2024年10月16日水曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part5

 ●第6ターン(11月24ー25日) (続き)

 仏軍三個師団の突出にドイツ軍の包囲・反撃と、戦場は両軍入り乱れての混戦状態の様相を呈してきた。

「うげー、なんかZOCばっかりでどこに動かせるのかわかんねー」

と作戦級に不慣れな両プレイヤーである。

 独軍は増援の装甲・機械化部隊が次々と前線に到着。戦闘力は1や2と低いものの、兵数に劣るドイツ軍としてはありがたい。そして勝利得点源の街Altkirch奪還に向けてさらなる反撃を繰り広げた。


●第7ターン(11月26ー27日)

 仏軍は包囲されている三個師団が補給切れ(Non ravitaillé)となってしまった。

「ええっと、補給切れって……げ、攻撃できなくなるの?!」

と今さらながらにルールを確認して驚く仏軍プレイヤー。

「いや、だっていつもやっているゲームは補給ルールなんてないし…」

 常日頃は中世の会戦やってますからね、一日で終わった戦いばかりだから補給ルールなんてありませんよ。

 このゲームでは補給が続かない状態が2ターン目となると補給切れ状態となり、攻撃は不可、防御力と移動力が半減する。被包囲下の3個師団はもう自力での脱出は不可能である。仏軍は要塞地帯の掃蕩、それにAltkirchの防衛に傾注、前ターンに増援として登場した戦力4の歩兵連隊を、トラック輸送(camion)を使ってAltkirchに急派する。仏軍は第3ターン以降、毎ターン歩兵1ユニットにトラック輸送を適用して移動力を6から8に増やせるのである。

「あれ、機甲師団を見捨てちゃうの?」

「ふん、あいつらを助けなくても仏軍は勝てるんだよ。第5ターンに突出させたのは、ドイツ軍兵力を誘引するための罠だったのさ。3個師団を封じ込めるためにかなり戦力をかき集めないといけなかっただろ? ふふん」

「いや、それ絶対うそ」

 仏軍は勝利得点13で戦術的勝利(victoire tactique)を得られる。要塞地帯で12、それにAltkirchで13となるため、無理に友軍を救出する必要はないわけである。でもアルザス解放を目指した仏軍の大攻勢のはずなのに、そんなふうに守りに入っていいのか。


 独軍は前ターンに続きAltkirchへ熾烈な攻撃を続ける。だが混戦状態のため、敵三個師団封じ込めに配置していた多くのユニットを有効に活用できず、第106装甲旅団以外は強力な攻撃ができないのが痛い。


 ちなみに焦点となっているAltkirchだが、ドイツ語だと「古い教会」の意味になる。アルザスは現代ではフランス領内だが歴史的に見てドイツとのつながりが強く、ドイツ語の名残を地名にも見ることができる。


●第8ターン(11月28ー29日)

 マップ左方の要塞地帯で唯一残っていたBelfortの街を仏軍が攻撃。ここは要塞かつ都市なので4コラムシフト、さらに三方が攻撃力半減となる河川(Rivière)が流れているため、要害堅固の地なのだ。だが仏軍は兵力を集中、衆寡敵せずBelforは陥落した。

 そしてドイツ軍の最後の攻撃。Altkirchを落とせるかどうかが勝負の分かれ目となる。かき集められるだけの戦力を投入、支援砲撃も加えて攻撃。結果は強制退却、と思いきや、前ターンに仏軍が急派した歩兵連隊の兵質はB。兵質AとBのユニットは強制退却の結果をステップロスに置き換えられるのである。危ういところで仏軍は踏みとどまり、この戦いは仏軍の戦術的勝利に終わった。


 いやー、面白かった。仏軍の突破に危ういところで駆け付けるドイツ軍の援軍、そして精鋭の装甲旅団による反撃と、結構面白い展開。それにコマンド部隊の要塞の強襲とか、いろいろと細かいギミックで味付けがしてあるのが楽しい。

