ラヴェンナの戦いでは、野戦陣地にこもったスペイン軍に対してフランス軍が攻撃。まずは両軍の砲撃戦が繰り広げられた。スペイン軍の歩兵は低地に身を潜めており被害は少なかったものの、軽騎兵が砲撃に耐えられなくなり攻撃をしかける。一方フランス軍も、敵の砲撃範囲内に布陣してまったランツクネヒトが前進して攻撃を開始。血みどろの戦いが繰り広げられるが、スペイン軍の軽騎兵集団を撃退したフランス軍騎兵が敵陣地の側面から後方に回り込み勝負を決めた-というのがだいたいの流れのようだ。
両軍とも被害は甚大で、多くの指揮官が死亡したり捕虜になったりしている。フランス軍の総指揮官のガストン・ド・フォアはまだ20代前半の若さながらその将才を認められていたが、この戦いで戦死した。でも、戦いの帰趨が決まった後で敵の残存歩兵に少数の騎兵で突っ込みそこで槍衾にやられてしまったそうで、若くて血気盛んなのはわかるけど総大将なんだから自重してください。
この戦いでのフランス軍の勝因は、各部隊の連携にあるらしい。総指揮官ガストン・ド・フォアのもと、歩兵、砲兵、騎兵が連携して攻撃したが、スペイン軍にはそれが欠けていた。スペイン軍の陣地構築を指揮したペドロ・ナバロは防御に固執していたのに、砲撃を受けた軽騎兵部隊は攻撃をしかけてしまっている。 一方、フランス軍は各部隊が機を逃さず動いており、砲兵の一部は戦闘開始後に渡河して敵の側面から砲撃を浴びせかけ、スペイン軍の敗因の一つとなった。なお、ペドロ・ナバロはこのシナリオでスペイン軍歩兵部隊の指揮官になっている。
フランス軍の部隊間での連携を反映してか、このシナリオのフランス軍は指揮については特別ルールがある。Men of Ironシリーズでは基本的に各部隊に指揮官がいて、指揮官の活性化値(Activation Rating)を使って部隊(Battle)ごとに活性化させる。だがこのシナリオではフランス軍は最大3部隊を同時に活性化できるのだ。フランス軍の活性化には指揮官の活性化値ではなく活性化表(French Activation Table)を使うのだが、同時に活性化する部隊が多いほど失敗する可能性は高くなっている。フランス軍は総兵力では勝っているものの9つの部隊に細分化されているため、慎重に1部隊ずつ動かすだけでは数の優位を生かせない。リスクを冒してでも一気に複数の部隊で攻撃にでるかどうか、フランス軍としては悩まやしい局面が多々生じるはず。
攻めるフランス軍にとって厄介なことに、スペイン軍の前面には戦列に沿って壕(Trench)と土でできた塁壁(Rampart)が続いていて、防御に有利な態勢にある。壕・塁壁越しの攻撃はDRM-1と攻撃側に不利なうえ、フランス軍が壕越しに白兵戦(Shock)を仕掛ける場合、混乱チェックをしなければならない。そのため、フランス軍プレイヤーは左右両翼の壕の切れ目、特に左翼(マップ下方)に攻撃の主軸を置くことにする。この方面にはスペイン軍の軽騎兵部隊しかいないうえ、比較的スペースが広がっており、フランス軍の数の優位を生かせるからだ。ただそれだけだと攻撃が単調になり敵にとって対応が容易になるため、砲撃、そして騎兵部隊の攻撃と連動しての歩兵の攻撃が欠かせない。
そのような方針のもと、フランス軍は左右両翼の砲兵二部隊で砲撃を開始し、スペイン軍に損害を与える。さらに右翼(マップ上方)のクロスボウ部隊(灰色)をランツクネヒト(茶色)の前に展開。ランツクネヒトの正面にはスペイン軍の砲兵(緑)が並んでいるため、敵砲兵の射線(LOS)をさえぎってランツクネヒトが砲撃を受けないようにするためだ。ユニットが壊滅すると課される敗走ポイント(Flight Point, FP)はユニットの種類によって違い、FPが大きいものほどいわば高価なのだけれども、ランツクネヒトは5もあるがクロスボウは2。クロスボウが犠牲になってもランツクネヒトを守る目論見である。
ランツクネヒトは敵から砲撃を受ける前にさっさと前進して白兵戦をしかけるという選択肢もあるが、正面のスペイン軍は砲兵とスタックしてGun Wagonが並んでいる。ラヴェンナの戦いの百年近く前、15世紀前半のフス戦争で馬車や荷車に防御を施した木製の装甲車と言えるものが登場したが、このGun Wagonはその流れを汲んでいるらしい。イタリア戦争関連の本を読んでみると、当時使われていた車両は大鎌のような刃や槍のようなものが突き出ていて敵歩兵の突進を妨げ、木の板に守られた火縄銃兵が射撃をする、というものだったそうだ。
フランス軍のランツクネヒトが攻撃する場合、前進して敵陣にとりついた時点でGun Wagonから対応射撃(Reaction Fire)を受け、60%の確率で混乱状態になる。その後にランツクネヒトも射撃(Active Fire)できるが、Gun Wagonへの射撃はその防御力を反映してかDRM-2と不利。さらに白兵戦攻撃でも壕・塁壁越しの攻撃なので混乱チェックがある。
ランツクネヒトが混乱状態で正常の状態のGun Wagonを壕・塁壁越しに白兵戦で攻撃した場合、諸々の修正を合算するとDRM-1と不利になる。もし白兵戦での攻撃に成功してGun Wagonと砲兵を排除しても混乱状態だったら戦闘後前進はできないため、敵の歩兵がその穴を埋めてしまうだろう。そのためフランス軍は、ランツクネヒトの投入は時機を待って行うことにする。それまでクロスボウが犠牲になるがやむを得ない。
「えー、クロスボウ部隊を弾除けにするなんてひでー」と非難するスペイン軍プレイヤーに対し、「勝たなきゃ意味ねえよ」と応えるフランス軍プレイヤー。
「一将功なりて万骨枯る、とか言われても意に介さず。というか、あんたもフランス軍だったら同じことするんじゃないの」
「……はい、します」
フランス軍はさらに継続活性に成功。最右翼(マップ上方)の重装騎兵(Men-at-Arms, MM)に側面を固めさせる。フランス軍の右翼はMM以外は砲兵しかおらず防御力に乏しい一方で、正面に敵のMM部隊がいるため、敵が陣地から出てきて突撃をくらうと苦戦しかねないからだ。
つづく
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