2024年3月29日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ⑤

  イングランド軍右翼のラヌルフ隊の猛烈な攻撃に続いて、中央のロベール・ド・ボーモンが動く。先ほど奮戦した敵の精鋭歩兵を再び攻撃。さすがの精鋭も2度目の攻撃は支えきれず、混乱状態になって後退する。こうして敵に損害を与えつつ、ロベール・ド・ボーモンは混乱状態にあるユニットの回復に努めた。

 イングランド軍の好きにさせてたまるか。敵も大いに出血しているのだ、死力をふるって攻撃し続けろ! と中央のノルマンディー公ロベールがやり返す。先ほど敵の波状攻撃で損害を被っていたにもかかわらず精鋭歩兵が奮戦、同じく消耗していた敵槍兵を敗走させる。そして弓兵が敵指揮官ロベール・ド・ボーモン率いる重装騎兵に至近距離まで近づいて矢を放つ。イングランド軍は次々と馬を失い混乱状態に陥った。そこに槍兵が白兵戦をしかける。この槍兵自身も混乱状態だったが、奮戦し敵を敗走させた。必死に兵を押しとどめようとしたイングランド軍の老将ロベール・ド・ボーモンは、この混戦の中で戦死してしまった。 

 そしてノルマンディー軍右翼(マップ右方)のモルタン伯ギョームが動く。敵の重装騎兵を指揮官ギョームが自ら仕留め、配下の槍兵が軍旗の下に敗走していたサリー伯部隊の兵を掃討していった。イングランド軍左翼は崩壊である。さらにノルマンディー軍左翼(マップ左方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレームが続く。先ほどのイングランド軍右翼のラヌルフ隊の攻撃で大損害を受けていたため、後退して態勢を整えようと努めた。

 ここでやっとイングランド軍に自由活性が回ってくる。このシナリオではイングランド軍は自軍の自由活性の際に増援の登場チェックが行える。失敗するごとに有利なサイの目修正がつくので、時間がたてばたつほど増援が現れる確率が高くなる。これまでずっと登場チェックに失敗していたが、頼む、イングランド軍の最後の攻撃に間に合ってくれ、との祈りを神が聞き入れたか、ブルターニュ公アラン四世の重装騎兵部隊がついに登場! だが遅い。遅すぎる。史実ではイングランド王ヘンリーI世がブルターニュ騎兵に戦場を迂回させ、敵の側面から後方にかけて奇襲、ノルマンディー軍を崩壊させている。このシナリオでも増援の重装騎兵3ユニットは強力なのだが、すでにイングランド軍の累積敗走ポイントは敗走レベル(Flight Level)の21を上回っており、敗北が決まっている。イングランド軍としてはブルターニュ騎兵の攻撃でできる限り敵に損害を与え、この自由活性の終了時の敗北チェックでノルマンディー軍も崩壊させ、引き分けに持ち込むしかない。


 増援として現れるブルターニュ公アランはタンシュブレーの戦いの10年前に第一回十字軍に参加している。ちなみにブルターニュはノルマンディーの西隣にあたり、両地方はずっと抗争を続けていたらしい。ブルターニュ公国は中世の間、実質的な独立を保つが、百年戦争の後にフランスに屈服する。これはVaeVictis160号でゲームになっていますね。あと、漫画『ブルターニュ花嫁異聞』はまさにブルターニュが主な舞台で、これは13世紀のお話。

 

 マップ右方から重装騎兵部隊が土煙を上げて敵の側面に突撃。突然現れた騎兵集団にノルマンディー軍左翼の兵たちは浮足立ち、ブルターニュ公アラン四世率いる重装騎兵の突撃を防ぐすべもない。歩兵が次々と蹴散らされていき、さらには指揮官のロベール・ド・べレームは戦死してしまった。ちなみにこのロベール・ド・べレーム、史実では敵の騎兵部隊が出現すると一目散に戦場から逃走したらしい。

 このブルターニュ部隊の奇襲攻撃でノルマンディー軍の累積敗走ポイントは15に上った。敗走レベルは18で、10面体ダイスを振って60%の確率で敗北となる。そしてサイの目は5。これまでの激戦に耐えられず、ノルマンディー軍の士気も崩壊してしまった。イングランド軍も敗走レベルを超えているので、この兄弟間の死闘は引き分けとなる。ボクシングの最終ラウンド、それまでの激しい殴り合いで立っているのもやっとの赤コーナー・ヘンリー。最後の力を振り絞って放った右ストレートが青コーナー・ロベールの顔面をとらえ、両者ともにリングに崩れ落ちた ― という感じでのゲーム終了である。


