2024年11月7日木曜日

(幕間)『ブルゴーニュ国家』

  AARを書いているGrandsonの戦いはブルゴーニュ公率いる軍隊とスイス軍の戦いですが、ブルゴーニュの歴史ってよくわからないんですよね。薔薇戦争とかその他14-15世紀のヨーロッパの本を読んでいると「ブルゴーニュ公国」って言葉がちらほら出てきて、なんじゃらほいとずっとモヤモヤした気がしてたので、概説書を見つけて読んでみました。だってね、領土がフランス王国に含まれているうえに百年戦争中はアルマニャック派と対抗するブルゴーニュ派なんてものが出てきて、フランス王国の一部なのかなとぼんやり思っていたら、イギリスと同盟して仏王に対抗したりしているし。地図を見たら今のオランダ・ベルギーから独仏国境地帯にかけて広がっていて、神聖ローマ帝国も一部入っているし、うーん、よくわからん。

 で、見つけた本はタイトルもそのまんまの『L'État bourguignon』。14世紀後半から15世紀後半にかけてブルゴーニュ公となったヴァロア家の時代を扱っています。シャルル・ル・テメレールはヴァロア・ブルゴーニュ家最後の公ですね。この本の裏表紙によると、フィリップ・ル・アルディ(1363-1404)からシャルル・ル・テメレール(1467-1477)まで、ブルゴーニュ公たちは南はブルゴーニュ公領から北はオランダまで広がる領土を支配下に置き、百年戦争、十字軍、そして外交や経済的な争いに加わった、とのこと。

 筆者はフランスの大学教授で14-15世紀のブルゴーニュを専門にしているそうで、本のタイトルにÉtat(国)という言葉を使ったことについては、実際に14世紀から15世紀までブルゴーニュという「国」が存在したと考えているからだ、と前書きで述べています。ただし近代的な意味での国家、つまり国民国家や主権国家ではないと断っていますが。うーん、ややこしい。ブルゴーニュ公たちによって創設され発展されたのはun État princierだそうですけど、なんて訳せばいいんですかね。そういった国家は君主の一家に体現される政治権力、その国独自の行政、司法、財政そして軍事制度、政治的な集団と特定の考えの発展、それに自立的な外交の展開によって特徴づけられるそうですけど、素人の私にはわかったようなわからなかったような。まあ細かいことはいいんですよ。ははは。

 この本はヴァロア・ブルゴーニュ家の約百年を時系列的に追いつつ、制度なども解説しています。Les armées des ducs de bourgogne(ブルゴーニュ公の軍隊)という章があって当然そこに目が引かれたんですけど、15世紀前半では外国出身の兵が4分の1を占めていたとか。それに14世紀後半から15世紀前半にかけて徴募兵、弓兵とクロスボウ兵の比率が上昇し、10%ちょいから70%ぐらいにまでなったとのこと。これはイギリスとの同盟による影響が反映されているって分析していますね。あと砲の普及についても説明していて、AARを書いているGrandsonの戦いでもそういえばブルゴーニュ軍には砲や弓兵が多かったなあと納得。 それとこの章にはLes réformes au temps de Charles le Téméraire(シャルル・ル・テルメールの時代の改革)という節が面白かったです。領土拡大をしフランス王と抗争を繰り広げていくにあたって、常備軍をもつ仏王に対抗するためにブルゴーニュ公国でも常備軍を整備していく必要があったとのこと。そういや百年戦争の後期にフランスは常備軍を創設していたなあ。

 十字軍という章も設けられていて、時代的にあれ?と思ったんですけど、いわゆる第7回まであった十字軍ではなくて、対オスマン帝国の十字軍。ブルゴーニュ公は艦隊を編成して派遣していて、ブルゴーニュに海軍のイメージがなかったので意外でした。まあ、政治的状況のせいでブルゴーニュ公が最後に計画していた十字軍は実現しなかったようですが。

 Grandsonの戦いにも触れていて、La défaite inattendue(思いがけない敗北)って書かれていました。兵的な損失は少なかったけど、物資や砲が敵の手に渡ってシャルルは結構落ち込んでいたそうです。でもすぐにGrandsonの敗戦の教訓から軍を再編成し、<<piquenaires>> suisses(スイスの「槍兵」)の戦術に対応するために歩兵を強化したとか。でもGrandsonの3か月後にはまた負けてしまうんですけどね。

