アントニー・ビーヴァ―の『スペイン内戦』は面白かったんだけど、結構分量があって知識のない自分は消化不良気味。もうちょっと簡単にスペイン内戦の流れがわかるものはないかなと思っていたら、ゲーム「Land and Freedom」の参考資料に『The Spanish Civil War: A Very Short Introduction』っていうのがあったので読んでみた。デザイナーのAlex Knightがツイッターで勧めていたのを見たことがあったし、版元もオックスフォード大学出版なので内容的にもちゃんとしているかなと。
『The Spanish Civil War: A Very Short Introduction』は新書ぐらいの大きさで、本文は150ページしかなく、まさにvery shortですよ。なんだよ、最初からこれにしておけばよかった。見栄はっていきなりビーヴァ―の分厚い本なんか読むんじゃなかったよ…。
と気楽な気持ちで読み始めたんだけど、やっぱり内戦が始まるまでのスペインの政治状況はややこしいですわ。というか、組織や人物を把握していないので、頭の中が混とんとしてきました。まあ、アントニー・ビーヴァ―の本と同様、この本の最後にも単純化はしてはいけないということを繰り返し書いていたので仕方ないんでしょう。安易に類型化しないように努めるというのが歴史に対する真摯な態度なんでしょうな。
それはさておき、ページ数が少ない割には共和国側の描写にボリュームを割いている印象。ゲーム「Land and Freedom」で共産主義者のカードにAbraham Lincoln Brigadeっていうカードがあって、スペイン内戦に義勇兵として参加したアメリカ人部隊のことらしいけど、へ―そんな部隊があったんだと思っていたらこの本でも触れられていました。もちろん共和国側のことだけでなく、The making of rebel Spainという章を設けてフランコ側のこともちゃんと書いていますけど。
あと、軍事よりも政治や社会、文化面の記述が結構ありました。女性の役割とか、プロパガンダについてとか。でも例外的に共和国軍のVicento Rojoっていう指揮官を称賛していてるんだけど、そんなに優秀な指揮官だったんですかね。スペイン内戦のゲームは「Land and Freedom」以外持っていないからウォーゲームでどういう評価がなされているのか知らないんだけど。優秀な指揮官と言えば、アントニー・ビーヴァ―の『スペイン内戦』では反乱軍側のJuan Yagüeが一番できる子みたいなこと書いていたな。
『The Spanish Civil War: A Very Short Introduction』を読んで意外だったのが、内戦後から現代までのスペインにおける、スペイン内戦の意義の変遷について結構書いているという点。本全体の2割以上のページを使っていて勉強になりました。冷戦期から現代にかけてのスペインって全然知らないし。しかしまあ、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』でもファシスト側のブルジョアたちに村人が集団リンチのようなことをするシーンがあったけど、共和国側に付いた人たちへのフランコ政権の迫害もひどいもんで、しかもフランコの独裁は35年も続いたわけで、内戦がスペイン社会に深い傷跡を残したことは容易に想像がつきますな。
というわけで、軍事面にとどまらないスペイン内戦の概要をさくっと知るにはちょうどいい本なんじゃないでしょうか。2005年出版なんで比較的新しいし。これを読んでからゲーム「Land and Freedom」をやるとさらに盛り上がると思います。
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