2023年4月9日日曜日

第一回十字軍最後の戦い Ascalon 1099 - Infidel, Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ③

  十字軍の左右両翼の部隊から攻撃を受けたファーティマ朝軍は左翼のベルベル中騎兵で反撃。さらに右翼でも反撃を、と言いたいところなのだが、継続活性に失敗する。


 このシナリオのファーティマ朝軍は弓兵、槍兵、重騎兵など兵種ごとに5つの部隊に分けられているのだが、登場する指揮官はアル・アフダルのみで、どの部隊も活性化にはアル・アフダルの活性化値を使う。

 なぜ指揮官が一人しか登場しないかというと、イスラム側の資料で入手できるものが非常に限られているからだそうだ。日本語でもイスラムに関する資料って(少なくとも一般人にとっては)限られている印象だけど、英語でもそうらしい。そういえば、GMTのLevy&Campaignシリーズの新作として11世紀半ば、アナトリアでのセルジューク・トルコとビザンツ帝国の衝突をシミュレートした「Seljuk: Byzantium Besieged, 1068-1071」がP500に入っているけど、このゲームのデザイナーも英語で手に入るイスラム側の資料ってかぎられているんだよねって言っていたな。Andrew C.S. Peacockっていう学者の著書を教えてもらったけど。


 ちなみにファーティマ朝は北アフリカのベルベル人を支持基盤として東西に領土を広げ、モロッコからシリアまでを支配していた。ファーティマ朝の時代にカイロが建設されて繫栄する。この王朝はイスラム教のシーア派で、創始された11世紀初頭にはバグダッドでアッバース朝君主がイスラム教最高指導者カリフとなっていたが、ファーティマ朝の君主もカリフを名乗る。同時期、イベリア半島で後ウマイヤ朝もカリフを名乗っていたため、11世紀前半は3カリフ鼎立の時代となっていた。ちなみにアッバース朝は歴史が長く、1258年にモンゴルのフレグに滅ぼされるまで宗教的権威を保っていたらしい。あと、第一回十字軍より300年ほど前にアッバース朝が751年にタラス河畔の戦いで唐軍を打ち破り、製紙法が西方世界に伝わることになりましたね。


 このファーティマ朝軍の指揮官アル・アフダルだが、活性化値が3と凡庸なのである。そのため連続して部隊を活性化することがそれほど期待できず、イスラム側としては数的な優勢を活かすのは難しい。一方の十字軍は中央のロベールが3だが、左翼(マップ右方)のゴドフロアは4,右翼のレーモンは5と高く連続攻撃がやりやすくなっている。

 

 連携の取れていないファーティマ朝軍がまごついている間に、十字軍は左翼(マップ右方)のゴドフロア隊(青)、そして右翼のレーモン隊(黒)と連続攻撃。マップ右方に展開していたゴドフロアの部隊はさらに右方にシフトし、脆弱な槍兵や中騎兵に次々と損害を与えていく。続いて右翼(マップ左方)のレーモン隊(黒)は、突出していた騎士に槍兵が追いつき敵中騎兵を攻撃。包囲されている騎士を救出した。



 ファーティマ朝軍は両翼で押され気味となる。やはり中騎兵では、騎士を基軸にした敵の攻撃をしのぐのには無理がある。後方で待機しているマムルーク重騎兵であれば白兵戦でも騎士とある程度互角にやりあえるうえ、総計10ユニットもある。十字軍に寝込みを襲われたもののすでに混乱状態から回復している重騎兵部隊を両翼に投入すべきか。


 だがファーティマ朝軍プレイヤーは重騎兵温存を選択する。今両翼の救援に回しても中騎兵ユニットと混在してしまい効果的な攻撃は行えない。それに重騎兵は敗走ポイント(Flight Points, FP)が3と高い。一方中央の弓兵の敗走ポイントは1で、重騎兵が壊滅した際に弓兵の3倍の勝利得点を敵に献上するような形になる。焦ってマムルークを投入するよりもまずは弓兵で消耗戦に持ち込むべし。敵の両翼部隊が自軍中騎兵部隊を突破したその瞬間に、重騎兵はその機動力と数、それに突撃の破壊力を活かして敵のスピアヘッドを叩き潰せばいい。


 そのような方針のもと、ファーティマ朝軍最前列中央の弓兵部隊が敵ロベール隊(赤)に向かって前進。弓兵の射撃の援護を受けながらスーダン弓兵がフレイルを振り回して白兵戦を仕掛ける。ロベール隊は1ユニットが敗走(Retired)、もう1ユニットが壊滅した。十字軍初の壊滅である。

 さらにファーティマ朝軍は、十字軍の両翼部隊がマップの左右にシフトしていった結果、中央ロベール隊との間が手薄になっているのを見逃さなかった。敵部隊の間隙にスーダン弓兵が突進していく。十字軍は3つの部隊が分断された形となった。



つづく

0 件のコメント:

コメントを投稿

(幕間その2) ドイツから見たブルゴーニュ

  ブルゴーニュの歴史に関しては流れがつかめずモヤモヤしていて、手軽に読めるものはないかな、と思って見つけたのが『Burgund』。ドイツの本なんだんけど、やっぱりブルゴーニュ地方と歴史的に関係が深かったドイツ、こういう入門書もいろいろ出ているだろうな―と思ってたんですけどね。前...