封切まで一週間を切った映画「ナポレオン」、ウォーゲーマーだったら楽しみにしている人は多いんじゃないでしょうか。英米仏では先に11月22日に公開されていて、観客動員数は好調のようです。
フランスでは公開前にパリの凱旋門をドでかいポスターで覆う、なんてことやってたみたいですし。
Napoléon de Ridley Scott s’empare de l’Arc de Triomphe ! 🇫🇷 Le film événement de cette fin d’année !@NapoleonMovie @SonyPicturesFr @SonyPictures pic.twitter.com/6gJJuO4xzP
— Histoire de Napoléon (@histoiredenapo_) November 10, 2023
あの凱旋門はアウステルリッツの勝利を記念してナポレオンが作らせたそうで、まあこういうことしたくなるのもわからんでもないですね。
フランスではイギリス人の監督による英米の映画がどんなふうに受け止められているのかな、と思ってちょっと見てみたら、批評家の間では賛否両論みたい。
結構史実に手を加えているらしくて、エジプトのピラミッドを砲撃とか、そりゃないだろとナポレオニック初心者の私でも思います。でも映画は映画と割り切って楽しめばいいんじゃないかな。それにね、ナポレオン自身が"La vérité historique est souvent une fable convenue."(歴史的真実とはしばしば、合意された寓話なのだ)なんて言ったそうですし。
フランスでの批評なんですけど、英米では好評を博しているけどフランスでは評価が分かれていて、リドリー・スコットがイラついている、なんてこと書かれていますね。
ほかにも、
リドリー・スコットの「ナポレオン」―編集者たちを分断する映画
とか、
リドリー・スコットの「ナポレオン」-「壮大なショー」か、「ひどい伝記映画」か。批評家たちは完全に二分している
とか、史実から離れすぎているという批判に対し、映画としては面白いという声があるそうです。
フランスでの批判的な声に対して、リドリー・スコットは「フランス人は自分たちのことが好きじゃないんだ」と言ったとか。
まあもともとこの映画、ストリーム配信を予定していて長さも4時間半だったらしいですが、映画館での上映のために2時間40分に短くしたとか。なので監督としては4時間半バージョンを見てほしいって思うのかもしれませんね。でもそれでも、演出入れすぎて史実と結構違うところがあるっていうのは変わらないと思いますが。
スペインだとこんな批評もありましたし。
リドリー・スコットの「ナポレオン」-間違いにとどまらない、犯罪だ
それはさておき、映画「ナポレオン」関連の記事を読んでいて見つけたのが、ジョアシャン・ミュラ「リドリー・スコットのナポレオンは欠点だらけだが、見に行くべし!」というもの。
あれ、ミュラってナポレオンの元帥で、たしか騎兵の突撃で有名だったよね。それくらいナポレオニック初心者の自分でも知ってますよ。いやいや、200年前の人が映画見ろっていうわけないじゃん…って思っていたら、同姓同名の子孫だそうです。記事によるとミュラ元帥の7代あとらしいけど、もしかしてこの人かな。
このミュラさんが書いた映画「ナポレオン」についての記事なんですけど、ミュラ元帥の子孫だからだろうけど、客観的には観られていないと言うことは最初に断っています。そのうえで、この映画にはこれまでにない栄光、考えられないような勝利、英雄的な一群の登場人物、つまり一言でいって偉大さを期待していたそうです。
でもこの映画は全体的に暗いって言っています。冷たい光の下、ほとんどのシーンは秋で、実際のナポレオン帝国は若者たちによって率いられていたのに、若い役者はほとんど出ていない。すごく失望したって率直に言っていますね。もっとも、客観的に見れていないって改めて断っていますが。
リドリー・スコットはイギリス人のナポレオン観、つまりコルシカの山賊っていう感じらしいんですけど、礼儀を知らない簒奪者として描いているとミュラさんは感じたようですね。ナポレオンは当時は平均的な身長だったのに、背が低いというイギリスのプロパガンダを引きずっているとかね。
とは言いつつ、すごい映画だとは認めています。楽しめることは間違いない、と。皇帝の新しいイメージ(自分は受け入れないけどとは言っていますが)をこの映画は提供していて、それはナポレオンとその時代への考察を深めるだろうとのことです。
と、フランスでは賛否両論のあるこの映画、でもエンターテインメントとしてはおおむね認められているようなので、楽しみにしておこうと思います。
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