオキアの戦いのAARを書いたときはその表現に従ったけど、ほかの本ではたいていタラント公って書いてあって、プーリア公としているのはなかったです。ロベール・ギスカールの死後、プーリア公を継いだのはボエモンドの異母兄弟のルッジェーロのはずなんだけどな。
中央での殴り合が続いた両軍だが、トルコ軍は右翼(マップ左方)のダニシメンド(Gazi, Emir of the Danishmend)の軽弓騎兵集団を動かす。軽弓騎兵(Light Cavalry Archers, LC/A)は白兵戦で攻撃はできず射撃しかできないのだが、ボエモンド隊(緑)の左翼を包囲して連続射撃、騎士2ユニットを壊滅させる。ボエモンド隊は残存4ユニット、しかも半分は混乱状態だ。強力な騎士ばかりといえど、隊の攻撃力はかなり落ちている。
さらにトルコ軍は継続活性に成功。中央のアルスラン隊が騎士を包囲攻撃し、3ユニットを壊滅させた。
騎士は壊滅したときの敗走ポイント(FP)が3と高い。一方、弓兵(Archers, A)や槍兵(Pike, PK)など歩兵ユニットのFPは1だ。騎士に対して全力で攻撃し壊滅させていく、というトルコ軍の方針は、十字軍から打撃力を奪っていくだけでなく、累積FPも多くなるという利点がある。もしロベール隊とボエモンド隊の騎士計20ユニットを壊滅できれば、それだけでFP60になり勝利にかなり近づくのだ。歩兵なんかにかまっている場合じゃないぜ。
トルコ軍の波状攻撃によって、十字軍は甚大な損害を受けた。騎士集団を率いていたロベールは包囲され射撃を受けて戦死、ボエモンドも包囲攻撃で戦死し、十字軍の累積FPは28となった。
ちなみにこのロベール、ノルマンコンクエストでイングランドを征服したウィリアム一世(ギョーム二世)の長男である。弟のウィリアム二世やヘンリー一世とイングランド王位を争ったけど、最後は負けてノルマンディー公の位を奪われている。
ボエモンドは史実ではこのドリュラエウムの戦いの後シリア方面に進出し、アンティオキア公となって周囲のイスラム勢力と争うだけでなく、ビザンツにも攻めていっている。最終的にはビザンツに負けるのだけれど、アンナ・コムネナの著書「アレクシアス」ではアンナの旦那のニケフォロス・ブリュエンニオスの説得によって最終的にボエモンドが降伏を決めたと、夫のいいところに触れている。史実では夫婦仲がよかったそうだけれども、アンナちゃん、漫画でも旦那のこと大好きだもんね。
ボエモンドが降伏を決めたあと、「アレクシアス」には皇帝アレクシオスがボエモンドに飲ませた条件というか降伏文書的なものがこれでもかというぐらい長々と引用されていて、なんと言うか、ざまーみろという気持ちがひしひしと伝わってきますよアンナ様。
つづく
2022年7月7日木曜日
アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack(GMT) AAR ②
アンナ・コムネナが書いた歴史書「アレクシアス」によると、ドリュラエウムの戦いではトルコ軍は十字軍をなめてかかり、行軍中の敵前衛を発見するとすぐに攻撃したそうだ。
ちなみにアンナ・コムネナは漫画に描かれているように基本的にお父様素敵という姿勢で、「アレクシアス」でも冷静な著述を心がけると言いつついろんなところで父である皇帝アレクシオスを賛美している。
ドリュラエウムの戦いの記述でも、お父様の忠告を聞かなかったばっかりに損害を被っちゃって、やっぱりお父様の賢明な助言が正しかったことが証明されたわ、みたいな感じのことを書いている。アンナちゃん、後世に著作が残るんだから自重したほうがいいんじゃあないでしょうか。まあでも、父親を称賛しているということはご自分で認めてますけど。
いや、でも、このゲームのトルコ軍としては十字軍をなめてかかるなんてとてもできませんよ。十字軍には強力な騎士の集団がいるというだけでも厄介なのに、トルコ軍にとってさらに不利なことに、自軍の指揮官の活性化値が低い。中央で30ユニットという大部隊を率いるアルスラン(Kilij Arslan I)は3、ほかの三人の指揮官は2だ。やる気あんのかと言いたくなるレベルである。機動戦を展開しようにも動かない可能性が高いし、連携攻撃も計算に入れがたい。
そしてトルコ軍にとってダメ押しなのが、十字軍の敗走レベル(Flight Level)の高さである。Men of Ironシリーズでは自軍ユニットが壊滅したり敗走していくごとに敗走ポイント(Flight Point, FP)が蓄積していき、累積FPとサイの目を足して敗走レベルを超えた側が負けになる。
つまり敗走レベルが高い軍はなかなか負けないのだが、例えば前回AARを書いたテュークスベリーの戦いではランカスター軍が20、ヨーク軍が22だ。で、このドリュラエウムの戦いの十字軍は70である。え、70?! 誤植じゃないよね、と思わず二度見してしまう高さである。