 このAAR冒頭で書いたように、このシナリオではノルマンディー軍が不利である。だが既述のように攻撃側が有利なので、果敢に攻撃して殴り合いを制すれば勝機はあると思われる。まあ、もちろんイングランド軍の増援がいつ現れるかにもよるんだけど。

 タンシュブレーの戦いはウォーゲーム的にはマイナーだと思うけど、Hollandspielの「Shields & Swords II」シリーズの、「House of Normandy」というゲームにTinchebraiのシナリオが収録されている。PnP版が12ドルと廉価で手に入るので、「Norman Conquests」のこのシナリオと比較してみるのもいいんじゃないでしょうか。


2024年3月25日月曜日

日本のウォーゲームは質が高いのになぜ英語版があまり出ない?などなど、ウォーゲーム英訳者が語ってくれました

  先日、ゲームジャーナルの「フランス革命 1789」を英訳したっていうツイートを見たんですが、そうつぶやいたScott Muldoon氏はこれまで日本のゲームを多く英語に訳してきたそうなんですね。そのScott氏がYouTubeで日本のウォーゲームについて語るってツィートを見て、お、これは見なくては、と思ったんですけど、日本時間早朝5時のライブ配信。こりゃ無理だわ、ライブ視聴はあきらめて後で見ようって日和ってたんですが、結局、生で見てしまいました。

 Scott氏が登場したのは、ウォーゲームのデザイナーとトークしたりするHomo LudenceというYouTubeチャンネル。「Exploring Japanese Tabletop Wargames」というタイトルで、1時間強にわたるトークセッションとなりました。眠かったけど面白かったので最後まで見ましたよ。

 今回のトークはいろんな話題に飛んだんですが、日本のウォーゲームの歴史についてもざっと説明してくれていました。鈴木銀一郎のことはgrandfather of Japanese wargamesって言ってましたね。あと、ウォーゲームが冬の時代を迎えた後「ゲームジャーナル」と「コマンドマガジン」が創刊されたというのは日本のウォーゲーマーだったらたいてい知っていると思うんですけど、out of ashesなんて表現を使っていました。たしかにあのころはウォーゲーム業界は悲惨な状況だったみたいですからね。それと、Tetsuya NakamuraとYasushi Nakaguroの二人は海外で最も知られているデザイナーだそうです。(でも、「ふ~ら~中村」とは言わないのね。)

 「コマンドマガジン」と「ゲームジャーナル」について結構話していて、それにBonsaiゲームズのゲームについては何回か触れられていたけど、BANZAIマガジンへの言及は無かった気が。惜しい。あと、和栗南華氏という若いウォーゲーム・デザイナーが出てきてることも紹介してほしかったなー。(あ、別に自分はBANZAIマガジンの回し者じゃありませんよ)

 日本のゲームは質が高いのに、なぜあまり英語化されないのか?という質問が出たんですけど、この業界の人手不足(というか収益体制の問題かな?)があるようです。Scott氏が一緒に仕事をしたウォーゲームのパブリッシャーの多くはフルタイムの社員がほとんどいなかったとのこと。ウォーゲーム業界はこのホビーを愛する人たちによって支えられており、そういった人たちが自分の時間とエネルギーをつぎ込むことでこの業界は成り立っているみたいですね。Scott氏も、仕事としてよりもまずは自分がプレイしたいと思ったゲームを訳してみるって言っていました。

 それと、日本の歴史があまり欧米では知られていないから関心を引かない、という点も指摘されていました。戦国時代や明治維新っていったら日本で人気ですが、アメリカで知っている人は多くない、と。でも、この番組のホストのFrédéric Serval氏が、最近はユニークな題材のゲームが出てきていて、バルジやスターリングラード以外のものをプレイしたいという新しい層が現れているって言っていましたね。その潮流が強まれば、日本史ゲームや、武士ライフなんかも英語化される可能性が出てくるのかな?

