2025年8月23日土曜日

『ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史』

  ラヴェンナっていったらイタリア戦争中のラヴェンナの戦い。Men of Ironシリーズの『Arquebus』(GMT)にもラヴェンナのシナリオが入っていて、陣地に籠って内線防御のスペイン軍と、攻めるフランス軍は複数の部隊を同時活性化させたり砲を川の向こう側に動かして敵陣を側面から砲撃したりと、結構変化に富んでいて面白いんですよね。『Arquebus』、再版されないかな。

 なので、たまたま『ラヴェンナ』っていうタイトルの本を見つけたときは興味を惹かれたんですが、この本は16世紀のイタリア戦争ではなく、西ローマ帝国崩壊後の中世前期の歴史。タイトルどおりラヴェンナを中心に描いています。この時代のイタリアってぼんやりとしたイメージしかなくて、世界史で勉強した東ゴート王国とかベルサリウスによる奪還とか、ピピンの寄進とかぐらい。で、いつの間にかローマ教皇が力持って叙任権闘争やったりしているという。数世紀にわたる期間で知っていることってこれだけかよ、これじゃいかんと思って『Ravenna: Capital of Empire, Crucible of Europe』を読んでみました。

 筆者Judith Herrinの別の著書『Byzantium: The Surprising Life of a Medieval Empire』ってのを読んだことがあるんですけど、結構読みやすかったんですよね。なので『Ravenna』を買ってみたというのもあるんですけど、でもね、『Byzantium: The Surprising Life of a Medieval Empire』のほうは『ビザンツ 驚くべき中世帝国』ってタイトルで和訳が出ているのは知っていたんですけど、ラヴェンナはさすがに無いだろうと勝手に思っていたんですよ。『Ravenna』を読んでいる途中に、もしかして、と思って調べてみたら、まんまと『ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史』って訳が出ていましたよ。とほほ。しかし日本の出版文化ってすごいなあ。

 『Ravenna』にはCapital of Empire, Crucible of Europeってサブタイトルが付いているんですが、え、どういうこと? 帝国の首都だったの? ラヴェンナってローマに比べたらあんまりメジャーな都市じゃないイメージがあって、帝都なんてとてもとても…って思っていたんですが、読んで納得しました。あとcrucibleのほうなんですけど、坩堝って意味のほかにa situation of severe trial, or in which different elements interact, leading to the creation of something newとかいう意味もあって、これも読んでいくと納得。ごめんなさい、ラヴェンナ。イタリアのただの地方都市って思ってたよ…。

 この本は4世紀末から9世紀初頭を主に扱っていて、西ローマ帝国の崩壊から東ゴート王国の成立、ユスティニアヌスによるイタリアの奪還、ランゴバルド王国の成立、フランク王国とローマ教皇の結びつきと、高校で習った世界史の知識がかなり肉付けされました。ローマ教皇って西欧のキリスト教世界ではかなり力を持っていたという印象があったんですけど、この時期はそれほどでもなくてラヴェンナと張り合っていたってのも意外。ラヴェンナがビザンツと西欧の結節点になっていた繁栄を誇っていたのが、フランク王国とローマ教皇の結びつきによってやっとローマが優勢になっていくみたいですけど、In place of the historic, culturally powerful and symbolic connection between Old and New Rome, a North-South axis was established to link Rome with transalpine Europe where the Franks were consolidated their powerだそうです。

 ラヴェンナがビザンツのイタリアでの拠点だったことから、ビザンツ史についても当然ながらかなり説明が割かれています。ビザンツ好きだったら読んで損はないかと。exarchateなんて単語、見たことあるけどこんなに繰り返し出てくる本は初めてでしたよ。というか、やっぱり自分の知識って西欧中心の世界史が基になっているんだなあって改めて実感しました。

 それと、Romanって単語が頻繁に出てくるんですけど、そのうちRamenって見えてきてしまいまして。Roman Empireってラーメン帝国かあ、いいなあ、と……。いやいや、いかんいかん、暑さで頭がちゃんと働いていないのかな。それとも単に腹が減っているだけなのか…。

 もちろん、叙述の中心はラヴェンナについてで、この著者の『Byzantium: The Surprising Life of a Medieval Empire』のほうもそうでしたけど文化面についてもかなり充実。ラヴェンナに行っていろんな建築を見に行きたくなりましたよ。カール大帝がアーヘンをローマではなくラヴェンナを見習っていろいろ建築して行ったってのも意外でした。

 相変わらず知らないことばかりだったんですが、逆に言うと知る楽しみに満ちていたというか、隙間だらけの自分の知識を結構埋めてくれる本でした。ラヴェンナ行くことあったらモザイク見なくちゃ。

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