2026年1月29日木曜日

VaeVictis184号はイヴァン雷帝、Molodi 1572

  VaeVictis誌の最新号はMolodi1572……って言ってもどんな戦いなのかさっぱり。モスクワ大公国がクリミア・ハン国を破ったそうだけど、16世紀のロシアって言ったらイヴァン4世、いわゆるイヴァン雷帝の時代じゃないですか。とはいえイヴァン雷帝について詳しく知っているわけでもなくて、確かアンリ・トロワイヤの本やらエイゼンシュテインの映画を見たなあ、ぐらい。そういえばグロズヌイっていう駆逐艦だか巡洋艦だかもあったよね。

 ということでヒストリカルノートを読んだんですけど、いつもながら知らないことばかりで勉強になりました。Molodiの戦いの前年、1571年にはクリミア・ハン国に攻め込まれてモスクワを焼き払われたとか、イヴァン雷帝、ダメじゃん。まあMolodiの戦いで決定的な勝利を収めることで、クリミア・ハン国からの大規模な侵攻はその後なくなったそうだけど。でもモスクワ大公国の封建的な軍事体制の欠点も描写されていて、

Les campagnes militaires successives ont épuisé ce système. Les pertes humaines empêchent le renouvellement des troupes. L'épuisement économique est patent. Faute de bras, l'agriculture s'effondre. On ne peut plus équiper hommes et chevaux. ... 'armée russe ne pourra plus rien face aux hussards polonais et aux mercenaires hongrois de Stéphane Bathory lors des campagnes en Livonie, entre 1575-1580.

だそうだけど、おいおい、大丈夫ですかって突っ込みたくなりました。


 付録ゲームはL'or et l'acier(黄金と鉄)シリーズで、1ターンは一ヵ月、1571年と1572年の二つのシナリオが収録されている。このシリーズ、ついこないだもVV180号で1526年のオスマン帝国のハンガリー侵攻を扱ったりしていて、ある程度の数が出ているので一度ルールを覚えればいろんなゲームやれるはずなんだけどね。あんまりプレイしたって話を聞かないなあ。テーマ的には5-16世紀で自分的にはばっちりなんだけど、ウォーゲーム界ではマイナーですかね…。ちなみにこのシリーズはこれまでこれだけ出ています→https://boardgamegeek.com/boardgamefamily/38723/series-gold-and-steel-philippe-hardy/linkeditems/boardgamefamily

 L'or et l'acierシリーズは基本的に戦略マップ上でプレイするんだけど、大兵力同士がぶつかる会戦は戦闘マップ上で中央、両翼などにユニットを展開する。その際、戦術チット(marqueur tactique)が使用できるんだけど、Avalanche(雪崩)なんてチットがあって、あー、ロシアって大雪降るもんね。でも、ん? 戦いの最中に雪崩? と思ってルールを読んでみたら、このチットの注釈にtactique de cavalerie employée par les deux armées visant à envelopper une des ailes adversesって書いてある。ヒストリカルノートのほうにはLes cavaliers russes utilisent des tactiques qui se rapprochent de celles des cavaleries occidentales mais en combinant le choc et le tir, << l'avalanche >>.とも書いてあって、要は騎兵の波状攻撃のことですかね。

 他にはGulylai Gorodってチットがあって、火縄銃兵が防御時に使用できるんだけど、ルールの注釈によるとlors des batailles, à l'instar des armées hussites et ottomanes, les unités russes étaient protégées par un mur mobile (<< ville mobile >>). Streltsy et artilleurs pouvaient tirer sous cette protection.だそうで、ヒストリカルノートにはL'infanterie est protégée derrière une fortification de campagne, la << ville mouvante >> (<< gulyay gorod >>), des parapets mobiles en bois, avec un fossé face à l'ennemi.って書かれている。どうやらこれのことのようですね→https://en.wikipedia.org/wiki/Gulyay-gorod このMolodiの戦いがあったのは日本だと戦国時代に当たるけど、日本でも確か竹の束で鉄砲の弾除けをしたってどこかで読んだことがあるけど、おんなじようなもんだったんですかね。