 この本、知識のない自分にとっては消化不良な部分も結構ありましたが、というかヴァロア・ブルゴーニュ家4代のことなんて新しく知ることばかりだったんですけど、いい勉強になりました。AARを書いているGrandsonの戦いに限らず、ブルゴーニュが出てくるゲームをやるときは思い入れが変わってくるんじゃないかなと思います。


2024年11月4日月曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part2

 ●第1ターン

 このターンはスイス軍の活性化から始まる。スイス軍は前進して丘陵地帯の隘路出口で防御を固めた。

「猪口才な。スイスの農民どもなんぞ蹴散らしてくれるわ!」

とブルゴーニュ軍プレイヤーが気炎を上げる。一斉に襲い掛かると思いきや、敵右翼端(マップ上方)のみを攻撃、損害を与えて後退させるに終わった。

「あれ、威勢がよかったはずなのに一カ所だけしか攻撃しないなんて、しょぼくない?」

「すんません、それは無理っす」

 先述のようにスイス兵は戦闘力、兵質ともに高く兵種としては騎兵と同等のため、1ユニット同士の白兵戦ではブルゴーニュ軍が不利になる。このゲームでは白兵戦をするユニットは正面ヘクスにいるすべての敵ユニットが攻撃されるようにしないといけないため、きっちりと戦列を組んでいる相手に一斉攻撃をしようとするとどうしても1ユニット同士の白兵戦が生じてしまう。さらにはスイス軍は地形効果も得られるユニットもあるわけで、ブルゴーニュ軍としては一斉攻撃をして次々と撃退されるという事態を避けるために敵戦列の端に2ユニットを投入し、さらに騎兵部隊指揮官Château-Guyonの指揮ボーナス(Bonus)で+2DRMを得て何とか有利な形で攻撃ができたのである。


●第2ターン

 スイス軍には増援のRedingの部隊が登場。この部隊は現在のスイス中央部の兵からなる。ちなみに初期配置されているScharnachtalの部隊はベルンの兵である。

 ブルゴーニュ軍は敵の指揮官Scharnachtalを攻撃、疲弊状態(Fatiguée)で後退させた。だがScharnachtalは怯まず、戦闘後前進で突出した敵騎兵を包囲、袋叩きにして敗走させる。ちなみにこのゲームでは戦闘後前進は強制である。うかつに攻撃するとこのように反撃をくらうことが多い。

 スイス軍の反撃を受けたブルゴーニュ軍は騎兵部隊を支援するためHochbergの弓兵が射撃で敵に損害を与えるものの、騎兵部隊とHochberg隊だけでは増援が登場したスイス軍を積極的に攻撃していくには兵力が足りない。

「予備がいっぱいいるんだから、早く投入させてよ~。デザイナーの意地悪~」

と嘆くブルゴーニュ軍プレイヤーである。


●第3ターン

 イニシアティブを得たブルゴーニュ軍は先手を取って騎兵が攻撃。すでに疲弊状態だったスイス兵ユニットを士気低下状態(Découragée)にして後退させた。

 スイス軍は総指揮官(chef d’armée)Scharnachtalのもと、一斉に反撃。このゲームでは基本的に部隊ごとに活性化するが、総指揮官は自分の指揮範囲内にいる他の部隊のユニットも活性化できる。Scharnachtalは6という広い指揮範囲にものを言わせて前ターンに登場したRedingの部隊も投入、敵戦列の間隙から浸透しブルゴーニュ騎兵に強力な攻撃を行う。特にRedingは指揮ボーナス3と強烈なDRMを持つのだ。包囲されていたブルゴーニュ騎兵はたまらず敗走していった。さらにScharnachtalに続いてRedingが活性化。敵に追い打ちをかけていく。

 そしてスイス軍には今ターンも増援が登場。Redingの後を追ってマップ上部からGoldiの4ユニットが、そして丘陵地下方の道からはFaucingnyの強力な歩兵部隊が現れた。

