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2024年9月6日金曜日

クラウゼヴィッツの『1815年のフランス戦役』

  ワーテルロー戦の終盤、親衛隊の最後の攻撃をシミュレートした「La Garde Avance!」っていうのがあって、小さなゲームながら結構面白いんですね。右翼にプロイセン軍が迫る中、ナポレオンは親衛隊を投入して敵中央突破の賭けに出る…という燃えるシチュエーションです。タイトルからしてですね、撃退された親衛隊を見た仏軍が叫んだという「La Garde recule!(親衛隊が退却している!)」って言葉にかけているみたいですからね。

 つい最近SNSのマストアタックでこの「La Garde Avance!」と親衛隊の攻撃について熱い議論が交わされて、ナポレオニックの知識がほとんどない自分にはすごく勉強になりました。そういえば最近クラウゼヴィッツの「戦争論」の全訳が出たな、クラウゼヴィッツと言ったらナポレオンと同時代人だから、ワーテルローについて何か書いてないかな、と探してみたらありました。「Der Feldzug von 1815 in Frankreich」という著作。

 これ、『1815年のフランス戦役』というタイトルとおり1815年戦役の開始状況からパリ陥落あたりまで、クラウゼヴィッツの分析を交えつつ描写しています。なのでワーテルロー戦も全体の一部にしか過ぎないんですが、Die Hauptmomente der Schlacht. Vertheidigung Wellingtons(戦闘の主な時点。ウェリントンの防衛)という章で親衛隊の攻撃についてちょっと触れられています。


da wollte der verzweiflungsvolle Bonaparte auch das Letzte noch daran setzen, um das Centrum Wellingtons zu sprengen. Er führte die übrigen Garden auf der Chaussee nach la Haye Sainte und der feindlichen Stellung vor; 4 Bataillone dieser Garden machten einen blutigen Angriff, aber vergebens.

(必死になったボナパルトは、ウェリントンの中央を突破するために残っているすべてを投じようとした。親衛隊の残りの部隊を率いてラ・エイ・サントから敵の戦列へと通じる道を前進した。この親衛隊の4個大隊は熾烈な攻撃を行ったが、無駄だった)


 いや、そんなにあっさり終わらせないでよ! と言いたいところなんですけど、戦役全体を扱った著作だから仕方ないんでしょうね。


 この「Der Feldzug von 1815 in Frankreich」、クラウゼヴィッツがプロイセン人だからなんでしょうけど、英軍よりも普軍の描写や分析が多い印象。ワーテルロー戦も、

Die Schlacht zerfällt angescheinlich in zwei verschiedene Akte: den Widerstand Wellingtons und den Angriff der Preußen in der rechten Flanke der Franzosen.

(この戦いは明らかに二つの動きに分けられる。ウェリントンの防戦と、プロイセン軍のフランス軍右翼への攻撃である)

なんて書いています。まあプロイセン軍の登場で戦況がガラッと変わったのは認めますけど、でもワーテルロー戦のいくつかあるクライマックスの多くは英軍と仏軍の攻防にあったんじゃないんですかね。でも戦闘終盤のウェリントンについて、ウェリントンは敗北一歩手前までいっていたという意見が一般的だがそれは違う、という趣旨のことを論じていたりします。

 あと、Betrachtungen über die Schlacht. Bonaparte(戦闘の考察。ボナパルト)という章では、ナポレオンはもっと早く攻撃を開始すべきだったのかなどいろんな点について結構長く書いていて、es war gegen alle Regel, diese Schlacht noch zu versuchen.(この戦いを始めたということが、すべての法則に反するのだ)なんてことまで(条件付きでですが)書いています。まあそのあとちょっとナポレオンを擁護しているんですが。とにかくワーテルロー戦についてナポレオン側のことはかなり考察しているのに、続く連合軍の章ではUeber das Benehmen der verbündeten Feldherren in der Schlacht von Belle-Alliance haben wir wenig zu sagen.(ワーテルロー戦での連合軍の将軍たちの行動についてはいうべきことはほとんどない)なんて書いてあっさり終わらせていたのが面白かったです。


 「Der Feldzug von 1815 in Frankreich」は1815年戦役全体をあつかっているため、ワーテルロー戦以外のことについて書かれている部分のほうが当然多いんですけど、この戦役について全然知らないのでクラウゼヴィッツの叙述や分析がどれだけ妥当なものなのかは全然わかりません。勉強になりましたが。現代の通説と比べてみるのも面白いのかなと思います。その前に通説をどこかで読まなきゃ。


2023年11月26日日曜日

ミュラ元帥の子孫曰く、映画「ナポレオン」は〇〇だが見に行くべし!

 封切まで一週間を切った映画「ナポレオン」、ウォーゲーマーだったら楽しみにしている人は多いんじゃないでしょうか。英米仏では先に11月22日に公開されていて、観客動員数は好調のようです

 フランスでは公開前にパリの凱旋門をドでかいポスターで覆う、なんてことやってたみたいですし。

あの凱旋門はアウステルリッツの勝利を記念してナポレオンが作らせたそうで、まあこういうことしたくなるのもわからんでもないですね。


 フランスではイギリス人の監督による英米の映画がどんなふうに受け止められているのかな、と思ってちょっと見てみたら、批評家の間では賛否両論みたい。

 結構史実に手を加えているらしくて、エジプトのピラミッドを砲撃とか、そりゃないだろとナポレオニック初心者の私でも思います。でも映画は映画と割り切って楽しめばいいんじゃないかな。それにね、ナポレオン自身が"La vérité historique est souvent une fable convenue."(歴史的真実とはしばしば、合意された寓話なのだ)なんて言ったそうですし。


 フランスでの批評なんですけど、英米では好評を博しているけどフランスでは評価が分かれていて、リドリー・スコットがイラついている、なんてこと書かれていますね

ほかにも、

リドリー・スコットの「ナポレオン」―編集者たちを分断する映画

とか、

リドリー・スコットの「ナポレオン」-「壮大なショー」か、「ひどい伝記映画」か。批評家たちは完全に二分している

とか、史実から離れすぎているという批判に対し、映画としては面白いという声があるそうです。

フランスでの批判的な声に対して、リドリー・スコットは「フランス人は自分たちのことが好きじゃないんだ」と言ったとか。

 まあもともとこの映画、ストリーム配信を予定していて長さも4時間半だったらしいですが、映画館での上映のために2時間40分に短くしたとか。なので監督としては4時間半バージョンを見てほしいって思うのかもしれませんね。でもそれでも、演出入れすぎて史実と結構違うところがあるっていうのは変わらないと思いますが。

 スペインだとこんな批評もありましたし。

リドリー・スコットの「ナポレオン」-間違いにとどまらない、犯罪だ


 それはさておき、映画「ナポレオン」関連の記事を読んでいて見つけたのが、ジョアシャン・ミュラ「リドリー・スコットのナポレオンは欠点だらけだが、見に行くべし!」というもの

 あれ、ミュラってナポレオンの元帥で、たしか騎兵の突撃で有名だったよね。それくらいナポレオニック初心者の自分でも知ってますよ。いやいや、200年前の人が映画見ろっていうわけないじゃん…って思っていたら、同姓同名の子孫だそうです。記事によるとミュラ元帥の7代あとらしいけど、もしかしてこの人かな

 このミュラさんが書いた映画「ナポレオン」についての記事なんですけど、ミュラ元帥の子孫だからだろうけど、客観的には観られていないと言うことは最初に断っています。そのうえで、この映画にはこれまでにない栄光、考えられないような勝利、英雄的な一群の登場人物、つまり一言でいって偉大さを期待していたそうです。

 でもこの映画は全体的に暗いって言っています。冷たい光の下、ほとんどのシーンは秋で、実際のナポレオン帝国は若者たちによって率いられていたのに、若い役者はほとんど出ていない。すごく失望したって率直に言っていますね。もっとも、客観的に見れていないって改めて断っていますが。