 戦術チット以外にも、モスクワ大公国はBrûler la steppe(焦土)を使えてタタール軍(クリミア・ハン国)の消耗が大きくなったり、タタール軍はcaptifs(捕虜)をとってVP源にできるけど、捕虜を連れていると移動力が減少する、なんてルールもあって、マップやユニット構成だけでなくこういった特別ルールがなんか雰囲気を出してくれている気がする。あ、イヴァン雷帝はゲームには登場しません。でも早くプレイしてみたいなあ。


2026年1月9日金曜日

ベルリン陥落から80年で見返した、『ヒトラー 最期の12日間』

 2週間ほど前、多くの人はもう年末年始の休暇に入っている期間に仕事していたんですよね。まあ世間が休みの時に働くのは珍しいことじゃないのでいいんだよ、って自分に言い聞かせつつ、でもなんかしゃくだし、単純作業だったので動画でも流しながらやるか、うーん、何見ようかな、って感じになりまして。1945年から80年という節目の年だったので、『ヒトラー 最期の12日間』をチョイスしてみました。

 この作品、昔見たことがあるので内容は知っていたんですけど、改めて見るとやっぱりずーんと重い。延々と暗いシーンが続いて、この映画を選んだことを後悔しましたよ…。もちろん、作品をどう受け取るかは人それぞれだと思うんですけどね。総統閣下がお怒りになっているシーンのパロディとか、空耳集とかいろいろ作られていますし。

 でも新年を迎えようとしている時期に何でこんなものを見ているんだろうって思っちゃいましたよ。同じWW2のドイツ物だったら『Uボート』にすればよかった…。まあでも、『Uボート』と違って階級の高い登場人物が多いせいか、言葉遣いがあんまり下品な感じじゃなかったのが救いかな。いや、全然救いじゃないけど。でも『Uボート』ではSchei*eとかVerd*mmtとか何度も何度も使われていましたけど、この映画ではあんまり聞かなかったなあ。その代わりVerräter(裏切者)とかVerrat(裏切り)って言葉が繰り返し出てきて、年末の飲み会をブッチした知人にVerräter!とか言いそうになりましたよ。


 でもね、ウォーゲーマー的には興味を惹かれるシーンやせりふもあるわけですよ。„Die neunte Armee muss zurückgenommen werden, sonst wird sie eingekesselt und aufgerieben.“(第9軍は退却させないといけません。さもなければ包囲され壊滅します)とか、

„Wenck soll mit der zwölften Armee die Sache unterstützen.“(ヴェンクが第12軍でもって支援すればいい)

„Aber mein Führer, die zwölften Armee marschiert nach Westen richtung Elbe.“(ですが総統、第12軍はエルベ方面に向かって西に移動しています)

ってやり取りとか。

 „Es ist dem Feind gelungen, die Front in breiter Formation zu durchbrechen.“(敵はさらに広い範囲で前線を突破しました)なんてセリフは、ゲームの最中に言ってみたいって思ってしまいました。いや、そんな状況になったらまずいだろ。

 „Dieser Junge hat allein zwei russische Panzer mit der Panzerfaust erledigt.“ってところなんかは、erledigenって言葉の使い方の勉強になるなーって思ったり。いや、ここは少年兵が前線で戦わないといけない状況に悲劇を感じるべきなんでしょうけど。

 ヒトラーが„Ich habe heute den Fall Clausewitz ausgegeben.“って言うシーンがあって、ん?クラウゼヴィッツ?と思って調べてみたら、Fall Clausewitz(クラウゼヴィッツの場合)っていうベルリン防衛計画があったってことを知りました。それとフリードリヒ大王の肖像画が出てくるとね、やっぱり七年戦争のいわゆるブランデンブルクの奇跡をウォーゲーマーだったら思い起こしますよね。


 …てな感じでなんとか自分の興味を持続させようと頑張ったんですけど、いやー、しんどかった。アカデミー賞外国語映画の部門にノミネートされたぐらい評価が高い作品のようですが、もうしばらくは見返すことはないかな。空耳やパロディも笑えなくなってしまいましたよ…。


VaeVictis184号はイヴァン雷帝、Molodi 1572

  VaeVictis誌の最新号はMolodi1572……って言ってもどんな戦いなのかさっぱり。モスクワ大公国がクリミア・ハン国を破ったそうだけど、16世紀のロシアって言ったらイヴァン4世、いわゆるイヴァン雷帝の時代じゃないですか。とはいえイヴァン雷帝について詳しく知っているわけ...