2024年10月16日水曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part5

 ●第6ターン(11月24ー25日) (続き)

 仏軍三個師団の突出にドイツ軍の包囲・反撃と、戦場は両軍入り乱れての混戦状態の様相を呈してきた。

「うげー、なんかZOCばっかりでどこに動かせるのかわかんねー」

と作戦級に不慣れな両プレイヤーである。

 独軍は増援の装甲・機械化部隊が次々と前線に到着。戦闘力は1や2と低いものの、兵数に劣るドイツ軍としてはありがたい。そして勝利得点源の街Altkirch奪還に向けてさらなる反撃を繰り広げた。


●第7ターン(11月26ー27日)

 仏軍は包囲されている三個師団が補給切れ(Non ravitaillé)となってしまった。

「ええっと、補給切れって……げ、攻撃できなくなるの?!」

と今さらながらにルールを確認して驚く仏軍プレイヤー。

「いや、だっていつもやっているゲームは補給ルールなんてないし…」

 常日頃は中世の会戦やってますからね、一日で終わった戦いばかりだから補給ルールなんてありませんよ。

 このゲームでは補給が続かない状態が2ターン目となると補給切れ状態となり、攻撃は不可、防御力と移動力が半減する。被包囲下の3個師団はもう自力での脱出は不可能である。仏軍は要塞地帯の掃蕩、それにAltkirchの防衛に傾注、前ターンに増援として登場した戦力4の歩兵連隊を、トラック輸送(camion)を使ってAltkirchに急派する。仏軍は第3ターン以降、毎ターン歩兵1ユニットにトラック輸送を適用して移動力を6から8に増やせるのである。

「あれ、機甲師団を見捨てちゃうの?」

「ふん、あいつらを助けなくても仏軍は勝てるんだよ。第5ターンに突出させたのは、ドイツ軍兵力を誘引するための罠だったのさ。3個師団を封じ込めるためにかなり戦力をかき集めないといけなかっただろ? ふふん」

「いや、それ絶対うそ」

 仏軍は勝利得点13で戦術的勝利(victoire tactique)を得られる。要塞地帯で12、それにAltkirchで13となるため、無理に友軍を救出する必要はないわけである。でもアルザス解放を目指した仏軍の大攻勢のはずなのに、そんなふうに守りに入っていいのか。


 独軍は前ターンに続きAltkirchへ熾烈な攻撃を続ける。だが混戦状態のため、敵三個師団封じ込めに配置していた多くのユニットを有効に活用できず、第106装甲旅団以外は強力な攻撃ができないのが痛い。


 ちなみに焦点となっているAltkirchだが、ドイツ語だと「古い教会」の意味になる。アルザスは現代ではフランス領内だが歴史的に見てドイツとのつながりが強く、ドイツ語の名残を地名にも見ることができる。


●第8ターン(11月28ー29日)

 マップ左方の要塞地帯で唯一残っていたBelfortの街を仏軍が攻撃。ここは要塞かつ都市なので4コラムシフト、さらに三方が攻撃力半減となる河川(Rivière)が流れているため、要害堅固の地なのだ。だが仏軍は兵力を集中、衆寡敵せずBelforは陥落した。

 そしてドイツ軍の最後の攻撃。Altkirchを落とせるかどうかが勝負の分かれ目となる。かき集められるだけの戦力を投入、支援砲撃も加えて攻撃。結果は強制退却、と思いきや、前ターンに仏軍が急派した歩兵連隊の兵質はB。兵質AとBのユニットは強制退却の結果をステップロスに置き換えられるのである。危ういところで仏軍は踏みとどまり、この戦いは仏軍の戦術的勝利に終わった。


 いやー、面白かった。仏軍の突破に危ういところで駆け付けるドイツ軍の援軍、そして精鋭の装甲旅団による反撃と、結構面白い展開。それにコマンド部隊の要塞の強襲とか、いろいろと細かいギミックで味付けがしてあるのが楽しい。

 でもゲームバランス的には仏軍が有利だと思う。仏軍としては地道に要塞地帯を掃討してあと一つ勝利得点源をとれば戦術的勝利となるので、史実のようにアルザス解放と敵軍包囲を目指した機甲部隊の突進、なんてのをやらなくても済むのだ。まあ、そういう手堅いプレイが好きな人もいるとは思うけど。戦術的勝利の基準を1点か2点引き上げて、仏軍は無理にでもライン川方面に向けて攻勢をし続けるようにした方が面白いんじゃないかな。それと、今回のプレイでは仏軍が陣地帯への攻撃に慎重だったので掃蕩に時間がかかったけど、このゲームでは攻撃側は退却で損害を回避できるので、低比率でもどんどん攻撃していけばもっと早く陣地帯は完全占領できたはず。そうすればもうちょっと仏軍は平野部への攻撃に兵力を回せたと思う。まあ、作戦級には不慣れなプレイヤーの意見ですが。