 頼みの騎兵が次々とスイス軍に撃破され、敵には続々と増援が現れるのを見たシャルル・ル・テメレール。Hochbergの弓兵の射撃で敵を牽制しつつ、後方にいた予備の3部隊を動かした。

「いやー、早いとこ騎兵が2ユニット敗走してくれてよかった。これで予備が投入できるもんね」

「それ、一軍の将が言うセリフじゃないと思うぞ」


 このシナリオでは先述のように、ブルゴーニュ軍は騎兵が2ユニット敗走するまでは予備の3部隊は活性化できない。そのため無理は承知で騎兵部隊で攻撃をかけていったのである。それにブルゴーニュ軍は騎兵が攻撃しなかったターンごとに1勝利得点(PV)をスイス軍に献上してしまう(最大で累計5PV)。そのため、史実同様騎兵で攻撃を仕掛けうるよう誘導される仕組みとなっている。


つづく

2024年11月1日金曜日

ブルゴーニュvsスイス Grandson 1476 - Epées et Hallebardes 1315-1476 (VV81) AAR part1

  先日やった「Alsace 1944」が面白かったので、アルザス関連のゲームをやってみた。プレイしたのはGrandsonの戦い。場所は現在のスイス北西部で1476年、スイスとブルゴーニュの両軍が衝突した……

 いやいや全然アルザスじゃないだろ! と思われるかもしれないけど、そうじゃないんですよ。この当時、領土拡大を続けるブルゴーニュ公国はアルザスをめぐってスイスやその他の勢力といわゆるブルゴーニュ戦争を戦っていて、その一環で起こったのがGandsonの戦いなんですね。なのでアルザスと結構関係があるんですよ。ははは…。

 まあ苦しい言い訳はこれぐらいにして、要はプレイしてみたかったからプレイしただけなんですけどね。ゲームはVaeVictis誌81号付録の「Epées et Hallebardes 1315-1476」に収録されている3つのシナリオのうちの一つ。中世の会戦をシミュレートしたAu fil de l'épéeシリーズに属し、同じシリーズでは以前、Guinegatteの戦いのAARを書いたなあ

 初期配置を見ると兵力でブルゴーニュ軍が圧倒しているように見える。だがデザイナーによるとこの戦いでブルゴーニュ公シャルルは騎兵と砲でスイス軍を打ち破れると思っていたそうで、ゲームでは後方の3つの部隊は予備となっていてブルゴーニュ軍騎兵が2ユニット敗走もしくは壊滅するまでは動かせない。一方のスイス軍は続々と増援が登場するため、数のうえでの不利さはなくなる。

 さらにスイス軍の多くは戦闘力(Facteur de combat)が8と強力で兵質(Qualité)でも敵に勝っている。それにほとんどのスイス軍ユニットの兵種はスイス兵(Suisses, Su)で、騎士(Chevaliers, Ch)や重装騎兵(Hommes d'Armes, Ha)と白兵戦で互角、ブルゴーニュ軍に多数いる槍兵(Piqiers, Pi)に対しては有利なDRMがつく。

 とまあこれだけでもスイス軍の優秀さがうかがえるのだが、さらにこのシナリオでは、スイス兵はブルゴーニュ騎兵の突撃を実質的に無効化してしまうのである。Au fil de l'épéeシリーズでは騎兵の突撃は+3のDRMが付くのだが、だがこのシナリオではスイス兵に対する突撃にはDRMがゼロである(複数方向からの突撃でやっとDRM+1)。

 優秀なスイス兵に対し、ブルゴーニュ軍は右翼(マップ下方)の台地上に砲兵を4ユニット配置しており、さらに弓兵を多数保持している。白兵戦で優位に立つスイス軍に対し、ブルゴーニュ軍がいかに砲兵と弓兵を活用できるかが勝敗のカギとなるだろう。


 実際の戦いでは続々と山地から登場するスイス軍に対しブルゴーニュ軍は平野部に退いて態勢を整えようとしたところ、そのまま押し切られてしまったらしい。ちなみにこの当時のスイスは8つの州や都市が同盟を組んでおり、ドイツ語だとAlte Eidgenossenschaft、フランス語だとConfédération des huit cantonsと呼ばれていて、当然VaeVictis誌でもそう表記されている。日本語ではなんて訳されているんですかね。

