2022年7月13日水曜日

アンナ・コムネナに見送られて Dorylaeum 1097 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack(GMT) AAR ④

  トルコ軍の弓騎兵の大群によってさすがの十字軍の騎士も次々と壊滅し、騎士集団の指揮官が二人とも討ち死にしてしまった。Men of Ironシリーズでは指揮官が戦死した場合、副官(Replacement leader)が次の自軍移動フェイズに登場する(副官が用意されていない指揮官もいる)。活性化値が1低いため、副官に率いられた部隊は積極的な行動がしにくくなる。

 副官の指揮のもと、ロベール隊は右翼が後退、左翼は混乱状態のユニットの回復に努める。自隊の活性化中に敵に接敵せずに移動も何もしなければ混乱状態から回復できるのだが、ボエモンド隊が多大な損害を被りつつも積極的に反撃してくれていたおかげでロベール隊とトルコ軍弓騎兵の間にわずかながら間合いが生じていたのだ。騎士が正常状態になれば、突撃にカウンターチャージなど再び強烈な攻撃力を発揮することができる。

 

 一方トルコ軍は、騎士たちに反撃の機会を与えてはならないと、中央主力のアルスラン隊でロベール隊に膨大な量の弓矢を降り注ぐ。ロベール隊戦列最右翼の騎士を混乱させ退却させれば、戦列の亀裂が広がってそこからなだれ込めるのだ。だが、7回射撃を行っても騎士は無傷。ええい、連邦のモビルスーツは化け物か!! 結局、包囲して騎士を1ユニット屠ったものの、射撃・白兵戦ともにサイの目が振るわず思うように十字軍に損害を与えられない。



 トルコ軍は続けて右翼(マップ左方)のダニシメンドの軽弓騎兵を動かす。ダニシメンドはトルコ軍中央主力を率いるアルスランとは仇敵の間柄だったそうで、それを反映してか活性化値が2と低い。だがMen of Ironシリーズでは総指揮官(Overall Commander, OC)には活性修正(effectiveness)という値があり、士気範囲にいる他の指揮官の活性化チェックのサイの目を有利にする。トルコ軍の総指揮官アルスランは活性修正は-1(サイの目が1有利になる)なので、トルコ軍は両翼の部隊指揮官がアルスランの士気範囲にいるように部隊を展開しているのだ。


 ゲーム開始直後からトルコ軍の怒涛の攻撃を受け、十字軍は20ユニットある騎士の半数以上が壊滅した。残っているユニットも多くが混乱状態だ。このままではトルコ軍騎兵集団の波に飲み込まれてしまう。

だが、十字軍には援軍があるのだ。実際のドリュラエウムの戦いでも、離れた位置にいた十字軍の別動隊が駆け付け、ボエモンドたちの窮地を救いトルコ軍を敗走させている。


 このゲームの十字軍の援軍は強力で、5部隊で計32ユニットもあり、しかもそれがすべて騎士なのである。


 指揮官の活性化値も高く、トゥールーズ伯レーモン・ド・サン・ジル(Raymond IV, Count of Toulouse)にいたっては5だ。この援軍とまともに戦ってはトルコ軍に勝ち目はない。初っ端から全力で攻撃したのも、増援が現れる前に十字軍に大きな損害を与えておく必要があったからだ。


 アンナ・コムネナの著書「アレクシアス」には、増援部隊を率いる指揮官たちも登場する。第一回十字軍はビザンツ皇帝の要請から始まったということもあって、まずはコンスタンティノープルにやってきたのだが、ゲームで増援部隊として登場するロレーヌ公ゴドフロワ・ド・ブイヨン(Godfrey of Bouillon)は皇帝に忠誠を誓うことを要求されたが従わず、コンスタンティノープルを攻め始めるということをしている。

 漫画「アンナ・コムネナ」にもその辺のことが結構描かれていますね。十字軍を迎え撃つ夫ブリュエンニオスの凛々しい甲冑姿を見て「え? なに? 今の誰? アポローン!?」と美男の代名詞になっていたらしい古代ギリシアの神にたとえているシーンがあるけれど、歴史書「アレクシアス」でもちゃんとそういうことを書き残しています。ブリュエンニオス君、十年ぐらい前だったらリア充爆発しろって書き込まれてたでしょうな。

 アンナは、十字軍の中にはエルサレムに巡礼に行くふりをしながら皇帝を失脚させコンスタンティノープルを奪おうとしている連中もいる(特にボエモンド)とまで書いている。このゲームで増援部隊として登場するフランス王弟のユーグ(Hugh Capet, Count of Vermandois)なんかは、えらく尊大な態度だったらしい。でもコンスタンティノープルを攻めるゴドフロワを止めようとしたそうです。

 トゥールーズ伯レーモン・ド・サン・ジルに関しては、どんな時でも真実を尊重し、どの西欧人よりもあらゆる面で優れていると例外的にべた褒めだ。塩野七生は人望がなかったって書いてるけど。


 このゲームでは十字軍は自由活性を得るたびに増援の登場チェックを行える。10面体サイコロを振って11以上が出たら援軍到着である。え、11なんて出ないでしょ、と思ってしまうんだけど、チェックに失敗するたびにサイの目が1ずつ有利になるため、時間がたてばたつほど増援が現れる可能性が高くなるのだ。


 十字軍は騎士集団が半壊し、残るユニットもほとんどが混乱状態で反撃能力は激減してしまった。そして後方の歩兵部隊にトルコ軍の騎兵が迫る。


 十字軍の救援部隊は間に合うのか?!


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

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