こんなに不利な条件が重なってトルコ軍は勝てるのか。強力な騎士集団を前にすると、トルコ軍は快速を生かして敵陣の左右に回りこみたくなる。十字軍後方(マップ下方)の歩兵集団は弓騎兵に対してはほぼ無力だからだ。
だがトルコ軍は指揮官の活性化値が低いため、あっという間に騎士たちに捕捉されて強烈な打撃を食らってしまうだろう。実際、練習でソロプレイしているときにそのとおりの展開になりました。
BGGにも書かれていたが、トルコ軍は損害を恐れず最初からハイパーアグレッシブに攻撃しないといけないのだ。史実のドリュラエウムの戦いは、行軍する十字軍に対しセルジューク・トルコ軍が待ち伏せ攻撃、というものだった。トルコ軍が積極的に攻撃しなくてどうする。
ということで、トルコ軍はゲーム開始からアルスランが率いる中央の弓騎兵集団が十字軍の騎士の戦列に全力で攻撃をしかけることにする。
弓騎兵が隣接した騎士を射撃する場合、40%の確率で騎士は混乱状態になる。さらに、通常は射撃をしたユニットは移動が終了となるのだが、弓騎兵は移動が続けられるため、射撃して離脱、次の弓騎兵が移動してきて射撃、という連続射撃ができる。
一方、騎士は射撃を受けるとカウンターチャージ(Counter-Charge)をすることができる。カウンターチャージを受けた弓騎兵は移動終了となるため騎士から離脱ができなくなる、という効果だけでなく、射撃を解決した後で騎士が弓騎兵に突撃(Charge)できる。もし射撃を受けて混乱状態になっても、カウンターチャージを宣言していれば騎士は白兵戦(Shock)で攻撃できるのだ。
ゲームはトルコ軍の活性化から始まる。トルコ軍弓騎兵の大群が次々と十字軍の騎士に射撃を浴びせかせ、さすがの騎士も多くのユニットが混乱状態になる。十字軍は積極的にカウンターチャージで反撃、トルコ軍側にも損害が出る。指揮官ノルマンディー公ロベール二世(Robert II, Duke of Normandy)が陣頭に立った強力な突撃は弓騎兵を混乱状態で退却させる。やっぱり騎士最強。
が、これがトルコ軍のねらいなのである。このゲームでは戦闘後前進は強制なので、弓騎兵を蹴散らした騎士は戦列から飛び出ることになる。そうして突出した騎士をトルコ軍は大量の中弓騎兵(Medium Cavalry Archers, MC/A)で囲み、射撃で混乱状態にしたのち、包囲状態で白兵戦を仕掛けるのだ。
いくら強力な騎士でも、囲まれて退路を断たれれば退却できずに壊滅する。中騎兵が騎士を攻撃する場合は-3の不利なサイの目修正がつくとはいえ、3,4ユニットで包囲攻撃をしかければ数の優位と二方向以上からの攻撃で逆に有利になるのだ。
敵の陣形を乱し、囲んで袋叩きにする。これこそが非力な中弓騎兵が騎士に対抗できる方法であり、そのために少々の犠牲をいとわず射撃を仕掛けて敵のカウンターチャージを誘発したのである。
包囲攻撃を受けたロベール直属の騎士は壊滅。ロベールはからくも逃げ延びた。十字軍の最前列をなすロベール隊の騎士は、トルコ軍の射撃で半数が混乱状態である。
つづく
2022年7月5日火曜日
アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack(GMT) AAR ①
SNSマストアタックの知り合いnyaoさんに教えていただいた漫画「アンナ・コムネナ」が面白かったのでMen of IronシリーズのInfidelをやってみることにした。
アンナ・コムネナってあれでしょ、知ってますよ。ええっと、千年続いたビザンツ帝国の歴史の中で、ビザンツ皇族にして女性歴史家として後世に名を残している女性でしょ。哲学や神学、医学などさまざまな学問に造詣が深いことで知られる才媛でしたよね、と慌ててWikiを見て一人で知ったかぶりをしつつ、家にあるビザンツ関連の本をいくつかめくってみたら、全部に出てました、アンナ・コムネナ。
本を読むだけだと無味乾燥だった知識が、漫画のおかげで生き生きとしたものになっていって、いやー、ノリのいい漫画って素晴らしい。nyaoさんありがとうございます。ローズマリー・サトクリフが、歴史小説なんて無意味でしょと学者に批判されたときに、小説は歴史に命を与え血を通わせてくれるのですって感じで反論していたそうだけど、漫画も含めほんとそのとおりだと思います。
でもInfidelって十字軍の戦いなんですよ。十字軍は教皇ウルバヌス2世がクレルモンの公会議で呼びかけて始まったって高校の世界史で習ったけな。ビザンツの女性史家とどんな関係があるかというと、トルコ系の勢力に圧迫されていたビザンツ帝国が西欧に支援を要請したのが十字軍のそもそものきっかけ。そのときローマ教皇に援軍を頼んだビザンツ皇帝がアンナ・コムネナの父、アレクシオスI世なのである ―― ということをすっかり忘れていたんだけど、「アンナ・コムネナ」を読んで思い出しました。