 リドリー・スコットはイギリス人のナポレオン観、つまりコルシカの山賊っていう感じらしいんですけど、礼儀を知らない簒奪者として描いているとミュラさんは感じたようですね。ナポレオンは当時は平均的な身長だったのに、背が低いというイギリスのプロパガンダを引きずっているとかね。

 とは言いつつ、すごい映画だとは認めています。楽しめることは間違いない、と。皇帝の新しいイメージ(自分は受け入れないけどとは言っていますが)をこの映画は提供していて、それはナポレオンとその時代への考察を深めるだろうとのことです。


 と、フランスでは賛否両論のあるこの映画、でもエンターテインメントとしてはおおむね認められているようなので、楽しみにしておこうと思います。

 

2023年9月23日土曜日

「アウエルシュタットの戦いは、どの場所で始まったのか?」に便乗して

 DSSSMさんがブログに書かれていたんですがアウエルシュタットの戦いがどこで始まったかについて、資料によってはHassenhausenのほかに、Poppelという記述があるそうです。いやーしかし、いろんな資料に当たられてすごいなー。

このDSSSMさんのブログを受けて、Bernadotte66さんが『Campagne de Prusse, 1806』というフランス語の資料はHassenhausen説をとっていると紹介されていました。
アウエルシュタットの戦い開始位置

自分もちょっと興味をひかれて調べてみました。ただ前もって断っておくと、私はナポレオニックは全然知りません。すみません。

で、見つけたのが、ご当地Hassenhausen博物館のサイト。
http://museum-hassenhausen.de

Auerstedtにプロイセン軍の司令部が置かれていて、Hassenhausenで戦いが行われた

と書かれていますね。
(原文は
In Auerstedt war das königlich- preußische Hauptquartier, Hassenhausen war der Ort, an dem die größere der beiden Schlachten ausgetragen wurd
ここのdie größere der beiden Schlachtenでアウエルシュタットの戦いを指しているようですが、イエナよりアウエルシュタットの戦いのほうが大きかったんですかね??)

ちなみに、Bernadotte66さんが紹介していた『Campagne de Prusse, 1806』では

王自らがそこ(ブリュッヒャー率いる前衛部隊)にいて、先頭に立って行進した。
Le Roi y était en personne et marchait à la tete.

なんてことが書かれてあって、両軍が遭遇した際にプロイセン王が陣頭に立っていたみたいに読めるんですけど、そんなことってあるんですかね。
戦いから約80年後の1887年に出された本のようですけど、当時はそういう説が有力だったのかな。
ちなみにこちらで全ページ公開されています。
https://archive.org/details/campagnedepruss01foucgoog/pag...

あと、Poppel説のほうもちょっと調べてみたところ、

普軍の先頭に立っていた竜騎兵がPoppel村とTaugwitz村の近くで仏騎兵の小部隊に遭遇し撃退した。

という趣旨の記述を見つけました。
http://preussenweb.de/jena.htm

プロイセンの歴史好きの方がやっている(いた)らしいサイトで、結構詳しく調べている印象ですが、残念ながら参照元の文献などが明記されていないです。でもRegiment Königin-Dragoner(女王竜騎兵連隊)なんてのがあるんですね。知らなかった。

ちなみに、イエナ・アウエルシュタットの戦いの博物館Museum 1806なんてのも見つけました。
https://www.stadtmuseum-jena.de/de/822701
5年ごとにイエナの戦いを再現しているようですね。気合入ってるなー。軍装とかぜんぜんわからないんですけど。

2023年8月21日月曜日

グルーシーのイチゴ

「Napoleon 1815」(Shakos)と言ったら小さなウォーゲーム屋さんで日本語版が出ていますが、「Napoleon 1815」のマップに苺が描かれているのはなぜ? というつぶやきがあったので興味をひかれて調べてみました。


どうやらグルーシーに由来するんじゃないかなと。ブリュッヒャーを探していたグルーシーが、ワーテルローの砲声が聞こえてきたのにゆっくり食後のデザートのイチゴを食べていて戦いに参加できなかったと伝えられているようで、Les fraises de Grouchy(グルーシーのイチゴ)っていう言葉もあるようです。
Wikiにもこのことが書かれていますね。

Emmanuel de Grouchy — Wikipédia (wikipedia.org)


↓ここのイラストでは「元帥! 苺で遊ぶのはおやめください。間に合いません」って言われていますね。

Site en maintenance | historia.fr

(すみません、サイトはメインテナンス中になっていますね)

『グルーシーの苺、もしくはワーテルローにおけるナポレオンの敗北の秘密』なんて本も出ているようです。

Amazon.fr - Les fraises de Grouchy: Ou les secrets de la défaite de Napoléon à Waterloo - Le Tulzo, Gérard - Livres

日本語の書籍にはこのグルーシーのエピソードが書かれているんでしょうか。ご存じの方、いらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。

ちなみに、ベルギー南部ワロン地方は苺がよく採れ、ワーテルローがあった6月は苺が美味しい季節だそうです。Napoleon 1815のマップにはNamurが含まれていますが、その南近郊にはイチゴ博物館があります。

Musée de la Fraise | Fraise Wépion | Namur | Belgique (museedelafraise.com)


グルーシーの故事にちなんで、ワーテルロー戦のゲームをやるときは英軍プレイヤーは相手のためにイチゴを用意してあげるといいのでは。仏軍プレイヤーに「ゆっくり召し上がれ」って言うと盛り上がるかもしれませんね。


*************

8月23日追記


Twitterでグルーシーについて教えていただきました。

この「グルーシーの2日間」は、詳細な分析をもとに、グルーシーを無能と決めつけるのはよくないのでは、とざっくりいうとそんな内容なんですが、ちょっと調べて、こんな記事を見つけました。

https://www.lefigaro.fr/histoire/2015/06/19/26001-20150619ARTFIG00106-waterloo-grouchy-fut-il-la-cause-de-la-defaite.php

「ワーテルロー:グルーシーが敗因だったのか?」っていう記事で、筆者はdirecteur de la Fondation Napoléonなのでナポレオン財団の理事って言えばいいんですかね。ナポレオンの回顧録以来、ワーテルローはグルーシーのせいで負けたと歴史家は考えていたけど、近年はワーテルローの敗因をグルーシーに帰す傾向が弱まっているそうです。

その理由として以下のことを挙げています。

①Lignyの戦いの後、普軍追撃の命令をナポレオンが下すのが遅かった

②ナポレオンはグルーシーを呼び戻すよう明確に指示したことはなかった

③グルーシーがWaterlooに行くにはDyle川を渡る必要があり、10キロ離れたWavreの橋を確保しないといけなかったが、普軍はそこを固く防御していた。なので、(上記「グルーシーの2日間」にもあるように)グルーシーは到底ワーテルローの戦いには間に合わなかっただろう。


そもそもナポレオンはウェリントンのことを舐めていて、ワーテルローの朝、スールトがグルーシーを呼び戻すように進言したところ、却下したそうです。その際、「Ce sera l'affaire d'un déjeuner」と言ったそうですけど、意訳すると「朝飯前だ」ぐらいの感じですかね。

みなさんもワーテルロー戦のゲームで仏軍をプレイするときは皇帝になった気分で「ス・スラ・ラフェル・ダン・デジュネ」って言ってみてください。…、いや、そんなこと言っちゃダメだろ。

2022年11月25日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑩

 ●第5ターン(続き)

 ロゲの部隊(赤)の二度目の活性化が回ってきた。老親衛隊最後の攻撃である。砲身も焼けよとばかりに熾烈な砲撃を加え、老親衛隊が突進する。鬼神のごとく暴れまわるVieille Gardeを前にして、隊列の乱れていた英連合軍が持ちこたえられるはずもなく多くのユニットが潰走する。さらには命からがら逃げようとする自軍の兵たちに巻き込まれて潰走するユニットも出てきた。