 一方のブルゴーニュ軍を率いるのはブルゴーニュ公シャルル。Charles le Téméraireとも呼ばれていて、シャルル勇胆公や突進公、猪突公とかいろいろと訳されているようだけど、le Téméraireは悪い意味も含まれているようで、辞書を見てもtéméraireという単語の意味としてune hardiesse imprudente ou inconsidérée(無謀だったり思慮の足りない大胆さ)なんてなことが書いてある。でもブルゴーニュ関係の本を読んでいると、téméraireではなくhardi(大胆)と変えたい、téméraireと呼んでいるとシャルルの業績や人格に対し史実と反する印象を与えてしまう、と言っている研究者がいるって書いてあった。その本の筆者は同意しつつも、やっぱりCharles le Téméraireというすでに定着している呼び名は維持したい、と書いていたけど。まあ自分にはフランス語のニュアンスはわかりませんが、シャルル関連の本を読んでいるとそんなに猪突猛進って感じは受けないので、このAARではle Téméraireを訳さずにル・テメレールと呼ぶことにします。


つづく


2024年10月16日水曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part5

 ●第6ターン(11月24ー25日) (続き)

 仏軍三個師団の突出にドイツ軍の包囲・反撃と、戦場は両軍入り乱れての混戦状態の様相を呈してきた。

「うげー、なんかZOCばっかりでどこに動かせるのかわかんねー」

と作戦級に不慣れな両プレイヤーである。

 独軍は増援の装甲・機械化部隊が次々と前線に到着。戦闘力は1や2と低いものの、兵数に劣るドイツ軍としてはありがたい。そして勝利得点源の街Altkirch奪還に向けてさらなる反撃を繰り広げた。


●第7ターン(11月26ー27日)

 仏軍は包囲されている三個師団が補給切れ(Non ravitaillé)となってしまった。

「ええっと、補給切れって……げ、攻撃できなくなるの?!」

と今さらながらにルールを確認して驚く仏軍プレイヤー。

「いや、だっていつもやっているゲームは補給ルールなんてないし…」

 常日頃は中世の会戦やってますからね、一日で終わった戦いばかりだから補給ルールなんてありませんよ。

 このゲームでは補給が続かない状態が2ターン目となると補給切れ状態となり、攻撃は不可、防御力と移動力が半減する。被包囲下の3個師団はもう自力での脱出は不可能である。仏軍は要塞地帯の掃蕩、それにAltkirchの防衛に傾注、前ターンに増援として登場した戦力4の歩兵連隊を、トラック輸送(camion)を使ってAltkirchに急派する。仏軍は第3ターン以降、毎ターン歩兵1ユニットにトラック輸送を適用して移動力を6から8に増やせるのである。

「あれ、機甲師団を見捨てちゃうの?」

「ふん、あいつらを助けなくても仏軍は勝てるんだよ。第5ターンに突出させたのは、ドイツ軍兵力を誘引するための罠だったのさ。3個師団を封じ込めるためにかなり戦力をかき集めないといけなかっただろ? ふふん」

「いや、それ絶対うそ」

 仏軍は勝利得点13で戦術的勝利(victoire tactique)を得られる。要塞地帯で12、それにAltkirchで13となるため、無理に友軍を救出する必要はないわけである。でもアルザス解放を目指した仏軍の大攻勢のはずなのに、そんなふうに守りに入っていいのか。


 独軍は前ターンに続きAltkirchへ熾烈な攻撃を続ける。だが混戦状態のため、敵三個師団封じ込めに配置していた多くのユニットを有効に活用できず、第106装甲旅団以外は強力な攻撃ができないのが痛い。


 ちなみに焦点となっているAltkirchだが、ドイツ語だと「古い教会」の意味になる。アルザスは現代ではフランス領内だが歴史的に見てドイツとのつながりが強く、ドイツ語の名残を地名にも見ることができる。


●第8ターン(11月28ー29日)

 マップ左方の要塞地帯で唯一残っていたBelfortの街を仏軍が攻撃。ここは要塞かつ都市なので4コラムシフト、さらに三方が攻撃力半減となる河川(Rivière)が流れているため、要害堅固の地なのだ。だが仏軍は兵力を集中、衆寡敵せずBelforは陥落した。