 Scott氏が手掛けたゲームで次に出るのは、という質問に、一ヶ月ほど前、中村氏の激闘シリーズの「激闘!ロンメル軍集団」と「激闘!マッカーサー国連軍」を訳したって答えたら、Frédéric Serval氏が「今すぐプレイしたい!」って突っ込んでいました。やっぱり「Victory Lost」に始まる激闘シリーズは海外でも人気なんでしょうね。今回のトークでも結構激闘シリーズについて語っていました。それと、「フランス革命 1789」もちょうど最近英訳したってScott氏が言ったら、「誘惑するのはやめてくれ」ってFrédéric氏が笑ってました。うーん、やっぱりゲームのことを聞くとプレイしたくなるよね。もっと日本のウォーゲームが英語で出ないかなー。

 すっごく好きで、英語版が出てほしい日本のウォーゲームは?と聞かれて、好きなのがありすぎて選べないってScott氏が答えたんだけど、とりあえず今一つだけ選ぶとしたら、と重ねて聞かれると、Bonsaiゲームズの「ライズ・オブ・ブリッツクリーク」を挙げていました。1940年の西部戦線を扱ったゲームはたいてい独軍が強力だけど、このゲームは、仏軍が数的にも優勢なのになぜ負けたのかということをシミュレートしている数少ないゲームだそうです。へー。でもこのゲームは英語化がもう決まっているそうですね。

 あと、最後の方で日本のウォーゲームのグラフィックの特徴は、という質問から、日本はゆるい(relaxed)っていう指摘が出て、あるカードゲームの英語版は実際の歴史的な写真を使っているのに、オリジナルの方はアニメギャルがビキニを着ていて、なんて例が出されていたけど、「ばるば★ろっさ」かな。でもあれって英語版あったっけ。で、その話の流れで「ぱんつぁー・ふぉー」の1と2が出されてきて、そのうち「MC☆あくしず」も登場するんじゃないかとひやひやしましたよ。いや、別に日本の雑誌として紹介していただいても問題ないんですけどね。それと、ゲームジャーナルのリプレイマンガでは毎回、冒頭に女性のイラストが描かれていることについても、言葉を選んで話していて批判的な印象は受けなかったですね。

 と、1時間ちょっとのトークショー、結構楽しめました。日本人のウォーゲーマーだったら興味を持てる内容が結構あると思うので、よければ視聴してみてください。

2024年3月22日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ④

  ノルマンディー軍左翼(マップ右方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレームに続いて、右翼(マップ左方)のモルタン伯ギョームが継続活性。すでに大きな損害を被っている敵サリー伯の部隊に、とどめだとばかりに激しい攻撃を加える。イングランドの兵たちは自部隊の軍旗目指して我先に敗走。サリー伯が率いる重装騎兵だけがからくも持ちこたえた。

 ノルマンディー軍の攻撃によって右翼のラヌルフ隊は大きな損害を被り、左翼のサリー伯隊にいたってはほぼ壊滅状態。左右両翼で危機にさらされているイングランド軍。唯一無傷でいるのは中央後方に布陣しているヘンリーI世の部隊のみ。たった2ユニットの部隊だが、精鋭の下馬騎士で、防御力も高い。この王直属部隊を投入すべきか。


 イングランド軍を率いるヘンリーI世はノルマンディー公ロベール二世の弟で、征服王ウィリアムが死去した際、ロベールがノルマンディーを、もう一人の兄ウィリアムがイングランドを相続したが、ヘンリーは現金をもらっただけだったそうだ。だがイングランド王となったウィリアムが狩猟中に死去。その死因には諸説あるようだが、とにかくすぐさまヘンリーはウェストミンスターに駆け付けそこにあった王室の宝庫を確保、そしてイングランド王に即位している。優秀な指揮官であった一方で冷酷な面も持ち、ヘンリーのせいで孫娘がむごい目にあっている。そのことに激怒した孫娘の母親、つまりヘンリーの娘が、クロスボウで自分の父を狙撃、危ういところで矢がそれた、というエピソードが残っている。おいおい、どんな親子だよ。


 しばし迷ったイングランド軍だが、王を危険にさらすな、とイングランド軍右翼のラヌルフが配下の兵を叱咤して突進させる。粘っていればブルターニュの重装騎兵部隊が敵の側面を攻撃し始める。そう信じて戦い続けるのだ。 

