ナポレオニックはDSSSMさんの紹介されている書籍を読むのが多いんですけど、ナポレオニックの本って大量にあるから初心者の自分が選ぶよりも詳しい人が紹介しているものから手を付けるのがいいかな、と思っています。で、今回はこんなポストを目にしまして。
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— 松浦 豊(Matsuura Yutaka) (@DSSSM00) February 24, 2026
ナポレオン戦争関係著作家:アダム・ザモイスキ
R/Dさんの「祖国は危機にあり関連blog」を再読してましたら、ザモイスキというロシア人歴史家による『Moscow 1812: Napoleon's Fatal March』(2004)という本が、様々な新しい知見がありそうなすごく面白そうな本でした。 pic.twitter.com/ll6OZ3AvWr
これまたキンドルで手ごろな値段だったので入手して読んでみました。1812年のロシア戦役は"Russia Against Napoleon"を読んである程度知っていたから、まあ少しは予備知識があって読みやすいかと思って。
それに、"Russia Against Napoleon"でナポレオニックの本についてmost authors cannot be expected to read many languages or consult archives in a range of countries.とか、No Western professor has ever written a book on the Russian war effort against Napoleon.とか、ナポレオニック本のほとんどはロシアから見ていないって批判しているのが印象的で。この"1812: Napoleon's Fatal March on Moscow"の著者Adam Zamoyskiはイギリス育ちではあるものの両親はポーランド出身で、ポーランド語はもちろんロシア語に堪能のようなので、ロシア語の資料も使って執筆したのかなと期待がもてたんですよね。特に前回紹介した"Tactics and the Experience of Battle in the Age of Napoleon"が英語資料編重ってところも自分的には地味に反感をもってたりした(←英語ができないひがみです)ので。Adam Zamoyskiは西欧の研究者はロシア語の一次資料をほとんど使っていない、使うとしても訳されたものだって指摘して、I have therefore drawn heavily on the first-hand accounts of participants, of which there are a remarkable number.って言っています。実際、この本の中にはロシア軍人の手記からの引用がふんだんに出てきました。
約640ページあるこの本、いやもうね、1812年戦役についてお腹いっぱいになりましたよ。ナポレオンの子供が生まれたところから書き起こして、ロシア侵攻までの状況を描写しているんですけど、露国境に集結するまでですでに消耗しまくりじゃないですか。まあその辺はいつもお世話になっているこちらのブログでも紹介されているんですけど。
祖国は危機にあり(La patrie en danger) 関連blog - ロシアへ
このブログでも言われていますが、とにかく両軍がぐだぐだだったっていう印象。ナポレオンについても、he had assembled the greatest army the world had ever seen, with no defined purpose. And, by definition, aimless wars cannot be won.とか、とにかく野戦で敵を撃破して和平に持ち込む、でもそれ以外の戦略を立ててないって感じで描かれていました。ロシア軍も、仏侵攻まで国境で長い間対峙していたのに、いざ攻め込まれるとドリッサで守ろうとして、でもそこが防御に適していないってわかってさらに退却したりして、おいおい、何やってんのって感じでした。ベレジナでも、ウィトゲンシュテインは命令を聞かずにナポレオンの退路を断つのに失敗したりしてますし。
あと、かなりクトゥーゾフが無能な感じで描かれていました。一般的なイメージはどうなんですかね。ナポレオンもダメダメな印象でしたが、ベレジナ川の戦いのときには、Napoleon had risen to the occasion and proved himself worthy of his reputation, extricating himself from what Clausewitz called ‘one of the worst situations in which a general ever found himself’. His soldiers had fought like lions.なんて書かれていました。
でもとにかくこの本で印象に残ったのは、ロシア戦役で兵士が置かれた過酷な状況。夏の時点で、as hot as Spain in summerだそうですし。もちろん雪が降ってからはね、もう読むのがしんどくなりましたよ。自分、以前は冬になると毎週雪山登ってて、いつもテント泊や雪洞掘ったりしてたんですけど、がちがちの冬山装備があって、しかもせいぜい数日、食料もしっかりあるという状況ですからね。防寒装備もほとんどなく、飢えた状態で数百キロ歩くって想像を絶しました。そんな状況でのいろんなエピソードがこれでもかってぐらい載っていて、祖国は危機にあり(La patrie en danger) 関連blog - 1812年の…でも少し紹介されていますね。自分はモスクワから撤退中にある女性の出産を手伝った下士官が、6年後にその子と再会したりってのを読んでマジかよって思いました。悲惨な状況での人間模様に、まあとにかくいろいろと考えさせられました。

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