 そしてドイツ軍の最後の攻撃。Altkirchを落とせるかどうかが勝負の分かれ目となる。かき集められるだけの戦力を投入、支援砲撃も加えて攻撃。結果は強制退却、と思いきや、前ターンに仏軍が急派した歩兵連隊の兵質はB。兵質AとBのユニットは強制退却の結果をステップロスに置き換えられるのである。危ういところで仏軍は踏みとどまり、この戦いは仏軍の戦術的勝利に終わった。


 いやー、面白かった。仏軍の突破に危ういところで駆け付けるドイツ軍の援軍、そして精鋭の装甲旅団による反撃と、結構面白い展開。それにコマンド部隊の要塞の強襲とか、いろいろと細かいギミックで味付けがしてあるのが楽しい。

 でもゲームバランス的には仏軍が有利だと思う。仏軍としては地道に要塞地帯を掃討してあと一つ勝利得点源をとれば戦術的勝利となるので、史実のようにアルザス解放と敵軍包囲を目指した機甲部隊の突進、なんてのをやらなくても済むのだ。まあ、そういう手堅いプレイが好きな人もいるとは思うけど。戦術的勝利の基準を1点か2点引き上げて、仏軍は無理にでもライン川方面に向けて攻勢をし続けるようにした方が面白いんじゃないかな。それと、今回のプレイでは仏軍が陣地帯への攻撃に慎重だったので掃蕩に時間がかかったけど、このゲームでは攻撃側は退却で損害を回避できるので、低比率でもどんどん攻撃していけばもっと早く陣地帯は完全占領できたはず。そうすればもうちょっと仏軍は平野部への攻撃に兵力を回せたと思う。まあ、作戦級には不慣れなプレイヤーの意見ですが。

 あと要塞は2コラムシフトと強力ではあるものの、強制退却はステップロスに置き換えられるというようにしたほうが抵抗力が上がって、仏軍は要塞地帯と東方への戦力の振り分けがもっと悩ましいものになって面白くなるんじゃないかな。

 まあいずれにせよあんまりゲーム化されていない戦いなので、興味持たれたらプレイしてみてはいかがでしょう。









2024年10月12日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part4

 ●第5ターン(11月22ー23日)

 陣地帯では前ターン撃退された仏歩兵部隊が再び陣地帯上部を攻撃。だが独軍歩兵がまたも奮戦、兵質Cだが1コラムシフトを得る一方、兵質Aのユニットを含む仏軍はコラムシフトなし、さらに攻撃のサイの目が振るわず、今回も攻撃は撃退された。だが陣地帯下部では使えるだけの支援砲撃をたたき込み、同一師団効果や諸兵科連合効果なども駆使して敵を駆逐していく。守備隊ユニットは退却できないため、強制退却の結果がでる壊滅してしまうのが独軍には痛い。

 一方マップ右上方のMulhouse前面では、増援として現れた独軍2個歩兵師団に機甲師団のスピアヘッドが抑えられている状態。だが機甲部隊の敵ZOC浸透能力を活かして歩兵1個師団を包囲する。さらにマップ中央から機甲部隊に追いついた歩兵師団も投入、機甲と歩兵計3個師団で独軍歩兵師団を攻撃。独軍も支援砲撃で懸命に防御するが、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果が効いて戦力比は7:1に。独軍はたまらず損害を被って3へクス退却、仏3個師団が大きく戦闘後前進する。その結果、陣地地帯からマップ中央にかけてのドイツ軍主力が大きく包囲される危険性が出てきた。

「ぐははは、仏軍が本気になったら歩兵師団ぐらいで抑えられるはずがなかろうが!」と調子に乗る仏軍プレイヤーである。


 ちなみに史実でも仏機甲部隊がMulhouse近くまで突出している。ドイツ軍は必死の防御をするのだが、ヒストリカルノートによると「アルンヘムの英第一空挺師団と同じ目にあわせてやる」なんて書いたビラまで撒いたらしい。モンティも自分の失敗がこんな形で利用されるなんて思っていなかったんじゃないかなあ。あと、M3A3がパンツァーシュレックによって炎上した、みたいなドイツ軍の抵抗の激しさを感じさせる描写もちょくちょくあってヒストリカルノート読んでいると気分が上がります。M3A3ってM3ブラッドリーだよね、あんまり知らないけど。


