2025年2月27日木曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part4

  ランカスター軍は左翼(マップ右方)のサマセットがなんとか態勢を立て直そうとするも、右翼のパーシーが続かず。ヨーク軍はトマス・ネヴィルが正面のサマセットの部隊を攻撃。ヨーク軍がさらに追い打ちをかけようとしたところで、ランカスター軍がたまらずSeizureカウンターを使用する。敵を波に乗らせてはいけない。ここで流れを切らなくては。60%の確率だったが継続奪取に成功。サマセットがトマス・ネヴィルに反撃する。

 だがまたもパーシーが続かない。自由活性を得たヨーク軍は、ヨーク公が自ら動く。配下のネヴィル一族だけに戦わせたまま高みの見物をするヨーク公ではないわ! 正面のパーシーの部隊に猛攻、損害を与えていった。

 よし、ソールズベリーよ、ヨーク公に続け。敵に息つく暇を与えずに畳みかけるのだ! だが継続活性に失敗。おいおい、活性化値5が泣くぞ。

 自由活性を得たランカスター軍は援軍登場チェックを行う。このゲームではランカスター軍の増援は同軍の自由活性のたびに10面体サイコロを振って登場するかを決める。登場に失敗するごとに次から+1DRMされるため、時間がたつほど登場する可能性が高まるのだ。サイの目にDRMをプラスして12以上だとマップ左端下方からウィルトシャー伯ジェームズ・バトラーの部隊が、そして14以上だとマップ右端からジョン・クリフォード卿の部隊が登場する。今回はDRM+4。そしてサイの目は……9! 待ちに待った援軍が来たぞ! 増援の到着に士気が上がったか、ランカスター軍は自由活性終了時の敗北チェックにも耐えた。

 敵が背後から現れただと! だが眼前のランカスター軍はあと少しで士気崩壊する。やるかやられるかだ。このまま攻撃を続けて先に敵を倒すのみ。ヨーク公が陣頭に立って熾烈な攻撃を加え、全軍の士気を鼓舞する。次々と敗走していくパーシーの兵たち。ランカスター軍の敗走ポイントは14に上ったものの、ギリギリのところでランカスター軍は敗北チェックに耐えた。だがすかさずヨーク軍中央のソールズベリー伯がヨーク公に続く。マップ上端に追いつめたランカスター軍をさらに押し込んでいった。

 ランカスター軍は増援として現れたウィルトシャー伯を急進させる。サマセットたちが持ちこたえている間にヨーク軍を背後から襲うのだ。今回もランカスター軍は敗北チェックをしのいだが、激戦に疲弊したかサマセットが継続活性に失敗し続かない。

 背後の敵にかまうな、パーシーとサマセットにとどめをさせ、とヨーク公が猛攻。重装騎兵2ユニットの集中攻撃ですでに混乱状態だったパーシーの歩兵を蹴散らす。そのまま勢いに乗ってヨーク公が敵軍旗に迫り、敗走状態の歩兵を壊滅させた。まだまだ終わらんよ、狙うはパーシーの首!と、混乱状態の歩兵とともにいるパーシーを歩兵2ユニットで攻撃。だがパーシーの兵は斜面の上に位置するという地形にも助けられ、ヨーク軍の攻撃に耐えた。ランカスター軍の敗走ポイントはすでに15。だがまたも敗北チェックに耐える。ランカスター軍の悪運もそろそろ尽きるはず、ソールズベリー伯よ、とどめをさせ、と思いきや、伯は動かず。どうした?!

 ヨーク軍の連携が乱れているを見て、ランカスター軍増援のウィルトシャー伯がソールズベリー伯の後方からチャージ!+3DRMでネヴィルは混乱、継続攻撃でネヴィルのMM壊滅、ネヴィル戦死! さらにヨーク公の長弓兵を後方と側面からInf2ユニットが攻撃、損害を与える。おし、罠にかかったヨーク軍をこのまま挟撃だ!

