2025年2月18日火曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part2

  ヨーク軍は左翼ヨーク公、中央のソールズベリー伯と活性化が続いたが、さらにヨーク公が再び活性化。左翼(マップ左方)から全力で攻撃する。先ほどの突撃で混乱状態だったランカスター軍歩兵は重装騎兵の攻撃で壊滅。怒涛の波状攻撃でヨーク軍がランカスターの戦列に食い込んだ。


 ここでやっとランカスター軍の自由活性が回ってくる。右翼(マップ左方)のパーシーの部隊がヨーク公に反撃。敵の好きなようにさせてたまるか。指揮官パーシーが陣頭に立ち、突出している敵歩兵に打撃を加えた。

 続いて左翼(マップ右方)サマセット公が動く。敵最後尾のトマス・ネヴィルの部隊が遅れていて右翼(マップ右方)が手薄になっているのを見て取るや、歩兵が前進。敵の射撃を避けるようにして長弓兵の側面に回り込み、白兵戦をしかける。歩兵2ユニットの攻撃でソールズベリー伯の長弓兵は混乱状態となった。

「あれ、ランカスター軍は反撃なんかせず守りに徹したほうがいいんじゃないの? 増援が来るまで時間を稼げばいいんだしさ。無理に攻撃して、下手したら自滅するよ」

「いやいや、そんな口車には乗るかっての」


 先述のようにランカスター軍はほとんど歩兵のみの一方、ヨーク軍は歩兵のほかに長弓兵と重装騎兵も擁しバランスのいい兵種構成となっている。重装騎兵は白兵戦で攻守ともに歩兵に対して有利に戦えるし、長弓兵の射撃で混乱させたところに重装騎兵を突っ込ませたり歩兵で白兵戦をしかけたり、というコンボ攻撃もヨーク軍は可能なのだ。そのためランカスター軍は少々のリスクを冒しても適宜反撃して敵の攻撃力を削いでいく必要があると思われる。でもまあ、ヨーク軍中央のソールズベリー伯の活性化値5を考えると、反撃に出たはいいけれどもヨーク軍が連続して活性化してボコボコにされる、という可能性も高いのだけれども。


 ランカスター軍の反撃に対し、ヨーク軍は素早く対応。最後尾にいたトマス・ネヴィル自らが重装騎兵を率いて突撃。ソールズベリー伯の長弓兵に対する攻撃のため側面をさらけ出していたランカスター軍歩兵はたまらず壊滅する。トマス・ネヴィルの勢いは止まらず、さらに継続攻撃で敵歩兵1ユニットに損害を与えた。

 このトマス・ネヴィル、同じくウェイクフィールドで戦っているソールズベリー伯の息子である。有名なキングメーカー、ウォリック伯はトマスの兄にあたる。つまりウェイクフィールドの戦いではウォリックの父親と弟が加わっていたのだけれども、二人ともこの戦いで亡くなっている。ソールズベリー伯はウェイクフィールドの戦いの前年にブロア・ヒースでランカスター軍に大勝するなど有能な指揮官だったようで、このゲームでは活性化値が5とかなり高い。「薔薇戦争」(GJ)でもヨーク派貴族として登場しており、星二つの2-7である。ちなみにトマスのほうは31歳と比較的若くして亡くなったせいかぱっとした戦歴がなく、父親が大勝したブロア・ヒースの戦いでは逆にランカスター軍の捕虜になったりしている。うーん、兄のウォリックとなんかかなり差があるなあ。


 息子に救われた形になったソールズベリー伯。トマスに続け。ネヴィル家の団結力をみせてやるのだ。だがソールズベリー伯は継続活性に失敗して動かず。あれれ。活性化値5はどうしたんだよ。

 

 敵の連携が乱れている隙に、ランカスター軍は右翼(マップ左方)のパーシーがヨーク公に反撃。突出していた混乱状態の敵歩兵を壊滅、斜面を下ってそのままパーシー自ら敵陣に切り込んだ。ヨーク公の歩兵はその勢いを押しとどめることができず後退してしまう。

 

 おし、このモメンタムを持続させるのだ。活性化値4と優秀なサマセット伯がマップ右方でも攻撃、と思いきや、そうはさせじとヨーク軍がSeizureカウンターを使用。継続奪取に成功し、右翼(マップ右方)のトマス・ネヴィル隊を活性化。「マジかよ、このまま勢いに乗りたかったのに」とぼやくランカスター軍プレイヤーを尻目に、先ほどトマス自らの突撃で混乱状態にしていた敵歩兵にとどめを刺し壊滅させた。

