2025年10月31日金曜日

(幕間)ライプツィヒの戦い百周年の本

 DSSSMさんが1813年10月14日のLiebertwolkwitz戦についてDiscordで書かれていまして、「当時最大規模の騎兵同士の戦いになったそうです」とのこと。この戦いって、10月16日にあったWachauの2日前なんですよね。いまAARを書いているWachau1813のマップでは、この村が中央に位置しています。

 ということは14日のLiebertwolkwitzの戦いについてもヒストリカルノートで触れていないかな、と思って読み返してみました。最大規模の騎兵同士の戦いって気になりますし。


ヴィトゲンシュテインはライプツィヒへ通じる道を押し開く機会と見たのか、もしくはフランス軍が退却していると判断したのか、ロシア軍とプロシア軍の騎兵にWachauとGalgenbergを攻撃させ、Klenauの歩兵に東からLiebertwolkwitzを奪取させようとした。連合軍側は支援不足、フランス軍側は固い防御に欠けていたが、ライプツィヒ周辺での戦闘の初日であるこの日、この時代のもっとも壮大な騎兵の激戦の一つ(un des plus grands maelströms de cavaleries de l'époque)が生じた。フランス軍18個連隊が連合軍22個連隊に対して投じられたが、決定的な結果とはならず、貴重なフランス軍の騎兵、特にスペインから戻ってきた歴戦の連隊を、無意味に消耗するに終わった。両軍ともすべては翌日に持ち越され、次第に到着する主力を待つこととなった。

 へ~、と思って少しこの戦いについて調べてみたら、"Die Völkerschlacht bei Leipzig: ein Gedenkbuch für die hundertjährige Jubelfeier"っていう本を見つけました。ライプツィヒ戦100周年を記念して出されたみたいですけど、ありがたいことに著作権が切れているので、DSSSMさんが作ってくれた「著作権切れナポレオン戦争関連洋書Wiki」に早速追加しておきましたよ。

 読んでみると結構面白いんですよね。タイトルどおりライプツィヒの戦いについての本なんですけど、Liebertwolkwitz戦は約5ページ、Wachauの戦いは約20ページを使って描写しています。結構面白いエピソードがあってTwitterでかなりつぶやいたんですけど、改めてまとめてみました。


 なかでもしびれたのはWacahu戦前のナポレオン。兵たちの前に現れ、

... erhob der Kaiser die hand, zeigte nach dem Adler und sprach mit ausdrucksvoler Stimme: "Soldaten! Ich vertraue euch den französischen Adler an! Er wird euch zum Sammelplatze dienen, Ihr werdet schwören, ihn nur sterbend zu verlassen. Werdet ihr schwören?" Laut tönte es durch die Reihen der jungen Streiter: "Wir shwören, ja, wir schwörn! - Es lebe der Kaiser!"

(皇帝は手を上げ、鷲を指し、力強い声で言った「諸君! 君たちにこのフランスの鷲を託す! これが君たちの集合する旗印となるのだ。誓えるか、これを死守するということを。誓うか?」若い兵たちの列から大きな声が沸き上がった。「誓います! 誓います! 皇帝万歳!」)

ぐは~、かっけ~。自分もここ読んでいて、「誓います!」って心の中で叫んじゃいましたよ。ちなみにここでいう鷲っていうのは、aigle de drapeauのことですかね。

 あと、当然なんですけどナポレオンのことをドイツ語でder Kaiserって書かれていて、ナポレオンがカイザー……? と個人的には違和感がかなりありました。すんません。ドイツ語でナポレオニックってほとんど読んだことがないので、慣れの問題ですかね。いや、ドイツ語以外にどの言語でナポレオニック読んだことあるんだってつっこまれたら、すんませんとしか言えないんですが。まあでも、ドイツ語でもいい面があって、ihrとかeuchって呼び掛けられるとぐっと距離が近づく感じがしますよね。多分ここ、フランス語だとvousだと思うんですけど。例えばアウステルリッツの有名なナポレオンの演説でも、Soldats, je suis content de vous.ってなってますしね。まあこの辺は言語の問題で仕方ないですし、兵たちはvousって言われてtuの複数だって無意識に受け取れるんでしょうね。知らんけど。


 それと前回のブログに、"Russia Against Napoleon"の影響で最近オイゲン Eugen von Würtembergを推している、みたいなことを書きましたが、Wachau戦でフランス軍の猛攻をまともに受けたところがこの本でも描写されいます。自軍の士官が "Wir gehen alle zu Grunde, schon fährt die Artillerie ab." (わが軍は壊滅してしまう。砲兵はすでに退却を始めた)って言うと、オイゲンはこう答えるんですね。

"Alles soll stehen bleiben!" rief der Prinz. "Nichts sich von der Stelle rühren, was noch stehen kann!" 

