2025年1月31日金曜日

VV最新号は「アイラウの親衛隊」、なんですが…

  あと一週間ほどでアイラウの戦いがあった日ですが、VaeVictis誌最新号のゲームはアイラウの親衛隊を扱った「La Garde Veille ! - La Garde à Eylau, 1807」。タイトルそのまんまで、アイラウでの親衛隊の戦いです。Jours de Gloire(JdG)シリーズで、シナリオは2つでそれぞれ別のマップが用意されていて、親衛隊の反撃、それに親衛隊騎兵の突撃を扱っています。

 JdGシリーズで親衛隊と言ったら、VV161号の「La Garde Avance!」が面白かったので今回のも楽しみ。というか以前、「La Garde Avance!」についてのユーチューブ動画で、過去のJdGシリーズのゲームを再版しないのかって質問が出たときに、デザイナーさんが主要な戦闘の親衛隊がかかわった部分だけ切り取ったゲームをVaeVictisから出すだろう、おそらくアイラウって感じのことを言っていたんですよね。

(19:56から21:30あたり)

早く出ないかなーと思っていたら、アイラウ戦のタイミングでの出版となったようです。

(画像はVaeVictis公式サイトから)

 VaeVictis誌のサイトにあがっている画像を見ると、仏軍はCohésion値が7や8という化け物ぞろいです。さすが親衛隊。JdGシリーズのゲームはこれまでBANZAIで和栗南華氏が記事を書いているから、このゲームも同誌でレビューされるかもしれませんね。


 ということで早くプレイしたいんですけど、このVV178号、発売が大幅に遅れたんですよね。どうやらカウンターの輸送会社の手違いがあったそうです。フランスの掲示板では、まだ来ないよーという書き込みが結構あって、「輸送会社がアイラウの雪でまよっちゃったんだよ」とか、「次の号と一緒に出るんじゃないの?」なんてのもありました。

 やきもきしていると、先週の金曜日になってやっと手に入れたって書き込みがあり、その後も各地での入手報告が続いて一安心。VaeVictisはボードウォーク岡山のiOGMさんが扱っていますが、日本にはいつ届くのかなー。もしかしてアイラウ戦の日とか?


2025年1月19日日曜日

欧州のウォーゲーム界が熱い! 『EuroWarGames』

  ウォーゲームと言ったら昔はSPIやAvalon Hillなどアメリカが本場って感じがあったみたいですよね。でも最近はスペインをはじめフランス、ドイツ、イタリアで規模は小さいながらもいろんなパブリッシャーが生まれていて、なんかヨーロッパが元気みたい。と思っていたら、『EuroWarGames』という本が出たので読んでみました。いや、正確に言うとKickstarterで思わず蹴ってしまってそれが届いたので読んでみたんですけどね。


 この本にはThe history, state and future of professional and public (war)gaming in Europeって副題っぽいのが付いていて、様々な国から十数人の執筆者が寄稿しています。ですが、それよりも裏表紙にあったWargaming is on the rise again. Or did it never falter?っていう惹句的なものに惹かれてしまいました。

 過去二、三十年の間、ユーロゲームの流行によってウォーゲームは陰りが見えてきた。その一方で、ヨーロッパのウォーゲームのコミュニティは地理的にはお互い近くに集中しているのに言語的障害と歴史的要因から国境によって分断されてきていた。その結果、ヨーロッパの多様で豊かなウォーゲームの活動は世界的には知られてこなかった…

 なんてことも裏表紙に書かれているんですけど、「ユーロゲーム」って言葉、自分は聞いたことあるけどその定義はよく知らなくて、ここんとこ流行っている(らしい)ボードゲームのことなんだろうなって漠然と思ってるんですけど、あってる?すんません、カタンぐらいしかしたことありません…。

 日本でもゲームマーケットが盛況だったりボドゲカフェが各地にできていたりしますが、ユーロゲームの流行は世界的なものらしいです。ウォーゲームは当然その影響を受けているようですが、その是非が一番最初の章「Attack of the Hybrids! Wargames and Eurogames-derived mechanics」で論じられています。ユーロゲームの影響を受けたウォーゲームが多く出てくることで、多くのハードコアなウォーゲーマー(grognardって呼んでますね)はfeel threatened by this sudden evolution, fearing that such an approach could "betray" the purity of age-old mechanics and conventionsなんて書かれています。日本でもそういうウォーゲーマー、結構いるんじゃないでしょうか。Euro-invaders of the simulation worldなんて表現もありました。でもこの執筆者は、ユーロゲームとウォーゲームのハイブリッドについて、デザイナーにとって簡単ではないがthe challenge surely is worth the try if we want to persevere in the oldest tradition of wargame design: innovationって言っています。