アレクシオスとしては西欧からの援軍でもってトルコ軍に打撃を与えたのち適当なところで手を打つつもりだったようで、本によっては夷をもって夷を制するというビザンツの伝統的な対外政策と書いている。だがアレクシオスの想定に反して西方のカトリック世界では宗教的熱狂の渦が巻き起こり、異教徒を殲滅し聖地を奪還するために数万の軍隊がやってきたのだった。漫画「アンナ・コムネナ」でもその辺りのことが描かれていますね。
この第一回十字軍がアンナのいるコンスタンティノープルを経由してイェルサレムに向けて進軍していた時に起こったのが、今回プレイするDorylaeumの戦い。場所は現在のトルコ、アナトリア半島北西部だ。ちなみに同じころの日本は平安時代。中国は北宋で、もうすぐ豹子頭林冲や花和尚魯智深など百八人の豪傑が暴れまわるようになる。なお、使ったのはいつものとおりMen of IronのTri-pack版である。
ところでDorylaeumってどう読むんでしょうね。塩野七生の「十字軍物語」ではドリレウムとなっているけど、デュリュラエウムって書いてある本もあるし。Wikiではドリュラエウムって表記になっていて、なんとなく言いやすいのでここではドリュラエウムにします。
初期配置は写真のとおり。マップ上方の水色のユニットがトルコ軍、下の青いユニットが十字軍である。大量の騎兵で襲い掛かるトルコ軍に対し、十字軍は自軍前面(マップ上方)に2列に並んだ騎士たちが歩兵部隊を守っている。
Men of Iron Tri-packに入っている三つのゲームMen of Iron, InfidelそしてBlood&Rosesのうち、Infidelは他の2作と大きく違う雰囲気を感じる。十字軍とイスラム諸国という異質な軍隊がぶつかり合うのだけれど、イスラム側は弓騎兵が、十字軍では騎士が活躍し機動戦が展開する、という点がInfidelを特徴づけているんじゃないかなと。
その騎士(Knight, KN)がとにかく強力である。例えばこのドリュラエウムの戦いでの敵トルコ軍主力は中弓騎兵(Medium Cavalry Archers, MC/A)だが、騎士が中弓騎兵を白兵戦(Schock)で攻撃する場合、サイの目+2、逆に中弓騎兵が騎士を攻撃する場合は-3となる。さらに騎士は射撃されてもサイの目-1が適用される(サイの目は射撃、白兵戦ともに大きいほうが攻撃側に有利)。
また通常のユニットは混乱状態で攻撃を受けると敗走(Retire)しやすくなるのだが、騎士は敗走せずに1へクス退却で済ませられる。さらに指揮官の指揮範囲にいなくても基本的にペナルティなく行動できる。エトセトラ、エトセトラ……
このように騎士は凶悪なまでの攻撃力と粘り強い防御力を兼ね備えている。ずらっと並んだ十字軍の騎士にまともに攻撃をしかけてもトルコ軍の脆弱な騎兵集団には勝ち目はなさそうで、実際ドリュラエウムの戦いのAARをちらほら見てみると、騎士の強力な攻撃によってトルコ軍が粉砕され、すべて十字軍が勝利していた。トルコ軍としては騎士にどう対処するかが問題となる。
つづく
2022年5月21日土曜日
少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍 Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ⑦
この戦いの舞台となったアンティオキアだが、アレキサンダー大王の死後にセレウコス朝シリアの首都として建設され、ローマ時代においてもローマやコンスタンティノープルと並ぶ政治的、軍事的に重要な都市だったらしい。キリスト教にとっても重要な都市で、キリスト者という言葉がはじめてつかわれたのもこの都市だそうで初期キリスト教伝道の拠点となっていた。ローマ時代にキリスト教が公認されたのちは、コンスタンティノープル、ローマなどに置かれた5大総主教座がこの都市にも置かれていた。
――という感じの、歴史的にはメジャーな都市のはずなんだけど、個人的にはなんだか印象が薄い。20数年前にこの町を訪れた、というかシリアに行くために長距離バスの乗り換えでちょっと下車しただけなんだけど、水を買おうとして高かったからやめたというどうでもいい記憶しか残っていない。現在はアンタキヤと呼ばれて遺跡もあんまり残っていないそうだ。長く続くシリア内戦でトルコは反政府勢力を支援してるって聞いたことがあるけど、シリア国境近くのこの町もその影響を受けているんだろうなあ。