 あと要塞は2コラムシフトと強力ではあるものの、強制退却はステップロスに置き換えられるというようにしたほうが抵抗力が上がって、仏軍は要塞地帯と東方への戦力の振り分けがもっと悩ましいものになって面白くなるんじゃないかな。

 まあいずれにせよあんまりゲーム化されていない戦いなので、興味持たれたらプレイしてみてはいかがでしょう。









2024年10月12日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part4

 ●第5ターン(11月22ー23日)

 陣地帯では前ターン撃退された仏歩兵部隊が再び陣地帯上部を攻撃。だが独軍歩兵がまたも奮戦、兵質Cだが1コラムシフトを得る一方、兵質Aのユニットを含む仏軍はコラムシフトなし、さらに攻撃のサイの目が振るわず、今回も攻撃は撃退された。だが陣地帯下部では使えるだけの支援砲撃をたたき込み、同一師団効果や諸兵科連合効果なども駆使して敵を駆逐していく。守備隊ユニットは退却できないため、強制退却の結果がでる壊滅してしまうのが独軍には痛い。

 一方マップ右上方のMulhouse前面では、増援として現れた独軍2個歩兵師団に機甲師団のスピアヘッドが抑えられている状態。だが機甲部隊の敵ZOC浸透能力を活かして歩兵1個師団を包囲する。さらにマップ中央から機甲部隊に追いついた歩兵師団も投入、機甲と歩兵計3個師団で独軍歩兵師団を攻撃。独軍も支援砲撃で懸命に防御するが、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果が効いて戦力比は7:1に。独軍はたまらず損害を被って3へクス退却、仏3個師団が大きく戦闘後前進する。その結果、陣地地帯からマップ中央にかけてのドイツ軍主力が大きく包囲される危険性が出てきた。

「ぐははは、仏軍が本気になったら歩兵師団ぐらいで抑えられるはずがなかろうが!」と調子に乗る仏軍プレイヤーである。


 ちなみに史実でも仏機甲部隊がMulhouse近くまで突出している。ドイツ軍は必死の防御をするのだが、ヒストリカルノートによると「アルンヘムの英第一空挺師団と同じ目にあわせてやる」なんて書いたビラまで撒いたらしい。モンティも自分の失敗がこんな形で利用されるなんて思っていなかったんじゃないかなあ。あと、M3A3がパンツァーシュレックによって炎上した、みたいなドイツ軍の抵抗の激しさを感じさせる描写もちょくちょくあってヒストリカルノート読んでいると気分が上がります。M3A3ってM3ブラッドリーだよね、あんまり知らないけど。


 強力な攻撃を繰り広げる仏軍に対し、ドイツ軍は兵力をかき集めて敵主力3個師団を包囲する。戦闘力1と弱小ではあるものの敵機甲部隊のZOC浸透能力を抑えられる偵察大隊2個を巧妙に配置、仏機甲師団の動きを封じ込めた。そして増援として登場した第106装甲旅団が第30SS武装擲弾兵師団の1個連隊の支援の下、弱小兵力しか配置していなかった敵主力側面を攻撃、戦闘後前進で包囲網をさらに強化した。


 この第106装甲旅団、2ユニットしかなく戦闘力も2と一見貧弱だが、兵質はAであるうえ仏機甲師団同様に同一師団効果で2シフト有利に、さらに歩兵と共同で攻撃すれば諸兵科連合効果も得られるため、3シフトや4シフトとなって結構強力な攻撃ができる。そのうえ、同装甲旅団の戦車大隊は対装甲効果も持つため、敵機甲ユニットとの戦闘ではさらに1シフト有利になるという優れもの。ちなみにユニットのイラストはおそらくパンターである。あ、でも戦車詳しくないんで間違っていたらごめんなさい。


●第6ターン(11月24ー25日)

 このゲームでは自軍ターンの最初に補給を確認する。包囲された3個師団は孤立状態(Isolé)となり攻撃力が半減した。

「ふん! 包囲されることなど想定内。雑多な部隊の寄せ集めの独軍包囲網など食い破ってやる」

 先述のように独軍は偵察大隊を配置しており、通常であれば偵察大隊も歩兵と一緒だと諸兵科連合効果を得られるのだが、敵に機甲ユニットがいるとその効果は得られない。まあ、偵察大隊ってそんなに強力じゃない装甲車両だろうから、戦車相手だと歯が立たないってことですかね。逆に仏軍第1機甲師団は諸兵科連合効果と同一師団効果で計3コラムシフト、さらに支援砲撃で戦闘比を5コラム上げて敵を蹴散らした。