 でもゲームバランス的には仏軍が有利だと思う。仏軍としては地道に要塞地帯を掃討してあと一つ勝利得点源をとれば戦術的勝利となるので、史実のようにアルザス解放と敵軍包囲を目指した機甲部隊の突進、なんてのをやらなくても済むのだ。まあ、そういう手堅いプレイが好きな人もいるとは思うけど。戦術的勝利の基準を1点か2点引き上げて、仏軍は無理にでもライン川方面に向けて攻勢をし続けるようにした方が面白いんじゃないかな。それと、今回のプレイでは仏軍が陣地帯への攻撃に慎重だったので掃蕩に時間がかかったけど、このゲームでは攻撃側は退却で損害を回避できるので、低比率でもどんどん攻撃していけばもっと早く陣地帯は完全占領できたはず。そうすればもうちょっと仏軍は平野部への攻撃に兵力を回せたと思う。まあ、作戦級には不慣れなプレイヤーの意見ですが。

 あと要塞は2コラムシフトと強力ではあるものの、強制退却はステップロスに置き換えられるというようにしたほうが抵抗力が上がって、仏軍は要塞地帯と東方への戦力の振り分けがもっと悩ましいものになって面白くなるんじゃないかな。

 まあいずれにせよあんまりゲーム化されていない戦いなので、興味持たれたらプレイしてみてはいかがでしょう。









2024年10月12日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part4

 ●第5ターン(11月22ー23日)

 陣地帯では前ターン撃退された仏歩兵部隊が再び陣地帯上部を攻撃。だが独軍歩兵がまたも奮戦、兵質Cだが1コラムシフトを得る一方、兵質Aのユニットを含む仏軍はコラムシフトなし、さらに攻撃のサイの目が振るわず、今回も攻撃は撃退された。だが陣地帯下部では使えるだけの支援砲撃をたたき込み、同一師団効果や諸兵科連合効果なども駆使して敵を駆逐していく。守備隊ユニットは退却できないため、強制退却の結果がでる壊滅してしまうのが独軍には痛い。

 一方マップ右上方のMulhouse前面では、増援として現れた独軍2個歩兵師団に機甲師団のスピアヘッドが抑えられている状態。だが機甲部隊の敵ZOC浸透能力を活かして歩兵1個師団を包囲する。さらにマップ中央から機甲部隊に追いついた歩兵師団も投入、機甲と歩兵計3個師団で独軍歩兵師団を攻撃。独軍も支援砲撃で懸命に防御するが、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果が効いて戦力比は7:1に。独軍はたまらず損害を被って3へクス退却、仏3個師団が大きく戦闘後前進する。その結果、陣地地帯からマップ中央にかけてのドイツ軍主力が大きく包囲される危険性が出てきた。

「ぐははは、仏軍が本気になったら歩兵師団ぐらいで抑えられるはずがなかろうが!」と調子に乗る仏軍プレイヤーである。


 ちなみに史実でも仏機甲部隊がMulhouse近くまで突出している。ドイツ軍は必死の防御をするのだが、ヒストリカルノートによると「アルンヘムの英第一空挺師団と同じ目にあわせてやる」なんて書いたビラまで撒いたらしい。モンティも自分の失敗がこんな形で利用されるなんて思っていなかったんじゃないかなあ。あと、M3A3がパンツァーシュレックによって炎上した、みたいなドイツ軍の抵抗の激しさを感じさせる描写もちょくちょくあってヒストリカルノート読んでいると気分が上がります。M3A3ってM3ブラッドリーだよね、あんまり知らないけど。


 強力な攻撃を繰り広げる仏軍に対し、ドイツ軍は兵力をかき集めて敵主力3個師団を包囲する。戦闘力1と弱小ではあるものの敵機甲部隊のZOC浸透能力を抑えられる偵察大隊2個を巧妙に配置、仏機甲師団の動きを封じ込めた。そして増援として登場した第106装甲旅団が第30SS武装擲弾兵師団の1個連隊の支援の下、弱小兵力しか配置していなかった敵主力側面を攻撃、戦闘後前進で包囲網をさらに強化した。