それはさておきアンティオキアの戦いの続きである。十字軍左翼のアデマール隊(黒)に続いて、ゴドフロア隊(青)が活性化。Duqaq隊(緑)の攻撃で多くのユニットが混乱状態になっていたゴドフロア隊(青)だが、このゲームでは、混乱状態のユニットは自隊の活性化中に移動も攻撃もせず、接敵していなければ正常の状態に回復できる。Duqaq隊(緑)が後退していたおかげで、混乱状態だった槍兵ユニット3つが回復した。
続いて十字軍左翼のアデマール隊(黒)がQaradja隊(青)を再び攻撃。まずクロスボウの射撃で軽弓騎兵を混乱状態に。そうなると軽弓騎兵は戦闘前退却ができないため、槍兵で捕捉、壊滅させた。また中騎兵も2ユニットを混乱状態に。Qaradja隊(青)はボロボロだ。
3回活性化が続いていた十字軍だが、ここで継続活性に失敗。このゲームでは継続活性に成功するごとに、次の継続活性判定でサイの目が1不利になっていく。そのため、一方の軍が何度も続けて活性化できないようになっている。やっと活性化が回ってきたトルコ軍は損害を受けているQaradja隊(青)を退かせる。接近戦での殴り合いには不利なトルコ軍だが、こういうときは機動力を生かせる。
続いて中央のDuqaq隊(緑)が活性化。混乱状態にある約半数のユニットは回復させ、残りの部隊でユーグ隊(赤)を攻撃。ユーグ隊(赤)は残存3ユニットとなり、そのうち2ユニットが混乱状態。もうユーグ隊(赤)は使い物にならないだろう。
そしてQaradja隊(青)が中騎兵を回復させつつ、軽弓騎兵のヒットアンドアウェイでアデマール隊(黒)の槍兵を壊滅させる。
今度は十字軍が自由活性。中央のボエモンド隊(緑)が、ユーグ隊(赤)を攻撃したDuqaq隊(緑)の重騎兵に反撃。再びボエモンドが騎士とともに陣頭に立つ。指揮官とスタックした騎士が攻撃する場合、サイの目1有利になるのだ。1ユニットが壊滅、1ユニットが混乱状態、さらに1ユニットを包囲化におく。
このまま一気にたたみかけるチャンス! なのだが、十字軍は継続活性に失敗。トルコ軍はDuqaq隊(緑)がボエモンド隊(緑)に反撃。MAを混乱状態にして退却させる。そしてボエモンドとスタックした騎士に対して、重騎兵4ユニットの包囲攻撃。サイの目修正+4、退却路は無し。さすがの騎士もこれでおしまい、と思いきや、結果はNo Result(効果なし)。ボエモンドの騎兵はシシリー島から連れてきたノルマン騎兵だからね。そりゃ強いよね。
重騎兵の攻撃をしのいだボエモンド隊(緑)が反撃。ボエモンドと騎士は包囲網を打ち破る。さらにゴドフロア隊(青)がDuqaq隊(緑)に追い打ちをかけ、重騎兵が1ユニット壊滅。トルコ軍のFPは27に。
十字軍は再びボエモンド隊(緑)の継続活性に成功。弓兵の射撃で重騎兵を混乱状態にしてから、歩兵の攻撃で壊滅させる。さらにもう一ユニットもボエモンドの陣頭指揮で壊滅し、トルコ軍のFPは33に。敗走レベルの35に迫る。
怒涛の十字軍の攻撃の後、やっと迎えたトルコ軍の自由活性。このままでは負けてしまう。とにかく全力で攻撃して、敵ユニットを壊滅させるのだ。無傷で残っていた左翼のSoqman隊(紫)が動く。軽弓騎兵の連続射撃でボエモンド隊(緑)の槍兵が壊滅。そして中騎兵3ユニットの攻撃で、混乱状態だったユーグ隊(赤)の騎士が壊滅する。十字軍のFPは14になった。
自由活性化の最後に敗北チェック(Loss Check)がある。両軍がそれぞれサイコロを振って出た目を自軍FPに足し、敗走レベルを超えると負けだ。デザイナーズノートによると、このようなサイコロによる勝敗の不確定さは士気の上下や戦場の霧など様々な要素を表しているらしい。
十字軍の敗北レベルは20で、FPは14。サイの目は、5。耐えた。続てトルコ軍。敗走レベルは35でFPは33。サイの目は…3。トルコ軍の士気は崩壊し、アンティオキアの戦いは十字軍の勝利となった。
(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)
2022年5月19日木曜日
少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍 Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ⑥
トルコ軍の波状攻撃に十字軍中央のゴドフロア隊(青)が反撃。だがDuqaq隊(緑)の重騎兵の守りは固く、痛み分けに終わる。そして十字軍は継続活性に失敗。Duqaq隊(緑)がゴドフロア隊(青)にやり返す。MAを敗走させ、槍兵を3ユニット混乱状態にする。戦列にも穴が開いた。