 他にもいろいろと面白い章があったのですが、真っ先に目を引かれたのはスペイン関連の記事。スペインのウォーゲーム業界ってほんと、元気がありますよね。この本に収録されているのは、Bellotasというタイトルの章で執筆者はLevy&CampaignやCoinシリーズのデザイナーVolko Ruhnke氏です。BellotaConという毎年1月にスペイン南西部の街Badajozで開かれているウォーゲームコンベンションについて、2018年の第一回から参加したときのことを書いています。

 ちなみにBellotaConはこの1月23日~26日に第8回が予定されています。おお、もう直前じゃん。

https://bellotacon.es/

 この章では、スペインでも何十年にわたってウォーゲーム界を悩ませてきた問題、すなわち高齢化がある、なんてなことも書かれていて、これは日本とも共通なのかな。でもその一方で、昔ボードゲームを遊んだ世代はもう子供が独立し仕事も安定しているので、ウォーゲームに戻ってきているんだそうです。それだけでなく、ヨーロッパ全体と比較してスペインではウォーゲーマーが高い割合で増えていっているという根拠もいろいろあるんだとか。うーん、いいなあ。

 それと、BellotaConのBellotaってスペイン語でドングリという意味ですが、ドングリを食べさせた豚から作るハムがこの地域は有名だそうで、そこからこのコンベンションの名前をとったと書かれていました。へー、知らんかったよ。BellotaConはもともと少人数のウォーゲーム愛好家たちが始めたもので、そういった人たちの献身的なコミットメントがあってこそ成立していたとのこと。どんどん成功して参加者が増えるにつれ、長期的にはパブリッシャーも単にサポートするだけでなく積極的にかかわっていく必要がある、ということは以前から指摘されていたそうです。でもCOVIDの時期をDiscordなどオンラインでの開催で乗り越えていったとのこと。今年の第8回も盛況になることでしょう。

 

 ほかには、イタリアでのウォーゲームの盛り上がりについても書かれた章がありました。たまたまこれを読んでいたので、先日ブログで紹介したユーチューブも興味深く視聴することができましたよ。ちなみにあのユーチューブ動画のRiccardo Masini氏は『EuroWarGames』の編者の一人に名前が入っています。

 イタリアでは月に計2万5000部売れているゲームマガジンがあるって書かれているんですが、マジ? そして一般的なボードゲームとウォーゲームのオーバーラップが見られるそうで、ウォーゲーマーの数は限られているとのこと。イタリア産のウォーゲームの強みとしてはクリエイティビティを挙げています。アメリカの主要パブリッシャーと競争するのは意味がないため、ほとんどのイタリアのパブリッシャーは第二次世界大戦の独ソ戦やアルデンヌ、ゲティスバーグやワーテルローといったメジャーなものは作っておらず、様々なテーマで多様なシステムを採用していて、そういったニッチさからクリエイティビティに価値を置くことになっている、とのこと。イタリアのウォーゲームがユニークなテーマを扱っていることに惹かれて、外国の業者が取り扱うようになるというトレンドが生まれているそうです。

 面白かったのは、イタリア統一戦争と第一次世界大戦は軍事面に関してはほとんど知られていないとのこと。イタリア人にカポレットやソルフェリーノがどこにあるか聞いても答えられないんだそうです。そのため、記事の執筆者はゲームが歴史の知識を広めるのにも役立つと指摘しています。


 ところでヨーロッパのウォーゲームと言えば、小さなウォーゲーム屋さんが精力的に輸入、日本に紹介していますね。と思っていたら、こんなことが書かれていました。

half of Europa is courting Bonsai Games to translate Yasushi Nakaguro's games

へー、Bonsai Gamesはヨーロッパでモテモテなんですね。


 あと、たかさわさんが紹介していたこの記事を併せて読むともっと面白いと思います。ちなみにセイビン教授はこの本でも言及されています。



 とまあ、いろいろと勉強になったんですが、一番印象に残っているのはイントロダクションの最後の方に書かれていたこの言葉。

our hope is that this initiative(この本のことですね) will be of further encouragement for all the different national wargaming communities to strengthen their connections, multiply their contacts, share their experiences in a scenario of mutual growth and cooperation.