(「全軍、その場にとどまれ!」公(オイゲンのこと)は叫んだ。「まだ立っていられる者は、その場から動いてはならん!」)

ぐは~、これもまたしびれる~。今度ゲームで死守しないといけないときは自分も言ってみよう。「アレス・ゾル・シュテーエン・ブライベン!!」って。


 熱いシーンはこれだけじゃないんです。Wachau戦ではナポレオンが決定的な勝利を収めるためにミュラに突撃を命じるんですけど、それまで激しい攻撃にさらされてきた連合軍に仏軍が圧倒的な勢いで押し寄せてきた、っていう場面でこれですよ。

Da - es war hohe Zeit - kam hilfe in der Not.

(その時 ― まさにその時だった ― 渇望されていた救援が現れたのだ。)


 いやもうなんかね、ライプツィヒ本戦よりもWachauのほうが見どころが多いんじゃないかって思いましたよ。"Russia Against Napoleon"にはThe last two days of the battle of Leipzig – 18 and 19 October – were in one sense an anticlimax.なんて書かれていましたし。単純ですみません


(*すみません、面倒くさいので以降、原文を和訳しません。興味ある方は機械翻訳など使ってみてください)

 そうそう、Liebertwolkwitz戦の騎兵戦のほうですが、11時から12時にかけて激しい騎兵の衝突が起こったそうですが、Wittgensteinがこう報告しているそうです。

Es gab ein großartiges Schauspiel, ungefähr 14000 Reiter im Gefecht zu sehen, die sich mit abwechselndem Glück bekämften, einander warfen, wiederkehrten und verfolgten.

 この戦いで指揮を執っていたミュラは、Da drang Murat bei einem dieser Angriffe mutige voran, kam aber durch seine Heftigkeit zu nahe an den Feind.だそうで、Die preußischen Dragoner erkannten bald in dem kleinen Reitehaufen den hohen Offizier an seiner auffallenden Uniformと敵に見つかってしまいます。auffallenden Uniform(派手な軍服)ってどういうこと?って思ったんですけど、このあとミュラの服装が結構細かく描写されていて、そりゃ派手だわと思いました。大きなイヤリングが耳に光っていた、なんて書いてあって、この時代の男性ってイヤリングしてたんですかね? 全然知らないんですけど。

 ってつぶやいたら、DSSSMさんが教えてくれました。


 ミュラはそんな目立つ格好で突出したから、Das ist der König von Neapel, sagete sich ein kühner preußischer Leutnant, namens Guido von der Lippe. "Halt, König!" rief er ihm zu, indem er mit gezücktem Degen auf ihn  eindrang, um Murat zum Gefangenen zu machen.って捕虜になりそうになっちゃったそうです。しかしKönig von Neapelって誰よ?って思っちゃいましたよ。ナポレオニックの知識が無くてすみません。

 この時ミュラを救った仏軍士官はNapoleon schmückte seine Brust mit dem Kreuze der Ehrenlegion.だそうですけど、Légion d’Honneurのこと? って思ったら、またDSSSMさんが「なんか、レジオンドヌール勲章だと和訳されてきますね……」って教えてくれました。ありがとうございます。


 この"Die Völkerschlacht bei Leipzig : ein Gedenkbuch für die hundertjährige Jubelfeier"、古い本なのでその後の研究で内容の評価がどうなっているのかはわからないんですが、筆者Paul Benndorfは歴史研究家で著書も多く出していたそうです。Die Paul-Benndorf-Gesellschaft zu Leipzig e.V.っていう、彼の名前を冠した協会まであります。まあ百数十ページしかない本なので、ご興味持たれた方どうぞ。


0 件のコメント:

コメントを投稿

Battle of Wada (Bushi Life #5) AAR part5

-Turn 7  The Wada restored their forces to full readiness. While the Bakufu had conducted a successful volley in the previous turn, it was t...