2023年6月11日日曜日

スペインが熱い! 無料・デジタルのウォーゲーム誌「CLIPEADOS」創刊

  スペインのウォーゲーム界、最近元気ですよね。あの元気さは謎ですよねって、日本のウォーゲーム関係者の方が以前言ってたんですけど、ほんと、盛り上がっています。SNAFUやNAC Wargamesといったパブリッシャーが意欲的にゲームを出しているだけじゃなく、ウォーゲーマーたちが活発に活動している感じなんですよね。つい先日はマドリード近郊でVassal Forever 2023というコンベンションが開かれたし、今年11月にスペイン北東部の街サラゴサで開かれるBatalladores2023なんか、申込開始から約一週間ですでに270人の参加申込があって、あと残り参加枠わずか5なんてアナウンスがありました。半年先のイベントでしょ。スペインのウォーゲーマーはすげーなー、と。

 しかも、多くのウォーゲームのコンベンションが開催されているんですけど、それがマドリードとか特定の大都市だけじゃなくて、国内のあちこちで開かれている印象なんですよね。

 今年の1月には南西部、ポルトガル近くのバダホスでBellota Conというのがあったし、3月にはバスク地方のビルバオでCinturon de Hierroっていうイベントがあって、「300」のトーナメントも行われたみたい。そこにこのゲームのデザイナー御大がリモートで降臨、とかあると面白かったんじゃないかなーと夢想してしまいます。ちなみにCinturon de Hierro(直訳すると鉄の帯)っていうのはスペイン内戦中にビルバオの周囲に構築された防御線のことのようです。あと、9月末にはスペイン南端部のカディスでPax Lucidaっていうイベントが開かれます。

(お隣のイタリアでは9月中旬にVenCon 2023というのがヴェネツィアであります。VenConは今年で15回目らしい。フライヤーみたいなものには、六文銭に赤備えの真田幸村?と、「ラスト・サムライ」の謙さんがあしらわれています。)

 サラゴサで開かれるBatalladores2023を主宰しているウォーゲームクラブClub Batalladorは、この5月に新しいクラブハウスをオープンしています。うらやましい…。


 と、元気いっぱいのスペインのウォーゲーム界なんですが、つい先日、「CLIPEADOS」というウォーゲーム誌が創刊されました。無料のデジタル誌なので早速ダウンロードして読んでみました。



 PDF形式で35ページ、巻頭にはVUCA SimulationsのPatrick Gebhardt氏のインタビュー。他には、HEXASIMのEagles of Franceシリーズについて3人がエッセイを書いていたほか、「Twilight Struggle」の中国人ゲーマーの戦略紹介、GMT「Almoravid」のファーストインプレッションなどが載っています。 あと、NAC Wargamesの新作ナポレオニック「Valls 1809」のMarc Aliaga氏が書いたデザイナーズノートもありました。

 VUCA SimulationsのPatrick Gebhardt氏のインタビューは、「Donnerschlag」や「The Chase of the Bismarck」といったGebhardt氏自身がデザインしたゲームについて話しています。でも個人的に面白かったのは、ツイッターでもつぶやいたけど、

価格を下げるために製品の質を落とすことはしない。デザイナーにはコンポーネントの制限をかけないということをはっきりと言っている。自分たちのゲームには常にベストのものを求めているんだ

と言っているころ。Gebhardt氏、熱いですなー。

 あと、ウォーゲームがもっと知られるためにはビジュアル的にアピールするゲームが鍵となる、とも言っています。世界中から新しいゲーマーをひきつけている理由の一つが、グラフィック要素だと考えているそうです。

 「CLIPEADOS」はこちらからダウンロードできます。

https://mesadeguerra.com/clipeados-mesa-de-guerra-magazine/

全部スペイン語で書かれていますが、スペイン語が読めなくても大丈夫。Google翻訳やらDeepLやらAIやらがサクッと自然な日本語に訳してくれますよ。知らんけど。ちなみに、Clipaedosというのはカウンターなどが切り離された、という意味でも使われる言葉で、みんなカウンター切ってプレイしようぜ、ということなんでしょうかね。


 「CLIPEADOS」を出したSergio Ortega氏はMesa de Guerra(直訳すると戦争のテーブル)というサイトを運営していて、ウォーゲームの情報やインタビューなどを載せている。AlmoravidのデザイナーVolko Ruhnkeのインタビューが個人的には目を引きました。あと、Ortega氏は「Twilight Struggle」がお好きのようですね。


 この「CLIPEADOS」、ツィッターでは歓迎するツイートが結構あったんですけど、似たような企画で2号しか続かなかったものがあるからうまくいくといいね、なんてちょっと不吉なコメントもありました。でも、何事も始めることが大切ですよね。自分もウォーゲーマーの一人として、これからもウォーゲーム界が盛り上がっていってほしいと思います。

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