 この第106装甲旅団、2ユニットしかなく戦闘力も2と一見貧弱だが、兵質はAであるうえ仏機甲師団同様に同一師団効果で2シフト有利に、さらに歩兵と共同で攻撃すれば諸兵科連合効果も得られるため、3シフトや4シフトとなって結構強力な攻撃ができる。そのうえ、同装甲旅団の戦車大隊は対装甲効果も持つため、敵機甲ユニットとの戦闘ではさらに1シフト有利になるという優れもの。ちなみにユニットのイラストはおそらくパンターである。あ、でも戦車詳しくないんで間違っていたらごめんなさい。


●第6ターン(11月24ー25日)

 このゲームでは自軍ターンの最初に補給を確認する。包囲された3個師団は孤立状態(Isolé)となり攻撃力が半減した。

「ふん! 包囲されることなど想定内。雑多な部隊の寄せ集めの独軍包囲網など食い破ってやる」

 先述のように独軍は偵察大隊を配置しており、通常であれば偵察大隊も歩兵と一緒だと諸兵科連合効果を得られるのだが、敵に機甲ユニットがいるとその効果は得られない。まあ、偵察大隊ってそんなに強力じゃない装甲車両だろうから、戦車相手だと歯が立たないってことですかね。逆に仏軍第1機甲師団は諸兵科連合効果と同一師団効果で計3コラムシフト、さらに支援砲撃で戦闘比を5コラム上げて敵を蹴散らした。

 そして他の2個師団も敵の包囲網の一角を集中攻撃。戦闘力半減状態とはいえ総計17戦闘力となり、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果も加えて6:1にまでもっていく。だが兵質チェックで痛恨の1が出て、マイナス2コラムシフト。ここの2個師団は戦闘力は高いものの、すべて兵質Cなので兵質チェックでは6分の1の確率でこのようなことが起こるのである。結果、敵を1へクス後退させるにとどまり包囲網を破るには至らなかった。

 かたや、マップ左方の要塞地帯では順調に掃蕩が進む。この調子だと最終ターンまでにはこの地帯のすべての得点源へクスは占領できるだろう。


つづく

2024年10月5日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part3

 ●第3ターン(11月18ー19日) つづき

 このターン、ドイツ軍には歩兵2個師団がマップ右上から増援として登場したものの、戦線にたどり着くことができない。マップ下方のスイス国境近くではこれまで敵の攻撃のサイの目が振るわず何とか機甲部隊の突破を防いでいるものの、もう限界である。ドイツ軍はマップ上方にむかって大きく後退。河川沿いに防御ラインを敷いた。


●第4ターン(11月20ー21日)

 フランス軍はマップ左方の陣地帯への着実な攻撃を続ける。しかもマップ左上に初期配置されていた仏軍歩兵4ユニットが、このターンに移動制限解除。陣地帯上部に襲いかかる。だがドイツ軍には陣地と荒地の地形効果、さらに歩兵の攻撃に対しては1コラムシフトが得られる機関銃大隊がいたため、1.5:1の低比率となり攻撃は撃退された。

「ふん、フランス軍の見せ場は陣地帯じゃなくて平野部での突破なんだよ」 

と、仏機甲2個師団がマップ右上の重要都市Mulhouseにむかって突進。平地に出ればこっちのもんである。そして前ターンに増援として現れた独歩兵師団を集中攻撃。退却する敵を追撃する。陣地帯からマップ中央にかけてドイツ軍を大きく包囲しようとする勢いである。


  危うい状況となったドイツ軍には増援が他戦線から急遽送り込まれてくる。このゲームではマップ右上にある主要都市Mulhouse4へクス以内に仏軍が近づくとそのターンに第30SS武装擲弾兵師団などが、またマップ右側約3分の1のあたりまで仏軍が進出すると次ターンには第106装甲旅団などが登場する。今ターン、仏機甲部隊が大きく前進したため、独軍は増援を得られることになった。


 史実でもフランス軍の急進に対し、独軍は増援をかき集めて何とか防御線を敷いたらしい。バイエルンの駐屯地からは駆逐戦車大隊が、オランダからは突撃砲大隊が急遽送られてきた。またMulhouse近くのCernayという街には武装SSの訓練施設があり主にフランス語圏出身の下士官が訓練を受けていたのだが、ヒストリカルノートによると仏軍がMulhouse近くにまで進出するとここの訓練生も防御に投入されたそうだ。それだけドイツ軍も必死だったってことですね。

