2026年7月4日土曜日

ヴィスワ川の奇跡と、赤軍とポーランド軍の壮大なシーソーゲーム 『ワルシャワ1920』

  以前読んだ"1812: Napoleon's Fatal March on Moscow"が読みやすかったので、この筆者、他になんか書いていないかなと思って探してみたら"Warsaw 1920"って本を見つけました。筆者のAdam Zamoyskiはポーランド語とロシア語に堪能のようなので、両国の資料を渉猟して書いたのかな、と期待して読んでみました。それにAdam Zamoyskiの両親はポーランド出身なんですよね。1920年のワルシャワって言ったら、ヴィスワ川の奇跡ですよね。ワルシャワ前面まで赤軍に攻め込まれたポーランドが劇的な反撃で攻勢に転じる、という。ポーランドにルーツを持つ筆者がどんなふうに描くのか楽しみーと思って読みました。



 まあでもね、ヴィスワ川まで赤軍が迫ったと聞くと、どうしてもアンジェイ・ワイダの「地下水道」のこのシーンを思い出しちゃんですよね…。全然文脈が違うんですけど。



 この本、序文にはSince the political and diplomatic background has been extensively covered by others ... ,  I have concentrated on the military operations, and in particular on providing a synthesis accessible to the general reader and a succinct overview of what happened and how.なんて書いてあって、おお、ウォーゲーマー向けじゃんとうれしくなりました。そもそもこの戦いのことは全然知らなくて、アントニー・ビーヴァ―の"Russia: Revolution and Civil War 1917-1921"ではThe Miracle on the Vistula  August-September 1920って章を読んだことがあるぐらい。なので軍事面に絞って簡単に書かれている本って自分にはありがたかったです。


 冒頭のほうで赤軍とポーランド軍の兵や装備について説明してくれているんですけど、方や革命後の内戦期、方や第一次世界大戦後に独立したばっかりということで、両軍ともにまあ雑多な感じ。The only really successful combination of firepower with mobility was the Russian tachanka.なんて書いてあって、タチャンカって何? って思ったらこんなのだったんですね。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%AB

それと、The twenty-year- old Vassili Chuikov and the young Georgi Zhukov, ... had already been given regiments to command.なんてこともちらっと書いてあってちょっとうれしくなりました。


 1920年はポーランドがキエフあたりまで攻め込んだ後、逆にワルシャワまで赤軍が迫り、さらにポーランドが反撃という激しいシーソーゲームだったようですけど、なんでそんなふうになったのかなって思っていたら、地形や補給状況などのほかに、ロシア内戦について

Desertion was instinctive when things started going badly. Entire divisions changed sides, and some managed to change back again when the fortunes of war deserted their new ally. This meant a minor setback, if unchecked, could turn a recently victorious army into a disintegrating rabble within a short space of time.

って書かれていて、そういう要素も影響したのかなって思いました。ロシア兵には赤軍への忠誠はまだがっちり浸透していなかったんでしょうかね。


 筆者のルーツからしてポーランドに肩入れした内容になっているのかな、と思ったんですけど、読んだ印象だと中立的な視点で書いているように感じました。まあこの当時の政治状況は全然知らないんですけどね。1920年4月にポーランドが攻勢を開始したことについては、The Polish offensive ... appeared to the outside world as an unprovoked invasion of Russia.なんて書いてあったのも意外でした。まだ欧米諸国や日本が干渉戦争や白軍への軍事支援を続けていたころじゃないの?


 序文で軍事面に集中した、なんて言っているとおり、適度に戦況図が載っていて両軍の動きがよくわかりました。でもね、a kind of encounter that had been banished from Europe with Napoleonなんて書いてあるエピソードがあって、どういうこと? って思っていたら、騎兵同士がサーベルで一騎討をするんですよね。ポーランド軍と赤軍が対峙していて、すでに夕暮れ時なんですが、A colourfully-dressed rider galloped out of the swarm of Cossacks on a magnificent black charger and, waving his sabre above his head, shoutedって感じで戦いを挑むんですよね。その挑戦を受けたポーランド軍の士官がサーベルを左手に持ち、右手とともに十字を作って敵騎兵に向かっていくという、なんか映画のワンシーンになりそうなことが描かれていました。


 まあほかにも、ワルシャワ攻防戦はポーランド軍もぎりぎりでしのいでいたとか、トハチェフスキーは意外と後方から指揮していたんだなとか、知らないことばかりで最後まで飽きなかったです。文章もうまいし。本文は140ページ弱しかないのでサクッと読めます。1920年のヴィスワ川の奇跡について知りたい人にはお勧めなんじゃないでしょうか。


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ヴィスワ川の奇跡と、赤軍とポーランド軍の壮大なシーソーゲーム 『ワルシャワ1920』

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