スペイン内戦をテーマにした「Land and Freedom」。叛乱をおこした軍部に対し、プレイヤーたちは協力して共和国を守らないといけないけれど、その一方で自勢力の拡大を図らないと勝利できないというゲーム。通常のウォーゲームだったらファシストvs共和国派になると思うんだけど、デザイナーのインタビューとか読んでいたら、信用できない味方との駆け引きがメインになりそう。
早く発売されないかな、と待っていたんだけど、日本語訳付きで小さなウォーゲーム屋さんで発売になった。と思ったらあっという間に完売してしまい、しかたなく版元のBlue Pantherに直接注文。そのときは海外に長期滞在中でその国から注文したんだけど、何週間後かに小さなウォーゲーム屋さんのサイトを見ていると日本語訳付きが再入荷した模様。がーん。もうちょっと待っていればよかった……とショックを受けていたら、その翌日にゲームが自分の手元に届くという何とも皮肉なことに。まあ、仕方ないよね。手に入っただけでも良しとしないと。
というわけで、以下ゲームについての訳語は我流です。よい子のみんなはちゃんと日本語訳付きを買おうね。ちなみにゲームのタイトルはケン・ローチの同名の映画からとられているらしい。映画「Land and Freedom」も見たけど、ケン・ローチの作品ってずーんと重いものが多いっすよね…。
ゲームは基本的に3人プレイのカード・ドリブン。プレイヤーはそれぞれ穏健派(Moderates)、共産主義(Communists)、無政府主義(Anarchists)を担当し、3年間共和国を守ることになる。1年は4ターンに分かれ、各ターン最初にファシストのカードを引いてどこが攻撃されたかを決めた後、各プレイヤーがそれぞれプレイする。ポイントは、共和国が負けたら3人とも負けになってしまうということ。特に首都のマドリードが陥落したら即座に負けなので、史実同様プレイヤー間のいざこざを置いておいて必死に首都を防衛することになる。(なお、このゲームは2人や1人でのプレイも可能)
共和国を守る一方で、無政府主義者は自由化と集団化を推し進め、共産主義者と穏健派は政府のコントロールをめぐって争う。また共産主義者はスターリンの、穏健派は外国からの支援を増やして自勢力に有利になるようにする。でもそうやって自勢力を有利に持っていこうとするとファシストに対する防衛がおろそかになるんだよね。
↑南方前線にファシストの攻撃があって結構やばくなり、穏健派と無政府主義者が協力して防衛したんだけど、そんな二人をしり目に共産主義者はソビエトからの支援を増やした図。「お二人とも防衛ご苦労様。私は共和国のためにスターリン閣下からさらなる支援を…」「このソ連の犬め!」みたいな会話が繰り広げられることになる。
AARを書こうと思ったんだけど、マルチプレイヤーズゲームって記録を取り慣れてなくて、なかなかうまくいかなかった。日本語ルール無しでもプレイできる人間を二人集められたのはいいんだけど、高校生だったのでスペイン内戦当時のヨーロッパの状況を説明しないといけなかったり、「Collectivizationって何?」みたいな疑問が続出して自分も勉強になりました。とりあえず、映画「Land and Freedom」でファシストから解放した村の土地をどうするかという議論のところは見せておいた。10分ちょいだけど、結構教材としてもいいかも。
マップはMadrid, Northern, Aragon, Southernの4つの前線(Front)に分かれていて、ファシストの攻撃はマイナスで表され(逆に共和国側がポイントを使って防衛するとプラスに働く)、マイナス10になった戦線は敗北が決まる。前述のようにマドリードで敗北したらサドンデスだが、それ以外にも2つの戦線で負けたらやはりサドンデス。さらに最終ターンでプラスになっていない戦線が2つ以上あったら共和国の敗北である。ファシストの攻撃は年を追うごとに強力になっていって、なかなか守るのが大変なんですよ…。
ファシストの攻撃はこんな感じ。
フランコの主力は地中海の対岸モロッコに駐留していたんだけど、ナチスドイツから提供されたJu52を使ってスペイン本土に空輸。
おお、我らがコンドル軍団!(←違う)。イタリアの装甲部隊も。ムッソリーニは結構フランコに軍事援助をしたらしい。
独ソ不可侵条約や日中戦争勃発なんてカードも。スペインでファシストと対立は避けたいってことなんですかね、スターリンからの支援が減少する。
対する共和国側。無政府主義者のカードには
あのジョージ・オーウェル。『1984年』の作者ですね。スペイン内戦に義勇兵として行っていて『カタロニア賛歌』とか書いているんだけど、彼が参加していたのがPOUMですよ、POUM。映画「Land and Freedom」を見た人だったら熱くなるでしょう。ジョージ・オーウェルはスターリン主義者を猛批判していて、このカードではソ連からの支援が下がったりする。
で、共産主義勢力には
「POUMの非合法化」なんてのがある。もう、こんなふうに内部対立やってたら共和国を守れないでしょ。
さらにはこの時代、英仏の資本主義勢力が共産化への懸念を持っていたため、それを抑えるため、スターリンの指示で共産主義者は農業の非集団化までやっている。
あとこんなのも。
女性兵士の禁止は、これも映画を見たら、ああ、そういうのあったな、と思いますよね。
それと腹立つのが、
「スターリンが共和国の金塊を取得」ですよ。むかー! スターリンは共和国の金塊を安全なところで保管しなくては、とかいってソ連に運び、しかもそこから武器の代金を支払わせたんだけど、勘定はソ連の思うがままだったらしい。
もちろん、ソ連からの軍事援助もあるけどね。
穏健派には
ほかに、
「メキシコからの軍事援助」なんてのも。スペイン内戦時にソ連を除けば共和国を支援した国ってメキシコぐらいらしくて、武器以外にも食料を送ったので飢餓を免れたりしていたらしい。
と、スペイン内戦のことを知れば知るほど楽しめるんだけど、それを除いても協力とエゴのジレンマで独特の作品になっている。デザイナーはインタビューで、「最下位にいるプレイヤーは、ファシストが猛威を振るう間、見て見ぬふりをするのかそれとも団結して陣営全体のために戦うのかという問いを突き付けられる」なんてなことを言っていたけど、ほんと、そのとおりのゲームですよ。
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