 また、このターン増援として現れた第30SS武装擲弾兵師団はベラルーシなどの「義勇兵」から編成されていたのだが、反乱を起こしドイツ人士官を処刑、フランス軍に加わった部隊もあったそうだ。そりゃわざわざソ連圏でドイツ軍に加わる兵はソ連と戦いたいのであって、西側連合軍と敵対なんかしたくなかったでしょうに。


 増援を得たドイツ軍だが、突出してきた機甲部隊にどう対処するか。前ターンに登場した歩兵2個師団と併せて、単独でいる仏コンバット・コマンドに反撃して敵の衝力をそぐべきか。だがいまだほとんど歩兵しかいないドイツ軍は、ZOC浸透能力を持つ敵機甲ユニットに対して有効な防御線を張るには心もとない。それに陣地帯が早々に包囲されると敵の兵力運用の自由度が増してしまうので、陣地帯との連絡回廊部分の防衛に兵力を割くべきだろう。ずっとやられっぱなしでストレスがたまっていたドイツ軍プレイヤーだったが、状況を冷静に分析して反撃は時期尚早と自重、仏機甲師団の前面の防御を固めた。


  史実では第4ターンにあたる11月21日から独軍が反撃を開始している。ヒストリカルノートによると、この時の状況を仏第一軍指揮官のde LattreはU,I,Oと回顧録に書いているそうだ。独軍突出部を取り囲むように仏軍はU字型の戦線を形成しているが、ドイツ軍は仏軍の中で一番脆弱な南方で反撃してIの形にもっていこうとし、フランス軍はこれに対してU字を閉じてO字型の包囲網を形成しようとしていたそうだ。なんか、戦況図を動画で作ってU,I,Oの文字を載せたくなる。


つづく

2024年9月30日月曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part2

 ●第1ターン(11月14ー15日)続き

 ドイツ軍はマップ下方の敵の突破を見て、部隊を大きく後退。史実ではこの陣地帯の守備のために、聴覚障碍者で大隊を編成して投入することまでしたらしい。このゲームでも、ドイツ語でOhren(耳)と書かれたカンプグルッペユニットが登場する。

 陣地帯の防衛もさることながら、仏機甲部隊の平野部への突破を防ぐのに必死のドイツ軍。平野部に敵が進出すると戦線が広がって防御に不利になるだけでなく、仏軍機甲ユニットは平地では歩兵のZOCをすり抜けられる。ほとんど歩兵しかいないドイツ軍は森林地帯で極力敵を食い止めておかないと、ただでさえ兵力劣勢なのにさらに苦しい戦いとなる。


●第2ターン(11月16ー17日)

 フランス軍には第1,第5機甲師団の計3ユニットが増援として登場する。フランス軍の増援はマップ西端か南端から登場させられるのだが、もちろんマップ南端のスイス寄り、前ターンで突破した方面に投入してさらに激しくドイツ軍を攻撃する。仏軍は最大限の支援砲撃を投入、ここを抜かれるわけにいかないドイツ軍はなけなしの支援砲撃で応じる。河川越えの攻撃のため攻撃力は半減するものの、同一師団効果と諸兵科連合効果のコンボで戦闘比を上げた仏軍だったが、兵質チェックで失敗。敵を1へクス後退させるだけに終わった。


 このゲームでは各ユニットが兵質(Qualité)をもち、戦闘の際には攻防両軍が兵質チェックを行う。ずっと防戦が続く独軍も、なんとかここをこらえてくれ、とサイコロを振ることができるのだ。サイの目によって有利なコラムシフトを得たり逆に不利になったりするのだが、仏軍第一機甲師団のユニットの兵質はB。3分の1の確率で1コラム有利に、6分の1で不利になるのだが、その6分の1の目が出たわけである。