 だがランカスター軍の粘りもここまでだった。敗北チェックのサイの目は5。積み重なる損害に耐えきれず、ランカスター軍は士気崩壊、背後から襲われながらも勝ちを収めたのはヨーク軍となった。

 こうしてヨーク公リチャードが護国卿として覇権を握る状態が続くことになる。でも、あれ? リチャードのイケメンの息子、マーチ伯がエドワード4世として王位に就くのはかなり先になるってことですかね。


2025年2月23日日曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part3

  連続しての攻撃をヨーク軍による継続奪取でくじかれたランカスター軍。やられたらやり返せ、敵に流れを渡してなるものかと、今度はランカスター軍がSeizureカウンターを使用する。右翼(マップ左方)で指揮官が突出しているパーシー隊を動かそうとするも、継続奪取に失敗。逆にヨーク軍に自由活性を与えてしまった。

 

 Men of Ironシリーズは活性継続にはサイコロによるチェックが必要で、先ほどのリチャード・ネヴィルのように動くと思っていた部隊が動かなかったり、意外なところで意外な部隊が動いたりしてゲームをスリリングなものにしているのだが、Seizureカウンターがさらに緊張感を増してくれている。Seizureカウンターには戦闘を有利にするものなどもあるが、敵の活性継続時に継続奪取を試みることができるカウンターもあり、効果的に使用すると敵に対する心理的ダメージも大きい。敵に対応する暇を与えず自軍部隊で連続攻撃、と意気込んでいたら、敵に活性をかっさらわれてしまうわけである。

 ただ継続奪取を試みる側にもリスクがある。サイコロを振って奪取に成功するかチェックしなければならないのだが、失敗した場合は敵に自由活性が与えられる。Men of Ironシリーズでは同じ部隊が連続して活性化することは基本的にできないのだが、自由活性を得たプレイヤーは自軍の部隊を自由に選んで活性化できるため、活性奪取直前に活性化した部隊も動かすことができる。要は、継続奪取に失敗すると敵プレイヤーは同じ部隊を2回連続して活性化することもできるようになるのだ。


 敵の継続奪取失敗で自由活性を得たヨーク軍は、左翼のヨーク公を動かす。継続奪取に失敗して落ち込むランカスター軍プレイヤーに対しダメ押しとばかりに、ヨーク軍はSeizureカウンターのUnsteady Troopsを使って敵右翼(マップ左方)パーシーの歩兵を混乱状態にする。

「イングランド王ヘンリー6世を手中におさめ、このままいけばイングランドの実質的な支配者になるかもしれないヨーク公。そのヨーク公が陣頭に立って攻撃してくるのを見てパーシーの兵たちは動揺したんだよね」

と得意げなヨーク軍プレイヤー。混乱した歩兵をヨーク公が重装騎兵2ユニットで攻撃すると、ランカスター軍の兵たちは散り散りになった。さらに突出しているパーシーの歩兵に対し射撃で損害を与えた後、白兵戦でとどめを刺した。


 ヨーク公の部隊の奮戦で敵パーシー隊はかなりの損害を被った。いけ、ソールズベリー伯、たたみみかけろ。だが、またも継続に失敗。

「おいおい、活性化値5ってかなり優秀なはずだろ。能力を出し惜しみしなくてもいいんだよー」


 またも敵の連携の悪さに助けられたランカスター軍。パーシーが残存の兵をかき集めて戦列を敷く。耐えろ、時間を稼ぐのだ。待っていれば必ず援軍が現れる。サマセットは防御を固めつつ、射撃でヨークの長弓兵を敗走させた。

 そんなランカスター軍にヨーク軍は猛攻を加える。まずは右翼のトマス・ネヴィルが長弓兵で正面サマセットの歩兵を混乱させ、そこにトマス自ら突撃。たまらずサマセットの歩兵は壊滅、そして下馬状態の騎兵(UH)にもネヴィルの重装騎兵が突撃し混乱させた。続けてヨーク軍中央のソールズベリー伯が活性化。ここでも射撃で混乱させ歩兵で白兵戦、というコンボ攻撃でサマセットの長弓兵が敗走する。そして息子のトマスに続け、とソールズベリー伯も重装騎兵を率いて突撃、だがなんとサイの目ゼロが出て両者混乱となってしまった。ランカスター軍に対応する暇を与えずに、トマス・ネヴィルが再び動く。ネヴィル親子の連携攻撃である。射撃と白兵戦で敵を敗走させ、先ほど混乱状態にした下馬騎兵にトマスが3ユニットの集中攻撃で蹴散らす。そしてさらにソールズベリー伯が継続活性に成功。

