ゲーム「Land and Freedom」ではヘミングウェイがカードになっていますが、そういやヘミングウェイがスペイン内戦を舞台に書いた『誰がために鐘は鳴る』って、恥ずかしながら読んだことがなかったです。ノーベル賞作家の代表作の一つってされているそうなんですけどね。
ヘミングウェイはスペイン内戦中の1937年にスペインを訪れ国際旅団に関わり、1938年にはスペイン内戦における最大の激戦であるエブロ川の戦いも見ている。1920年代にもスペインを訪れていて、結構あの国が好きだったみたいですね。
で、『誰がために鐘は鳴る』なんですけど、舞台はスペイン中央部、マドリードの北のほうの山岳地帯。内戦が始まって1年弱のころ、共和国側に立って戦っている主人公のアメリカ人ロバート・ジョーダンは、共和国軍の攻勢開始に合わせて敵後方の橋梁を破壊する任務を受ける。現地のゲリラ部隊の協力のもと、橋梁爆破のための準備を進めるのだが…というストーリーで、結構分量がある作品。自分が読んだのはペーパーバック版だけど、490ページありました。でも物語上では4日間の話なんですよね。
この作品の文学的評価はいろんなところで書かれていると思うのでそれは置いておいて、ウォーゲーマー的には、ハインケルHe111やフィアット戦闘機が飛んでたり、ソ連から派遣されたであろうロシア人の将軍が出てきたりするところに反応してしまうんじゃないですかね。トハチェフスキーの名前もちらっと触れられていました。あと、主人公に若い彼女ができるんですけど、こんちくしょうってウォーゲーマーだったら思…わない思わない、私だけですよね、そんなこと考えるの。
この作品の時期の3か月ほど前にグアダラハラの戦いっていうのが実際にあったんですけど、共和国軍はファシスト側のイタリア軍部隊を撃退しているんですね。この作品中でもグアダラハラの戦いに触れたところで、敵がイタリア軍だって知っていたから、他の軍隊相手だったら到底やれない機動をして勝った、みたいなセリフがあって、あー、イタリア軍ねって思ってしまいました。あと、主人公の祖父は南北戦争で従軍したってことになっていて、グラント将軍がいつも酔っぱらっていたとかそういう話も出てきます。
それと、スペイン内戦時のヨーロッパ情勢を知っていると、あー、そうねって思うところが結構あるんですよね。「もしフランスが我々を助けてくれていたら、国境を開けてくれてさえいたら」なんてところを読むと、不干渉委員会なんて作って英仏はファシスト陣営を利するだけだろ、でも翌年にはミュンヘン会談があって共和国の人々は裏切られたって絶望するんだよな…と思ってしまいました。
ところどころQué vaとか短いスペイン語が出てきて、スペインっぽさを感じます。それと、登場人物のセリフの中でThou artとかDost thouとかtheeとか、自分はなんか古い英語だなって感じる表現が結構出てくるんですけど、方言を話していることを表そうとしてるんですかね。でもジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』では、共産主義者や無政府主義者が支配的になったバルセロナでは相手のことをComradeとかThouと呼ぶようになった、って書いているから、そういう雰囲気をだしているのかな。和訳ではどうなっているんだろ。あと、主人公のロバートはスペイン人にはInglés(English)って呼ばれているんですけど、和訳だとどう表現しているんですかね。イギリス人? あと、彼の名前はRoberto(ロベルト)って言われていました。それと、作中ではお互いにSaludって挨拶するんですけど、ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』ではBuenos diasの代わりにこう言うようになった、って書いていますね。
作中ではワインを飲むシーンが結構出てくるんですけどね、優雅にボトルからワイングラスに注ぐなんてことしないんですよ。dipped his cup into the wine bowlって、ワインの入ったボウルからコップで掬ったってことですよね。それとwineskinって、ワインの入った革袋から飲んだりしているんですよ。読んでいて赤ワインが飲みたくなってきて、でもたまたま近所の店でスペインのビールが安く売っていたのでそれを飲んだりしていました。Estrella Dammっていうバルセロナのビールで、バルセロナっていったらスペイン内戦中は共和国側の有力な拠点の一つだったわけで、共和国のために戦っている物語を読んでいるだからいいでしょと自分に言い訳してがぶがぶ飲んでしまいました。というわけで、赤ワインかスペインのビールの飲みながら読むに結構いい本だと思います。このブログもワイン飲みながら書きました。
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