2023年5月18日木曜日

将門最後の戦い(武士ライフ 第肆號)AAR ①

 平将門、というと日本史の授業で名前を聞いた人も多いはず。10世紀、平安時代の半ばに関東で反乱を起こすが鎮圧された武将である。源氏物語が成立する数十年前のこと、京の都では雅な貴族文化が花開きはじめ、土佐日記や伊勢物語が書かれたと言われているが、遠く坂東の地では武士が勃興しつつあった……という説明で、あってる?

 日本史に疎い自分でも知っているぐらいのメジャーな人物なんだけれども、将門が出てくるゲームは少ないらしい。昔「シミュレーター」誌の付録に将門の戦いのゲームがあったけど、他には国際通信社から出ている「将門記~承平天慶坂東大乱~」という戦略級のゲームぐらいしか見つからない。

 今回プレイする「将門最後の戦い」は、そんな将門が活躍する貴重なゲーム。「武士ライフ」第肆號の付録ゲームで、タイトルどおり将門の最後の戦いをシミュレートしている。(ちなみに「第肆號」は「だいよんごう」と読むようです。教養のない自分には??でした)

 追討軍に敗れ、本拠の石井営所まで焼かれた将門に残る兵はわずか四百。だが将門とその側近の兵たちの士気は衰えない。巧妙な機動で敵の風上に布陣した将門は、10倍の兵を擁する追討軍に対して攻撃をしかける…という燃えるシチュエーションだ。

 ゲームは将門方と討伐方が相対するのだが、将門が討ち取られたらその時点で討伐方の勝利、逆に討伐方の大将平貞盛ともう一人の武将が討ち取られたら将門方の勝利となる。狙うは敵の大将の首! という感じ。

 もしこれらの条件が満たされない場合、ゲームは8ターンまで続き両者の勝利得点を比べて多いほうの勝利となる。勝利得点は除去した敵ユニットの戦闘力と同じ1~2点が得られるが、武将ユニットは15もしくは20点とかなり高い。やはり「雑魚はほおっておけ! 狙うは敵の大将の首!」という感じでプレイしてしまいたくなる。


 各ターンは主に遠戦、移動、近接戦、白兵戦のフェーズからなり、移動フェーズでは将棋のように各プレイヤーが1ユニットずつ交互に動かす。また遠戦と近接戦の両フェーズは射撃フェーズで、各ユニットとも1ターンに二回射撃の機会があることになる。

 なおこの時代の坂東では騎馬弓兵が主戦力だったようで、そういえば将門の時代から数十年後の更級日記にも、武蔵の国のところで「馬に乗りて弓もたる」なんて表現が出てくる。


 このゲームの特徴として主導権がある。主導権プレイヤーは先に射撃が行えるうえ風下方向には射程が長く、さらに移動フェーズを好きなタイミングで終了させられる。また白兵戦による攻撃も主導権プレイヤーしか行えない(ただしマストアタック)うえ、風下方向への攻撃には有利に2コラムシフトが得られる。要は、主導権プレイヤーがかなり有利なはずだ。

 風上から攻撃した将門方がゲーム前半は主導権を握るが、後半では風向きが変わり討伐方に主導権が移る。追い風を背に将門軍が討伐方の大軍を蹴散らしていくが、そのうち討伐方の反撃が始まる、というのがたいていのプレイの流れになると思う。

 討伐方は将門方の2倍半以上のユニットがあるものの、その半数以上は「伴類」という戦力未確認ユニット。将門方ユニットと隣接した時点で表を向けるのだが、伴類の4分の1は射撃力無しかつ戦闘力ゼロという、表にされた時点で即座に除去されるユニットだ。討伐方としては大軍を擁するものの当てにならない兵を使って将門方の猛攻をしのがないといけない。 


 両軍とも3つの武将ユニットをもつが、将門は射撃力3、戦闘力5と最強だ。このゲームではスタック禁止、白兵戦は戦力差による解決なので、主導権による2コラムシフトと併せると将門は凶悪なまでに強い(なお、武将以外のユニットの戦闘力はゼロから2)。一方の討伐方は、大将の平貞盛よりも史実で将門を討ち取ったとされる藤原秀郷のほうが戦闘力が高くなっている。


 上記武将たちとは別に、将門方には古志賀谷太郎というオプションユニットがある。将門と同等のレーティングを誇るが、この人物については自分は全然知らない。ユニットに描かれているのがドット絵っぽいシルエットで、ファミコンの時代から時空を超えてやってきたのかと思ってしまったけど、もしかして実在の人物なんですかね。

 まあとにかく、古志賀谷太郎殿には今回はご遠慮いただいてプレイしてみた。


(なおすでに英語でAARを書いているけど、戦いの推移はこの日本語版AARも同じなので、英語版を読んだ人はあんまり期待しないでね。

それと、英語版でも断っておきましたが、このゲームはBGGでは"Masakado's Last Battle"で登録されていますが、"Masakado's Last Stand"のほうが悲壮感というか劇的な雰囲気が出ると思ってそうしました。越谷党の棟梁の方からは「ご自由に」とのお言葉をいただいています。ありがたや)

つづく

*5/19追記:古志賀谷太郎について、越谷党の棟梁から

「古志賀谷(越谷)太郎」は武蔵七党の一つ「野与党」一族に居たと言われている人物

と教えていただきました。ありがとうございます。

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