 フランス軍は機甲部隊がマップ右方面への突破を図る一方で、歩兵を中心に陣地帯を攻撃していく。そして独軍の守備が手薄な陣地を狙ってコマンド部隊2ユニットが襲撃する。

 マップ上に9つある陣地へクスには守備隊(garnison)が1ユニットずつ配置されているのだが、守備隊しかいない陣地へクスに対し仏軍コマンド(commando)は襲撃(raid)を行える。守備隊は戦力未確認状態で配置され約4割が戦闘力ゼロ。コマンドが襲撃して守備隊が戦闘力ゼロの場合は成功、戦闘力が1以上の場合、1D6で1-4で成功だ。成功すると陣地は占領、失敗するとコマンドユニットは除去される。

「いやー、少数精鋭のコマンド部隊が敵陣地を電光石火の襲撃で占領って、ロマンがあるよね」

「使えるものは使えるうちに使っておけってだけでしょ。ドイツ軍が前線を縮小したら守備隊が他のユニットとスタックするだろうから」

 結局、コマンド部隊2ユニットの襲撃は1カ所成功、もう一カ所は失敗に終わった。


 ドイツ軍は陣地帯の左方と下方からできる限り兵力を撤退させる。だがこのゲームでは敵ZOCからの離脱に2移動力を消費するため、6移動力しかない歩兵は思うように後方に回せない。敵機甲ユニットのZOC浸透能力を防ぐ機械化・自動車化ユニットはドイツ軍には偵察大隊1ユニットしかないのだが、その偵察大隊をスイス国境近くの前線左端に派遣して敵機甲ユニットの動きを止めようとする。だがフランス軍が平野部に突破するのは時間の問題だろう。


●第3ターン(11月18ー19日)

 フランス軍にはさらに機甲ユニットが増援として登場するが、交通渋滞で前線までたどり着けない。このゲームでは第3ターン以降、ドイツ軍は交差点などに交通渋滞(Embouteillage)マーカーを一つ置くことができ、仏軍機械化・自動車化ユニットに1移動力追加で消費させることができるのだ。

 このターンもスイス軍はスイス国境近くの右翼に機甲ユニットを集中。だが前ターンに続き今回も兵質チェックに失敗、大きく突破とはならなかった。

「おいおい、フランス軍の第1機甲師団ってどうなってんだ?!」

とぼやく仏軍プレイヤー。このゲーム、諸兵科連合効果など多くのコラムシフト要素があるだけでなく、兵質チェックでさらに戦闘比が動く可能性があるので、戦闘結果が結構読めなかったりする。


 陣地帯近くではフランス軍が包囲していた敵歩兵を掃討、だが陣地への攻撃は独軍が奮戦し損害を受けつつも踏みとどまる。マップ左上に配置されている仏軍歩兵4ユニットは第3ターンまで移動できず、高比率で陣地帯を攻撃しようとすると多くのヘクスを攻撃できないのだが、低比率になることを恐れずにもっと積極的に攻撃すべきだったかもしれない。


つづく

2024年9月27日金曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part1

  この9月はマーケット・ガーデンの80周年で、ということは今年バルジも80周年? おお、西部戦線が呼んでいるぜ、というわけで、先日ブログでも書いたVV175号のAlsace1944をやってみることにした。やっぱりウォーゲームの王道はWWⅡの作戦級だもんね。

 ……でも、いつも中世の会戦級ばっかりやっているメンツなのでちょっと不安。まあいわゆるIGOUGOシステムを基本とした簡単なルールなのでなんとかなるでしょう。それにね、ヒストリカルノートを読んでみるとドイツ軍はヤークトパンターをかき集めて必死に反撃する様子が描かれていて、654 sPz Jgなんてユニットを見つけると、あー、このイラストがヤークトパンターなんだろうなーと気分が上がるわけです。

 このゲームについては以前のブログである程度説明したとおり、バルジの約一か月前、フランス南東でのフランス第一軍の攻勢をシミュレートしている。仏軍は南仏からの進軍で消耗しているうえに天候が悪化しており、ドイツ軍は敵の攻撃はないものと思っていた。仏第一軍指揮官も前線視察に来たチャーチルに対し、「こんな天候下では攻撃には出ません!」と断言していたが、その翌日に奇襲をかけた、という戦いである。チャーチル、嘘つかれて怒んなかったのかな。