このままではゴドフロア隊(青)が危ない。十字軍がここでSeizureカウンターを使用。敵の継続活性を奪い、崩れかけているゴドフロア隊の救援に主力のボエモンド隊(緑)が駆け付けた。指揮官のボエモンドが陣頭に立ち、騎士を率いて突撃。重騎兵を壊滅させる。さすがはボエモンド。ボエモンドはノルマン人の家系で、11世紀の初頭にフランスのノルマンディーから兄弟とともに南イタリアとシチリア島を征服したロベール・ギスカールの息子。ノルマン人はアンティオキアの戦いの30年ぐらい前にはノルマンディーからイングランドを征服するノルマンコンクエストなんてのもやってるし、まあとにかく戦いには強かったらしい。もともとヴァイキングだしね。
ちなみに資料によってはボエモンドはボエモンとフランス語読みで書かれたり、ロベール・ギスカールはロベルト・グイスカルドとイタリア語読みだったりして、結構混乱する。『ノルマン騎士の地中海興亡史』という本の巻末に主要な人名のラテン英仏独伊各国語の対応表があって、ラテン(羅)語でマリアが英メアリ、仏マリ、独マリア、伊マリアっていうのはまあわかるけど、ウィレルムス(羅)が英ウィリアム、仏ギョーム、独ヴィルヘルム、伊グリエルモなんてのもあって、絶対同一人物だってわからんだろ、ウィリアムとギョームとグリエルモがなんで同じ名前なんだよと自分の無学を棚にあげて突っ込みたくなる。まあ、東アジアでも「もうたくとう」が「マオ・ツォードン」だろっていうのもありますからね。「李小龍」が「ブルース・リー」とか。いや、これはちょっと違うな。
閑話休題。半数近くが混乱状態となっているDuqaq隊(緑)はボエモンド隊(緑)とやりあっても益なしと、ひとまず後退。騎兵の機動力を活用して十字軍と距離を取り、態勢の立て直しをもくろむ。
続いてトルコ軍は右翼のQaradja隊(青)の活性化に成功。軽弓騎兵がヒットエンドアウェイの連続射撃でゴドフロア隊(青)の騎士を混乱状態にする。そこにQaradja隊(青)の中騎兵が集中攻撃。この連係プレーで騎士は壊滅した。なんかペルシアのころから続く東方系の軍隊の伝統を見た気分。その一方でトルコ軍の歩兵が一切活躍していない。というか下手に戦列に加えると味方の邪魔になるうえ、あっという間に敗走しそうなのもオリエントの雰囲気がぷんぷんする。
Infidelの参考文献として挙げてあった"Crusading Warfare, 1097-1193"という本には、十字軍が最も恐れ称賛した相手がトルコ軍だと書いてある。十字軍に比べて軽武装で機動力に優れていたため、敵との距離を維持し攻撃するタイミングを選べたそうだ。十字軍が攻撃したら逃げ、側面や後方に回り込む。そうして弓騎兵の射撃で敵に損害を与え混乱させ、最後は接近戦で決定的なダメージを与えるという戦術をとっていたらしい。ゲームやる前に読んどきゃよかった。でもこのゲームでも、兵種の特徴や部隊構成を考えたら自然とそう言う戦い方になるよね。
トルコ軍は継続活性に失敗。突出していたQaradja隊(青)に、十字軍左翼のアデマール隊(黒)が攻撃を仕掛ける。中騎兵が3ユニット壊滅した。
両軍の激しい攻防が続いたが、この時点で両軍のFPは十字軍8,トルコ軍19。敗走レベルはそれぞれ20と35なので、今のところややトルコ軍有利といったところか。
つづく
2022年5月17日火曜日
少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍 Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ⑤
Infidelのアンティオキアの戦い、前回は十字軍があっさり負けたので泣きの再戦である。前回の教訓から、十字軍は増援部隊を出陣させることを優先する。ゴドフロア隊(青)を展開させつつ、ユーグ隊(赤)でトルコ軍軽弓騎兵の排除を進める。
一方トルコ軍はなんと3回連続で増援部隊の登場に失敗。トルコ軍の諸将は連携が取れておらず、総指揮官のケルボガの言うことを聞かなかったというが、まさにそんな感じ。トルコ軍の増援部隊の活性化には、登場させたい部隊の指揮官の活性化値ではなく、ケルボガの活性化値3を使う。自由活性化のときはサイの目が1有利になるので4以下、つまり50%の確率で成功するはずなんだけど。
もし増援部隊の活性化に失敗してもマップ上にいる部隊の継続活性を試みることができるのだけど、初期配置されている軽弓騎兵の部隊は指揮官がいないため自由活性化でしか動かせない。だが自由活性化は上記のとおりサイの目が有利になるので増援の活性化に使いたい。つまり、増援部隊を出さないことにはトルコ軍はほぼ何もできないのだ。うへー。
十字軍のユーグ隊は軽弓騎兵の対応射撃で歩兵が少々混乱状態になっても気にせず攻撃し、軽弓騎兵部隊の殲滅を進める。トルコ軍は指をくわえて自軍ユニットが消えていくのを眺めているしかない。やっとQaradja隊(青)が登場するころには軽弓騎兵部隊は雲散霧消し、トルコ軍のFPは12になっていた。