 JdGでは自軍ユニットを通過して潰走することができるが、通過されたユニットは士気チェックを行い失敗すると潰走してしまうのである。中世の会戦ゲームだとよくあるやつですね。

「ちょ、この老親衛隊の強さ、おかしくない? ワーテルローって最後は『La Garde recule!(親衛隊が後退している!)』ってなるんじゃないの?」

「勘違いしちゃいけない。このゲームは『La Garde avance!』なんだよ」


 ちなみに、ワーテルローのことを全然知らないのはまずいと思ってこのAARを書き進めながらOspreyシリーズの『Waterloo 1815』を読んでみました。イラスト豊富でページが少なくサクッと読了できるのでOsprey好き。で、親衛隊が敗退するシーンが結構よかったので引用しておきます。

The entire attack had been repelled. The perfect formations of just a few minutes before were now a single confused blue mass, highlighted with the glint of slashing steel as Vivian's and Vandeleur's light cavalry hacked within its midst. The impossible had happened. The invincible had been vanquished. A great, incredible sob spread along the French lines - 'La Garde recule! Sauve qui peut!'

("Waterloo 1815", p81)

(拙訳: すべての攻撃が撃退されていた。ほんの数分前には完璧な隊形を組んでいた諸隊が、今や混乱した青い一つの塊となっており、VivianとVandeleurの軽騎兵がその中を切り裂いていくと鋼鉄の刃のきらめきが見る者の目を奪った。あり得ないことが起こったのだ。常勝の兵が打ち負かされたのだ。フランス軍の戦列に沿って、大きく、信じ難いどよめきが広がっていった―「親衛隊が退却! みな我が身を守れ!」)

 なんかこの辺り、筆者も思わず力が入ったんじゃないですかねっていう印象。ワーテルローのクライマックスですからね。ナポレオンやフランス兵たちの愕然とした気持ちが伝わってきます。そういえば「La Garde Recule!」っていうゲームもありますよね。


 それはさておき。フランス軍はロゲの部隊(赤)以外はボロボロであるものの、老親衛隊に続けとばかりに最後の気力を振り絞って奮戦する。ネイの部隊(青)の生き残りの砲兵が、至近距離からの砲撃で敵騎兵を混乱状態に。そして左翼ではバシュリュの潰走ユニットがまさかの回復。さらに右翼のドンズロの部隊(緑)が続く。砲撃で敵騎兵を混乱状態にし、そこに騎兵がシャルジュ! 潰走していく敵騎兵を追撃して壊滅させた。

 ここでやっと英連合軍の中央部隊(青)の活性化。英連合軍で最大兵力を擁していた中央部隊だが、もう反撃するための歩兵が残っていない。残存砲兵で砲撃をするものの老親衛隊は耐えた。英連合軍の指揮官たちは敗走する歩兵たちを押しとどめようと声を張り上げる。そんななか、騎兵が奮戦し老親衛隊を1ユニット潰走させた。

 そしてターン最後の潰走移動。英連合軍予備部隊(緑)の2ユニットがマップ外に消えていった。


 こうしてナポレオン最後の賭け、親衛隊の攻撃は幕を閉じた。最終結果は、英連合軍15点、フランス軍21点。その差6点で惜しくも引き分けとなった。


 今回の対戦はJours de Gloireシリーズどころかナポレオニック初心者同士のプレイだったけど、両者とも楽しめました。なんといってもフランス軍は老親衛隊を指揮する高揚感を得られますからね。悲壮感もたっぷりだけど。英連合軍も簡単ではなく、どこまで守っていつ反撃するかの判断を迫られます。チットプルによる先の読めなさ、それに非命令下で攻撃に出るかどうかという迷いが、ずっと緊張感を与えてくれますね。

 それに何といっても秀逸なのが、マップをワーテルローの戦場の中央に限定して親衛隊の攻撃にフォーカスを当てたこと。ウーグモンとラ・エイ・サントは進入不可でZOCを持つヘクスというバッサリとした処理によって、プレイが中央の高地をめぐる戦いに集中されます。ワーテルローの他のゲームはほとんど知りませんが(BANZAI 15号はクロノさんから購入済みだけど、事情があって手にするのはかなり先の予定)、「La Garde Avance!」はワーテルロー戦の中でも独特の雰囲気になっているんじゃないかなと思います。


 あとでネットを見ていたら、デザイナーのFrédéric Beyが英連合軍の戦い方として、初期配置では複数の戦術グループに分割されている騎兵部隊と予備部隊を反撃のためにそれぞれ一つにまとめるようアドバイスしていました。今度試してみようかな。それよりもフランス軍の戦い方のヒントを教えてほしいんだけど、それを考えるものこの「La Garde Avance!」の楽しみなんでしょう。


2022年11月20日日曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑨

 ●第5ターン

 最終ターンである。このゲームでは、壊滅させたり潰走状態で残っている敵ユニットの数に応じて勝利得点が得られ、相手より7点以上多いほうが勝利する。ただしフランス軍にだけ重要ポイントの占領による得点があり、マップ上部の左のほうにある白線の街道(route)とオレンジ線の小道(chemin)が交差するヘクスをゲーム終了時に占領していれば7点得られる。

 ちなみにこの街道とマップ右端を走る街道がモン・サン・ジャンという町というか集落で交わってブリュッセルまで続いているようなので、この街道までフランス軍が進出するというのは英連合軍にとっては結構やばいってことなんでしょう。

 今のことろ損害数ではフランス軍が2ユニット多いが、老親衛隊の攻撃で英連合軍は混乱状態のユニットが多い。ゲーム前半とは逆に、ウェリントンにとっては精神的に厳しい状況になってきた。


 ターン最初の戦略イニシアティブ(initiative stratégique)を決めるサイコロに、両プレイヤーとも力が入る。イニシアティブをとったほうが最初に活性化する部隊を選べるのだ。フランス軍としては敵に態勢を立て直す余裕を与えることなく老親衛隊で攻撃を続行したいし、英連合軍は残存兵力で防御ラインを引くとともになるべく多くのユニットを回復する必要がある。

  両プレイヤーがふったサイの目は、仏軍4、英連合軍3でフランス軍がイニシアティブをとった。Vive l'Empereur!! 当然、ロゲ(赤)率いる老親衛隊が動く。

 このままの勢いで邁進して7点のボーナスポイントを得られる交差点ヘクスを狙うか。だがそうすると、ユニット数に劣る老親衛隊は回復してきた敵の包囲攻撃を受けるかもしれない。それよりは弱体化している英連合軍に老親衛隊をぶつけて敵戦力の撃滅を図ったほうが確実だ。

「え、このゲームってワーテルロー最後に親衛隊を投入してのナポレオンの賭けなんでしょ。ここは男らしく突破を狙わないの?」

「うるさい。老親衛隊は割高なんだよ」

 通常のユニットは壊滅すると2点だが、老親衛隊と親衛隊騎兵(Cavalerie de la Garde)は3点なので、無理に突進したはいいものの包囲攻撃を受けて退却できずに壊滅、という事態は極力避けたいところである。しかしプロイセン軍が右翼から攻撃しているというギリギリの状況で安パイを狙っていいのか、ナポレオン。


 そんな批判をよそに、ロゲ率いる老親衛隊が猛威を振るう。士気の高い精鋭部隊の攻撃をうけた英連合軍は、あるいは混乱して退却、あるいは潰走、壊滅していく。見る見るうちに高地中央部の自軍ユニットが掃討されていくのをみて顔が引きつる英連合軍プレイヤー。

「ふん、これぐらいで動揺してたらウェリントンたる資格はないわ!」

と強がりを言うものの、前ターンの後半でせっかく多くのユニットが回復したのに元の木阿弥どころか状況は悪化している。


 英連合軍はほとんどの歩兵が混乱状態になった今、ここは騎兵を使うしかない。ロゲ部隊(赤)の壮年親衛隊に向かって、戦力9,士気5の精鋭騎兵がチャージ! 