 WWⅡの陸戦ゲームは数多く出ているけど、フランス軍の攻勢を扱ったのってあんまりないんじゃないかと思う。VV120号に、同じゲームシステムで1945年1月~2月のColmar包囲戦を扱ったものがあるけど。あ、ちなみに「ファレーズ、再び?」っていうのは以前のブログにも書いたけど、ヒストリカルノートにそういう意味の小見出し(Un Falaise-bis?)があったのでパク…参考にさせていただきました。でもファレーズ戦は規模も大きいし包囲されたのもドイツ軍の精鋭を多く含んでいたし、それと比べるのは大げさなんじゃないですかね。まあこの戦いでも独軍1万ほどが包囲されたそうだけど。

 この戦いは過去にVaeVictisで一度ゲーム化されているが、もっと短時間でプレイできるものを、ということで今回のゲームとなったってデザイナーズノートに書いてあった。実際、ルールも簡単で全8ターンと短く、マップも小さくユニット数も多くないので結構手軽にプレイすることができる。展開も仏軍機甲部隊の突破からドイツ軍の反撃と変化に富んでいるので、仏軍ファンのウォーゲーム初心者(いるのか?)を引きずり込むのに適している。

 マップの右3分の1ぐらいがアルザスで、右端にライン川が見える。つまりドイツはほんの目の前である。右下はスイスだ。

 マップ左方に山地や荒地、森林と防御に有利な地形沿いに前線が伸びているが、マップ右方は平地が広がっている。また前線後方にはBelfortという街を中核にした陣地帯があり、そこに陣地や都市など得点源が集中している。だがフランス軍はそれらすべてを占領しても勝利にはならず、最低でもあとどこか一つ得点源を占領する必要がある。なお仏軍はマップ右上から突破しても得点が得られるが、そういう事態になったらもうドイツ軍はぼろ負けなんじゃないかな。


●第1ターン(11月14ー15日)

 「チャーチルに言ったことなんぞ知るか! 攻勢開始だ、アルザスを取り戻せ!」と仏軍プレイヤーが気炎を上げゲームスタート。仏軍が攻勢を開始する。

 最南端、スイス国境に隣接している地点で山岳歩兵連隊がZOC浸透能力を発揮して敵歩兵の後方に進出し包囲したうえで、増援として現れる第5機甲師団の2ユニットをここに投入。第1ターンの奇襲効果である+2DRMも相まって、仏軍機甲部隊が敵前線を突破した。


 この時期のフランス軍機甲師団はアメリカ軍の編成に準じていたようで、このゲームで登場する2個機甲師団はいずれも3個コンバット・コマンドで構成されている。コンバット・コマンドって言葉、そういえばバルジゲームで見たなあ。このゲームでは歩兵と装甲ユニットが同じ戦闘に参加していると諸兵科連合効果で1シフト有利になるのだが、コンバット・コマンドは単独でも諸兵科連合効果を得られる。そもそもコンバット・コマンドはどのユニットも戦闘力が5とゲーム中最強のうえ、同一師団効果で2シフト有利になったりするので、仏軍機甲師団はかなり強力である。


 機甲部隊が集中攻撃をかけた左隣でも仏軍が司令部からの支援砲撃、それに同一師団効果などを活かして攻撃、マップ下方のドイツ軍前線はほぼ崩壊した。前線中央や上方は仏軍の兵力が潤沢ではないもの、攻撃をしかけて敵にプレシャーをかけた。 


つづく


2024年9月6日金曜日

クラウゼヴィッツの『1815年のフランス戦役』

  ワーテルロー戦の終盤、親衛隊の最後の攻撃をシミュレートした「La Garde Avance!」っていうのがあって、小さなゲームながら結構面白いんですね。右翼にプロイセン軍が迫る中、ナポレオンは親衛隊を投入して敵中央突破の賭けに出る…という燃えるシチュエーションです。タイトルからしてですね、撃退された親衛隊を見た仏軍が叫んだという「La Garde recule!(親衛隊が退却している!)」って言葉にかけているみたいですからね。