つづく


2025年2月14日金曜日

紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part1

  薔薇戦争の初期の1460年、王位を狙うヨーク公リチャードはヘンリー6世を捕え、マーガレット王妃をはじめとするランカスター派に対して戦いを有利に進めていた。だが12月30日にウェイクフィールドの戦いで数的優勢なランカスター軍に大敗を喫し、ヨーク公は戦死してしまう…というのが今回のゲーム「The Battle of Wakefield」である。Men of Ironシリーズの一つで、C3i誌の31号に付いたもの。なんでこれをプレイしたかというともちろんMoIが好きだから、というのもあるんだけど、ウォーゲーマーだったらよく知っているようにカリフォルニアの火災でRodger MacGowan氏の自宅兼仕事場が焼失してしまって、C3i製作に必要な機材などもなくなってしまったという衝撃的なニュースが1月にありまして。少しでも応援になればとC3iのゲームをプレイすることにしたわけです。いやプレイだけじゃなくてゲームも買えよ自分。ちなみにMacGowan一家への寄付はこのブログを書いている2月13日現在も受け付けています。

Support Rodger, Mae and Steven post-Palisades Fire


 このウェイクフィールドの戦い当時、ヨーク公はサンダル城に入って援軍を各地から集めようとしていた。だが食料調達に出た兵たちが敵と小競り合いを始めたのを見て、城から打って出る。そしてランカスター軍の待ち伏せをくらい両翼から包囲されて惨敗した―とよく言われているらしい。だがデザイナーは、数千のランカスター軍が布陣していたのならサンダル城からも見えたはずで、数的に劣勢だとわかっているヨーク公がわざわざ城から出て敵の罠の中に突っ込んでいくなど馬鹿げたことをやるはずがない、と書いている。まあ、12月の末なんで降雪や悪天候で視界が悪かったからヨーク公も敵の状況を誤認した、という説もあるらしいけど。いずれにせよ突出したヨーク軍に対し待ち受けていたランカスター軍が挟撃、というのはゲームのシチュエーションとしては面白く、このゲームでもランカスター軍の増援がマップ左右の両端から登場しヨーク軍の側面や後方を襲う、という形をとっている。増援が現れる前にランカスター軍を敗北に追いやりたいヨーク軍、かたやランカスター軍はひたすら耐えて増援を待つ、という展開になる。

 初期配置は写真のとおり。ヨーク軍の各部隊は歩兵(Infantry, Inf)、長弓兵(Longbow, LB)、重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)と兵種のバランスが取れているのだが、部隊ごとの兵力は少なく、各部隊5~6ユニットとなっている。一方のランカスター軍はほとんどが歩兵で、長弓兵は各部隊に1ユニット、重装騎兵はサマセットの部隊にのみ1ユニットだ。ただしランカスターの両部隊とも歩兵を8ユニット擁しており、増援が現れるまでひたすら防御するのには向いているのかもしれない。


 というわけでプレイ開始である。

「敵の増援? んなもん気にすんな。初っ端からフルスロットルで攻撃!」

 ヨーク軍は全部隊を急進させ、左翼(マップ左方)のヨーク公から攻撃をしかける。敵長弓兵を射撃戦で混乱状態にし、そこに歩兵が切り込んだ。たまらずランカスター軍の長弓兵は散り散りになって軍旗まで敗走。さらにヨーク公の部隊の最左翼では重装騎兵2ユニットが降り積もった雪を蹴散らしながら突撃、敵歩兵を混乱状態に陥らせた。

 続いてヨーク軍中央のソールズベリー伯リチャード・ネヴィルがヨーク公を支援。長弓兵でランカスター軍唯一の重装騎兵に射撃を加える。Men of Ironシリーズでは重装騎兵は射撃を受けた場合、条件さえそろえばカウンターチャージが行える。チェックに成功しさらに射撃でも損害を受けなかった場合、射撃をしてきた長弓兵ユニットに突撃ができるのだ。

 だが、たしかにカウンターチャージに成功すれば敵長弓兵を敗走させられる可能性が高いが、その結果重装騎兵が単独で突出することになる。ランカスター軍は増援が到着するまで防御に専念していればいいのだ。敵の挑発に乗ることはない。

 そう考えて自重したランカスター軍だが、百年戦争でもその威力を発揮したロングボウによって強制下馬(Unhorsed)の結果を被る。強力なはずの重装騎兵が、歩兵よりも脆弱なユニットになってしまった。

「げ、ランカスター軍唯一の騎兵ユニットなのに、馬をなくしちゃったの?! My kingdom for a horse!」

「そのセリフ、言っていいのはリチャード三世だけだからね」

つづく


おまけ。出先でぶらぶらしていたらたまたま見つけたウェイクフィールド通り



2025年2月1日土曜日

アイラウの親衛隊、動く 「La Garde veille!」(VV178)