 ラヌルフの槍兵1ユニットが敵の混乱状態の2ユニットを一気に壊滅させる。さらに、先ほど突撃してきたノルマンディー軍指揮官ポンティユー伯ロベール・ド・べレームに対し、ラヌルフが重装騎兵とともにチャージ! 慌ててポンティユー伯がカウンターチャージを命ずるものの、消耗しているイングランド軍から突撃を受けるとは思っていなかったノルマンディー軍の騎兵はカウンターチャージに失敗。浮足立つノルマン騎兵にラヌルフが突っ込む。たまらずノルマン騎兵は混乱状態で退却。逃すか、とさらにラヌルフが追い打ちをかけ壊滅させる。その勢いは止まらず、ついでとばかりにノルマン弓兵を攻撃して損害を与えた。


 Men of IronシリーズではMounted Men-at-Armsなどの兵種が白兵戦や射撃、突撃を受けた場合、カウンターチャージを試みることができる。敵から攻撃を受けた精鋭の騎兵が、なめるな! とやり返す、ってことですね。突撃に対するカウンターチャージは基本的に50%の確率で成功し、敵の突撃の効果を無効にする。Men of IronシリーズではMounted Men-at-Armsなどは兵種としても白兵戦で有利なのだが、突撃やカウンターチャージが行えるためさらに強力なユニットとなる。「Men of Iron Tri-pack」収録の「Infidel」に登場する騎士(Knight, KN)なんか、狂暴なまでに強い。

 また、今回のラヌルフの突撃はサイの目が走り継続攻撃(Continue Attack)が続いた。正常状態の防御ユニットに対する攻撃は、白兵戦では継続攻撃は得られず、突撃でサイの目がいい場合のみ、防御側が混乱して退却、継続攻撃となる。混乱した防御ユニットに対する継続攻撃ではさらに継続攻撃を得られる可能性があり、連続して継続攻撃を得たラヌルフは敵部隊を切り裂いていったのである。  


 左翼が大損害を被っていたイングランド軍は一方的に敗走ポイントが蓄積していき、13となっていたが、このラヌルフ隊の奮戦でノルマンディー軍の累積敗走ポイントも11に上った。両者互角といった状態である。 


つづく


2024年3月15日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ③

  中央のノルマンディー公の攻撃に続いて、右翼(マップ左方)のモルタン伯ギョームが継続活性に成功。総指揮官(Overall Commander, OC)のノルマンディー公は活性修正(Effectiveness)という値を持ち、指揮範囲内にいる他の指揮官が継続活性する場合、サイの目が1有利なる修正がつく。初期配置では配下の2人の指揮官は指揮範囲外だったが、先ほどのノルマンディー軍中央の活性化の際に、モルタン伯ギョームを指揮範囲に入れるようにノルマンディー公が移動していた。先述のとおりモルタン伯ギョームの活性化値は3と凡庸だが、総指揮官の活性修正を得て継続活性しやすくなっていたのである。


 このノルマンディー公ロベール二世、征服王ウィリアムの長男なのだが、父親とは仲が悪く反乱を起こしている。ちなみに母親のマティルダは息子の反乱を支援したりしたらしい。敬虔なキリスト教徒で、タンシュブレーの戦いの数年前に第一回十字軍に参加しており、遠くイェルサレム攻撃にも加わっている。Men of Ironシリーズの「Infidel」に収録されているDorylaeumとAscalonのシナリオに登場していますね。


 先ほどのイングランド軍左翼サリー伯ギョームの突撃で損害を受け包囲状態になっている指揮官ギョームを救出するため、ノルマンディー軍右翼(マップ左方)は弓兵が至近距離から敵槍兵に矢を放ち混乱させた。そしてこれまでのぶつかり合いで混乱状態となっているイングランド軍槍兵の戦列にモルタン伯ギョームの歩兵が突っ込む。イングランド軍ユニットは次々と壊滅、サリー伯の部隊は半壊状態となった。

 左翼が崩壊の危機にさらされているイングランド軍は、無傷で残っている右翼のラヌルフを救援に差し向ける。敵中央ノルマンディー公の部隊左翼(マップ右方)を集中攻撃。たまらず槍兵が壊滅した。

 そして右翼の救援を受けたイングランド中央のロベール・ド・ボーモンが続く。このロベールも先ほどのノルマンディー軍同様、総指揮官ヘンリーI世の指揮範囲内にいるため、継続活性でサイの目が1有利になるのだ。