 つい最近SNSのマストアタックでこの「La Garde Avance!」と親衛隊の攻撃について熱い議論が交わされて、ナポレオニックの知識がほとんどない自分にはすごく勉強になりました。そういえば最近クラウゼヴィッツの「戦争論」の全訳が出たな、クラウゼヴィッツと言ったらナポレオンと同時代人だから、ワーテルローについて何か書いてないかな、と探してみたらありました。「Der Feldzug von 1815 in Frankreich」という著作。

 これ、『1815年のフランス戦役』というタイトルとおり1815年戦役の開始状況からパリ陥落あたりまで、クラウゼヴィッツの分析を交えつつ描写しています。なのでワーテルロー戦も全体の一部にしか過ぎないんですが、Die Hauptmomente der Schlacht. Vertheidigung Wellingtons(戦闘の主な時点。ウェリントンの防衛)という章で親衛隊の攻撃についてちょっと触れられています。


da wollte der verzweiflungsvolle Bonaparte auch das Letzte noch daran setzen, um das Centrum Wellingtons zu sprengen. Er führte die übrigen Garden auf der Chaussee nach la Haye Sainte und der feindlichen Stellung vor; 4 Bataillone dieser Garden machten einen blutigen Angriff, aber vergebens.

(必死になったボナパルトは、ウェリントンの中央を突破するために残っているすべてを投じようとした。親衛隊の残りの部隊を率いてラ・エイ・サントから敵の戦列へと通じる道を前進した。この親衛隊の4個大隊は熾烈な攻撃を行ったが、無駄だった)


 いや、そんなにあっさり終わらせないでよ! と言いたいところなんですけど、戦役全体を扱った著作だから仕方ないんでしょうね。


 この「Der Feldzug von 1815 in Frankreich」、クラウゼヴィッツがプロイセン人だからなんでしょうけど、英軍よりも普軍の描写や分析が多い印象。ワーテルロー戦も、

Die Schlacht zerfällt angescheinlich in zwei verschiedene Akte: den Widerstand Wellingtons und den Angriff der Preußen in der rechten Flanke der Franzosen.

(この戦いは明らかに二つの動きに分けられる。ウェリントンの防戦と、プロイセン軍のフランス軍右翼への攻撃である)

なんて書いています。まあプロイセン軍の登場で戦況がガラッと変わったのは認めますけど、でもワーテルロー戦のいくつかあるクライマックスの多くは英軍と仏軍の攻防にあったんじゃないんですかね。でも戦闘終盤のウェリントンについて、ウェリントンは敗北一歩手前までいっていたという意見が一般的だがそれは違う、という趣旨のことを論じていたりします。

 あと、Betrachtungen über die Schlacht. Bonaparte(戦闘の考察。ボナパルト)という章では、ナポレオンはもっと早く攻撃を開始すべきだったのかなどいろんな点について結構長く書いていて、es war gegen alle Regel, diese Schlacht noch zu versuchen.(この戦いを始めたということが、すべての法則に反するのだ)なんてことまで(条件付きでですが)書いています。まあそのあとちょっとナポレオンを擁護しているんですが。とにかくワーテルロー戦についてナポレオン側のことはかなり考察しているのに、続く連合軍の章ではUeber das Benehmen der verbündeten Feldherren in der Schlacht von Belle-Alliance haben wir wenig zu sagen.(ワーテルロー戦での連合軍の将軍たちの行動についてはいうべきことはほとんどない)なんて書いてあっさり終わらせていたのが面白かったです。


 「Der Feldzug von 1815 in Frankreich」は1815年戦役全体をあつかっているため、ワーテルロー戦以外のことについて書かれている部分のほうが当然多いんですけど、この戦役について全然知らないのでクラウゼヴィッツの叙述や分析がどれだけ妥当なものなのかは全然わかりません。勉強になりましたが。現代の通説と比べてみるのも面白いのかなと思います。その前に通説をどこかで読まなきゃ。


2024年7月26日金曜日

チャーチルに「こんな悪天候下では攻撃に出ません!」といった翌日に攻勢開始 Alsace1944 (VV175)