「げ、ヨーク軍の活性が4回続くの? 対応できないじゃん」

「ふっ、ソールズベリーの活性化値5は伊達じゃないんだよ」

「ソールズベリー、これまで継続活性に結構失敗してましたけど?」


 ネヴィル一族の怒涛の連携攻撃でランカスター軍の敗走ポイントは12に上った。このゲームのランカスター軍の敗走レベルは18。自由活性化が終わるごとに敗北チェックで10面体サイコロを振り、敗走ポイントとの合計が敗走レベルを越えたら負けである。つまり現時点ですでにランカスター軍は30%の確率で敗北チェックに失敗してしまう状況となっている。一方、ヨーク軍はいまだ2である。ランカスター軍の援軍は間に合うのか。


つづく

---------------------

C3i誌を出されていたRodger MacGowan氏の訃報が届きました。長年ウォーゲーム界に大きな貢献をされてきた氏のご冥福をお祈りいたします。

なお、カリフォルニアの火災で大きな被害を受けた氏のご家族への寄付は今も受け付けられています。

Support Rodger, Mae and Steven post-Palisades Fire


2025年2月22日土曜日

(幕間)『薔薇戦争 ― 兵たちの体験』……なのか?

  薔薇戦争関連の書籍を探していて見つけたのが、そのまんまのタイトル『The Wars of the Roses』という本。The soldiers' experienceというサブタイトルに惹かれて読んでみました。



 薔薇戦争における王や貴族たちの動機や運命について、歴史家たちは多くの研究を重ねてきた。だが、あの戦争の参加者の大多数は庶民だったのだ。庶民たちの体験はどんなものだったのか? 彼らはどのような人々だったのか? 


なんてなことが裏表紙に書いてあって、期待値が上がります。さっそく読んでみると、序文で筆者が、普通の兵たち、その態度や経験に興味を持ったって書いてますし。戦場で兵たちがどんなふうに戦ったのか、装備とかだけでなく、負傷したときはどうしたのかとか、行軍や野営中にどんなことしてたのかとか、当時の兵たちのビビッドな声が聞けるんだろうな、だって筆者は中世後期のイギリスが専門分野の大学教授だもんな、当時の一次資料を渉猟したんだろうな…


 とわくわくしながら読み進めると、あれ、なんか違う。全然個人個人の体験が出てこないじゃん。レビューを見てみると、「もっと一人称の経験が引用されていたらよかった。兵たちはどういう人たちだったのか。動機は?生活は?」なんてのがあって、先にレビューをチェックしておけばよかったよと思いました。とほほ。


 まあでも、つまらなかったかというとそうではなくて、かなり勉強になりました。というか序文で、14世紀から15世紀初頭の記録者たちは、弓兵やビルメンたちの半狂乱の戦い方にも、野営地で焚火を囲んでのリラックスにも関心がなかった、と資料の無さに触れているんですよね。普通の兵たちのメンタリティについてのある種のバックグラウンドを提供しようと試みた、イングランドやウェールズの「くずども」たちについてぼんやりとした輪郭を描き出せたらいいと思う、なんて筆者は最初に断っているので、小説に出てくるようなビビッドな描写を期待するのが間違いなんですけどね。

 

