2022年11月30日水曜日

『ヤング・スターリン』

  ロシアのウクライナ侵攻以来、ソヴィエトのことをメディアがちらほら取り上げている印象があって、先日録画していたNHKでスターリン関連の番組を2,3見た。それで思い出したのが、10年近く前に読んだ『Young Stalin』

 この本は確か書店でたまたま見つけたんだけど、表紙を見て若いイケメンの肖像とStalinという文字がマッチせずに脳がバグッてしまいました。え、何これスターリン?!って感じで。慌てて手にとって読んでみると、これがまあ面白かったです。だってね、いきなり銀行強盗のシーンから始まるんですよ。で、その後もぐいぐい引き込まれて読み進めていった記憶があります。



 今回読み直してみたんだけどやっぱり面白かったです。スターリンが生まれてから1917年の十月革命までを描いているんだけど、権力を握る前のスターリンってあんまり知られていないと思うんですよね。この本はそんな無名時代をビビッドに描いています。筆者サイモン・セバーグ・モンテフィオーリはスターリンの故郷グルジア(今のジョージア)まで行って取材したそうです。

 同じ筆者が『Stalin: The Court of the Red Tsar』(和訳は『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち』)というのを書いていて、権力を掌握した後のスターリンを描いているんだけどこっちの本のほうが『Young Stalin』より先に出されてかなり売れたはず。『Stalin: The Court of the Red Tsar』は具体的な場面の描写というかエピソードが多くてスターリンっていう人間を具体的に想像できるんだけど、『Young Stalin』もそんな感じです。



 『Young Stalin』を読んでいると、若者が名誉欲や野心に駆り立てられて政府に立てつくという、痛快というと言いすぎだけど、ちょっとした冒険小説みたいな感じも受けました(あくまで個人の感想です)。だってシベリア送りとかになっているし。ロンドンにも行っていたなんて、知らなかったなー。若い頃は俺も無茶やってたぜ、みたいな感じで、それで更生していればあんな数々の悲劇を引き起こした冷血な独裁者にならなかったのに…。

 しかし、なんであんなにモテるんだスターリン。危険な香りのするイケメンが理想に燃えて反政府活動に身を投じているって感じに映って、女性は惹かれるんですかね。 


 なお『Young Stalin』は、同じ筆者の『Stalin: The Court of the Red Tsar』と同じくエピソード中心で、当時の社会や政治について詳しく知りたいとか分析を読みたいという人には物足りないと思いますが、そういう本は結構出ているはずなのでそっちを読んでもらえばいいかと。


 ちなみに『スターリン 青春と革命の時代』というタイトルで『Young Stalin』は和訳も出ているんだけど、表紙の印象が全然違うんですよ。もしかして別の本?って思うぐらい。

 個人的には原著の表紙のほうが好きです。というか、黒地に青文字だと重い印象を受けてしまうし、写真も黒っぽいうえに制帽をかぶっていて堅苦しい感じで、あー粛清とかホロドモールとかいろいろやったスターリン……と読む前から気持ちが重くなるんですよね、自分は。

 本の内容を考えたら、白をバックに若くてちょっとおしゃれな感じのイケメンがバーンと写っている表紙のほうがふさわしいんじゃないかな。日本の読者向けには独裁者スターリンのイメージを壊さないほうがいい、という版元の判断ですかね。ただ私は和訳のほうは読んでなくて、日本語だともっと暗い印象を受けるのかもしれませんが。

 版元ではもう品切れで、アマゾンを見たら新品には結構いい値段がついていますね。原著のほうは、読みやすい英語で書かれていますしキンドルやペーパーバックだと数百円しかかからないのでありがたいです。



2022年11月25日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑩

 ●第5ターン(続き)

