先日やった「Alsace 1944」が面白かったので、アルザス関連のゲームをやってみた。プレイしたのはGrandsonの戦い。場所は現在のスイス北西部で1476年、スイスとブルゴーニュの両軍が衝突した……
いやいや全然アルザスじゃないだろ! と思われるかもしれないけど、そうじゃないんですよ。この当時、領土拡大を続けるブルゴーニュ公国はアルザスをめぐってスイスやその他の勢力といわゆるブルゴーニュ戦争を戦っていて、その一環で起こったのがGandsonの戦いなんですね。なのでアルザスと結構関係があるんですよ。ははは…。
まあ苦しい言い訳はこれぐらいにして、要はプレイしてみたかったからプレイしただけなんですけどね。ゲームはVaeVictis誌81号付録の「Epées et Hallebardes 1315-1476」に収録されている3つのシナリオのうちの一つ。中世の会戦をシミュレートしたAu fil de l'épéeシリーズに属し、同じシリーズでは以前、Guinegatteの戦いのAARを書いたなあ。
初期配置を見ると兵力でブルゴーニュ軍が圧倒しているように見える。だがデザイナーによるとこの戦いでブルゴーニュ公シャルルは騎兵と砲でスイス軍を打ち破れると思っていたそうで、ゲームでは後方の3つの部隊は予備となっていてブルゴーニュ軍騎兵が2ユニット敗走もしくは壊滅するまでは動かせない。一方のスイス軍は続々と増援が登場するため、数のうえでの不利さはなくなる。
さらにスイス軍の多くは戦闘力(Facteur de combat)が8と強力で兵質(Qualité)でも敵に勝っている。それにほとんどのスイス軍ユニットの兵種はスイス兵(Suisses, Su)で、騎士(Chevaliers, Ch)や重装騎兵(Hommes d'Armes, Ha)と白兵戦で互角、ブルゴーニュ軍に多数いる槍兵(Piqiers, Pi)に対しては有利なDRMがつく。
とまあこれだけでもスイス軍の優秀さがうかがえるのだが、さらにこのシナリオでは、スイス兵はブルゴーニュ騎兵の突撃を実質的に無効化してしまうのである。Au fil de l'épéeシリーズでは騎兵の突撃は+3のDRMが付くのだが、だがこのシナリオではスイス兵に対する突撃にはDRMがゼロである(複数方向からの突撃でやっとDRM+1)。
優秀なスイス兵に対し、ブルゴーニュ軍は右翼(マップ下方)の台地上に砲兵を4ユニット配置しており、さらに弓兵を多数保持している。白兵戦で優位に立つスイス軍に対し、ブルゴーニュ軍がいかに砲兵と弓兵を活用できるかが勝敗のカギとなるだろう。
実際の戦いでは続々と山地から登場するスイス軍に対しブルゴーニュ軍は平野部に退いて態勢を整えようとしたところ、そのまま押し切られてしまったらしい。ちなみにこの当時のスイスは8つの州や都市が同盟を組んでおり、ドイツ語だとAlte Eidgenossenschaft、フランス語だとConfédération des huit cantonsと呼ばれていて、当然VaeVictis誌でもそう表記されている。日本語ではなんて訳されているんですかね。
一方のブルゴーニュ軍を率いるのはブルゴーニュ公シャルル。Charles le Téméraireとも呼ばれていて、シャルル勇胆公や突進公、猪突公とかいろいろと訳されているようだけど、le Téméraireは悪い意味も含まれているようで、辞書を見てもtéméraireという単語の意味としてune hardiesse imprudente ou inconsidérée(無謀だったり思慮の足りない大胆さ)なんてなことが書いてある。でもブルゴーニュ関係の本を読んでいると、téméraireではなくhardi(大胆)と変えたい、téméraireと呼んでいるとシャルルの業績や人格に対し史実と反する印象を与えてしまう、と言っている研究者がいるって書いてあった。その本の筆者は同意しつつも、やっぱりCharles le Téméraireというすでに定着している呼び名は維持したい、と書いていたけど。まあ自分にはフランス語のニュアンスはわかりませんが、シャルル関連の本を読んでいるとそんなに猪突猛進って感じは受けないので、このAARではle Téméraireを訳さずにル・テメレールと呼ぶことにします。
つづく
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