 この壮年親衛隊は砲撃で混乱した後に回復していたため、方陣は解かれていた。「La Garde Avance!」では特別ルールで親衛隊は自発的に方陣を解くことが禁じられていると先述したが、混乱状態になると方陣でなくなるのである。方陣を解いた歩兵は騎兵の突撃に対して不利となるが、さすがは親衛隊、敵騎兵が迫ってきたのを見るや、即座に方陣を組む。

 JdGでは、突撃された歩兵は正常状態であれば方陣を組むことができる。1d10で士気以下が出れば成功なのだが、失敗すると混乱状態になる。突撃してくる騎兵を前にして方陣を組もうとして失敗し、逆に隊列が乱れた、という感じか。

 方陣に対する突撃は、突撃のDRMボーナスが無くなるどころか-2の不利な修正となる。ファランクスやシルトロン、Gewalthaufenなど、がっちり守る歩兵への突撃が自殺行為なのは古来変わらずですな。

 だがJdGでは、突撃の標的ユニットが方陣を組んだ場合、突撃の中止(rappel de la cavalerie)ができる。兵質チェック(test d’engagement)を行い、成功した場合は1へクス後退、失敗した場合はそのまま突っ込むことになる。

 突撃してきた英連合軍の騎兵は兵質(Valeur d'engagement)が5と高く、親衛隊が方陣を組んだのを見るや突進を止めて後退した。いやー、こういう攻守の駆け引きも結構好きです。ちなみに突撃しようとした騎兵はVivianの部隊で、史実のワーテルローの戦いでは後退する親衛隊に突撃してとどめをくらわしたらしい。

 

 続けて英連合軍は予備部隊(緑)で反撃。敵右翼(マップ右方)で弱体化しているドンズロの部隊に追い打ちをかけ潰走させた。それに先ほどの攻撃で、後退する敵を追って高地から駆け下りてきた老親衛隊の第二猟兵連隊第二大隊が側面をさらけ出している。好機、いつまでも老親衛隊の好きにさせてたまるか!と攻撃すると、さすがの老親衛隊も後退。

 その後退した先は英連合軍ユニットの前面ZOCで、混乱状態になってしまう。さらに戦闘結果で士気チェックが課せられていたため失敗すると潰走になるところだったが、混乱状態でも5という高い士気を維持する老親衛隊は踏みとどまった。


 英連合軍は多くの歩兵が混乱状態であるものの、フランス軍も両翼がほぼ崩壊しさすがの老親衛隊にも損害がでている。両者ともにフラフラになりながらの最後の殴り合いである。


つづく

2022年11月16日水曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑧

 ●第4ターン(続き)

 老親衛隊の攻撃であれよあれよという間に多くの歩兵が損害を受け、さらには反撃も失敗に終わった英連合軍だが、砲撃で敵を牽制しつつ中央に歩兵をかき集める一方、混乱状態のユニットの回復に努める。だがもともと歩兵の数に余裕があったわけではないため苦しい状況で、騎兵までもが防御に駆り出される。


 実は両プレイヤー共、いつも中世の会戦級ばかりプレイしていてこの時代の騎兵の運用についてはほとんど無知である。

「いつもみたいに、歩兵なんぞ相手になるか! みたいな感じで暴れさせちゃ、いけないんだよね?」

「うーん、数百年違うからね。というかみんな槍や剣じゃなくて銃持っているし、ちゃんと組織だった行動するよう訓練受けた軍隊だからね、やっぱまずいんじゃないの」

と妙に慎重になってしまう。実際、JdGでは騎兵が突撃をせずにショック攻撃を行う場合、-2の不利なDRMが課される。

 だが今、英連合軍最左翼(マップ右端)の騎兵の前には混乱状態となったドンズロ隊の歩兵がいる。ここで突撃しないんだったら馬に乗る資格なし、というシチュエーションだ。当然、突撃である。


 JdGの騎兵の突撃(charge-仏軍がやるときは「シャルジュ」と言ってあげてください)は強力で、重騎兵は+3のDRM、通常の騎兵は+1を得られるうえ、このDRMボーナスを維持しながら行われる追撃(poursuite)の回数に制限がない。混乱状態や潰走している敵集団に突撃すると、ガンガン追撃が続くのでやられる側は泣きそうになる。

 ちなみに重騎兵ユニットにはLと書かれているのだが、lightの意味にとってしまって思わず軽騎兵扱いしてしまいそうになる。lourd(重)のLですからね。でもフランス語では軽はlégèrで、こっちも頭文字がLだからややこしい。あ、cavalerie(騎兵)は女性名詞なんでlourdeとlégèreか。こういう細かい文法、マジ苦手。



 混乱状態で騎兵の突撃を受けたドンズロ隊の歩兵は恐慌状態に陥り潰走していった。だが英連合軍騎兵が調子に乗って追撃した先には砲兵と騎兵のスタックが待ち構えており、逆に混乱状態になって撃退された。


 そしてロゲの部隊の活性化が回ってくる。砲撃で敵に損害を与えたのち、高地中央部で不用意に突出していた英連合軍騎兵を包囲攻撃して壊滅させる。さらには老親衛隊が暴れまわり英連合軍の歩兵2ユニットが混乱状態に。ウェリントンは使える歩兵がいよいよ枯渇してきた。


 だがこの後は英連合軍の活性化が続いた。まずボロボロになっている中央部隊(青)で4ユニットが回復。そして予備部隊(緑)の歩兵が老親衛隊を攻撃。必死の反撃に老親衛隊も後退を余儀なくされる。だが後退した先は英連合軍ユニットの前面へクス。JdGでは敵の前面へクスに退却ができるものの、混乱の結果を被ってしまうのだ。そのため老親衛隊も混乱。ショック戦闘で老親衛隊初の損害である。そして反撃が成功したのを見て兵たちが奮い立ったか、予備部隊(緑)でも混乱ユニットが回復していった。

 そして、まだまだ終わりじゃないぜと言わんばかりに英連合軍の騎兵部隊(灰色)の活性化が回ってくる。歩兵の反撃で老親衛隊に損害を与え、さらには続々と兵たちが回復してきていて英連合軍が盛り上がっているとき。そのタイミングで、さっき一回突撃しただけでこれまで見せ場がほとんどなかった騎兵部隊にやっと活躍のチャンスが回ってきたのだ。老親衛隊は確かに強力だが、その両隣の弱小部隊を蹴散らしてやる。英連合軍の左右両翼にいる騎兵計3ユニットがチャージ! 