 個々の兵士の体験というよりは、主要な貴族の行動に焦点を当てるのではなく社会・軍事的な状況を分析した、というほうがこの本の内容としてはふさわしいんじゃないかと思います。薔薇戦争前の数十年間、イギリスの生活は比較的平和だという期待が、城や市壁の強化を怠ることに反映された、なんて書かれていて、非常に多くの城の防御施設が廃墟状態になっていたことが、薔薇戦争で攻囲戦がほとんどなかったことの説明に役立つ、とか。No mention has been found of clerical contingents in the Warsという指摘も、そういやそうだなと改めて気が付きました。イギリスでの反乱は14世紀には特徴的になってきていたそうで、they were short in duration, they did little to disrupt or damage society, and, with the exception of the battle of Shrewsbury, they did not lead to large-scale spilling of commoners' blood.だそうです。ふーん、だからあれだけ薔薇戦争で内戦続けられたのね。

 ほかにも、Welsh warfare was of a cruel kind more often found in the continent than in Englandなんてのも、『ヴィンランド・サガ』でにわかウェールズファンになった身としては結構気になったかな。English tradition favoured open rebellion over covert plots, as chivalrous, manly and honourable.なんてことも書かれていてちょっと意外。陰謀をめぐらすよりは、「上等だ、表出ろ!」って感じの脳筋っぽいのは結構好きなんですけどね。In the small and internally demilitarised landscape in England, members of a highly militarised nobility could speedily mount a formidable challenge in the field to a king.だそうですけど。


 あと、WW2のモンゴメリーが出てきたのがウォーゲーマー的には目を引きました。兵たちの士気の点では、戦場における指揮官の態度と戦闘前の軍への演説は重要な要素だっただろうという至極当然の指摘に続けて、現代の戦争でもこれは続いている。ウェリントン公は感情をあらわにすることを軽蔑していたかもしれないが、第二次世界大戦ではモンゴメリー将軍が中世の先例に続いた。モンゴメリーはspeaking with studied simplicityだそうですけど、ウェリントン公とモンゴメリーの演説を調べたくなりましたよ。薔薇戦争じゃないけど。


 とまあ、気になったところを挙げていくと次から次に出てくる本なのでした。The soldiers' experienceっていうサブタイトルに半ば騙されたけど、結果的に自分としては読んでみてよかったと思います。


2025年2月18日火曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part2

  ヨーク軍は左翼ヨーク公、中央のソールズベリー伯と活性化が続いたが、さらにヨーク公が再び活性化。左翼(マップ左方)から全力で攻撃する。先ほどの突撃で混乱状態だったランカスター軍歩兵は重装騎兵の攻撃で壊滅。怒涛の波状攻撃でヨーク軍がランカスターの戦列に食い込んだ。


 ここでやっとランカスター軍の自由活性が回ってくる。右翼(マップ左方)のパーシーの部隊がヨーク公に反撃。敵の好きなようにさせてたまるか。指揮官パーシーが陣頭に立ち、突出している敵歩兵に打撃を加えた。

 続いて左翼(マップ右方)サマセット公が動く。敵最後尾のトマス・ネヴィルの部隊が遅れていて右翼(マップ右方)が手薄になっているのを見て取るや、歩兵が前進。敵の射撃を避けるようにして長弓兵の側面に回り込み、白兵戦をしかける。歩兵2ユニットの攻撃でソールズベリー伯の長弓兵は混乱状態となった。

「あれ、ランカスター軍は反撃なんかせず守りに徹したほうがいいんじゃないの? 増援が来るまで時間を稼げばいいんだしさ。無理に攻撃して、下手したら自滅するよ」

「いやいや、そんな口車には乗るかっての」


 先述のようにランカスター軍はほとんど歩兵のみの一方、ヨーク軍は歩兵のほかに長弓兵と重装騎兵も擁しバランスのいい兵種構成となっている。重装騎兵は白兵戦で攻守ともに歩兵に対して有利に戦えるし、長弓兵の射撃で混乱させたところに重装騎兵を突っ込ませたり歩兵で白兵戦をしかけたり、というコンボ攻撃もヨーク軍は可能なのだ。そのためランカスター軍は少々のリスクを冒しても適宜反撃して敵の攻撃力を削いでいく必要があると思われる。でもまあ、ヨーク軍中央のソールズベリー伯の活性化値5を考えると、反撃に出たはいいけれどもヨーク軍が連続して活性化してボコボコにされる、という可能性も高いのだけれども。