ほんと、そんなふうになるといいなあと思います。

2025年1月17日金曜日

イタリアで語る、日本のウォーゲーム事情

  つい最近、ヨーロッパのウォーゲーム事情についての本を読んだんですけど、たまたまイタリアのウォーゲーマーが日本のウォーゲームについてユーチューブで語るというをTwitterで見つけたので見てみました。

10歳の時からウォーゲームをしているというRiccardo Masini氏の番組に、日本のウォーゲームに詳しいAndrea Pavanさんが登場。ちなみにAndrea Pavanさんは去年の夏に日本に来ていたようです。

それと、武士ライフ第伍號の「和田合戦」をイタリア語に訳したりしています。いやー、武士ライフ好きとしては嬉しいなー。

 Riccardo Masiniさんは動画の中でもいくつか日本のウォーゲームを取り出してましたが、ウォーゲームだけでなく歴史にも詳しいみたいで、今後出るであろうゲームの話題の中で日本と中国の戦争のもの、とAndreaさんが言ったら、それって日露戦争の前の戦争、それとも後?って即座に聞いていました。日清戦争ってマイナーだと勝手に思っていたんですけど、知っている人は知っているんですね。

 この動画ではざっと日本のウォーゲームの歴史を振り返ったりしていましたが、鈴木 銀一郎、黒田 幸弘、中黒靖、中村テツヤ、山崎雅弘、福田誠といった日本人デザイナーが挙がっていました。今後注目するデザイナーを聞かれたAndreaさんは、堀場わたるって答えてましたね。子猫のゲームを作ったりするけどって笑ってましたけど。でもこの動画を通して一番よく触れられていた名前はナカグーロでした。

 日本のウォーゲーム雑誌もBANZAIを中心に紹介されていたんですけど、「武士ライフ」も出てきて嬉しかったです。ミニ雑誌だけど、コンパクトなゲームと、関連した歴史的な記事がついているって紹介していましたね。こういった中世の日本を扱ったものは、我々には手が届かないニッチなマーケットだって言っていました。あと、「A Victory Lost」(激闘!マンシュタイン軍集団)や「Most Dangerous Time」(信長最大の危機)は海外でもよく知られているようですが、これらはもともと雑誌付録だったとAndreaさんが言うと、Riccardoさんには意外だったようですね。

 日本のウォーゲームの特徴として、シンプルさというウォーゲームの古典的な部分と革新的なものを組み合わせている、と言っていましたね。シンプルさについては、少ないルールで誰でもプレイできるようになっているけれども、歴史性の深みも兼ね備えている、と。革新的なものは、「激闘!マンシュタイン軍集団」や「ワルシャワ1920」が挙げられていました。それとBANZAI20号の「ロンメルがゴーグルを拾うとき」は、すごく要求の高いプレイヤーでも楽しめるだろうって言ってましたね。あ、もちろん日本のウォーゲームの品質の高さもほめていて、見た目が美しいだけでなくちゃんとテストプレイもしている、ってことも指摘していました。

 ところでウォーゲームとは関係ないけどTakeshi's Castleって言葉がちらっと出てきて二人とも笑っていたんだけど、これって「風雲たけし城」のことですよね。イタリアでも放送されていたのかなあ。

 あと、RiccardoさんはBANZAIを取り出して、日本語はわからないけどグーグル・レンズで訳して読んでいるって言っていました。こうやって自動翻訳が便利になり普及していくのを見ると、言語の障害がどんどんなくなっていろんな言語圏との交流から新しい流れが出てくるといいな、なんて思いました。とにかく二人が楽しそうに日本のウォーゲームについて語るのを見ていると、日本のいちウォーゲーマーとしては嬉しい限りでした。「武士ライフ」とかがいろんな国で紹介されてプレイされるといいなあ。


紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part2

  ヨーク軍は左翼ヨーク公、中央のソールズベリー伯と活性化が続いたが、さらにヨーク公が再び活性化。左翼(マップ左方)から全力で攻撃する。先ほどの突撃で混乱状態だったランカスター軍歩兵は重装騎兵の攻撃で壊滅。怒涛の波状攻撃でヨーク軍がランカスターの戦列に食い込んだ。  ここでやっと...