 強力な攻撃を繰り広げる仏軍に対し、ドイツ軍は兵力をかき集めて敵主力3個師団を包囲する。戦闘力1と弱小ではあるものの敵機甲部隊のZOC浸透能力を抑えられる偵察大隊2個を巧妙に配置、仏機甲師団の動きを封じ込めた。そして増援として登場した第106装甲旅団が第30SS武装擲弾兵師団の1個連隊の支援の下、弱小兵力しか配置していなかった敵主力側面を攻撃、戦闘後前進で包囲網をさらに強化した。


 この第106装甲旅団、2ユニットしかなく戦闘力も2と一見貧弱だが、兵質はAであるうえ仏機甲師団同様に同一師団効果で2シフト有利に、さらに歩兵と共同で攻撃すれば諸兵科連合効果も得られるため、3シフトや4シフトとなって結構強力な攻撃ができる。そのうえ、同装甲旅団の戦車大隊は対装甲効果も持つため、敵機甲ユニットとの戦闘ではさらに1シフト有利になるという優れもの。ちなみにユニットのイラストはおそらくパンターである。あ、でも戦車詳しくないんで間違っていたらごめんなさい。


●第6ターン(11月24ー25日)

 このゲームでは自軍ターンの最初に補給を確認する。包囲された3個師団は孤立状態(Isolé)となり攻撃力が半減した。

「ふん! 包囲されることなど想定内。雑多な部隊の寄せ集めの独軍包囲網など食い破ってやる」

 先述のように独軍は偵察大隊を配置しており、通常であれば偵察大隊も歩兵と一緒だと諸兵科連合効果を得られるのだが、敵に機甲ユニットがいるとその効果は得られない。まあ、偵察大隊ってそんなに強力じゃない装甲車両だろうから、戦車相手だと歯が立たないってことですかね。逆に仏軍第1機甲師団は諸兵科連合効果と同一師団効果で計3コラムシフト、さらに支援砲撃で戦闘比を5コラム上げて敵を蹴散らした。

 そして他の2個師団も敵の包囲網の一角を集中攻撃。戦闘力半減状態とはいえ総計17戦闘力となり、機甲師団の同一師団効果と諸兵科連合効果も加えて6:1にまでもっていく。だが兵質チェックで痛恨の1が出て、マイナス2コラムシフト。ここの2個師団は戦闘力は高いものの、すべて兵質Cなので兵質チェックでは6分の1の確率でこのようなことが起こるのである。結果、敵を1へクス後退させるにとどまり包囲網を破るには至らなかった。

 かたや、マップ左方の要塞地帯では順調に掃蕩が進む。この調子だと最終ターンまでにはこの地帯のすべての得点源へクスは占領できるだろう。


つづく

2024年10月5日土曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part3

 ●第3ターン(11月18ー19日) つづき

 このターン、ドイツ軍には歩兵2個師団がマップ右上から増援として登場したものの、戦線にたどり着くことができない。マップ下方のスイス国境近くではこれまで敵の攻撃のサイの目が振るわず何とか機甲部隊の突破を防いでいるものの、もう限界である。ドイツ軍はマップ上方にむかって大きく後退。河川沿いに防御ラインを敷いた。


●第4ターン(11月20ー21日)

 フランス軍はマップ左方の陣地帯への着実な攻撃を続ける。しかもマップ左上に初期配置されていた仏軍歩兵4ユニットが、このターンに移動制限解除。陣地帯上部に襲いかかる。だがドイツ軍には陣地と荒地の地形効果、さらに歩兵の攻撃に対しては1コラムシフトが得られる機関銃大隊がいたため、1.5:1の低比率となり攻撃は撃退された。

「ふん、フランス軍の見せ場は陣地帯じゃなくて平野部での突破なんだよ」 

と、仏機甲2個師団がマップ右上の重要都市Mulhouseにむかって突進。平地に出ればこっちのもんである。そして前ターンに増援として現れた独歩兵師団を集中攻撃。退却する敵を追撃する。陣地帯からマップ中央にかけてドイツ軍を大きく包囲しようとする勢いである。


