2025年8月7日木曜日

アントニー・ビーヴァ―『革命と内戦のロシア 1917-21』

 アントニー・ビーヴァーっていったら『スターリングラード』とか『ベルリン陥落1945』とか多くの著作があって、ウォーゲーマーにはおなじみの作家では。自分も『スペイン内戦』とか面白かったんですけど、今回読んでみたのは約百年前のロシア内戦を描いた『Russia: Revolution and Civil War 1917-1921』。

 ロシア革命についてはまあいくつか本を読んだことありますが、その後の内戦についてはほとんど知識がなくて。VaeVictis75号のLa Bataille de Orёlは持っていて、ヒストリカルノートも今回ふんふんと読んでみたんですが、1919年9月から10月にかけてのデニーキンの攻勢と赤軍の反撃という、時期的にも地域的にもかなり限定された記事。広大なロシア全土で何年にもわたって繰り広げられた内戦の全体像を知るには物足りませんでした。


 その点、『Russia: Revolution and Civil War 1917-1921』は500ページちょいあって読みごたえがありました。でもね、半分ぐらい読んでから、あれ、そういえばビーヴァーの本って結構和訳出てるよね。もしかしたらこの本も…と思って調べてみたら、白水社から『革命と内戦のロシア 1917-21』って邦題で上下二巻が出てましたよ。しかも出版されたの今年じゃん。和訳があるんだったらそっち読めばよかったよ。とほほ…。でもペーパーバックは中古で千数百円で買えたからいいんですよ。白水社さんすみません。

 この本、読む前からわかっていたことなんですが、いやもう敵味方ともにひどいというか凄惨な残虐行為を行っていて、読んでいるともう勘弁してと言いたくなりました。アンジェイ・ワイダの「カティンの森」のラストシーンが思い出されてしまったんですけど、たぶんあれとは比較にならない冷酷かつ残虐な処刑が行われたんでしょうな。マジで鬱展開…。この本の最後は以下の二文で結ばれているんですけど、まさにそんな感じでした。

All too often Whites represented with the worst examples of humanity. For ruthless inhumanity, however, the Bolsheviks were unbeatable.


 でも、そんな悲惨な状況が何年も続いても、文学や音楽、バレエや絵画といった文化の伝統が現代まで連綿と受け継がれていて、人間ってすごいなって逆に希望が湧いてきましたよ。あれ、自分、今いいこと言った?


 まあそういった凄惨な場面の描写だけでなく、赤軍や白軍の展開や、独立を目指すバルト三国をはじめとした旧ロシア帝国内の各国の動き、それに有名なチェコ軍団や列強の干渉などもちゃんと描かれています。チャーチルがなんとかボルシェビキ政権をつぶそうとして躍起になっているけど結局失敗しているのは、なんかざまーみろって感じでした。チャーチル・ファンのかた、すみません。それはさておき、ロシア内戦での英軍の動きも結構描かれています。

 あと日本人的にはシベリア出兵だと思うんですが、自分のシベリア出兵に関する基礎知識は『乾と巽 -ザバイカル戦記-』なんですよ。ははは。で、日本軍はどんなふうにこの本で描かれているのかなって思っていたら、米軍人の記録が載せられているんですけど、日本軍はYoshewaraを連れてきていたって書かれているんですよね。え、これって吉原のこと? 「べらぼう」やってるし、なんてタイムリーな……なんて思ったりしたんですけど、Each of their solders is given a certain allowance of Yoshewara tickets, which they use or trade, or gamble with them, as they see fit it.なんてなことも書かれていて、複雑な気持ちになりました。


 とにかくいろいろと考えさせられることが多かったこの本。10月革命前のボルシェビキについて描写してところで、One of the Bolsheviks' great strengths at a time when the masses had little political sophistication was to make their orators repeat slogans, not to try to convince their audience through argument (a technique which still seems to work). なんて筆者がボソッと書いていて、ほんとそうだなって思ってしまいましたよ。

 


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