 だが騎兵部隊は非命令下で、兵質チェック(test d’engagement)に成功しないと突撃ができず、1ユニットのみチェックに成功。おい~、いいところなのに~。なんとか突撃した騎兵は、これまでの砲撃で混乱状態になっていたバシュリュの歩兵と砲兵のスタックを壊滅させた。



 ここで第4ターンが終了。残るは1ターンのみ。老親衛隊は敵陣を突破して皇帝陛下に栄光をもたらすことができるのか。それとも歴史は繰り返されるのか。


つづく

2022年11月10日木曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑦

 ●第3ターン(続き)

 反撃を受けたもののまったく意に介することなく、老親衛隊が攻撃を続ける。砲撃で敵を混乱させたのち、3ユニットが攻撃。親衛隊の士気の高さにものを言わせ、敵を混乱、潰走させる。


 ここでやっと第3ターンが終了。JdGでは各ターンの最後に、潰走状態のユニットは自軍マップ端(英連合軍はマップ上端、仏軍は下端)に向けて全移動力で潰走移動(mouvement de déroute)し、マップ外に出たユニットは壊滅とみなされる。

 マップを見れば一目瞭然だが、主戦場である高地からマップ下端までは距離があるのに対し、上端まではすぐであり、特に右方は余裕がない。つまり仏軍は潰走しても何度か回復する機会があるが、英連合軍は潰走するとあっという間にマップ外に出て壊滅してしまう。

 実際、英連合軍の潰走ユニットがすでにマップ端に達しているのに対し、第1ターンの英連合軍の反撃で潰走した壮年親衛隊はまだマップ上にとどまっている。フランス軍には復活の希望を、英連合軍には後ろがない緊張感を与える優れたデザインではないだろうか。-というのは何回かプレイして感じたことです。フランス軍は精神的に厳しいけど、こういうところでバランスをとっているのかな。



●第4ターン

 このターン、戦略イニシアティブ(initiative stratégique)はフランス軍がとった。神のご加護は皇帝にあり! 当然、老親衛隊のロゲ部隊(赤)を活性化させる。

 前ターン最後に続く老親衛隊の連続活性化である。英連合軍の砲兵から防御射撃(tir de réaction)を受けても微動だにしない老親衛隊は2ユニットで攻撃。防御スタックを蹴散らし、さらにその隣接スタックも混乱状態にして高地から追い落とした。士気が高い老親衛隊が戦力を集中させるとDRMがかなり有利になり、戦闘結果で突破(choc de rupture)が出てさらに攻撃が行えるのだ。

 また戦列中央では、士気8とこのゲーム最強を誇る親衛隊第一猟兵連隊第2大隊がついに攻撃を開始。ウェリントンとスタックしている歩兵を苦も無く蹴散らした。


「やばい! まともな歩兵が残っていないじゃん!」

 老親衛隊の猛攻にさらされ、中央部が危うくなってきている英連合軍。もともとこのゲームでは英連合軍の歩兵は潤沢にあるわけではないのだ。

 だが幸い、前ターンに敵右翼(マップ右方)ドンズロ部隊への反撃が成功していたため、この方面はしばらくは打ち捨てられる。英連合軍は正常状態で残っているわずかな歩兵から2ユニットを抽出し、老親衛隊の第二猟兵連隊第2大隊に反撃を試みる。親衛隊がなんぼのもんじゃい! DRM+3の攻撃をくらえ! だが、サイの目は無情にも1。攻撃側は混乱し、士気チェックにも失敗して2ユニットとも後退。マジかよ。



 JdGのショック戦闘は戦力比などをDRMとして1d10を振る、というのは先述したが、4以下の場合、攻撃側が混乱状態となり、さらに士気チェックに失敗すると1へクス後退となる。つまりDRM+3の攻撃だと攻撃側混乱となるのは20%の確率なのだが、英連合軍は渾身の反撃でそのような結果が出てしまったのである。

 不運の続く英連合軍だが、マップ上端まで潰走していた歩兵が回復。このままだとターンの終わりにマップ外に出て壊滅だったので助かった。


 ちなみに反撃に失敗した英連合軍の2ユニットだが、Kruse、Brunswickと書かれていて、このゲームの英連合軍のユニットの中では例外的に紋章がユニット左に小さくついている。

 Kruseのほうには青地に金色の獅子らしきものが描かれていて、どうやらこのユニットはAugust von Kruseの率いるナッサウ公の部隊で紋章はナッサウ家のものらしい。もう一方はブラウンシュヴァイクの部隊で、描かれている紋章は赤字に白い馬でブランシュヴァイクを含むニーダー・ザクセン地方のもののようだ。つまり両ユニットともドイツの兵ということか。ただ自分はワーテルローも紋章も詳しくないので、知っている方いらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。

 また、「La Garde Avance!」の英連合軍ユニットは士気値の色で国籍が識別されている。ちなみにルールでこれを説明している部分は、Vae Victisのホームページに載っている英文ルールではカットされている。プレイ上は国籍関係ないけど、ちゃんと訳そうよ~。あと、この時代に国籍って言葉でいいのかな。ルールにはnationalitéって書いてあるけど。

 英連合軍の多くは英軍だが、ナッサウ、ブランシュバイクの他、オランダ、ハノーファーのユニットも含まれている。オランダはナショナルカラーのオレンジ、というのはわかるけど、ハノーファーは黄色と白になっていて、なんでそうなっているのかわからず自分の無知を痛感します。知識があるとそういう細部も楽しめるんだろうなあ。


つづく


2022年11月7日月曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑥

 ●第3ターン

 Jours de Gloire(JdG)シリーズでは毎ターン冒頭、活性化チットを引く前に戦略イニシアティブ(initiative stratégique)フェイズがあり、両軍1d10を振って自軍総指揮官のダイス修正値(Modificateur au dé, MD)を足し、大きい数のほうのプレイヤーは一番最初に活性化する部隊を選べる。ナポレオンとウェリントンのダイス修正値は同じなので、単純にサイの目勝負となる。


 このターンのイニシアティブは英連合軍が得た。当然、最大兵力を擁する中央部隊(青)を活性化し、老親衛隊を砲撃する。だが老親衛隊は7や8という高い士気を誇るのだ。士気チェックの結果が出ても、80-90%の確率で無傷なのである。

 中央部隊の砲撃に微動だにしない老親衛隊。その右翼に位置するドンズロの部隊(緑)は、ナポレオンの命令を受けていなかったが親衛隊の姿を見て意気があがったか、歩兵が高地に向かって攻撃、奮戦のうえ敵を後退させた。



 JdGでは各ターン最初に命令フェイズ(Phase d’ordres)があり、各プレイヤーはどの部隊を命令下(Ordres Reçus)にするか相手にわからないように決める。命令下にできるのは総指揮官の命令値(Potentiel d’ordre)の数まで。ナポレオンとウェリントンの命令値は2である。それ以外の部隊は非命令下(Sans Ordres)となり、行動が制限される(命令下にできる部隊数についてはもう少し規定があるのだが、後述する)。なお、命令下、非命令下のマーカーはターンの最初に相手プレイヤーにどの部隊が命令下かわからないように裏返しにしてユニットの上に置くのだが、このAARでは見た目重視でユニットの下に置いています。

 このターンのドンズロの部隊は非命令下だったため、歩兵がショック攻撃を行う際に兵質チェック(test d’engagement)を行い、1d10を振ってそのユニットの兵質(Valeur d'engagement)以下を出さないと攻撃できない。ドンズロの歩兵の兵質は4で成功の確率は50%だったが、皇帝陛下の親衛隊を支援するという使命感に燃えたのか命令なしに攻撃できたのである。



 砲撃で必死に防戦する英連合軍は、ロゲの部隊に1ユニットだけ含まれている壮年親衛隊の第三擲弾兵連隊第二大隊を何とか混乱させ、仏軍左翼のバシュリュの歩兵にも損害を与えた。だがついに老親衛隊が英連合軍の戦列にとりつき、その破壊力を発揮する。


 JdGのショック攻撃では、戦力比、士気差、地形などをDRMとして1d10を振って大きな数が出るほど攻撃側に有利な結果となる。同じデザイナーのAu fil de l'épéeシリーズの白兵戦と似たようなシステムである。老親衛隊は戦闘力が3や4と低いため、戦力比から不利なDRMとなることが多い。例えば攻撃:防御が1:2の場合、DRMは-2。だが士気差がそのままDRMとなるため、士気7の親衛隊が4の歩兵を攻撃した場合DRM+3となって、2倍の兵力の敵を攻撃する不利を簡単にひっくり返してしまうのだ。