  危うい状況となったドイツ軍には増援が他戦線から急遽送り込まれてくる。このゲームではマップ右上にある主要都市Mulhouse4へクス以内に仏軍が近づくとそのターンに第30SS武装擲弾兵師団などが、またマップ右側約3分の1のあたりまで仏軍が進出すると次ターンには第106装甲旅団などが登場する。今ターン、仏機甲部隊が大きく前進したため、独軍は増援を得られることになった。


 史実でもフランス軍の急進に対し、独軍は増援をかき集めて何とか防御線を敷いたらしい。バイエルンの駐屯地からは駆逐戦車大隊が、オランダからは突撃砲大隊が急遽送られてきた。またMulhouse近くのCernayという街には武装SSの訓練施設があり主にフランス語圏出身の下士官が訓練を受けていたのだが、ヒストリカルノートによると仏軍がMulhouse近くにまで進出するとここの訓練生も防御に投入されたそうだ。それだけドイツ軍も必死だったってことですね。

 また、このターン増援として現れた第30SS武装擲弾兵師団はベラルーシなどの「義勇兵」から編成されていたのだが、反乱を起こしドイツ人士官を処刑、フランス軍に加わった部隊もあったそうだ。そりゃわざわざソ連圏でドイツ軍に加わる兵はソ連と戦いたいのであって、西側連合軍と敵対なんかしたくなかったでしょうに。


 増援を得たドイツ軍だが、突出してきた機甲部隊にどう対処するか。前ターンに登場した歩兵2個師団と併せて、単独でいる仏コンバット・コマンドに反撃して敵の衝力をそぐべきか。だがいまだほとんど歩兵しかいないドイツ軍は、ZOC浸透能力を持つ敵機甲ユニットに対して有効な防御線を張るには心もとない。それに陣地帯が早々に包囲されると敵の兵力運用の自由度が増してしまうので、陣地帯との連絡回廊部分の防衛に兵力を割くべきだろう。ずっとやられっぱなしでストレスがたまっていたドイツ軍プレイヤーだったが、状況を冷静に分析して反撃は時期尚早と自重、仏機甲師団の前面の防御を固めた。


  史実では第4ターンにあたる11月21日から独軍が反撃を開始している。ヒストリカルノートによると、この時の状況を仏第一軍指揮官のde LattreはU,I,Oと回顧録に書いているそうだ。独軍突出部を取り囲むように仏軍はU字型の戦線を形成しているが、ドイツ軍は仏軍の中で一番脆弱な南方で反撃してIの形にもっていこうとし、フランス軍はこれに対してU字を閉じてO字型の包囲網を形成しようとしていたそうだ。なんか、戦況図を動画で作ってU,I,Oの文字を載せたくなる。


つづく

2024年9月30日月曜日

ファレーズ、再び? Alsace1944 (VV175) AAR part2

 ●第1ターン(11月14ー15日)続き

 ドイツ軍はマップ下方の敵の突破を見て、部隊を大きく後退。史実ではこの陣地帯の守備のために、聴覚障碍者で大隊を編成して投入することまでしたらしい。このゲームでも、ドイツ語でOhren(耳)と書かれたカンプグルッペユニットが登場する。

 陣地帯の防衛もさることながら、仏機甲部隊の平野部への突破を防ぐのに必死のドイツ軍。平野部に敵が進出すると戦線が広がって防御に不利になるだけでなく、仏軍機甲ユニットは平地では歩兵のZOCをすり抜けられる。ほとんど歩兵しかいないドイツ軍は森林地帯で極力敵を食い止めておかないと、ただでさえ兵力劣勢なのにさらに苦しい戦いとなる。


●第2ターン(11月16ー17日)

 フランス軍には第1,第5機甲師団の計3ユニットが増援として登場する。フランス軍の増援はマップ西端か南端から登場させられるのだが、もちろんマップ南端のスイス寄り、前ターンで突破した方面に投入してさらに激しくドイツ軍を攻撃する。仏軍は最大限の支援砲撃を投入、ここを抜かれるわけにいかないドイツ軍はなけなしの支援砲撃で応じる。河川越えの攻撃のため攻撃力は半減するものの、同一師団効果と諸兵科連合効果のコンボで戦闘比を上げた仏軍だったが、兵質チェックで失敗。敵を1へクス後退させるだけに終わった。


