2023年4月22日土曜日

第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ④

  敵中央部隊の攻撃で自軍が分断された十字軍だが、左翼(マップ右方)のゴドフロア隊(青)で反撃する。騎士の威力を見せてやる!と+3DRMで攻撃するものの、サイの目はゼロでまさかの攻撃側混乱。だがそれ以外では敵右翼の槍兵と中騎兵に損害を与えていった。


 このゴドフロア隊だが、フランス南東部のブルゴーニュとロレーヌ地方の兵から成る。「Infidel」の十字軍ユニットには出身というか所属地方が書いてあるのだが、ロベール隊(赤)はノルマンディとフランドル、レーモンはフランス南西部のアキテーヌと南部のプロヴァンスの兵から成っている。どこの兵かはルール上は全く関係ないのだが、WW2のゲームで師団名が書かれていると気分が盛り上がるのと同じような感じかな。

 第一回十字軍は、教皇ウルバヌス二世がフランス中央のクレルモンで開かれた公会議で呼びかけたことで始まったこともあって、フランスからの参加が主だった。ウルバヌス二世もフランスの地方貴族の家の出で、フランスにあるクリュニー修道院に入っているから、フランスの騎士たちに訴えかけやすかったんだろうなあ。

 ちなみに兵站が未発達のこの時代に万単位の軍を遠征させること自体が難事業だったそうだ。ローマ帝国のころとえらい違いだけど。前回紹介した『Victory in the East』によると、パリから南伊経由でギリシアのテッサロニキまでですでに約2,400kmと、鹿児島から稚内よりも約600km遠い。さらにそこから十字軍主力はアンナ様のいるコンスタンティノープル経由でイェルサレムに向かったわけで、その距離約2,000km。つまりフランスからやってきた兵たちは約4,000kmの行軍をしていて、しかも小アジアに渡って以降は敵地の真っただ中、かつ険しい地形や酷暑に悩まされていた。そういう苦難に負けないぐらい聖地奪還への宗教的使命にみなさん燃えていたんでしょうな。イスラム側からしたらとんでもない厄災だけど。


 ゴドフロア隊に続いて右翼(マップ左方)のレーモン隊(黒)が攻撃。混乱状態の中騎兵を狙って騎士や槍兵が白兵戦をしかける。たまらず中騎兵1ユニットが自軍の軍旗目指して逃げ出し、さらには2ユニットが壊滅した。砂浜から側面に回り込み混乱状態の中騎兵を攻撃したレーモン隊の槍兵は、騎兵を蹴散らした勢いに乗って継続攻撃(Continued Attack)。だがそこでベルベル中騎兵の中でも防御力の高いユニットにぶつかり、逆に混乱状態となるというおまけつき。指揮官のレーモンは騎士とともに敵に囲まれていたが、隣接する槍兵を瞬殺。ファーティマ朝軍の累積敗走ポイントは18に上った。

 このシナリオでのファーティマ朝軍の敗走レベル(Flight Level)は25で、累積敗走ポイントに10面体サイコロの目を足した数がこれを超えると負けてしまう。焦るファーティマ朝軍。一方、十字軍の累積敗走ポイントはいまだに2だ。だがこれまでの戦闘で混乱状態のユニットが増えてきているため、楽観視はできない。



 ここでファーティマ朝軍に自由活性が回ってくる。中央の弓兵部隊で、弱体化している敵ロベール隊(赤)に追い打ち。さらには左右の敵部隊にも射撃によって損害を与えていく。十字軍はまだ累積敗走ポイントが5にとどまっているものの、3部隊とも消耗が激しい。騎士9ユニットのうち正常状態で残っているのは最左翼(マップ右方)で突出しているゴドフロア隊(青)の1ユニットのみとなった。


 ころはよし、とファーティマ朝軍は後方で温存していたマムルーク重騎兵を解き放つ。マップ右方のゴドフロア隊に向かってチャージ、チャージ、チャージ!! さすがの騎士もこれまでの戦いで疲労していたか、砂塵を巻き上げながら突進してくるマムルークの突撃を受け止めきれずに2ユニットが壊滅した。騎士は壊滅時の敗走ポイントが3なので結構な痛手である。



 マムルークとは奴隷の意味らしいが、奴隷は奴隷でも軍人奴隷で、実際は騎兵のエリート軍人層。多くは遊牧民の出身で忠誠心も強かったそうだ。10世紀あたりからイランやシリア、エジプトなどのイスラム圏で有力な軍事力となり、サラディンもマムルークを活用している。1250年にはエジプトでマムルーク朝が成立しているけど、そのバイバルスがモンゴル軍を破ったのは有名なんじゃないかな。


つづく


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