2024年4月10日水曜日

ビザンツ帝国軍vs歴戦の傭兵部隊。フランク重騎兵は裏切るのか、ヴァリャーギ親衛隊は敵の猛攻をしのげるのか Pont de Zompos 1074 - Basileus II(VV162) AAR①

  漫画「アンナ・コムネナ」の第5巻が出ましたね。これでビザンツ関連の話題がまた盛り上がると思うんですけど、おりしもVaeVictisの最新号の付録ゲームは、6世紀東ローマ帝国を扱った「Romanitas」。プレイの例までデザイナーさんが公開してくれていたので和訳したし、ルールも和訳したし、それにソリティアだからプレイのハードルはかなり低いはず。アンナ様より数世紀前のビザンツが、ユスティニアヌス帝のもとでかつての栄光を回復し、その後は四方を敵に囲まれながら帝国を存続させる過程を味わえます。みんなプレイしようね!


 と一人で盛り上がっていたんだけれど、ビザンツの戦いをやりたくなって出してきたのがVaeVictis162号の「Basileus II」。10~11世紀のビザンツ帝国の東方での戦いが5つ収録されている。でもね、5つの戦いのうちビザンツが勝ったのは1つだけなんですよ。そのうちの一つはビザンツが大敗したマンジケルト。この時期の中東方面の戦いでマンジケルトは外せないってのはわかるけど、でも他のはビザンツ勝利のものをもっと選んでくれてもよかったんじゃない、とちょっと文句言いたくなる。


 それはさておき今回プレイするのはZompos橋の戦い。場所は現在のアンカラの南西のほうらしい。西欧からやってきた傭兵隊長ルーセル・ド・バイユールRoussel de Bailleulが反乱、アナトリア地方に自分が支配する地域を打ち立てようとするが、3年前のマンジケルトで大敗してから落ち目のビザンツ帝国としてはそんなことを認めるわけにはいかず討伐軍を送った、というもの。時代的には第一回十字軍の約20年前で、アンナ様のお父様のアレクシオス一世はまだ帝位についていないどころか20歳前後の若造だったころ。

 この戦いでもビザンツ側は負けたんだけど、なんでこのシナリオを選んだかというと、以前読んだ『The Norman Commanders』にルーセル・ド・バイユールが出ていたから。11世紀後半、南伊で急速に勃興したノルマン勢力のもとで戦歴を積んだ後、ビザンツの傭兵となり重騎兵を率いて活躍したというこの人物、いっぺん戦わせてみたくなるじゃないですか。

 このZompos橋の戦いのシナリオは、両軍が相対しての初期配置となる。マップ上には橋はないが、ビザンツ軍は橋を渡り、ルーセル・ド・バイユールの軍勢にむかって進軍してきたそうだ。

 ビザンツ軍はラテン軍(ビザンツでは西欧人のことをラテンと呼んだ)よりわずかに数で勝っているように見えるが、右翼の4ユニットは毎ターン動向チェックがあり、20%弱の確率でしか動かない。しかもサイの目によっては移動のみで戦闘不可とか、2ユニットのみ移動・戦闘可能などかなり制限があるため、ビザンツ軍は右翼をあてにできなくなっている。それに加えて、ビザンツ軍の左翼にいる強力なフランク騎兵は敵に寝返る可能性がある。そのため、ビザンツ軍はかなり不確定要素を抱えながら戦うことになる。

 一方のラテン軍は戦闘力+2となる強力な突撃能力をもつ騎兵が主力。ただし同軍の騎兵はすべて猪突猛進(Impétuosité)の性質を持ち、敵の3へクス以内で移動しようとすると3分の1の確率で一番近い敵に向かって移動してしまう。血気盛んな西欧の傭兵たちが、指揮官の言うことを聞かず目の前にいる敵に突進していくって感じかな。このため、ラテン軍は計算どおりに攻撃できないということが起こりえるのだ。


●第1~第3ターン

 ラテン軍は少しずつ距離を詰めていく。敵左翼にいるフランク騎兵は毎ターン寝返りチェックがあり6分の1の確率で裏切るため、時間を稼いで裏切りが発生したときにここぞとばかりに攻撃すればいいのだ。

 一方のビザンツ軍もじわじわと敵に前進していく。フランク騎兵が寝返る前に攻撃したいが、ビザンツ軍の主力は歩兵で移動力が2しかなく、歩騎が協調して攻撃するためには歩兵の移動力に合わせる必要がある。またラテン軍の騎兵は戦闘力が+2となる突撃が行えるが、そのためには3へクス離れたところから移動してきて攻撃する必要がある。敵の強力な突撃を封じるよう、ビザンツ軍は距離を詰めていった。

 先にしびれを切らしたのはラテン軍の方だった。フランク騎兵が裏切るまで交戦を避けて後退しようにも、敵を眼前にして興奮した騎兵たちが勝手に攻撃をしかけてしまうかもしれない。ならばこちらから打って出る! と早くも第3ターンに攻撃をしかけた。このゲームは「A la charge! (突撃!)」というシリーズの一つなのだが、このシリーズでは1.5対1の低比率でも3分の2の確率で攻撃が成功するため、積極的に攻撃したほうがいい場合が多い。


 マンジケルトで惨敗したビザンツ帝国など恐るるに足らず。俺たち傭兵がいなけりゃろくに戦争もできないだろうが! 一斉にビザンツ軍に襲いかかったラテン軍。敵中央のヴァリャーギ親衛隊の奮戦で指揮官ルーセルが撃退されたものの、ビザンツ軍に次々と損害を与えていった。


つづく

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