 老親衛隊の第二猟兵連隊第二大隊と第二擲弾兵連隊第二大隊の2ユニットが、右翼の丘に布陣する予備部隊歩兵を攻撃。斜面を登る攻撃でありながらも、老親衛隊の高い士気と正面と横からの連携攻撃のおかげでDRMは+5となり、戦闘結果は突破(choc de rupture)となった。JdGのショック戦闘では、DRMを適用したサイの目が10以上だと攻撃側は突破となり、戦闘後前進をしてさらに攻撃ができる。さらに、このゲームの特別ルールで親衛隊は自分から方陣を解くことができないのだが、例外的に突破を行うと方陣を解除できる。混乱状態となって後退する敵歩兵を目にして、老親衛隊は方陣から脱して猛追、潰走させた。



 左翼(マップ右方)が予想以上の損害を受けた英連合軍。予備部隊(緑)が活性化となったため、中央部にいる予備部隊を投入して反撃しようとするが問題があった。命令は部隊ごとに割り当てると上述したが、もし部隊が拡散している場合、戦術グループ(groupe tactique)に分けられ、戦術グループ単位で命令下、非命令下となる。具体的には、自部隊の他のユニットから3へクス以上離れているユニットは別の戦術グループになる。このターン、英連合軍はマップ右方の予備部隊の戦術グループを命令下としており、中央の戦術グループは非命令下だったのだ。


 非命令下だとショック攻撃の際に兵質チェックが必要など行動が制限される。だが戦術グループごとに1d10を振って活性化チット(Marqueur d’Activation, MA)のイニシアティブ値(valeur d’initiative)以下を出すと、その戦術グループのすべてのユニットが命令下と同じ状態になる。ただ失敗すると回復以外何もできなくなるため、ある意味ギャンブルである。イニシアティブ値はその部隊の指揮官がどれだけイニシアティブをとるかを表しているようだが、英連合軍の多くは4であるのに対し、ワーテルローの激戦で消耗しているドンズロは3,バシュリュは2とかなり低い。


 中央部にいる予備部隊(緑)の戦術グループはイニシアティブのチェックに無事成功、老親衛隊に反撃する。だがさすがは老親衛隊、ショック攻撃を受けて士気チェックの結果が出ても、7という高い士気のおかげで整然と1へクス後退するのみに終わった。一方、マップ右端のドンズロの部隊への反撃は成功。ドンズロ部隊が持つ歩兵は2ユニットとも混乱状態となった。



 

つづく

2022年11月4日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑤

 ●第2ターン


 第1ターンの英連合軍の反撃によって高地上に残っている壮年親衛隊は第三猟兵連隊第一大隊のみとなっていた。ところでChasseurって、猟兵でOK? まあとにかく、1ユニットしか残っていない親衛隊を英連合軍は袋叩きにして壊滅させる。さらに前ターンの親衛隊の砲撃と攻撃で多くのユニットが混乱状態になっていた英連合軍の中央部隊だが、順調に回復していった。


 JdGでは各部隊の活性化は、砲撃、移動、攻撃、回復という手順になっている。活性化中に何も行動をせず敵に隣接していないユニットは回復(ralliement)を試みることができ、1d10を振って士気以下が出れば混乱ユニットは回復する(潰走ユニットの場合はサイの目が1不利になる)。

 つまり士気の高いユニットほど回復しやすい。当然親衛隊はすぐに回復する、と思いきや、壮年親衛隊ユニットは混乱状態だと士気がガクンと落ちるのである。通常のユニットは混乱状態だと士気が1下がるだけだが、壮年親衛隊は3も低くなる。高い士気を誇る精鋭だが、いったん混乱状態になると脆弱で回復もしにくくなるのだ。有能だけど怒られるとすぐに気弱になっちゃう子、という感じか。デザイナーズノートによると、この局面での壮年親衛隊の士気は明らかに揺らいでいて、それを反映しているそうだ。



 ここでロゲの老親衛隊(赤)の活性化が回ってくる。ネイの部隊の攻撃によって一時は危うくなった英連合軍はほぼ回復し、壮年親衛隊の攻撃なんかあったっけ、と思わせるような強固な防御ラインが高地上に再び構築されている。こんな相手に攻撃を仕掛け突破しないといけないのか。心折れそう。気持ちが沈む仏軍プレイヤーに対し、

「あきらめたら、そこで試合終了ですよ…?」

と、そっとささやく英連合軍プレイヤー。そのセリフ、こういう状況で敵から言われるとマジむかつく―‼ だが前進するしかない。じりじりと進む老親衛隊。ネイの部隊の砲兵がそれを援護する。敵中央部隊の歩兵を集中砲撃によって潰走させた。


 中央部隊(青)の活性化となった英連合軍。歩兵の援護なしに中央高地上で孤立している敵砲兵を屠るか。だがその後、まず確実に老親衛隊が襲ってくる。ここは守備を固めるべき。そう考えた英連合軍プレイヤーは突出している歩兵を後退させ、混乱しているユニットの回復に努めた。


 ネイの壮年親衛隊が事実上壊滅した以上、老親衛隊の他に仏軍が使えるのは右翼のドンズロの部隊(緑)と左翼のバシュリュの部隊(黄色)。どちらの歩兵も戦闘力は8や9と高いものの、ユニット数が少ないうえ、バシュリュの歩兵は士気が3と低いため粘り強く戦うことは期待できない。もう夕方の7時ですからね、予備としてとっておかれていた親衛隊とは違って、そりゃ疲れていますよ。さらに左翼は平地が広がっており、敵の砲撃で混乱したところに騎兵の突撃をくらったら確実にアウトである。

 だが右翼は激戦の末に占領したラ・エイ・サントがある。このヘクスは両軍とも進入不可で、英連合軍に対しては周囲にZOCも及ぼす。右翼でドンズロの部隊が不利な状態になってもすぐには総崩れにならないだろう。しかも砲撃の応酬で敵最左翼(マップ右方)の砲兵が混乱状態となっている。好機と見た仏軍は、老親衛隊を支援するためにドンズロの歩兵を前進させ、敵の最左翼スタックに攻撃をしかける。攻撃を受けた英連合軍は歩兵が混乱状態になって後退、砲兵は潰走した。

 いいぞ、ドンズロ。ラ・エイ・サントの攻防戦で兵たちはすでに疲れ切っているはずなのによくやった。こうやって右翼でプレッシャーをかけている間に、老親衛隊はさらに前進。次ターンには敵戦列にとりついてその真価を発揮することだろう。





つづく

2022年11月1日火曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ④

 ●第1ターン(続き)


 JdGの砲撃では、砲兵ユニットの砲撃力(capacité de tir)や地形効果がDRMとなって1d10を振って解決する。砲撃力は砲門数を反映しているそうだが、このゲームでの英連合軍砲兵の砲撃力はほとんどが3で、方陣を組んでいる親衛隊が砲撃された場合10%の確率で混乱(désordre)し、40%の確率で士気チェック(test de cohésion, TdC)となる。士気チェックでは1d10を振ってそのユニットの士気(Cohésion)以下だと損害無し、そうでなければ混乱となるが、壮年親衛隊の士気は6あるため混乱する確率は30%。つまりなんやかんや合計すると22%の確率で砲撃を受けた親衛隊は混乱することになる(計算あってる?)。

 なので一回の砲撃で損害を受ける可能性自体はそれほど高くはないのだが、英連合軍の砲撃のサイの目や活性化チットの引かれた順番によっては、壮年親衛隊が砲撃で次々と損害を受け、それでも残存部隊が悲壮なまでの攻撃を行う(でも反撃でボロボロにされて仏軍プレイヤーのモラル崩壊)、というケースも珍しくない。


 ただ、ワーテルローのこの最終局面では英連合軍の砲撃の威力はかなり落ちていたのでは、と書いているAARもあった。弾薬が不足していたうえ、数と長距離射撃力で上回る仏軍砲兵からの砲撃で消耗していたし、仏軍騎兵の突撃で砲撃手が退却して多くは戻っていなかったことを考えると、もっと英連合軍の砲撃力を制限したほうがいいのでは、と提案している。自分はワーテルローのことは全然知らないんですけど、多くの資料ではそう書いてあるんですかね。



