Cerignolaと書いて「チェリニョーラ」と読むらしい。南イタリアにある町である。南伊ナポリ王国をめぐってスペインとフランスの衝突が続ていたイタリア戦争中の1503年、スペイン軍の軽騎兵の妨害に悩まされながら、フランス軍は斥候も出さずにチェリニューラの町に向かって進んでいた。陽も傾くころになってようやく町近くについたとき、スペイン軍を見つける。フランス軍を率いていたヌムール公は翌朝を待って攻撃しようと考えていた。そうすれば後続の砲兵部隊も追いつくうえ、長い行軍と暑さで疲弊している歩兵部隊も休養が取れる。だが配下の諸将は攻撃を主張した。これまでどおり、強力な一撃で敵を破ればいい。そのあとでぐっすり眠れる。だが、スペイン軍の前に掘られた深い堀に誰も気がついていなかった。攻撃を告げるラッパの音が鳴り、フランス軍が突撃を開始する…。
このチェリニョーラの戦い当時のイタリアはルネサンス華やかなりしころで、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチなどが活躍している。一方、ミラノ公国やヴェネツィア共和国、ローマ教皇領など政治的には分裂状態にあった。この戦いの約30年後にはマキャヴェリが「君主論」でイタリア統一への願いを述べていたりする。
チェリニューラの戦いは初めて火器が勝敗を決した戦闘と呼ばれているそうで、スペイン軍が火器に加えて野戦築城を効果的に利用し、精強を誇ったフランス軍とスイス傭兵を打ち破った。長篠の戦いの約70年前のことである。
ゲームはMen of Ironシリーズの4作目となるArquebus。年代的には同シリーズのInfidelが11~12世紀で、Arquebusは15世紀末から16世紀半ばと400年ほどの違いがある。どれだけ雰囲気が違ってくるのかと思い、InfidelのあとにArquebusで遊んでみることにした。
Arquebusに入っている8つの戦いのうちチェリニョーラを選んだのは、もちろん火器が初めて勝負を決した歴史的な戦闘だから、ではなく、単にマップが小さくユニット数も少ないため楽そうだからである。まずはゲームに慣れないとね。
マップを見るとditch(壕)とrampartがスペイン軍(白っぽい黄色のユニット)の戦列に沿って地図をほぼ縦断している。
rampartって何?と思って調べたら「塁壁」という意味だそうで、塁壁って何?と思って調べたら「砦の壁」だそうだけど、とにかく壕と壁でスペイン軍は守られている。
これがまた強力で、接敵してもすぐには攻撃できず、白兵戦をしかけるためには次の活性化まで待たないといけない。だがその前に防御側の射撃で損害を受けている可能性大。しかも白兵戦を仕掛けるときも混乱チェックがあって、基本的に50%の確率で攻撃側は混乱してしまう。さらに地形効果でサイの目マイナス2。もしかなりの幸運に恵まれて、自軍は損害を受けずに防御ユニットを退却させたとしても、戦闘後前進の際にまた混乱チェックがある。
……と、ルールを読んでいるだけで攻撃をするが失せてくる。よくまあフランス軍はこんな強固に守っている敵に攻撃を仕掛けたもんだ。その日は埃っぽくて、実際に近づくまでは壕や塁壁がよく見えなかったらしいけど。
ただよく見ると、スペイン軍の左右両翼の守りが比較的弱い。壕だけで塁壁はないし、守っている部隊も白兵戦に弱い投槍騎兵(Genitor、GE)とかだ。両翼から攻撃し、スペイン軍が中央から歩兵を引き抜かざるを得ないようにして、守りが手薄になったところを突破する。おし、これでいこう。余裕で守れると思っているスペイン軍プレイヤーの鼻をあかすのだ。ソロプレイだけど。
つづく
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