 ランカスター軍の反撃に対し、ヨーク軍は素早く対応。最後尾にいたトマス・ネヴィル自らが重装騎兵を率いて突撃。ソールズベリー伯の長弓兵に対する攻撃のため側面をさらけ出していたランカスター軍歩兵はたまらず壊滅する。トマス・ネヴィルの勢いは止まらず、さらに継続攻撃で敵歩兵1ユニットに損害を与えた。

 このトマス・ネヴィル、同じくウェイクフィールドで戦っているソールズベリー伯の息子である。有名なキングメーカー、ウォリック伯はトマスの兄にあたる。つまりウェイクフィールドの戦いではウォリックの父親と弟が加わっていたのだけれども、二人ともこの戦いで亡くなっている。ソールズベリー伯はウェイクフィールドの戦いの前年にブロア・ヒースでランカスター軍に大勝するなど有能な指揮官だったようで、このゲームでは活性化値が5とかなり高い。「薔薇戦争」(GJ)でもヨーク派貴族として登場しており、星二つの2-7である。ちなみにトマスのほうは31歳と比較的若くして亡くなったせいかぱっとした戦歴がなく、父親が大勝したブロア・ヒースの戦いでは逆にランカスター軍の捕虜になったりしている。うーん、兄のウォリックとなんかかなり差があるなあ。


 息子に救われた形になったソールズベリー伯。トマスに続け。ネヴィル家の団結力をみせてやるのだ。だがソールズベリー伯は継続活性に失敗して動かず。あれれ。活性化値5はどうしたんだよ。

 

 敵の連携が乱れている隙に、ランカスター軍は右翼(マップ左方)のパーシーがヨーク公に反撃。突出していた混乱状態の敵歩兵を壊滅、斜面を下ってそのままパーシー自ら敵陣に切り込んだ。ヨーク公の歩兵はその勢いを押しとどめることができず後退してしまう。

 

 おし、このモメンタムを持続させるのだ。活性化値4と優秀なサマセット伯がマップ右方でも攻撃、と思いきや、そうはさせじとヨーク軍がSeizureカウンターを使用。継続奪取に成功し、右翼(マップ右方)のトマス・ネヴィル隊を活性化。「マジかよ、このまま勢いに乗りたかったのに」とぼやくランカスター軍プレイヤーを尻目に、先ほどトマス自らの突撃で混乱状態にしていた敵歩兵にとどめを刺し壊滅させた。

つづく


2025年2月14日金曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part1

  薔薇戦争の初期の1460年、王位を狙うヨーク公リチャードはヘンリー6世を捕え、マーガレット王妃をはじめとするランカスター派に対して戦いを有利に進めていた。だが12月30日にウェイクフィールドの戦いで数的優勢なランカスター軍に大敗を喫し、ヨーク公は戦死してしまう…というのが今回のゲーム「The Battle of Wakefield」である。Men of Ironシリーズの一つで、C3i誌の31号に付いたもの。なんでこれをプレイしたかというともちろんMoIが好きだから、というのもあるんだけど、ウォーゲーマーだったらよく知っているようにカリフォルニアの火災でRodger MacGowan氏の自宅兼仕事場が焼失してしまって、C3i製作に必要な機材などもなくなってしまったという衝撃的なニュースが1月にありまして。少しでも応援になればとC3iのゲームをプレイすることにしたわけです。いやプレイだけじゃなくてゲームも買えよ自分。ちなみにMacGowan一家への寄付はこのブログを書いている2月13日現在も受け付けています。