 ロゲの部隊(赤)の二度目の活性化が回ってきた。老親衛隊最後の攻撃である。砲身も焼けよとばかりに熾烈な砲撃を加え、老親衛隊が突進する。鬼神のごとく暴れまわるVieille Gardeを前にして、隊列の乱れていた英連合軍が持ちこたえられるはずもなく多くのユニットが潰走する。さらには命からがら逃げようとする自軍の兵たちに巻き込まれて潰走するユニットも出てきた。

 JdGでは自軍ユニットを通過して潰走することができるが、通過されたユニットは士気チェックを行い失敗すると潰走してしまうのである。中世の会戦ゲームだとよくあるやつですね。

「ちょ、この老親衛隊の強さ、おかしくない? ワーテルローって最後は『La Garde recule!(親衛隊が後退している!)』ってなるんじゃないの?」

「勘違いしちゃいけない。このゲームは『La Garde avance!』なんだよ」


 ちなみに、ワーテルローのことを全然知らないのはまずいと思ってこのAARを書き進めながらOspreyシリーズの『Waterloo 1815』を読んでみました。イラスト豊富でページが少なくサクッと読了できるのでOsprey好き。で、親衛隊が敗退するシーンが結構よかったので引用しておきます。

The entire attack had been repelled. The perfect formations of just a few minutes before were now a single confused blue mass, highlighted with the glint of slashing steel as Vivian's and Vandeleur's light cavalry hacked within its midst. The impossible had happened. The invincible had been vanquished. A great, incredible sob spread along the French lines - 'La Garde recule! Sauve qui peut!'

("Waterloo 1815", p81)

(拙訳: すべての攻撃が撃退されていた。ほんの数分前には完璧な隊形を組んでいた諸隊が、今や混乱した青い一つの塊となっており、VivianとVandeleurの軽騎兵がその中を切り裂いていくと鋼鉄の刃のきらめきが見る者の目を奪った。あり得ないことが起こったのだ。常勝の兵が打ち負かされたのだ。フランス軍の戦列に沿って、大きく、信じ難いどよめきが広がっていった―「親衛隊が退却! みな我が身を守れ!」)

 なんかこの辺り、筆者も思わず力が入ったんじゃないですかねっていう印象。ワーテルローのクライマックスですからね。ナポレオンやフランス兵たちの愕然とした気持ちが伝わってきます。そういえば「La Garde Recule!」っていうゲームもありますよね。


 それはさておき。フランス軍はロゲの部隊(赤)以外はボロボロであるものの、老親衛隊に続けとばかりに最後の気力を振り絞って奮戦する。ネイの部隊(青)の生き残りの砲兵が、至近距離からの砲撃で敵騎兵を混乱状態に。そして左翼ではバシュリュの潰走ユニットがまさかの回復。さらに右翼のドンズロの部隊(緑)が続く。砲撃で敵騎兵を混乱状態にし、そこに騎兵がシャルジュ! 潰走していく敵騎兵を追撃して壊滅させた。

 ここでやっと英連合軍の中央部隊(青)の活性化。英連合軍で最大兵力を擁していた中央部隊だが、もう反撃するための歩兵が残っていない。残存砲兵で砲撃をするものの老親衛隊は耐えた。英連合軍の指揮官たちは敗走する歩兵たちを押しとどめようと声を張り上げる。そんななか、騎兵が奮戦し老親衛隊を1ユニット潰走させた。

 そしてターン最後の潰走移動。英連合軍予備部隊(緑)の2ユニットがマップ外に消えていった。


 こうしてナポレオン最後の賭け、親衛隊の攻撃は幕を閉じた。最終結果は、英連合軍15点、フランス軍21点。その差6点で惜しくも引き分けとなった。


 今回の対戦はJours de Gloireシリーズどころかナポレオニック初心者同士のプレイだったけど、両者とも楽しめました。なんといってもフランス軍は老親衛隊を指揮する高揚感を得られますからね。悲壮感もたっぷりだけど。英連合軍も簡単ではなく、どこまで守っていつ反撃するかの判断を迫られます。チットプルによる先の読めなさ、それに非命令下で攻撃に出るかどうかという迷いが、ずっと緊張感を与えてくれますね。