その後も活性化のサイの目は十字軍に分があり、トルコ軍が3部隊を登場させたころには十字軍は主力のボエモンド隊(緑)までアンティオキアから出てきていた。たぶん、これがヒストリカルな展開なんでしょうな。
その後はお互いに間合いを取りつつ陣形を整えていく。総兵力では勝っているはずのトルコ軍なのだが、マップ上に出ているユニット数では十字軍のほうが優勢である。
自由活性化で任意の部隊を活性化できるため、トルコ軍は活性化値が3と低めのSoqman(紫)の部隊から攻撃に移る。
まずは軽弓騎兵でユーグ隊(赤)の騎士に連続射撃。このゲームでは1ユニットごとに移動・射撃を行い、射撃をしたユニットはそれ以上移動ができない。だが軽弓騎兵は射撃後も移動を続行できる。さらには、通常は移動中に接敵するとそこで移動終了なのだが、1移動力を消費して射撃を行えば離脱して移動を続けられるという、ヒットアンドアウェイが行えるのだ。
馬上からの射撃は威力が比較的低かったのか、軽弓騎兵の射撃には攻撃側に不利なサイの目修正-1がつく。さらに騎士の強固な鎧や士気の高さを反映してか、騎士を撃つ場合はサイの目修正-1が加わる。そのため軽弓騎兵が射撃で騎士に損害を与えらえる確率はやや低く、複数のユニットを使う必要がある。
Soqman隊(紫)の軽弓騎兵ユニットが次から次へとユーグ隊(赤)の騎士に弓の雨を降らせ、さすがの騎士も混乱状態に。さらには重武装のMAも壊滅した。
そして混乱状態の騎士に中騎兵が3ユニットで攻撃をかける。結果は防御側の敗走だったが、騎士の特別ルールで退却だけに終わった。
次にトルコ軍はSoqman隊(紫)右に位置するDuqaq隊(緑)の継続活性化に成功。Soqman隊(紫)に続きユーグ隊(赤)に重騎兵で突撃をかける。クロスボウ、槍兵ユニットが次々とアンティオキア市内に敗走していく。ユーグとスタックしていたMAも混乱状態になり退却した。だがDuqaq隊(緑)も無傷とはいかず、突撃に失敗し混乱状態になった重騎兵もいくつか出る。
Duqaq隊(緑)の突撃の後は、トルコ軍右翼のQaradja隊(青)が前進してDuqaq隊(緑)の右をカバー。おお、トルコ軍がなんか連携が取れている。
2022年5月13日金曜日
少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍 Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ④
Men of Iron Tri-Pack版ではSeizureカウンターというものがあって、攻撃を有利にしたり、相手の継続活性を中断させて自軍部隊を活性化したりする活性継続奪取(Seize Continuity)など数種類あるのだが、ゲーム開始時に両軍が決められた数だけランダムに引く。アンティオキアの戦いでは十字軍は4つ、トルコ軍は3つだ。
十字軍のゴドフロア隊(青)の左側面ががら空きなうえ、最左翼のMAも騎士も混乱状態になっているため、チャンスと見たトルコ軍はSeizureカウンターを使用。10面体ダイスを振り0~7で活性奪取成功のチットである。80%で成功だからこれで十字軍にたたみかけらる、と思いきや、十字軍側もSeizureカウンターを使用。奪取を無効化(Seizure Negation)で、せっかくのトルコ軍の試みも無駄に終わった。十字軍はアデマール隊(黒)を前進させ、ゴドフロア隊(青)の左翼をカバー。これで城門の前が空くので、十字軍最大兵力のボエモンド隊も出撃できる。
続けてゴドフロア隊(青)を活性化させ、混戦状態となっているDuqaq隊(緑)を攻撃する。重騎兵が1ユニット壊滅し、Duqaq隊(緑)の残り8ユニットのうち6ユニットが混乱状態となった。重騎兵は敗走ポイント(Flight Point, FP)が3と結構大きいため、十字軍としてはDuqaq隊(緑)をさらに攻撃しなるべく多くのユニットを壊滅させたいところだ。
だが十字軍は活性継続に失敗、トルコ軍の自由活性となる。多くが混乱状態となっているDuqaq隊(緑)をひとまず退かせるべきか。それとも敵のゴドフロア隊(青)が左翼をさらけ出しているところにQaradja隊(青)で攻撃を仕掛けるべきか。
しばし迷ったトルコ軍だが、攻めを選択する。虎穴に入らずんば虎子を得ず。班超ほど追い詰められた状況じゃないけどね。しかし学者一家からあんな冒険野郎がよく生まれたもんだ。それはさておき、Qaradja隊(青)の中騎兵がゴドフロア隊(青)の騎士とMAに襲い掛かる。