Support Rodger, Mae and Steven post-Palisades Fire


 このウェイクフィールドの戦い当時、ヨーク公はサンダル城に入って援軍を各地から集めようとしていた。だが食料調達に出た兵たちが敵と小競り合いを始めたのを見て、城から打って出る。そしてランカスター軍の待ち伏せをくらい両翼から包囲されて惨敗した―とよく言われているらしい。だがデザイナーは、数千のランカスター軍が布陣していたのならサンダル城からも見えたはずで、数的に劣勢だとわかっているヨーク公がわざわざ城から出て敵の罠の中に突っ込んでいくなど馬鹿げたことをやるはずがない、と書いている。まあ、12月の末なんで降雪や悪天候で視界が悪かったからヨーク公も敵の状況を誤認した、という説もあるらしいけど。いずれにせよ突出したヨーク軍に対し待ち受けていたランカスター軍が挟撃、というのはゲームのシチュエーションとしては面白く、このゲームでもランカスター軍の増援がマップ左右の両端から登場しヨーク軍の側面や後方を襲う、という形をとっている。増援が現れる前にランカスター軍を敗北に追いやりたいヨーク軍、かたやランカスター軍はひたすら耐えて増援を待つ、という展開になる。

 初期配置は写真のとおり。ヨーク軍の各部隊は歩兵(Infantry, Inf)、長弓兵(Longbow, LB)、重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)と兵種のバランスが取れているのだが、部隊ごとの兵力は少なく、各部隊5~6ユニットとなっている。一方のランカスター軍はほとんどが歩兵で、長弓兵は各部隊に1ユニット、重装騎兵はサマセットの部隊にのみ1ユニットだ。ただしランカスターの両部隊とも歩兵を8ユニット擁しており、増援が現れるまでひたすら防御するのには向いているのかもしれない。


 というわけでプレイ開始である。

「敵の増援? んなもん気にすんな。初っ端からフルスロットルで攻撃!」

 ヨーク軍は全部隊を急進させ、左翼(マップ左方)のヨーク公から攻撃をしかける。敵長弓兵を射撃戦で混乱状態にし、そこに歩兵が切り込んだ。たまらずランカスター軍の長弓兵は散り散りになって軍旗まで敗走。さらにヨーク公の部隊の最左翼では重装騎兵2ユニットが降り積もった雪を蹴散らしながら突撃、敵歩兵を混乱状態に陥らせた。

 続いてヨーク軍中央のソールズベリー伯リチャード・ネヴィルがヨーク公を支援。長弓兵でランカスター軍唯一の重装騎兵に射撃を加える。Men of Ironシリーズでは重装騎兵は射撃を受けた場合、条件さえそろえばカウンターチャージが行える。チェックに成功しさらに射撃でも損害を受けなかった場合、射撃をしてきた長弓兵ユニットに突撃ができるのだ。

 だが、たしかにカウンターチャージに成功すれば敵長弓兵を敗走させられる可能性が高いが、その結果重装騎兵が単独で突出することになる。ランカスター軍は増援が到着するまで防御に専念していればいいのだ。敵の挑発に乗ることはない。

 そう考えて自重したランカスター軍だが、百年戦争でもその威力を発揮したロングボウによって強制下馬(Unhorsed)の結果を被る。強力なはずの重装騎兵が、歩兵よりも脆弱なユニットになってしまった。

「げ、ランカスター軍唯一の騎兵ユニットなのに、馬をなくしちゃったの?! My kingdom for a horse!」

「そのセリフ、言っていいのはリチャード三世だけだからね」

つづく


おまけ。出先でぶらぶらしていたらたまたま見つけたウェイクフィールド通り



2025年2月1日土曜日

アイラウの親衛隊、動く 「La Garde veille!」(VV178)

  VaeVictis最新号の発売が遅れたので日本にもいつ届くのかなーっていうブログを昨日書いたばかりですが、届きましたよ、VV178号。ははは。まあ、もしかしてアイラウ戦の日に届くのかな、なんてなこと書いたのももう先月の話だしね。