  VaeVictis最新号の発売が遅れたので日本にもいつ届くのかなーっていうブログを昨日書いたばかりですが、届きましたよ、VV178号。ははは。まあ、もしかしてアイラウ戦の日に届くのかな、なんてなこと書いたのももう先月の話だしね。


 今号のゲームはアイラウの親衛隊ということで、例によってアイラウ戦のことも全然知らないからヒストリカルノートを読んでみました。でもメインタイトルあたりにLA GARDE DONNE!なんて見出しがついていて、ん?どういうこと?donnerって与えるって意味だよね、といきなり戸惑いました。ヒストリカルノートによると、アイラウ戦までは親衛隊が投入されたのはマレンゴとアウステルリッツだけで、Bulletin de la Grande Armée(大陸軍広報って訳せばいいんですかね)は通常、La Garde n'a pas donné.という文言で終わっていたそうです。この文言、「親衛隊は投入されなかった」とか「親衛隊は動かなかった」とかいう意味になると思うんですけど、定訳あるんですかね。でもほんと、donnerにそういう使い方があるって知らなかったので勉強になりました。まあそれはともかく、ヒストリカルノートのLA GARDE DONNE!(親衛隊、動く!)ってのは大陸軍広報の常套句を踏まえての言葉なんでしょうね。

 話がずれちゃったけど、ヒストリカルノートには結構名セリフが紹介されていて、ナポレオンのいるアイラウ村にロシア軍の激しい砲撃が降りかかってきたときに親衛隊騎兵を率いるLous LepicがHaut les têtes, la mitraille, c'est pas de la merde!(頭を上げろ、砲弾だ、糞じゃないぞ!)と檄を飛ばしたとか。この言葉、普通はなんて訳されているんですかね。ちなみに今号のゲーム「La Garde veille!」の2つのシナリオのうち一つは、Lepicによる親衛隊騎兵の突撃を扱っています。

 ほかには、仏軍が苦境に立った時に親衛隊が反撃するんですけど、その際に擲弾兵を率いていたDorsenneが言ったセリフ、Halte au feu grenadiers, et l'arme au bras, la Vieille Garde ne se bat qu'à la baïonnette!(射撃をやめよ、擲弾兵たちよ、そして武器を構えよ。老親衛隊は銃剣でのみ戦うのだ!)とか。うーん、いいですなー。しかし毎回思うんですけど、通常は日本語にどう訳されているのかな。知識の無さをいつも痛感します。


 ええと、なんかヒストリカルノート紹介みたいになってしまいましたが、VV178号の付録「La Garde veille!」は2つのシナリオ両方とも4ターンしかなく、ユニット数もかなり少ないのでサクサク遊べるんじゃないと思います。しかしこのタイトル、最初は「La Garde vieille!」(老親衛隊!)って間違って読んじゃったよ。たぶん狙ってるよね。違う?まあ自分、仏語はよくわからないんですけど。

 悪天候を反映して砲撃の効果が薄れていたり、ちょっとした特別ルールはありますが「La Garde Avance!」やほかのJours de Gloireシリーズをやったことがあればすぐにプレイできるんじゃないかと。老親衛隊の反撃のシナリオではアイラウ村を防衛していた仏第四軍団の歩兵はユニット化されず、村へクス固有の防御値、みたいな処理になっていて、「La Garde Avance!」同様に親衛隊の攻撃に集中できるようにデザインされている印象。

 また、アイラウの教会は仏軍の野戦病院になっていたそうで、ゲームでは負傷兵ユニットなんてのがあったり、仏軍医のLarreyがユニットになっていてロシア軍の手に落ちるとVPが発生するとか(なので仏軍は必死に守らないといけないんでしょうね)、ちょっとしたフレイバー付けがしてあります。あと、JdGシリーズではゲーム終了時に敗走したり壊滅しているユニットは敵の得点になるんですけど、鷲のマークがついている親衛隊ユニットのVPが高いこと高いこと。ロシア軍にも擲弾兵マークがついているユニットが一部あって、通常ユニットより高VPにはなっているんですけど、仏軍は損害を抑えつついかに戦うかがポイントになってくるのかなあ。

 ということで時間を見つけて早くプレイしてみようと思います。ミニミニゲームだしね、気軽にやってみようかな。まあその前にもっとアイラウ戦について勉強しないと。


紙の王冠なぞ被るか! The Battle of Wakefield (C3i Nr31) AAR part2

  ヨーク軍は左翼ヨーク公、中央のソールズベリー伯と活性化が続いたが、さらにヨーク公が再び活性化。左翼(マップ左方)から全力で攻撃する。先ほどの突撃で混乱状態だったランカスター軍歩兵は重装騎兵の攻撃で壊滅。怒涛の波状攻撃でヨーク軍がランカスターの戦列に食い込んだ。  ここでやっと...