2023年9月1日金曜日

「Land and Freedom」関連書籍その4 ジョージ・オーウェル『カタロニア賛歌』

 スペイン内戦を描いたゲーム「Land and Freedom」ではジョージ・オーウェルもカードになっているんですよね。

なので、オーウェルの著書『カタロニア賛歌』を読んでみました。オーウェルは義勇兵としてスペイン内戦に参加しているんだけど、POUMの民兵として戦っているんですよ。あのPOUMですよ。映画「Land and Freedom」を見た人だったら熱くなるんじゃないでしょうか。

 でもオーウェルの作品は『1984年』と『パリ・ロンドンどん底生活』しか読んだことがなくて、前者はまあ読んでおいたほうがいいかなぐらいの気持ちで手に取ったんだけど、個人的にはうーん、あんまりはまりませんでした。でも『パリ・ロンドンどん底生活』のほうは、ぐはー、おもしれーとむさぼるように読んでしまい、あまりの印象の違いに同じ筆者が書いたとは思えないぐらい。(まあ、両方とも和訳は読んでいないので、日本語で読むとまた受け止め方が変わるのかもしれませんが…)

 『カタロニア賛歌』はどうだろうな、と思って読み始めてみたら、いやこれまた面白かったです。前線での生活やら市街戦やらでの体験が一人称で書かれているんだけど、淡々とした感じででもリアリティを感じさせるんですよね。敵陣に夜襲をかけているところとか。あと、のどを喉を撃たれるんですけど、しゃべろうとすると口の中に血が泡になって溢れてくるみたいなこと書いていて、いやーよく生きていたなと思います。

 それと、『誰がために鐘は鳴る』を読んでいたときはワインを飲むシーンが結構出てきて自分もワインがほしくなったけど、この本ではそんなことなかったな。というか、物資の欠乏をいろんなところで書いていて、まあそれが現実だったんでしょうな。

 

 オーウェルってスペインでの経験で反共産主義になったらしいってことは知っていたけど、POUMが共産勢力のせいで弾圧されることになるバルセロナでの内紛でも銃をとっているんですよね。ゲーム「Land and Freedom」でも共産主義者が使えるカードとして、バルセロナでの内紛やPOUMの非合法化なんてのがあります。『カタロニア賛歌』を読んだ後だともうこの二つのカード、怒りしか湧いてこない…。


 でもオーウェルの文章は共産主義者を声高に批判する感じはなく、あくまで抑えた筆致の印象。POUMが弾圧されている間も民兵たちは共和国を守るために前線で戦っていて、後方では新聞が自分たちのことをファシストと呼んでいることを知らずに死んでいった兵士が多くいたはずだ、とは述べています。その後にThis kind of thing is a little difficult to forgive.って書いていて、イギリス人がこういう書き方をしているってことは心底憤っているんだろうなと思えて、オーウェルの悔しさがひしひしと伝わってきました。

 こんな感じでスターリン主義者への怒りを抑えて書いていたのかな、と思っていたら、最後にappendixとして2章がついていて、共産主義者たちがいかにPOUMに罪を擦り付けたかをガンガン書いていました。

 あくまで冷静かつ客観的な姿勢は保ちつつ、The accusation of espionage against the POUM rested solely upon articles in the Communist press and the activities of the Communist-controlled secret police.とか述べています。

 この2章はもともとは本文の途中に入っていたんだけど、オーウェル自身の判断でappendixとして最後にもってこられたらしい。内容がかなり政治的で、基本的に自分の体験をつづった他の章とはまったく雰囲気が違うからなあ。でも勉強になりました。共和国側内部での勢力争いについて言及しつつ、でも戦争に負けてしまったら民主主義や革命、社会主義や無政府主義などは無意味な言葉になってしまうと述べていて、これってまさにゲーム「Land and Freedom」じゃないですか。


 ということで、本文とappendixは別作品のような印象を受けますが、逆に一冊で2作読めた感じでお得な気持ちになれました。しかしオーウェル、生き様がかっこいいわー。


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