2022年7月7日木曜日

アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack(GMT) AAR ②

  アンナ・コムネナが書いた歴史書「アレクシアス」によると、ドリュラエウムの戦いではトルコ軍は十字軍をなめてかかり、行軍中の敵前衛を発見するとすぐに攻撃したそうだ。

 ちなみにアンナ・コムネナは漫画に描かれているように基本的にお父様素敵という姿勢で、「アレクシアス」でも冷静な著述を心がけると言いつついろんなところで父である皇帝アレクシオスを賛美している。

 ドリュラエウムの戦いの記述でも、お父様の忠告を聞かなかったばっかりに損害を被っちゃって、やっぱりお父様の賢明な助言が正しかったことが証明されたわ、みたいな感じのことを書いている。アンナちゃん、後世に著作が残るんだから自重したほうがいいんじゃあないでしょうか。まあでも、父親を称賛しているということはご自分で認めてますけど。


 いや、でも、このゲームのトルコ軍としては十字軍をなめてかかるなんてとてもできませんよ。十字軍には強力な騎士の集団がいるというだけでも厄介なのに、トルコ軍にとってさらに不利なことに、自軍の指揮官の活性化値が低い。中央で30ユニットという大部隊を率いるアルスラン(Kilij Arslan I)は3、ほかの三人の指揮官は2だ。やる気あんのかと言いたくなるレベルである。機動戦を展開しようにも動かない可能性が高いし、連携攻撃も計算に入れがたい。


 そしてトルコ軍にとってダメ押しなのが、十字軍の敗走レベル(Flight Level)の高さである。Men of Ironシリーズでは自軍ユニットが壊滅したり敗走していくごとに敗走ポイント(Flight Point, FP)が蓄積していき、累積FPとサイの目を足して敗走レベルを超えた側が負けになる。

 つまり敗走レベルが高い軍はなかなか負けないのだが、例えば前回AARを書いたテュークスベリーの戦いではランカスター軍が20、ヨーク軍が22だ。で、このドリュラエウムの戦いの十字軍は70である。え、70?! 誤植じゃないよね、と思わず二度見してしまう高さである。


 こんなに不利な条件が重なってトルコ軍は勝てるのか。強力な騎士集団を前にすると、トルコ軍は快速を生かして敵陣の左右に回りこみたくなる。十字軍後方(マップ下方)の歩兵集団は弓騎兵に対してはほぼ無力だからだ。

 だがトルコ軍は指揮官の活性化値が低いため、あっという間に騎士たちに捕捉されて強烈な打撃を食らってしまうだろう。実際、練習でソロプレイしているときにそのとおりの展開になりました。

 BGGにも書かれていたが、トルコ軍は損害を恐れず最初からハイパーアグレッシブに攻撃しないといけないのだ。史実のドリュラエウムの戦いは、行軍する十字軍に対しセルジューク・トルコ軍が待ち伏せ攻撃、というものだった。トルコ軍が積極的に攻撃しなくてどうする。

 

 ということで、トルコ軍はゲーム開始からアルスランが率いる中央の弓騎兵集団が十字軍の騎士の戦列に全力で攻撃をしかけることにする。

 弓騎兵が隣接した騎士を射撃する場合、40%の確率で騎士は混乱状態になる。さらに、通常は射撃をしたユニットは移動が終了となるのだが、弓騎兵は移動が続けられるため、射撃して離脱、次の弓騎兵が移動してきて射撃、という連続射撃ができる。


 一方、騎士は射撃を受けるとカウンターチャージ(Counter-Charge)をすることができる。カウンターチャージを受けた弓騎兵は移動終了となるため騎士から離脱ができなくなる、という効果だけでなく、射撃を解決した後で騎士が弓騎兵に突撃(Charge)できる。もし射撃を受けて混乱状態になっても、カウンターチャージを宣言していれば騎士は白兵戦(Shock)で攻撃できるのだ。

 

 ゲームはトルコ軍の活性化から始まる。トルコ軍弓騎兵の大群が次々と十字軍の騎士に射撃を浴びせかせ、さすがの騎士も多くのユニットが混乱状態になる。十字軍は積極的にカウンターチャージで反撃、トルコ軍側にも損害が出る。指揮官ノルマンディー公ロベール二世(Robert II, Duke of Normandy)が陣頭に立った強力な突撃は弓騎兵を混乱状態で退却させる。やっぱり騎士最強。


 が、これがトルコ軍のねらいなのである。このゲームでは戦闘後前進は強制なので、弓騎兵を蹴散らした騎士は戦列から飛び出ることになる。そうして突出した騎士をトルコ軍は大量の中弓騎兵(Medium Cavalry Archers, MC/A)で囲み、射撃で混乱状態にしたのち、包囲状態で白兵戦を仕掛けるのだ。



 いくら強力な騎士でも、囲まれて退路を断たれれば退却できずに壊滅する。中騎兵が騎士を攻撃する場合は-3の不利なサイの目修正がつくとはいえ、3,4ユニットで包囲攻撃をしかければ数の優位と二方向以上からの攻撃で逆に有利になるのだ。

 敵の陣形を乱し、囲んで袋叩きにする。これこそが非力な中弓騎兵が騎士に対抗できる方法であり、そのために少々の犠牲をいとわず射撃を仕掛けて敵のカウンターチャージを誘発したのである。


 包囲攻撃を受けたロベール直属の騎士は壊滅。ロベールはからくも逃げ延びた。十字軍の最前列をなすロベール隊の騎士は、トルコ軍の射撃で半数が混乱状態である。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

0 件のコメント:

コメントを投稿

ディエン・ビエン・フー陥落から70年の日に読む、『HO』

 今年の5月7日はウォーゲーマーだったら誰でも知っているはずの、ディエン・ビエン・フー陥落から70年。……なんてことは全く知らなくて、Le Mondeの記事が目に止まって、おお、そうだったのかと知りました。 Dien Bien Phu, la bataille expliqué...