だがMAは中騎兵2ユニットの攻撃を持ちこたえた。そして騎士への中騎兵3ユニットの攻撃。騎士はゲームで最強のユニットで、中騎兵が攻撃する場合サイの目に-3の修正がついてしまう。さらにこの騎士ユニットの防御力は-1なので計-4。だが前面と側面からの同時攻撃で+4、さらにユニット数の差で+2の修正で、差し引き+2となる。混乱状態のユニットへの攻撃で+2だと、通常だと70%の確率で攻撃は成功となり防御側は除去もしくは自軍本営に逃げて行く。だが騎士は自軍本営に敗走する結果(Retired)は、1へクス退却だけで済むのだ。そのためこの場合、騎士を退却ではなく除去するにはサイの目6以上、40%の確率となる。3ユニットで側面からも攻撃して、しかも混乱状態で防御しているのに、騎士強すぎ。BGGかどこかのレビューでこのゲームInfidelの騎士は中世のパンツァーだと書かれていたが、確かにそんな感じ。今回はあんまり活躍していないけど。
気合を入れてトルコ軍が振ったサイコロは、6。おっしゃ、騎士壊滅。へなちょこ中騎兵でもやるときはやるのだ。
騎士の壊滅により、十字軍のFPは13に達していた。サイコロを振って出た数を足すと、十字軍の敗走レベルの20を越す可能性がある。そしてそのチェックは自由活性化が終了する度に行われる。これまでは両軍ともサイコロを振っても敗走レベルに達するほどのFPではなかったため、今回が初めてのチェック。そして出た目は…なんと9。FP13と足して22、十字軍の敗走レベルを超えたため、トルコ軍の勝利となった。えええ、こんなにあっさり負けちゃうの?
つづく
2022年5月11日水曜日
少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍 Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ③
このアンティオキアの戦いでは、トルコ軍を率いるケルボガは十字軍をすべて市内からおびき出して一気に叩こうとして攻撃を控えていた。その間に十字軍が素早く攻撃にでてトルコ軍を打ち破ったらしい。
その轍は踏まない、と、十字軍の態勢がまだ整っていないのを見て取ってトルコ軍が攻勢に出た。トルコ軽弓騎兵部隊に向かっていたユーグ隊(赤)の側面に対して、Duqaq(緑)の重騎兵が機動力を生かして一気に襲い掛かる。まだ全軍が出ていない段階で、しかも遠巻きにしていた位置からの攻撃に十字軍は慌てる。こんなに早くトルコ軍が攻勢に出るなんて。増援部隊の出撃を優先していたからユーグ隊(赤)は左側面をさらけ出したままじゃないか。
そこに騎兵群の突撃。ユーグ隊の弓兵とクロスボウが瞬殺された。まあこうなるよね。さらに重武装の歩兵MAも、重騎兵2部隊の突撃を側面と後方からくらい、混乱状態(Disordered)になって退却した。
このゲームの白兵戦は10面体ダイスを一つ振って出た目に、防御側の地形や防御ユニットの防御力、それに攻撃側と防御側の兵種の組み合わせでサイの目修正が適用される。さらに側面や後方からの攻撃は有利なサイの目修正がつく。
MAは防御力に優れ重騎兵が攻撃しても不利なサイの目修正がつくうえ、攻撃されたMAユニットの防御力は-2(マイナスの数値が大きいほど防御が固い)で、正面から攻撃するとなかなか損害が与えられない。だが側面と後方の二方向からの突撃にはさすがに耐えられなかったようだ。
MAを退却させた重騎兵は継続攻撃(Continued Attack)の戦闘結果が出た。戦闘後前進をしてさらに攻撃できる、というか攻撃しないといけない。だがその正面にはさらにMAがいて重騎兵の攻撃を撃退。重騎兵は混乱状態となった。突撃あるある。
だが全体としてDuqaq(緑)隊の強襲は成功と言える。
Duqaqの重騎兵にほかの部隊も続け、 と言いたいところなのだが、トルコ軍は継続活性に失敗。総大将のケルボガの言うことを諸将があまり聞かないという、トルコ軍の本領発揮か。
重騎兵の攻撃で損害を出したユーグ隊(赤)が反撃。だが槍兵(Pike, PK)2ユニットによる攻撃は跳ね返され、逆に槍兵が混乱状態に。さらに十字軍が誇る最強ユニット、騎士(Knight, KN)による攻撃も効果なしに終わった。接近戦に弱いトルコ軍の中で、重騎兵が例外的に白兵戦でもなかなか強いのである。
今度は十字軍が継続活性に失敗。トルコ軍のDuqaq隊(緑)が、ユーグ隊(赤)とその左翼を守るゴドフロア隊(青)に突撃する。両隊の槍兵を3ユニット壊滅させるとともに、ユーグ隊(赤)の騎士への包囲攻撃も成功、騎士が壊滅してしまう。さらに継続攻撃で残存の槍兵を混乱状態に。だがMAへの攻撃は跳ね返され重騎兵は混乱して退却した。
この攻撃でDuqaq隊(緑)はユーグ隊(赤)をほぼ無力化したものの、多くが混乱状態となっており衝力はかなり落ちてしまった。その援護のためにQaradja隊(青)が前進し、突出したDuqaq隊(緑)の右翼をカバーする。
