中世の会戦ゲームをよくやるせいかTwitterで中世関連のつぶやきがよく流れてくるんですが、時折目にするのが、また中世についてこんな間違いが言われてるよ、というもの。暗黒時代だったとか、風呂に入らなかったとか、そういう誤った俗説があるそうなんですがね、そもそも自分、何が通説かなんてのも知らないんですよね。まあ中世のゲームをやっているから関連する軍事や歴史の本は読みますけど。当時の生活というか一般社会についてもうちょっと知っといた方がいいんだけどな、と思いつつ、結構いろんな本が出ているのでどれをまず読めばいいかわからないんだよなあ、俗説とかの本を読んじゃったら嫌だし。
そんなことを思いながら本屋の歴史コーナーをぶらぶらしていると、面陳っていうんですかね、表紙を見せるように置かれていたのが『The Time Traveller's Guide to Medieval England』という本。結構な老舗書店だったので、この本屋が推しているんだったらまあ大きく外れはしないんだろうと思って買ってみました。表紙もなんだかかわいいし。リアルな書店ってこういうのがあるからいいですよね。知らなかった本に出合って、手に取って装丁を見てパラパラとページをめくれる、という。
この本は中世という現代から何世紀も前の時代を読者が訪れたらどんなものを見るのだろうか、ということをビビッドに描写してくれています。As soon as you start to think of the past happening (as opposed to it having happened), a new way of conceiving historiy becomes possible.とも言っていますね。a travel book about a past age allows us to see its inhabitants in a sympathetic wayだそうです。なのでこの本、内容は昔のことですが現在形で書かれています。それだけじゃなくて文体も軽めなので、読み進めるのが楽でした。例えば当時のフットボールがかなり危険で死人が出たこともあるという話の後に、When medieval people roll on the ground during a football match, you can be sure they are not feigning an injury in the hope of being awarded a penalty.とかね。
ただ『The Time Traveller's Guide to Medieval England』ってタイトルですが、中世は範囲が広すぎるため、内容は14世紀に集中しています。騎士道や一騎打ち、マナー、芸術、建築などからして、「中世」とは何かという一般的なイメージに14世紀は一番近いからだそうです。14世紀は、内戦や大聖堂の建築、最後の十字軍といった諸々、それに何といっても黒死病で、中世の縮図とも見なしうるであろうとも言っています。まあ、イングランドに限った話のようですが。
当時の習慣や建築物、旅行の仕方、宿泊先、食事、賃金、健康と衛生、法律など内容は多岐にわたっていて、当然ですが軍事的なことはかなり少なめ。you would be crazy to think you could engage a fourteenth-century man in combat and have a chance of surviving. Most of them are much stronger than you.なんて書いているし。
でもjoustingのことについても触れらています。joustingって一騎討ちって訳せばいいんですかね。そこのところでこんな一文がありまして。
a Byzantine princess, seeing a massed charge of Frankish knights for the first time, exclaims that they could punch a hole in the walls of Constantinople
これってアンナ・コムネナのことですよね。いやー、14世紀のイングランドについて書いた本でアンナ様の言葉が出てくるなんて思ってなかったので嬉しい。
この筆者、『The Time Traveller's Guide to Elizabethan England』って本も出していてBBCのテレビシリーズにもなったそう。日本語で『シェイクスピアの時代のイギリス生活百科』って訳も出ているみたいですね。『The Time Traveller's Guide to Medieval England』も訳が出ないかな。知らない単語が多すぎて…。でも単に単語を日本語に置き換えられても、説明がないと結局わからないから、訳注が充実したものがいいなあ。

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