 あまたある中世の戦いのなかでも名高いヘイスティングスの戦いで名を上げたこのロベール、敵ノルマンディー公の部隊を粉砕してみせようぞ。ロベールが高齢にもかかわらず陣頭に立って突進。突出している敵ノルマンディー公の精鋭歩兵に対し側面から槍兵の支援も得て白兵戦をしかける。サイの目修正は+4とほぼ攻撃成功、のはずが、ノルマンの意地を見せたか精鋭歩兵たちが奮戦、イングランド軍の集中攻撃は撃退された。また、弓兵の至近距離からの槍兵に対する射撃も効果がなく、ロベール・ド・ボーモン隊の攻撃はさえないものに終わる。おいおい、ヘイスティングスで活躍した指揮官じゃないのかよ。

 イングランド軍右翼が中央の救援に動いた隙をついて、ノルマンディー軍左翼(マップ右方)のポンティユー伯ロベール・ド・べレーム(Robert of Bellȇme, Count of Ponthieu)が攻撃に出る。弓兵の矢で敵を混乱させ、そこに指揮官自らが重装騎兵を率いて突撃、なんなく敵を蹴散らした。イングランド軍右翼ラヌルフ隊は中央にシフトしていため部隊右方の防御が薄くなっている。そこにポンティユー伯の槍兵2ユニットが集中攻撃。だが敵を侮ったか、攻撃側混乱に終わった。だが他の槍兵が白兵戦で敵に損害を与えていった。

 ノルマンディー軍が手を緩めずに攻撃してきたため、イングランド軍の累積敗走ポイントは9。一方ノルマンディー軍はまだ4にとどまっている。イングランド軍は敵の勢いを押しとどめ、増援が現れるまで耐えることができるか。


つづく

2024年3月10日日曜日

French Revolution 1789 (Game Journal #89)

The game "French Revolution 1789" attached to the wargame magazine Game Journal #89 stimulates the political struggle at the end of the 18th century in France, spanning from the twilight of Louis XVI's reign to the emergence of Napoleon. It's a multiplayer game designed for two to five players (four players is optimal).  Each player assumes the role of a faction, endeavouring to accumulate the most Victory Points (VPs), which reflect popular acclaim and historical accomplishments, by collecting influential figures, garnering support from cities, and orchestrating changes in the political landscape.

The game runs 5 turns, each in 2 parts - an auction phase where players bid on cards representing people and events, and an action phase where players use actions on their cards to vote, arrest rivals, go into exile, and lead armies. (This summary is by Mr. Scott Muldoon, who translated the rules into English. Thanks, Scott!).

Actions available to players are restricted based on the Political System. The game begins with Absolutisme and can transition to Empire or even Egalitarianism (a bud of communism). During the Absolutisme, players are limited to Voting to change the System and Placating the Nobility to gain support from cities. In the Republique, players can Arrest a person from another faction or Execute one (the tumult of the French Revolution!). Persons can be exiled to foreign countries, similar to Marie Antoinette's attempted escape. Then they can trigger the dispatch of Coalition armies, trying to undermine support in a city for other players.


The Political system can change through voting, directly impacting the Victory Points (VPs) players receive. For instance, if you possess Louis XVI while the system remains Absolutism, you can earn 5 VPs at the end of a turn. As the revolution progresses, the system evolves, compelling each player to strategize which figures they should acquire.


This game offers simple rules for quick and easy play. To enhance gameplay, it's beneficial to understand the abilities associated with each card. Here, you can savor some flavor:


Napoleon
No explanation needed for this figure, right? When the Political System is Empire, he brings 10VPs! (Vive l'empereur!!), which is a much larger gain of VPs compared to other person cards. He can initiate a coup d'état and also deploy formidable corps.


Marie Antoinette
She can contribute 3VPs when the System is Absolutism, but she cannot perform Placate the Nobility or Vote actions.


Robespierre
Contributes 5 VPs if the System is Republique. He can add +3 points of voting to Republique, and if you possess the Tennis Court Oath card, acquiring Robespierre becomes easier.


Talleyrand
A genius of changing sides. He can add 4 points of voting to ANY system.


