イングランド軍右翼のラヌルフ隊の猛烈な攻撃に続いて、中央のロベール・ド・ボーモンが動く。先ほど奮戦した敵の精鋭歩兵を再び攻撃。さすがの精鋭も2度目の攻撃は支えきれず、混乱状態になって後退する。こうして敵に損害を与えつつ、ロベール・ド・ボーモンは混乱状態にあるユニットの回復に努めた。
イングランド軍の好きにさせてたまるか。敵も大いに出血しているのだ、死力をふるって攻撃し続けろ! と中央のノルマンディー公ロベールがやり返す。先ほど敵の波状攻撃で損害を被っていたにもかかわらず精鋭歩兵が奮戦、同じく消耗していた敵槍兵を敗走させる。そして弓兵が敵指揮官ロベール・ド・ボーモン率いる重装騎兵に至近距離まで近づいて矢を放つ。イングランド軍は次々と馬を失い混乱状態に陥った。そこに槍兵が白兵戦をしかける。この槍兵自身も混乱状態だったが、奮戦し敵を敗走させた。必死に兵を押しとどめようとしたイングランド軍の老将ロベール・ド・ボーモンは、この混戦の中で戦死してしまった。
そしてノルマンディー軍右翼(マップ右方)のモルタン伯ギョームが動く。敵の重装騎兵を指揮官ギョームが自ら仕留め、配下の槍兵が軍旗の下に敗走していたサリー伯部隊の兵を掃討していった。イングランド軍左翼は崩壊である。さらにノルマンディー軍左翼(マップ左方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレームが続く。先ほどのイングランド軍右翼のラヌルフ隊の攻撃で大損害を受けていたため、後退して態勢を整えようと努めた。
ここでやっとイングランド軍に自由活性が回ってくる。このシナリオではイングランド軍は自軍の自由活性の際に増援の登場チェックが行える。失敗するごとに有利なサイの目修正がつくので、時間がたてばたつほど増援が現れる確率が高くなる。これまでずっと登場チェックに失敗していたが、頼む、イングランド軍の最後の攻撃に間に合ってくれ、との祈りを神が聞き入れたか、ブルターニュ公アラン四世の重装騎兵部隊がついに登場! だが遅い。遅すぎる。史実ではイングランド王ヘンリーI世がブルターニュ騎兵に戦場を迂回させ、敵の側面から後方にかけて奇襲、ノルマンディー軍を崩壊させている。このシナリオでも増援の重装騎兵3ユニットは強力なのだが、すでにイングランド軍の累積敗走ポイントは敗走レベル(Flight Level)の21を上回っており、敗北が決まっている。イングランド軍としてはブルターニュ騎兵の攻撃でできる限り敵に損害を与え、この自由活性の終了時の敗北チェックでノルマンディー軍も崩壊させ、引き分けに持ち込むしかない。
増援として現れるブルターニュ公アランはタンシュブレーの戦いの10年前に第一回十字軍に参加している。ちなみにブルターニュはノルマンディーの西隣にあたり、両地方はずっと抗争を続けていたらしい。ブルターニュ公国は中世の間、実質的な独立を保つが、百年戦争の後にフランスに屈服する。これはVaeVictis160号でゲームになっていますね。あと、漫画『ブルターニュ花嫁異聞』はまさにブルターニュが主な舞台で、これは13世紀のお話。
マップ右方から重装騎兵部隊が土煙を上げて敵の側面に突撃。突然現れた騎兵集団にノルマンディー軍左翼の兵たちは浮足立ち、ブルターニュ公アラン四世率いる重装騎兵の突撃を防ぐすべもない。歩兵が次々と蹴散らされていき、さらには指揮官のロベール・ド・べレームは戦死してしまった。ちなみにこのロベール・ド・べレーム、史実では敵の騎兵部隊が出現すると一目散に戦場から逃走したらしい。
このブルターニュ部隊の奇襲攻撃でノルマンディー軍の累積敗走ポイントは15に上った。敗走レベルは18で、10面体ダイスを振って60%の確率で敗北となる。そしてサイの目は5。これまでの激戦に耐えられず、ノルマンディー軍の士気も崩壊してしまった。イングランド軍も敗走レベルを超えているので、この兄弟間の死闘は引き分けとなる。ボクシングの最終ラウンド、それまでの激しい殴り合いで立っているのもやっとの赤コーナー・ヘンリー。最後の力を振り絞って放った右ストレートが青コーナー・ロベールの顔面をとらえ、両者ともにリングに崩れ落ちた ― という感じでのゲーム終了である。
このAAR冒頭で書いたように、このシナリオではノルマンディー軍が不利である。だが既述のように攻撃側が有利なので、果敢に攻撃して殴り合いを制すれば勝機はあると思われる。まあ、もちろんイングランド軍の増援がいつ現れるかにもよるんだけど。
タンシュブレーの戦いはウォーゲーム的にはマイナーだと思うけど、Hollandspielの「Shields & Swords II」シリーズの、「House of Normandy」というゲームにTinchebraiのシナリオが収録されている。PnP版が12ドルと廉価で手に入るので、「Norman Conquests」のこのシナリオと比較してみるのもいいんじゃないでしょうか。