前回紹介したゲーム「Land and Freedom」をやるにあたって、あまりにもスペイン内戦について知らなすぎるので関連書籍を探してみた。だって、スペイン内戦って言ったらフランコとコンドル軍団ぐらいしか思い浮かばなくて、WW2の前に各国が兵器や戦術を試した、ぐらいの印象。ドイツのポーランド侵攻の数か月前までやってたなんて頭からすっかり消えていましたよ。
そこで見つけたのが、アントニー・ビーヴァ―の『スペイン内戦』。アントニー・ビーヴァーと言ったら『スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943』や『ベルリン陥落 1945』などWW2の本をいくつか出していて、ウォーゲーマーだったら読んだことがある、もしくは読みたいと思ったことがある人、多いんじゃないかな。
でも実際に買ったのは原著の『The Battle for Spain』のペーパーバック版。だってこの本、上下巻で合わせるといいお値段がするんだもん…。みすず書房さんすみません。
読んでみると人名やら組織名やら初見のものがふんだんに出てきて大変でした。全然知識がない状態でいきなりこの本を読むのは結構無謀かも…。1936年に反乱が起こって以降は軍事的な内容が結構出てくるので読む楽しみのほうが苦労を上回りましたけどね。それに知らないことだらけってことは逆に言うと新しいことをいろいろと勉強できたんでよかったんです。…と、ポジティブシンキングっぽく自分に言い聞かせておきました。「第五列」はスペイン内戦で生まれた言葉だって知らんかったわー。
内容は共和国側と反乱軍のどちらかに偏ることなく、バランスの取れた既述のような印象を受けました。スペイン内戦前の2月の選挙で右派が負けたため、8月の軍部の反乱につながるんですけど、左派は2月の選挙で負けていた場合、その結果を受け入れたのだろうかと疑問を呈しています。それに、リベラルや中道左派も憲法を順守していたわけではないってことも指摘していますね。
導入部で、スペイン内戦は左派と右派の衝突として描かれることが多かったが、これはミスリーディングな単純化で、中央対地方自治、それに権威主義と個人の独立というもう二つの対立項も考えないといけないって書いてあったんですけど、うーん、ややこしい。でもバスクやカタルーニャが独自の動きをしていることも結構理解しやすくなりました。それにね、たしかにややこしいんですけど、この本の一番最後はhistory, which is never tidy, must always end with questions. Conclusions are much too convenient.って言葉で結んでいるので、単純化して結論を出すみたいなことをしないのが筆者の精神に即しているんでしょうね。
あとアントニー・ビーヴァ―はソ連崩壊後のロシア語の資料にもあたっているらしく、ソ連から参加した指揮官についてもわりと書かれている印象。のちのWW2で活躍する指揮官が結構いますね。それと、ソ連から多くの軍事援助とともに指揮官も派遣されたけど、1937年にトハチェフスキーが粛清されてからはソ連軍の指揮官はトハチェフスキーの軍事理論に従うことを恐れるようになり、縦深攻撃をやらなくなったっていう指摘も面白かったです。
スペイン内戦では共和国側で女性兵士も活躍していて、ゲーム「Land and Freedom」のボックスアートも女性だし、映画「Land and Freedom」も女性たちが主人公と一緒に銃を持って戦っていますね。まあ、その後女性が兵になるのが禁止になったりするんですが。
ビーヴァーの『スペイン内戦』でも女性指揮官が出てくるシーンがあって、泥濘の中で長時間の行軍で疲弊していた共和国軍部隊がイタリア軍に攻撃され必死に防戦したとき、女性が指揮する機関銃中隊が持ちこたえたおかげで援軍が救助にくるまで敵の攻撃をしのいだ、っていうのがあるんですけどね。その共和国軍部隊の指揮官が機関銃中隊の女性指揮官に謝意を示そうと走っていったところ、
only to find her calmly combing her hair while looking into a fragment of broken mirror. (彼女は割れた鏡の破片を覗き込みながら静かに髪を櫛で梳かしていた)
←惚れてまうやろ~!!!
スペイン語のツイートでこの本への批判もあったけど、とりあえずスペイン内戦に興味のあるウォーゲーマーだったら読んでおいて損はないんじゃないでしょうか。ただ自分のようにいきなりではなく、何かしらの基礎知識を得てから読むのをおススメします。
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