Here are some event cards:

Storming of the Bastille
The fury of the French people erupts. The player who obtains this card gains the support of Paris. Additionally, that player can vote for Monarchie Constitutionnelle.



Declaration of Pillnitz
Coalition sends troops to suppress the revolution. If you possess Marie Antoinette, obtaining this card becomes easier, as she hails from the House of Habsburg.



Scott Muldoon mentioned that he translated the rules into English, and I hope he also develops a Vassal module in English. Any publisher interested in this game?


*この「フランス革命 1789」の紹介、もともとは昨年、War-Gamers Advent Calendarを主催されているHAさんから「英語でブログを書け!」という鬼のような指示があり、泣きながら草稿を作ったものです。幸いアドベントカレンダーは全部空きが埋まり(さすがは日本のウォーゲーマーのみなさん!)私が書く必要はなくなったんですが、Scott Muldoonさんがルールを英訳したとポストしているのを見て、うぉおおーっと拙速で書きあげました。HAさんの無茶ぶりがなかったらこんなことはできなかったので、今では感謝しています。

2024年3月8日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ②

  ノルマンディー軍右翼(マップ左方)モルタン伯ギョームの先制攻撃で多くの被害を受けたイングランド軍左翼だが、敵の連携が取れていないのを見て取り、やられたらやり返せと反撃する。

 このシナリオでは両軍ともに槍兵が主力となっているが防御力が低く、いずれも白兵戦防御DRM(Shock Defence DRM)は+1。この数値は敵の攻撃の際のサイの目修正となり、数値がプラスだと攻撃側に有利になる。このDRM+1を持つ槍兵に対し、同じく槍兵が1対1で白兵戦をしかけた場合、攻撃側に不利な結果となるのは30%なのに対し防御側が混乱したり退却する確率は50%。守りを固めるよりも積極的に攻撃したほうがよく、殴り合いの展開となりがちである。


 ちなみにこの英左翼部隊の指揮官はサリー伯で名は正面の敵モルタン伯と同じくギョーム。「Norman Conquests」のシナリオ集Battle BookではWilliam de Warrene, 2nd Earl of Surreyと表記されているが、Warreneという家名はノルマンディーのVarenneという地名から由来している、なんてWikiに書かれていたので、この人はギョーム・ド・ヴァレンヌと呼ぶことにする。ちなみにヴァレンヌと聞くとフランス革命のときのヴァレンヌ逃亡事件を思い出す。ルイ16世とマリー・アントワネットがオーストリアへの逃亡を図ったものの露見しヴァレンヌで捕まってパリに送還された、という事件。このヴァレンヌはVarrenesで最後にsが付いていて、場所もフランス東部国境近くなので違う地名である。


 先ほど騎兵を率いて突撃してきたノルマンディー軍のギョームに対し、サリー伯ギョームが目には目を、騎兵には騎兵だ! と騎兵を率いて突撃。指揮官同士の激突で両者混乱状態となった。サリー伯部隊の弓兵や槍兵がこれに続き、敵1ユニットが敗走した。

 だが今度はイングランド軍が継続活性に失敗。ノルマンディー軍は中央のノルマンディー公の部隊を動かす。ギョーム同様、弓兵の射撃ののち指揮官が突撃、さらに歩兵も続く。この部隊には精鋭の重装歩兵(Dismounted Men-at-Arms, DM)が1ユニット含まれており、両翼の部隊よりはやや強力になっている。このユニットを中心にして槍兵も奮戦、正面の敵ロベール・ド・ボーモンの部隊の兵を後退させていく。


 このイングランド軍中央を率いるロベール・ド・ボーモンだが、「Norman Conquests」のBattle BookではRobert de Beaumont, Count of Montfortとなっている。これ、Count of MontfortじゃなくてCount of Meulan(ムーラン伯)じゃないかな。この戦いには同じくRobertという名のRobert de Montfortがイングランド軍に参加していたようなので、それと混同しているのかも。ただ前回紹介した、「Norman Conquests」の参考文献の『The Norman Commanders』のタンシュブレーの戦況図ではイングランド軍中央がRobert of Montfortとなっている。ただ本文ではRobert of Meulanという名前が出てくるんだよね。