 第1ターンの仏軍だが、壮年親衛隊は無理に突っ込まずに後方の老親衛隊を待てばいいのでは、と思えるかもしれない。だが特別ルールで、壮年親衛隊がショック戦闘を行った次のターンからロゲ率いる老親衛隊の活性化が可能になるのだ。老親衛隊も壮年親衛隊同様に方陣を組んでいるので前線にたどり着くまでに時間がかかる。5ターンしかないこのゲームでは1ターンでも惜しく、第2ターンから老親衛隊を活性化させたい。そのため、ネイの部隊は敵戦列に全力で(とはいえ方陣だからゆっくりとだけど)向かっていったのだ。まあ、たまたま今回はかなり運に恵まれて壮年親衛隊が悲惨な状況にならずにすんだけど。



 余裕で守れると思っていたらいきなりピンチとなった英連合軍。ひるむな、反撃するのだ! 予備部隊(緑)が動く。戦列中央部で砲兵の援護を受けつつ歩兵が攻撃をしかけると、さしもの壮年親衛隊も耐え切れずに後退する。続けて中央部隊(青)の砲門が火を噴く。至近距離から砲弾を浴びて次々と混乱していく親衛隊。そこに英連合軍が歩兵をかき集めて包囲、攻撃すると親衛隊は後退できずに2ユニットが壊滅。さらには2ユニットが潰走(déroute)した。




「い、いいのさ。老親衛隊の封印を解くために壮年親衛隊は犠牲になる運命なんだから」

と平静を装う仏軍プレイヤー。やっぱりこのゲーム、フランス軍をやるには強靭な精神力が必要である。


 先述のように親衛隊はすべて方陣を組んでいるが、方陣だとZOCを持たないため、するすると敵軍が親衛隊ユニットの間隙を縫って来たり背後に回ってきたりするのだ。さらに移動力が低いうえ砲撃やショック攻撃を受けるとサイの目が1不利になるため、方陣を解かせてよ!と思いたくなる場面は多い。

 だが一応、方陣にもメリットがある。JdGにはユニットの向きがあって周囲6へクスのうち前面(front)2へクス以外は背面(arrière)となり、背面から攻撃を受けると不利になるのだが、方陣を組んでいるとこのルールの適用は受けなくなる。さらにショック攻撃は前面へクスに対してのみ行えるのだが、方陣だと周囲すべてが前面へクスとみなされるため攻撃方向に制限がない。乱戦上等、どっからでもかかってきやがれ!という感じである。


つづく


2022年10月29日土曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ③

 ●第1ターン


 ネイ率いる壮年親衛隊(青)が前進を開始する。「La Garde Avance!」の特別ルールで、第1ターンの活性化はネイの部隊から始まるのだ。高地上に布陣している英連合軍はずらっと砲門を並べているため、方陣を組んでゆっくりと進んで攻撃だなんてなんの罰ゲームだよと仏軍プレイヤーが愚痴る。このゲーム、仏軍をプレイしているとほんと精神力が試されます。守る英連合軍プレイヤーは

「クレシー、ポワティエ、アジャンクールと、有利な防御地形に拠っている英軍に対して臆せず果敢に攻撃していった輝かしい伝統がフランス軍にはあるじゃないですか。祖先を見習わないと」

と挑発。いやそれ、全部フランス軍がお手本にしちゃダメなやつだから。


 じわじわと前進する親衛隊に対し、英連合軍は中央部隊(青)の全砲門が一斉に火を噴く。次々と敗走するフランス兵、と思いきや、砲撃を受けても士気の高い親衛隊の隊列は全く崩れない。


 Jours de Gloire(JdG)ではユニットは、兵数を反映している戦闘力(Points de force)の他に、CohésionとValeur d'engagementという数値を持っている。Cohésionは砲撃や戦闘で損害を受けるかどうかや混乱からの回復チェックなどに使い、Valeur d'engagementは総指揮官から命令を受けていない状態(後述する予定)でも攻撃や突撃ができるかのチェックに使われる。

 それぞれ直訳っぽく訳すと結束値と交戦値となるかなと思うんだけど、なんか雰囲気が出ないと感じるのでこのAARではCohésionは士気、Valeur d'engagementは兵質と表記することにする。おかしいと思われた方は結束値や団結力など好きな言葉に置き換えて読んでくださいコムヴヴレ。

 士気は英連合軍の歩兵ユニットのうち約7割が4,残り3割が5なのに対して、壮年親衛隊はすべて6と高い。そのため砲撃をくらって士気チェック(test de cohésion, TdC)の結果が出ても損害が出ない可能性が高いのだ。


 ところで訳語といえば、JdGでは近接戦闘にあたるChocという攻撃があるんだけど、どう訳せばいいんでしょうね。ルールには「Chocは歩兵によって行われる場合は近距離射撃と銃剣による突撃の組み合わせで、chocにおいて歩兵は戦闘そして白兵戦に参加することができる。騎兵も歩兵同様にchocを行うことができる」って書かれている。個人的には白兵戦と表記したいんだけど、それだと射撃が含まれないし、「近接戦闘」とかだとなんか勢いを感じさせないし。まあ無理に訳さずにそのまま音読して「ショック」でもいいのかもしれないけど。じゃあformationは「フォルマシオン」でOK? 


 と思っていたら、BGGにJdGシリーズのルールの日本語訳をあげてくれている人がいました

2021年版ルールとのことで、「La Garde Avance!」をやる分には問題ないんじゃないでしょうか。なお、このAARでは自分の好きな訳語を使っているのでこの日本語訳ルールとは言葉が違う場合があると思います。


 それと、Vae Victisの公式サイトには「La Garde Avance!」の特別ルールの英訳がアップされています

前述のJdG共通ルール日本訳と併せてこれを読めば、フランス語を読まなくてもプレイできると思います。特別ルールは実質1ページなので読む負担はかなり軽いかと。(上記サイトにはJdG共通ルールの英語版もあります)


 閑話休題。自軍砲撃のあまりのサイの目の悪さに茫然とする英連合軍プレイヤーだったが、追い打ちをかけるようにネイの部隊の活性化チットが引かれて愕然としてしまう。このゲームでは各部隊ごとに2枚の活性化チット(Marqueur d’Activation, MA)が用意されており、基本的に1ターンに2回活性化できるのだ。

「マジ? 無傷の親衛隊が攻撃してくんの!?」

 仏軍はまず砲撃で敵中央部を混乱させたのち、壮年親衛隊が突撃。砲兵はショック攻撃を受けると防御射撃(tir de réaction)ができるため、砲兵スタックへの攻撃はリスクがあるのだが、至近距離からの砲撃をものともせず親衛隊が突っ込んでいく。

 防御側の英連合軍ユニットは高地上で戦列を引いているが、実際の戦いでは稜線の向こう側で身をかがめてフランス軍の視界から隠れていたらしい。そのため、特別ルールでゲーム当初はこれらのヘクスは平地(Clear)ではなく荒地(Difficile/Coupé)とみなされ防御に有利になる。だが高い士気を誇る親衛隊は待ち構えていた敵にひるむことなく猛攻。精鋭部隊の攻撃に英連合軍はたまらず混乱状態になり退却を余儀なくされた。いきなり中央突破か?