 このゲームでは各ユニットが兵質(Qualité)をもち、戦闘の際には攻防両軍が兵質チェックを行う。ずっと防戦が続く独軍も、なんとかここをこらえてくれ、とサイコロを振ることができるのだ。サイの目によって有利なコラムシフトを得たり逆に不利になったりするのだが、仏軍第一機甲師団のユニットの兵質はB。3分の1の確率で1コラム有利に、6分の1で不利になるのだが、その6分の1の目が出たわけである。


 フランス軍は機甲部隊がマップ右方面への突破を図る一方で、歩兵を中心に陣地帯を攻撃していく。そして独軍の守備が手薄な陣地を狙ってコマンド部隊2ユニットが襲撃する。

 マップ上に9つある陣地へクスには守備隊(garnison)が1ユニットずつ配置されているのだが、守備隊しかいない陣地へクスに対し仏軍コマンド(commando)は襲撃(raid)を行える。守備隊は戦力未確認状態で配置され約4割が戦闘力ゼロ。コマンドが襲撃して守備隊が戦闘力ゼロの場合は成功、戦闘力が1以上の場合、1D6で1-4で成功だ。成功すると陣地は占領、失敗するとコマンドユニットは除去される。

「いやー、少数精鋭のコマンド部隊が敵陣地を電光石火の襲撃で占領って、ロマンがあるよね」

「使えるものは使えるうちに使っておけってだけでしょ。ドイツ軍が前線を縮小したら守備隊が他のユニットとスタックするだろうから」

 結局、コマンド部隊2ユニットの襲撃は1カ所成功、もう一カ所は失敗に終わった。


 ドイツ軍は陣地帯の左方と下方からできる限り兵力を撤退させる。だがこのゲームでは敵ZOCからの離脱に2移動力を消費するため、6移動力しかない歩兵は思うように後方に回せない。敵機甲ユニットのZOC浸透能力を防ぐ機械化・自動車化ユニットはドイツ軍には偵察大隊1ユニットしかないのだが、その偵察大隊をスイス国境近くの前線左端に派遣して敵機甲ユニットの動きを止めようとする。だがフランス軍が平野部に突破するのは時間の問題だろう。


●第3ターン(11月18ー19日)

 フランス軍にはさらに機甲ユニットが増援として登場するが、交通渋滞で前線までたどり着けない。このゲームでは第3ターン以降、ドイツ軍は交差点などに交通渋滞(Embouteillage)マーカーを一つ置くことができ、仏軍機械化・自動車化ユニットに1移動力追加で消費させることができるのだ。

 このターンもスイス軍はスイス国境近くの右翼に機甲ユニットを集中。だが前ターンに続き今回も兵質チェックに失敗、大きく突破とはならなかった。

「おいおい、フランス軍の第1機甲師団ってどうなってんだ?!」

とぼやく仏軍プレイヤー。このゲーム、諸兵科連合効果など多くのコラムシフト要素があるだけでなく、兵質チェックでさらに戦闘比が動く可能性があるので、戦闘結果が結構読めなかったりする。


 陣地帯近くではフランス軍が包囲していた敵歩兵を掃討、だが陣地への攻撃は独軍が奮戦し損害を受けつつも踏みとどまる。マップ左上に配置されている仏軍歩兵4ユニットは第3ターンまで移動できず、高比率で陣地帯を攻撃しようとすると多くのヘクスを攻撃できないのだが、低比率になることを恐れずにもっと積極的に攻撃すべきだったかもしれない。


つづく

(幕間)『ブルゴーニュ国家』

  AARを書いているGrandsonの戦いはブルゴーニュ公率いる軍隊とスイス軍の戦いですが、ブルゴーニュの歴史ってよくわからないんですよね。薔薇戦争とかその他14-15世紀のヨーロッパの本を読んでいると「ブルゴーニュ公国」って言葉がちらほら出てきて、なんじゃらほいとずっとモヤモ...