2022年8月31日水曜日

(幕間)イタリア戦争関連の書籍

  ラヴェンナの戦いがあったイタリア戦争って全然知識がない、と思って本を探してみた。塩野七生の作品、例えば『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』『わが友マキアヴェッリ』とかこの時代を扱っているものはいくつかあるけど、イタリア戦争全体を通してのまとまった本が見つからない。ちなみにチェーザレと言えば『チェーザレ 破壊の創造者』っていう漫画もありますね。

 佐藤賢一の『ヴァロア朝』では数十ページにわたってフランス視点で書かれている。ほかにも『イタリア史10講』とか『戦闘技術の歴史3 近世編』とか、イタリア戦争に少し触れている本があることはある。

 アドテクノスのラヴェンナの戦いは昔知人が持っていたのを見せてもらったことがあって、ヒストリカルノートが充実していた記憶がある。気軽に買えないのが難かな。ヤフオクでも時々出品されているのを見るし、手に入れればいいのだろうけれど。そういえばタクテクス誌でもラヴェンナの戦いの記事があった記憶が。


 Arquebusのルールブックには資料としていくつか本が挙げられてあって、最後に「…笑わないでね、ウィキペディア…」と書いてある。いや、笑いませんよ。いつもウィキにはお世話になっているし。

 ウィキと言えば、創設者ジミー・ウェールズが10数年前に来日したとき、誰でも編集できるから内容の信ぴょう性に欠けるのではとの質問に対し、

「確かにその通りだ。でも何かを調べようと思った時に、出発点としては最適なのだ。自分の知らない事柄については何から調べていいかわからないが、まずはウィキペディアを読み、そこに書かれている情報について他のソースにあたっていくことができる」

という感じの返答をしていて、ほう、なるほどね、と思った記憶はある。ちなみにジミーは結構イケメンでした。それと確か同じ年にユーチューブの共同創設者二人も来日していたな。日本のテレビ局が新興のユーチューブを敵対視というか警戒視していた雰囲気が懐かしい。


 でもね、たしかにウェブ上でイタリア戦争についていろいろ読めるけど、一冊まとまったものを読まないとなんというか落ち着かないんですよね。で、日本語の本はあきらめて、アマゾンで『Italian Wars』という本を見つけて買ってみた。Hourly Historyというところから出ていて、忙しい人のために1時間でさっと読めるシリーズらしい。

 本自体は薄っぺらくて、アマゾンによると45ページしかない。アマゾンによるとというのは、この本にはページ番号、いわゆるノンブルがつけられてないのである。ノンブルがついてない本なんて初めて見た。しかも最後のページには「Printed in Japan 落丁、乱丁本のお問い合わせはAmazon.co.jpカスタマーサービスへ」と日本語で書かれている。もしかしてアマゾンジャパンが印刷してんの?

 といささか訝しく思いながら読んでみると、中身はまともそうで、わかりやすくまとまっていました。疑ってごめんなさい。イタリア戦争の流れをざっくりと知るには、自分が読んだ中ではこの本が一番いいかな。



戦争ものの定番、OspreyのMen-at-Armsシリーズには『Renaissance Armies in Italy 1450-1550』というのがある。年表には結構説明が書かれているので、イタリア戦争の流れを追っていくのに便利。それに各国の軍隊の特徴も解説してある。なによりページ数が少ないうえイラスト中心なので読むのが楽である。Ospreyといったら『Pavia 1525』とか『Fornovo 1495』など、Arquebusに収録されている戦いについての本も出ている。


 Arquebusのルールブックで資料として挙げられている本のなかには『The Art of War in Italy 1494-1529』というのがあって、騎兵の章とラヴェンナの戦いについての解説の部分の和訳が『私家版近世欧州軍事史備忘録(別冊2)イタリア戦争の戦争術1494-1529 第四章 騎兵』というタイトルで出ていて、小さなウォーゲーム屋でも手に入る。でもなんで全部訳さなかったのかな。百数十ページしかない短い本なのに。

 戦略、歩兵、騎兵、砲兵、戦術などの章に分かれていて、各章10数ページしかないので読む負担が少ない。けど、イタリア戦争全体の流れを知ってから読んだほうがいいかも。時代的には、書名にもあるようにイタリア戦争の前半を扱っている。


 ほかに、これもルールブックに資料として挙げられている『The Renaissance at War』という本は、前半がこの時代の戦術や武器、制度について書かれている。テルシオにつながる歩兵の部隊編成とか、兵に月いくら払っていたかとか。後半は歴史。対トルコ戦争、イタリア戦争、宗教戦争についての章からなる。ラヴェンナの戦いの戦況図も載っていてイメージがしやすくなった。


 あとCharles Oman著の『A History of the Art of War in the Sixteenth Century』という本のBook Ⅰ~Ⅲがイタリア戦争について書いている。枕にするのにちょうどいい感じの分厚い本なので全部読む気はしないけど、イタリア戦争関連の部分だけ拾い読みしてみた。古い本ですけどね。イタリア戦争当時の戦略と戦術の章、それにイタリア戦争後期における戦術の変化の章が面白かったな。


 それとこれは忘れちゃいけない、C3i誌31号にWeaponary in Arquebusというリチャード・バーグが書いた記事もありましたね。みなさんも他に手ごろな本を知っていたら、教えていただければうれしいです。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)


0 件のコメント:

コメントを投稿

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...