 いずれにせよこのロベール・ド・ボーモン、タンシュブレーの戦いの40年前、1066年のノルマンコンクエストに加わり、ヘイスティングスの戦いでは右翼で歩兵を指揮して若いながらも奮戦したという古参で、イングランドでは初代レスター伯となっている。タンシュブレーの戦いのときには50代から60代になっていたらしい。


つづく

2024年3月1日金曜日

ノルマンディーとイングランドの兄弟喧嘩。殴り合いを制するのはどっちだ!? Tinchebrai 1106 - Norman Conquests(GMT) AAR ①

  1066年、征服王ウィリアム一世がノルマンディーからイングランドを征服するが、その死後、息子たちの間で遺領が分割される。ノルマンディーは長子のロベールが得たが、イングランド王位は弟のウィリアムを経てもう一人の弟ヘンリーが受け継いだ。もともと仲がいいとは言えなかったこの兄弟、ノルマンディーとイングランドをめぐって骨肉の争いが始まる。この抗争に終止符を打ったのが、今回プレイする1106年のタンシュブレーの戦いである。この戦いで敗れたノルマンディー公ロベールは弟のイングランド王ヘンリーI世によって捕えられ、死ぬまで28年もの間、幽閉されるのだ。


 …と知ったかぶりして書いたけど、この戦いについては先日紹介した『The Norman Commanders』で読んで初めて興味を持った。というか、1066年のノルマンコンクエスト以降のイングランドや北フランスの歴史は、百年戦争までほとんど知識がなくてぼんやりとしかわかっていませんでした。マグナ・カルタとか習った気がするんだけどね。


 タンシュブレーの戦いのあった場所はノルマンディー。エポック/サンセットゲームズの「史上最大の作戦」のマップだと、下端近く、中央やや左よりのあたりになるはず。ゲーム終盤に薄い独軍の防衛線をアメリカ軍が突破するかも、というところかな。「史上最大の作戦」はゲーム置き場になっている押入れの奥深くに眠っているのでサルベージしないと確認できないんだけど。

 このシナリオではノルマンディー軍、イングランド軍ともにまっすぐ戦列を引いて相対している状況で始まる。正直、ノルマンディー軍が不利である。まず数で敵に劣る。これで兵の質が優勢だったらいいのだがそんなこともない。そして敗走レベル(Flight Level)はノルマンディー軍が18、イングランド軍が21。敗走レベルとはMen of Ironシリーズで勝敗を決める値なのだが、損害が蓄積していってこの値を越えた側が敗北となる。つまり敗走レベルの数値が低いほうが負けやすいのだが、この点でもノルマンデー軍は不利。さらに、イングランド軍には増援があり、重装騎兵3ユニットがマップ右端から現れてノルマンディー軍の側面を襲うことになる。そのためノルマンディー軍は増援が現れる前に勝負を決めなくてはならず、焦って攻撃をしなくてはならない状況に置かれている。

 ノルマンディー軍はゲーム最初の活性化を与えられているため、プレイ開始から全力で攻撃するしかない。幸い、イングランド軍の主力である槍兵の防御力は低い。先手必勝で敵に打撃を与え自分たちのペースに持ち込むのだ。


 ところで登場する指揮官の名前なのだが、1066年のノルマンコンクエスト以降、イングランドの貴族はフランス語を話していた。タンシュブレーの戦いから三百年ほどたって、百年戦争が始まる14世紀にはやっと英語が主要言語になっていったようだけど。ということでこのAARでは指揮官の名前はフランス読みにすることにする。ただイングランド王Henryは「アンリ」って呼ぶと個人的に違和感があるし、たいてい日本語の書籍では「ヘンリー」ってなっていると思うのでそれに合わせている。


 ノルマンディー軍右翼(マップ左方)のモルタン伯ギョーム(William, Count of Mortain)の部隊が攻撃を開始する。弓兵の射撃で敵の槍兵を混乱させ、そこに指揮官が陣頭に立って重装騎兵の突撃。モルタン伯に続け、と槍兵が一斉に敵に襲いかかる。攻撃は一部で撃退されたもののイングランド軍左翼の歩兵に大きな被害を与え、敵の戦列に食い込んだ。

 よし、第一撃は成功だ。ここで追い打ちをかけたいところだったが、中央のノルマンディー公ロベール二世が継続活性に失敗する。ノルマン軍の指揮官は3人とも活性化値が3と凡庸で、連携攻撃をあまり期待できないのだ。


つづく

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...