2023年1月28日土曜日

仏ビジネススクールでウォーゲーム

  今月発売になったVae Victisの最新号、166号の付録ゲーム「Velikié Louki 1942-43」はヴェリキエ・ルキの戦い。確かコマンドでもこの戦いは付録ゲームになった記憶があるなあ。

 7ページのヒストリカルノートもついていて東部戦線のことを知らない自分には勉強になりました。でもこの号で目を引いたのが、「Des étudiants s'invitent au combat(学生たちが戦闘に参加)」という記事。Conflict of Heroes: Stormes of Steel - Kursk 1943」というサブタイトルがついていて、記事冒頭の写真には「Conflict of Heroes」が広げられたテーブルを半分囲むように20代前半ぐらいの6人が写っているんだけど、そのうち5人がなんと女性なんですよ。

 いや、若い女の子に目がいったとか、女子5人に囲まれた男子にこんちくしょーと言いたくなったとか、そういうのじゃないんですよ。そうじゃなくて、高齢化が進んでいるであろうウォーゲーム業界、しかも圧倒的に男性プレイヤーが多いはずなのに、どうして?! と思ってしまったんですよね。



 読んでみると、パリの大学のビジネススクールでプロジェクトの一環として行われたものらしい。ちなみにそこのマネジメントコースでは多くのウォーゲームが使われてもう4年になるとか。僕も入学したいなあ。

 記事になっているのは、ウォーゲームのことをほとんど知らない学生を集めて、プレイしてみたらどういう感想をもつのか、というセッションだったそうだ。Twilight's Last Gleamという4人でできるシナリオをやったそうで、二人はオブザーバー。4人のプレイヤーそれぞれの感想が書かれているんだけど、女子も楽しんだようでほっとしました。みなさん、女の子にはConflict of Heroesが受けるみたいですよ。

 ……あ、いや、なんかセクハラおやじみたいになってきましたが、性別とか年齢のことを言いたいんじゃないんですよ。そうじゃなくて、大学の研究でウォーゲームが使われているのは、このホビーが好きな一人としてうれしいです。

 プレイした4人は、ルールの説明を受けているときは難しそうに感じたり、カウンターに書かれている情報がプレイ上どういう意味を持つのかと、最初は簡単ではないように感じたようだけど、プレイしているうちにみんな集中してきて、共同作戦も行えるようになったみたい。よかったよかった。


 ところで今回のVV付録「Velikié Louki 1942-43」はターン=5日で11ターン、1へクス=2.5km、1ユニットは基本的にドイツ軍が連隊、ソ連軍が旅団~師団。1942年11月24日から1943年1月17日をカバーしていて、ソ連軍の攻勢からドイツ軍のヴェリキエ・ルキ救出作戦が失敗して守備隊が降伏するまでの期間となっています。

 簡単なルールで、作戦級の基本がわかっていたらすぐにプレイできるんじゃないかな。実際、同じシステムを使ったものがVV98号のOpération Nordwind、それにVV120号のColmar1945という付録ゲームで出ているけど、BGGでは両ゲームとも難易度2.00となっていて、かなり簡単みたい。

 ヴェリキエ・ルキは史実でも包囲された後かなり持ちこたえたそうで、このゲームでも東西2へクスからなるヴェリキエ・ルキの守備戦力はマーカーで表されるだけど、そのマーカーがFestung OUEST, Festung ESTと独仏表記になっていたのが個人的にはツボでした。



 あと、たまたまスペインのALEA誌も最新号は東部戦線だったんですよ。Twitterでもつぶやいたけど、サブタイトルが「北のタイフーン」と、VV166号の「北の小スターリングラード」というサブタイトルと結構似てますよね、ということで仲良く並べて写真を撮ってみました。両方ともルールとヒストリカルノートを読んだだけでまだプレイしていないけど、そのうち時間ができたら遊んでみようと思います。

2023年1月9日月曜日

「ヴィンランド・サガ」シーズン2がいよいよスタート! で、ヴァイキングならこの映画も

 「ヴィンランド・サガ」シーズン2が今日から始まりますね。いやー、楽しみ。ところでヴァイキングの最近の映画と言えば「The Northman」。昨年アメリカなどで公開したけど、日本では「ノースマン 導かれし復讐者」というタイトルで1月20日から公開するみたい。「ヴィンランド・サガ」とのコラボ企画もやっていますね。


 その「The Northman」ですが、日本で公開になるとはつゆ知らず、結構長時間乗る飛行機の中で、あー暇だなーと映画のリストをスクロールしていたらあったので見てみました。

 いやもうね、知っていたけど、とにかく血で血を洗う復讐劇。さわやかな要素がみじんもない。トルフィンを見習えよと言いたい。



 今のロシアかウクライナの方の集落を襲撃して、住民は捕まえて奴隷にしちゃうところもヴァイキング。奴隷を売り払う先として、ウプサラ、キエフ、コンスタンティノープルとか言っていて、ヴァイキングの商売がよくわかります。生きのいいやつはアイスランドに連れていくとかって感じで選別していたな。あ、ウプサラというのはスウェーデンの古都ですね。しかしコンスタンティノープルはミクラガルドって言ってほしかったなー。


 ちなみに映画の主な舞台はアイスランド。となると敵役はやっぱりハーフダン、ではありません。別の名前の人です。この映画を見ていると、武器だけでなく住居、生活道具それに祭祀なんかも、いろいろと知っている人はもっと楽しめるんだろーなーと思いました。古ノルド語の呪文みたいのも確か出てきてたし。

 祭祀と言えば、グリーンランドのレイフさんはクリスチャンだし、グズリーズも十字架を下げているよね。ヒルドさんもクリスチャンのはず。でもこの映画の時代のアイスランドではまだまだキリスト教が浸透していなくて、奴隷として連れてこられたであろうクリスチャンをののしる言葉が出てきます。「The Northman」の時代設定は10世紀末でトルフィンたちの時代の20年ほど前のようですね。


 ところで映画の中ではkingとかkingdomとか言っていて、アイスランドに王がいるような印象を与えるんだけど、中世のアイスランドって王がいたの? あの時代のヨーロッパではまれに見る民主的な社会だった、みたいなことをどこかの本で読んだ覚えがあるんだけど、自分の記憶違いかな。シング(民会)で自治を行っていて、全島集会のアルシングも開かれていて、アルシングのときには演説する人はログベルぐっていう石の上に立ってやっていたはず。たしかトルフィンがヴィンランドへの移民参加希望者を募るときも、この石の上に立って話していたような。

 でもまあ、The Northmanはフィクションですからね。王の息子だった主人公アムレートが復讐をする、というほうがストーリー的には盛り上がるんでしょうな。一応英語のWikiでは、アムレートの父はアイスランドではなくて架空の島の王で、仇がアイスランドで農場を営んでいてそこに復讐しに行く、みたいな説明になっていたけど。

 というか、日本語字幕で見てみたいっす。ヴァイキングに興味がある人は見ておいて損はない映画だと思います。


*後日また飛行機に乗った時にこの映画を見返したんだけど、時代を百年ほど間違っていました。そりゃまだまだアイスランドにはクリスチャンはいないですわ。あとkingの件ですが、主人公の仇はノルウェイ王に王国を追い払われて今じゃアイスランドで羊を飼ってるぜ、みたいなセリフがあったので、アイスランドに王がいるという設定ではないようです。このセリフ、聞き逃してたのかな。ほんと、日本語字幕で見たいです。

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...