  VaeVictis最新号のゲームAlsace1944は、みんな大好きWWⅡの作戦級。1944年の西部戦線って言ったらノルマンディー、マーケットガーデン、バルジぐらいしか思い浮かばないんだけど、このゲームはバルジの約1カ月前の11月中旬から始まる仏軍の攻勢をシミュレートしている。舞台は仏東部のスイスに隣接する地域で、もうすぐライン川に到達しそうなところである。

 南仏のプロバンス地方から進撃してきた仏軍はこのヴォージュ山脈の地域まで来た時点でかなり消耗しており、補給状況も悪化していた。さらにはもう雪が降り始め地面は泥濘となり、弱体化したドイツ軍も仏軍の攻勢はないものと判断して一息ついていた。実際、この方面のフランス第一軍を指揮するde Lattreは前線視察に来たチャーチルに対し、「こんな天候下では攻撃には出ません!」と断言したそうだ。

 だがde Lattreは攻勢準備を巧妙に隠蔽しており、チャーチルにそう言った翌日に攻勢に出たらしい。この地域のドイツ軍の防御ラインは薄く、1個国民擲弾兵師団が30kmをカバーしているような状態。Vogenstellungという陣地線はあってパンターの砲塔とかで補強されていたけれど、不意を突かれたドイツ軍は危うく包囲されそうになる。ヒストリカルノートでも「ファレーズ再び?」なんて小見出しがあったりする。だがドイツ軍は援軍をかき集めて果敢に反撃、アルザス地域の解放を目指す仏軍の攻勢はなんとか押しとどめられた、という戦いだったらしい。

 久しぶりにWWⅡ関連のヒストリカルノート読んだけど、ヤークトパンターとか出てきて結構わくわく。1944年も11月ということで、ドイツ軍が雑多な部隊をかき集めて必死に反撃するところがなんとも…。ゲームのマップにも含まれているCornayという街には武装SSの訓練施設というか士官学校のようなものがあったそうで、そこから士官候補生も前線に投入された、なんて書かれているし。突出してきた仏第一戦車師団に対して、アルンヘムの英第一空挺師団と同じ運命をもたらしてやる、なんてビラをまいたっていうエピソードもあった。武装SS第30師団なんてのも登場するんだけど、ベラルーシなどの義勇兵から編成されていたそうで、反乱を起こして一部の兵は自由フランス軍に加わっていたらしい。あと、東部戦線で捕獲されたBA-6も投入された、なんてトリビアも嬉しい。

 付録ゲームのAlsace1944なんだけど、いわゆるIGOUGOシステムで、戦闘は戦力比というオーソドックスなもの。ユニットは基本的に連隊規模、1ターン二日、1へクス約4kmという規模。簡単なルールなので初心者でもとっつきやすい。過去のVaeVictisで、同じルールでヴェリキエ・ルキの戦いその他もゲーム化されている。このアルザス戦は以前にVaeVictisで別ルールでゲーム化されていたんだけど、もっと短い時間でプレイできるものを、ということでこのシステムを採用したってデザイナーズノートに書かれていた。

 ちょっと特徴的なのが、各ユニットには戦闘力のほかに兵質(Qualité)を持つ点。戦闘の際に両プレイヤーともサイコロを振り、兵質に応じて戦力比が有利になったり不利になったりするのだ。最高の兵質Aだと2コラムシフトを得られる可能性があり、Cだと2コラム不利になったりする。1944年という時期からしてしょうがないんだけど、ドイツ軍の多くは兵質Cである。ただ第106装甲旅団のユニットはAなのが嬉しい。あと、フランス軍には外人部隊のユニットも登場するのがちょっと個人的にはポイントだったかな。


 早速プレイを、と思いつつ、作戦級ってしばらくやってないや…と二の足を踏んでしまいカウンターも未カットのまま。だれかプレイしてAARなり感想を書いてくれないかなあ。


ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part5

 ●第6ターン(11月24ー25日) (続き)  仏軍三個師団の突出にドイツ軍の包囲・反撃と、戦場は両軍入り乱れての混戦状態の様相を呈してきた。 「うげー、なんかZOCばっかりでどこに動かせるのかわかんねー」 と作戦級に不慣れな両プレイヤーである。  独軍は増援の装甲・機械化部隊...