 そして他の2個師団も敵の包囲網の一角を集中攻撃。戦闘力半減状態とはいえ総計17戦闘力となり、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果も加えて6:1にまでもっていく。だが兵質チェックで痛恨の1が出て、マイナス2コラムシフト。ここの2個師団は戦闘力は高いものの、すべて兵質Cなので兵質チェックでは6分の1の確率でこのようなことが起こるのである。結果、敵を1へクス後退させるにとどまり包囲網を破るには至らなかった。

 かたや、マップ左方の要塞地帯では順調に掃蕩が進む。この調子だと最終ターンまでにはこの地帯のすべての得点源へクスは占領できるだろう。


つづく

2024年10月5日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part3

 ●第3ターン(11月18ー19日) つづき

 このターン、ドイツ軍には歩兵2個師団がマップ右上から増援として登場したものの、戦線にたどり着くことができない。マップ下方のスイス国境近くではこれまで敵の攻撃のサイの目が振るわず何とか機甲部隊の突破を防いでいるものの、もう限界である。ドイツ軍はマップ上方にむかって大きく後退。河川沿いに防御ラインを敷いた。


●第4ターン(11月20ー21日)

 フランス軍はマップ左方の陣地帯への着実な攻撃を続ける。しかもマップ左上に初期配置されていた仏軍歩兵4ユニットが、このターンに移動制限解除。陣地帯上部に襲いかかる。だがドイツ軍には陣地と荒地の地形効果、さらに歩兵の攻撃に対しては1コラムシフトが得られる機関銃大隊がいたため、1.5:1の低比率となり攻撃は撃退された。

「ふん、フランス軍の見せ場は陣地帯じゃなくて平野部での突破なんだよ」 

と、仏機甲2個師団がマップ右上の重要都市Mulhouseにむかって突進。平地に出ればこっちのもんである。そして前ターンに増援として現れた独歩兵師団を集中攻撃。退却する敵を追撃する。陣地帯からマップ中央にかけてドイツ軍を大きく包囲しようとする勢いである。


  危うい状況となったドイツ軍には増援が他戦線から急遽送り込まれてくる。このゲームではマップ右上にある主要都市Mulhouse4へクス以内に仏軍が近づくとそのターンに第30SS武装擲弾兵師団などが、またマップ右側約3分の1のあたりまで仏軍が進出すると次ターンには第106装甲旅団などが登場する。今ターン、仏機甲部隊が大きく前進したため、独軍は増援を得られることになった。


 史実でもフランス軍の急進に対し、独軍は増援をかき集めて何とか防御線を敷いたらしい。バイエルンの駐屯地からは駆逐戦車大隊が、オランダからは突撃砲大隊が急遽送られてきた。またMulhouse近くのCernayという街には武装SSの訓練施設があり主にフランス語圏出身の下士官が訓練を受けていたのだが、ヒストリカルノートによると仏軍がMulhouse近くにまで進出するとここの訓練生も防御に投入されたそうだ。それだけドイツ軍も必死だったってことですね。

 また、このターン増援として現れた第30SS武装擲弾兵師団はベラルーシなどの「義勇兵」から編成されていたのだが、反乱を起こしドイツ人士官を処刑、フランス軍に加わった部隊もあったそうだ。そりゃわざわざソ連圏でドイツ軍に加わる兵はソ連と戦いたいのであって、西側連合軍と敵対なんかしたくなかったでしょうに。


 増援を得たドイツ軍だが、突出してきた機甲部隊にどう対処するか。前ターンに登場した歩兵2個師団と併せて、単独でいる仏コンバット・コマンドに反撃して敵の衝力をそぐべきか。だがいまだほとんど歩兵しかいないドイツ軍は、ZOC浸透能力を持つ敵機甲ユニットに対して有効な防御線を張るには心もとない。それに陣地帯が早々に包囲されると敵の兵力運用の自由度が増してしまうので、陣地帯との連絡回廊部分の防衛に兵力を割くべきだろう。ずっとやられっぱなしでストレスがたまっていたドイツ軍プレイヤーだったが、状況を冷静に分析して反撃は時期尚早と自重、仏機甲師団の前面の防御を固めた。


  史実では第4ターンにあたる11月21日から独軍が反撃を開始している。ヒストリカルノートによると、この時の状況を仏第一軍指揮官のde LattreはU,I,Oと回顧録に書いているそうだ。独軍突出部を取り囲むように仏軍はU字型の戦線を形成しているが、ドイツ軍は仏軍の中で一番脆弱な南方で反撃してIの形にもっていこうとし、フランス軍はこれに対してU字を閉じてO字型の包囲網を形成しようとしていたそうだ。なんか、戦況図を動画で作ってU,I,Oの文字を載せたくなる。


つづく

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...