ここで十字軍のゴドフロア隊(青)がDuqaq隊(緑)に反撃。1ユニットを混乱、退却させ戦闘後前進で1ユニットを包囲する。だがMAと連携しての騎士の突撃は、なんと攻守両者混乱。なんか全然活躍してないぞ、騎士。
つづく
2022年5月9日月曜日
少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍 Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR②
このシナリオは十字軍の活性化から始まる。初期配置されているトルコ軍の軽弓騎兵集団は指揮官がいないためほとんど使い物にならないのだが、十字軍にとっては敗走ポイント(Flight Point、以下FP)を稼げるいいカモである。
Men of Ironシリーズではユニットの除去や敗走によってFPが加算されていくのだが、各陣営に敗走レベル(Flight Level)というものが設定されていて、累積FPと10面体ダイスの目の合計が敗走レベルを超えた側が負けになる。
十字軍の敗走レベルは20,トルコ軍は35で、十字軍が勝つためには多くの損害をトルコ軍に与えないといけない。軽弓騎兵は1ユニットが2FPなのでマップ上の6ユニットを除去するだけで12FPとなる。十字軍としては敵の増援主力が現れる前に、ユーグの部隊(赤)で軽弓騎兵部隊の除去を目指す。
軽弓騎兵に正面から接敵すると対応射撃(Reaction Fire)で撃たれてしまううえ、歩兵が攻撃しても戦闘前後退で逃げられてしまう。そのため歩兵は接敵せず、まず騎士(KN)を側面から回りこませて攻撃する。
だが十字軍は増援の活性化に失敗し続ける。このゲームでは1部隊の活性化のあと、自軍の別部隊の活性化を試せるのだが、この活性化の継続に失敗した場合、敵軍には自由活性化が与えられる。自由活性化の場合は活性化チェック無しに任意の部隊を活性化できるため、十字軍は唯一活性化値が3と低いユーグをまず動かし、ついで増援部隊の活性化を試みていたのだが、なかなか成功しない。50%の確率で成功するはずなのに、狭い城門から我先に出陣しようとして大混雑でもおきてんのかな。自由活性化のときにユーグを動かさずに増援部隊を出すことを優先すればよかったのだが、後の祭りである。
トルコ軍の増援は、登場させる部隊の指揮官ではなく総指揮官のケルボガの活性値3を使わないといけない(なおケルボガのユニット自体はマップに登場しない)。10面体ダイスで0~3(40%)で成功なのだが、十字軍と対照的に次々と成功させていく。
まずQajadja(青)の部隊の活性化に成功。軽弓騎兵と中騎兵(Medium Cavalry, MC)が中心の部隊だ。快速の一方で接近戦には弱いため、十字軍とは距離を取りながらマップ左側のオープンスペースに展開することを目指す。
続いてDuqaq(緑)の部隊も登場。これは重騎兵(Heavy Cavalry, HC)のみで構成されている部隊で、トルコ軍の打撃力の中心となる。
十字軍が増援の活性化に失敗している間に、さらにSoqman(紫)の部隊も登場。こちらもQajadja(青)の部隊同様に軽弓騎兵と中騎兵が中心の部隊だが、指揮官の活性化値が3とやや低く、思うように動かせない可能性が高い。そのためオープンスペースが広がるトルコ軍右翼は活性化値4で騎兵中心のQajadja(青)とDuqaq(緑)の部隊にまかせ、この部隊は左翼を固める。
十字軍はユーグ隊(赤)に後続部隊が続かないのに、トルコ軍は着々と態勢を整えている。おいおい、トルコ軍は統制が取れていなかったんじゃないのかよ。
だがその後は十字軍も増援を出すことを最優先。ロレーヌ公ゴドフロア(青)、そして司教アデマール(黒)と出撃する。が、1へクスサイドしかない狭い城門から橋を渡って出てくるため団子状態になるうえ、ほとんどが歩兵なので移動力が低く、部隊を展開して隊列を整えるのに時間がかかる。指揮官の活性化値が十字軍のほうが比較的優れているため、活性化する回数はこっちのほうが多くなるはずだが…。
ちなみにこの司教アデマールは法王代理として第一回十字軍の精神的指導者だっただけでなく、戦闘指揮官としての才もあったようで、前年のドリレウムの戦いでも活躍している。中世は祈る人、戦う人、耕す人っていう3つの身分に分けられていたってどこかで読んだ気がするけど。まあこの戦いの20年ぐらい後には騎士修道会なんてのができますからね。
つづく
(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)
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