2026年5月30日土曜日

クラウゼヴィッツが論じる1814年フランス国内戦役

 DSSSMさんがナポレオニックの同人誌をつい先日出されましたね。

ゲットしたというポストを結構見たんですけど、ナポレオニック好きな人がこれをきっかけにウォーゲームに興味を持ってくれるといいなー。そういや1814年のフランス国内戦役についてクラウゼヴィッツがなんか書いていたなと思い出して、『Übersicht des Feldzugs von 1814 in Frankreich』(1814年フランス戦役の概要)を読んでみました。

 これ、以前もざっと目を通したことがあって、両軍の動きを淡々と述べているっていう印象があったんですけど、今回読んでみてもやっぱりそんな感じ。Übersichtだから仕方ないかな、って思ったんですけどね、やっぱりクラウゼヴィッツの鋭い分析が読んでみたい、と思ってちょっと探してみたらありましたよ、『Strategische Kritik von Feldzuge von 1814 in Frankreich』(1814年フランス戦役の戦略的批判)。これ、『Übersicht des Feldzugs von 1814 in Frankreich』と同じく、1812年から1815年の戦役について書かれた『Der Feldzug 1812 in Russland und die Befreiungskriege von 1813-15』に含まれているんですよね。以前Übersichtのほうを読んだときは見落としていましたよ。ははは。


 読んでみるとこれがまた面白い。Übersichtのほうの素っ気ない書き方は何だったの、って感じです。冒頭から戦役開始時の動きについて、連合軍は連絡線の観点からはスイスを通過する必要なかったし、ナポレオンは戦力を分散させすぎって感じで批判しています。スペインやらイタリアやらベルギーやらに多くの兵を残していたことはganz entschiedene Fehler, entsprungen aus Übermut und Geringschätzung des Feindes(決定的なミスで、傲慢さと敵の過小評価から生まれたものだ)って書いていて、クラウゼヴィッツ先生、厳しい~。さらに、士気では自軍が勝っているとナポレオンが考えるのはわかるが、ライプツィヒで圧倒的な敵には勝てないと学んだはずだし、ライプツィヒ後の戦役では自軍の将軍は敵の将軍よりも優れていないとわかったはずだ、と追い打ちをかけています。

 まあこんな感じでズバズバ述べているところが出てくるので読んでいて飽きないんですけど、シュワルツェンベルグに対してはもう容赦なくて、優柔不断さを何度も批判しています。freilich kann man die Art, mit der Schwarzenberg dabei verfuhr, nicht billigen ... Anstatt seine Überlegenheit zu benutzen, um den Gegner von allen Seiten zu umfassen und ihm durch einen großen Sieg Verluste beizubringen, behielt er noch eine beträchtliche Truppenmasse ganz außerhalb des Schlachtfeldes, und delegiert gewissermaßen einen seiner Feldherren (Blücher) mit einem Teil seiner Kräfte, um eine Schlacht zu versuchen. って述べた後、Ein solches Beispiel war noch neu in der Geschichte.ぐはー、厳しいわー。でも批判ばかりじゃなくて、例えばラ・ロティエール戦の後にナポレオンがブルッヒャーに向かったのは正しかったと理由を挙げて論じて、Dieser Zug Bonapartes an die Marne ist das Beste im ganzen Kriege.なんて賞賛してました。

 1814年戦役と言えばナポレオンがその冴えを見せつけたシャンポベールからヴォーシャンのいわゆる六日間戦役ですが、戦役のちょっと前の2月8日の状況から一章を使って、11~13日を中心に結構詳しく論じていて、読んでいてワクワクしました。まあでも、そのあとシュワルツェンベルグに向かわずにブリュッヒャーを追撃していたらボヘミア軍もどうなっていたかわからない、みたいなことを別の個所で述べています。ただこれは士気の面を考えたらのことであって、士気は戦争中には正確には測れないものだからナポレオンが徹底的な追撃をしなかったのは完全な誤りとは言えないってフォローしていますが。『戦争論』のほうではもう少しはっきりと、追撃していたらWir halten uns überzeugt, daß ein gänzlicher Umschwung des Feldzuges eingetreten und die große Armee, statt nach Paris zu gehen, über den Rhein zurückgekehrt wäre.って書いていますね。

 それと、ラ・ロティエール戦の後、ナポレオンは守りに入ってもよかったかもしれないという状況で攻勢に転じたのは、weil es ihm wie Leuten seiner Art immer natürlicher war der Gefahr trotzig entgegenzugehen, als ihr vorsichtig auszuweichen, sie mit Leidenschaft zu bekämpfen, statt mit Klugheit.なんてあって、そういえば1815年戦役についてもクラウゼヴィッツがウェリントンの分散配置を批判したところで、ナポレオンのことがわかっていない、他の将軍と違って一点集中に賭けるんだ、みたいなことを書いていたのを思い出しました。

 でもいつものことなんですけど、こういうのを読んでいると自分の知識不足を痛感させられるんですよね。Allen Strategen hätte die Dresdener Schlacht und ihre Folgen deutlich vorgeschwebt.と書かれても、え、ドレスデンの戦いってええと……ってなっちゃたし。それにDie große Armeeって何度か出てきて、ん? 大陸軍? 連合軍のことを述べている文脈なのに?って混乱しちゃいましたよ。主力っていう意味でボヘミア軍を指していたのね…。そもそも1814年戦役の流れやら地理がまだよくわかっていなくて、ナポレオンや連合軍の動きが述べられるたんびに地図を見返したりこの戦役の解説をネットで探さなくてはなりませんでしたよ。とほほ。『Übersicht des Feldzugs von 1814 in Frankreich』が淡々としていて物足りないなんて言ってすんませんでした、って何度も頭を下げながら読みました。

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