 今号のゲームはアイラウの親衛隊ということで、例によってアイラウ戦のことも全然知らないからヒストリカルノートを読んでみました。でもメインタイトルあたりにLA GARDE DONNE!なんて見出しがついていて、ん?どういうこと?donnerって与えるって意味だよね、といきなり戸惑いました。ヒストリカルノートによると、アイラウ戦までは親衛隊が投入されたのはマレンゴとアウステルリッツだけで、Bulletin de la Grande Armée(大陸軍広報って訳せばいいんですかね)は通常、La Garde n'a pas donné.という文言で終わっていたそうです。この文言、「親衛隊は投入されなかった」とか「親衛隊は動かなかった」とかいう意味になると思うんですけど、定訳あるんですかね。でもほんと、donnerにそういう使い方があるって知らなかったので勉強になりました。まあそれはともかく、ヒストリカルノートのLA GARDE DONNE!(親衛隊、動く!)ってのは大陸軍広報の常套句を踏まえての言葉なんでしょうね。

 話がずれちゃったけど、ヒストリカルノートには結構名セリフが紹介されていて、ナポレオンのいるアイラウ村にロシア軍の激しい砲撃が降りかかってきたときに親衛隊騎兵を率いるLous LepicがHaut les têtes, la mitraille, c'est pas de la merde!(頭を上げろ、砲弾だ、糞じゃないぞ!)と檄を飛ばしたとか。この言葉、普通はなんて訳されているんですかね。ちなみに今号のゲーム「La Garde veille!」の2つのシナリオのうち一つは、Lepicによる親衛隊騎兵の突撃を扱っています。

 ほかには、仏軍が苦境に立った時に親衛隊が反撃するんですけど、その際に擲弾兵を率いていたDorsenneが言ったセリフ、Halte au feu grenadiers, et l'arme au bras, la Vieille Garde ne se bat qu'à la baïonnette!(射撃をやめよ、擲弾兵たちよ、そして武器を構えよ。老親衛隊は銃剣でのみ戦うのだ!)とか。うーん、いいですなー。しかし毎回思うんですけど、通常は日本語にどう訳されているのかな。知識の無さをいつも痛感します。


 ええと、なんかヒストリカルノート紹介みたいになってしまいましたが、VV178号の付録「La Garde veille!」は2つのシナリオ両方とも4ターンしかなく、ユニット数もかなり少ないのでサクサク遊べるんじゃないと思います。しかしこのタイトル、最初は「La Garde vieille!」(老親衛隊!)って間違って読んじゃったよ。たぶん狙ってるよね。違う?まあ自分、仏語はよくわからないんですけど。

 悪天候を反映して砲撃の効果が薄れていたり、ちょっとした特別ルールはありますが「La Garde Avance!」やほかのJours de Gloireシリーズをやったことがあればすぐにプレイできるんじゃないかと。老親衛隊の反撃のシナリオではアイラウ村を防衛していた仏第四軍団の歩兵はユニット化されず、村へクス固有の防御値、みたいな処理になっていて、「La Garde Avance!」同様に親衛隊の攻撃に集中できるようにデザインされている印象。

 また、アイラウの教会は仏軍の野戦病院になっていたそうで、ゲームでは負傷兵ユニットなんてのがあったり、仏軍医のLarreyがユニットになっていてロシア軍の手に落ちるとVPが発生するとか(なので仏軍は必死に守らないといけないんでしょうね)、ちょっとしたフレイバー付けがしてあります。あと、JdGシリーズではゲーム終了時に敗走したり壊滅しているユニットは敵の得点になるんですけど、鷲のマークがついている親衛隊ユニットのVPが高いこと高いこと。ロシア軍にも擲弾兵マークがついているユニットが一部あって、通常ユニットより高VPにはなっているんですけど、仏軍は損害を抑えつついかに戦うかがポイントになってくるのかなあ。

 ということで時間を見つけて早くプレイしてみようと思います。ミニミニゲームだしね、気軽にやってみようかな。まあその前にもっとアイラウ戦について勉強しないと。


親衛隊は、銃剣だけで戦うのだ! La Garde veille! (VV178) AAR part6

 ●第5ターン  最終ターンである。先に動いたのはロシア軍だった。前ターン最後に墓地の攻撃に成功した左翼(マップ下方)のDokhtourovが、今度は教会を守るBruyèresの騎兵を側面から攻撃。仏軍を撃退し、教会の占領に成功する。これでさらにプラス4勝利得点である。さらに露軍...