つづく

2022年10月27日木曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ②

  「La Garde Avance!」の初期配置は写真の通り。このゲームは1ターン20分で1へクス100mと、JdGシリーズの他のゲームよりは規模が小さくなっている。なお、親衛隊は最初から方陣(carré)を組んでいるので方陣マーカーをユニット上に載せるんだけど、見ため的にユニットが現れているほうがいいのでマーカーは下に置いている。このやり方はネットで見つけたAARからパクり……見習わせてもらいました。



 ところでナポレオニックの言葉って定訳があると思うんだけど、ぜんぜん自信がありません。だって、家にあるナポレオン関連の書籍っていったら池田理代子の『エロイカ』ぐらいなんですよ。詳しい方、優しく教えてくださいシルヴプレ。Vieille Gardeは老親衛隊でOK? で、Moyenne Gardeは中年親衛隊?? でも「中年親衛隊」って聞くと、アイドルにはまったおっさん集団が推しのライブで夢中になっている絵が思い浮かぶんだけど……あわわわわ、皇帝陛下の親衛隊を茶化すようなこと言ってすみません。自分が馬鹿でした。ナポレオニック好きの方、怒らないで! バヨネットをこっちに向けないで! ヴィーヴ・ランペルール! La Garde meurt mais ne se rend pas!! 

まあ、Vieille Gardeは老親衛隊と書くのが自分的にはしっくりくるので、Moyenne Gardeのほうは壮年親衛隊と書くことにします。ただvieilleとかmoyenneというのは所属する兵の年齢ではなくて、編成された時期から来ているみたいですね。だったら「古参」「中堅」とかのほうがいいのかな。というか、gardeって女性名詞だったのね。


 で初期配置のフランス軍のほうだけど、ネイ率いる壮年親衛隊の後方にロゲ(Roguet)の老親衛隊が控えており、右には第一軍団ドンズロ(Donzelot)師団の残余、左には第二軍団バシュリュ(Bachelu)師団がいる。これを迎え撃つ英連合軍(Anglo-allies)のほうは高地を占めている。JdGはチットプルで部隊(formation)ごとに活性化するのだが、フランス軍は上記4部隊に、英連合軍は中央(青)、予備(緑)、騎兵(灰色)の三つの部隊に分けられており、ユニットの上部の線の色で所属部隊を識別する。なお両軍の総指揮官(général en chef)のナポレオンとウェリントンのレーティングは同じである。

 マップ右端のラ・エイ・サントはフランス軍が占領しておりZOC(Zone de Contrôle)も及ぼす。ただし両軍とも進入不可。逆に左端にあるウーグモンは英連合軍が持ちこたえており同様にZOCを持つ。

 

 前述のとおり親衛隊はすべて方陣を組んでいる。JdGでは方陣を組むと移動や攻撃ができなくなるのだが、「La Garde Avance!」には特別ルールがあり、方陣を組んだ親衛隊ユニットは移動と攻撃が可能となっている。ヒストリカルノートによると親衛隊の大隊はすべてcarré ouvertという方陣を組んで前進した。散兵を配置せず、仏騎兵がほとんど消耗していたため敵騎兵の攻撃に対する防御の備えをしながら戦ったらしい。carré ouvertって「開かれた方陣」といった意味になるけど、定訳をご存じの方教えてくださいメルシーダヴァンス。

 まあとにかく、このゲームの親衛隊は方陣を組んだまま前進、攻撃をしなくてはならないのだが、移動力が半減して2になるうえに砲撃を受けるとサイの目が1不利になる。自分から方陣を解くことは禁じられており、さらには敵砲兵の射程内に配置されているため、のろのろと前進する親衛隊は砲撃のいいカモである。だがグルーシーは現れず右翼からブリュッヒャーが迫る今、フランス軍の勝利のためには敵の中央戦列を打ち破るしかないのだ。断じて行えば鬼神も之を避く。デザイナーズノートでも、フランス軍プレイヤーが敵陣を突破するのは現実的に不可能ではないと書かれているではないか。


つづく

2022年10月24日月曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ①

  ワーテルローの戦いの最終局面、親衛隊による攻撃をシミュレートしている「La Garde Avance!」はナポレオニックの会戦級のゲームJours de Gloire(栄光の日々)シリーズの最新作で、今年3月に出たVae Victis161号の付録ゲーム。ウェリントンの粘り強い防御に消耗していくフランス軍。その右翼にはブリュッヒャー率いるプロイセン軍が迫る。だが激戦の末に戦場中央部の要衝ラ・エイ・サントを陥落させたナポレオンは、親衛隊を投入して中央突破の賭けに出る。果たして親衛隊は英連合軍の戦列を抜くことができるのか、という燃えるシチュエーションである。



 Jours de Gloire(JdG)シリーズはVae Victisの付録のほか、単体ゲームなどで計30作以上出ているらしい。その中で「La Garde Avance!」はマップが小さいうえ5ターンしかなく、プレイ時間は1時間とのことだから自分のようなJdG初心者でも気軽に遊べる。

 とはいえ、JdGでは命令を受けている部隊とそうでない部隊ではできることが違ったりとか、うーん、自分の脳みそのキャパではちゃんと理解できているか不安……と思っていたら、JdGの解説動画がユーチューブにありました。動画で説明してもらうとわかりやすいっす。いやルール読めばいいだろ、という話なんですけど、ふんだんに図で例示してもらえるとハードルが下がります。2014年にアップされたみたいでルールの細部は変更があるかもだけど、ルールやゲームの手順をざっくり把握するのに役立ちました。


 それにしてもワーテルローなんてメジャーテーマのゲーム、長い間怖くて手が出せていなかった。でもBANZAIマガジンの次号はワーテルローだ。乗るしかないだろこの波に! ということで「La Garde Avance!」をやってみた。

←ウソです、ごめんなさい。BANZAIマガジンのことはプレイしてこのAARを書き始めた後に知りました。

 「La Garde Avance!」をやってみたのは、たまたま前回プレイしたAu fil de l'épéeシリーズ(AFdE)のデザイナーFrédéric Beyがデザインしたゲームだから。だってFrédéric Bey先生、AFdEは2018年から新しいのを出してないし。Vae Victisでは162号でビザンツについて記事を執筆したりしているのになー。でも、別のデザイナーのゲームだけどA la Charge!シリーズは今年5年ぶりに新作が出たし、Bey先生、あきらめずに待ってますよ! それとBANZAI次号も期待してます。

 BANZAI次号の付録ゲームはSSワーテルローの再版らしい。SSシリーズといえばたしか昔シミュレイター誌に、中黒氏がSS川中島を日本のワーテルローだと言ってアメリカ人に売り込んでいたって書かれていた(自分の記憶違いだったらごめんなさい)。若い頃から国際的なマーケティングセンスがあることをうかがわせるエピソードで、栴檀は双葉より芳しというやつですか。


 というわけで「La Garde Avance!」なんだけれども、ナポレオン戦争は、まあその、なんだ、よく知らないんですよ。すみません。なのでまずはヒストリカルノートを読んでみた。Vae Victis161号には"L'infanterie de la Vieille Garde au combat"というタイトルで、親衛隊について1799年の執政親衛隊の創設からワーテルローでの敗戦までが6ページにわたって描かれている。筆者は「La Garde Avance!」のデザイナーFrédéric Bey。親衛隊は二百年以上たった今でも、ナポレオン軍の中でもっとも敬意を払われ研究されている、なんてこと書かれていたら読むしかないじゃないですか。親衛隊って精鋭部隊だよねぐらいの漠然としたイメージしか自分は持ってなかったけど、いろいろと勉強になりました。ということでヒストリカルノートを和訳してみました。ご興味ある方は下記リンクからどうぞ。





……なんてなことはしてません。だって、ナポレオン関連の文献は日本語でふんだんにあるでしょうからね。親衛隊のことを含めナポレオニックについてあんまり知らない自分がウォーゲーマーの中ではマイノリティなんだろうなあ。それと、デザイナーズノートでは親衛隊の士気などについて説明されていて面白かったです。


つづく

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part5

 ●第7ターン  今ターンも冒頭に激しい射撃戦が行われたが、砲兵、弓兵ともに数で勝るブルゴーニュ軍はより多くの損害を敵に与えた。  だがスイス軍はFaucingnyが敵右翼(マップ下方)を切り崩す。弓兵の防御射撃をものともせず白兵戦で敗走させ、さらに連鎖敗走でブルゴーニュ軍弓兵が...