 それに何といっても秀逸なのが、マップをワーテルローの戦場の中央に限定して親衛隊の攻撃にフォーカスを当てたこと。ウーグモンとラ・エイ・サントは進入不可でZOCを持つヘクスというバッサリとした処理によって、プレイが中央の高地をめぐる戦いに集中されます。ワーテルローの他のゲームはほとんど知りませんが(BANZAI 15号はクロノさんから購入済みだけど、事情があって手にするのはかなり先の予定)、「La Garde Avance!」はワーテルロー戦の中でも独特の雰囲気になっているんじゃないかなと思います。


 あとでネットを見ていたら、デザイナーのFrédéric Beyが英連合軍の戦い方として、初期配置では複数の戦術グループに分割されている騎兵部隊と予備部隊を反撃のためにそれぞれ一つにまとめるようアドバイスしていました。今度試してみようかな。それよりもフランス軍の戦い方のヒントを教えてほしいんだけど、それを考えるものこの「La Garde Avance!」の楽しみなんでしょう。


2022年11月20日日曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑨

 ●第5ターン

 最終ターンである。このゲームでは、壊滅させたり潰走状態で残っている敵ユニットの数に応じて勝利得点が得られ、相手より7点以上多いほうが勝利する。ただしフランス軍にだけ重要ポイントの占領による得点があり、マップ上部の左のほうにある白線の街道(route)とオレンジ線の小道(chemin)が交差するヘクスをゲーム終了時に占領していれば7点得られる。

 ちなみにこの街道とマップ右端を走る街道がモン・サン・ジャンという町というか集落で交わってブリュッセルまで続いているようなので、この街道までフランス軍が進出するというのは英連合軍にとっては結構やばいってことなんでしょう。

 今のことろ損害数ではフランス軍が2ユニット多いが、老親衛隊の攻撃で英連合軍は混乱状態のユニットが多い。ゲーム前半とは逆に、ウェリントンにとっては精神的に厳しい状況になってきた。


 ターン最初の戦略イニシアティブ(initiative stratégique)を決めるサイコロに、両プレイヤーとも力が入る。イニシアティブをとったほうが最初に活性化する部隊を選べるのだ。フランス軍としては敵に態勢を立て直す余裕を与えることなく老親衛隊で攻撃を続行したいし、英連合軍は残存兵力で防御ラインを引くとともになるべく多くのユニットを回復する必要がある。

  両プレイヤーがふったサイの目は、仏軍4、英連合軍3でフランス軍がイニシアティブをとった。Vive l'Empereur!! 当然、ロゲ(赤)率いる老親衛隊が動く。

 このままの勢いで邁進して7点のボーナスポイントを得られる交差点ヘクスを狙うか。だがそうすると、ユニット数に劣る老親衛隊は回復してきた敵の包囲攻撃を受けるかもしれない。それよりは弱体化している英連合軍に老親衛隊をぶつけて敵戦力の撃滅を図ったほうが確実だ。

「え、このゲームってワーテルロー最後に親衛隊を投入してのナポレオンの賭けなんでしょ。ここは男らしく突破を狙わないの?」

「うるさい。老親衛隊は割高なんだよ」

 通常のユニットは壊滅すると2点だが、老親衛隊と親衛隊騎兵(Cavalerie de la Garde)は3点なので、無理に突進したはいいものの包囲攻撃を受けて退却できずに壊滅、という事態は極力避けたいところである。しかしプロイセン軍が右翼から攻撃しているというギリギリの状況で安パイを狙っていいのか、ナポレオン。


 そんな批判をよそに、ロゲ率いる老親衛隊が猛威を振るう。士気の高い精鋭部隊の攻撃をうけた英連合軍は、あるいは混乱して退却、あるいは潰走、壊滅していく。見る見るうちに高地中央部の自軍ユニットが掃討されていくのをみて顔が引きつる英連合軍プレイヤー。

「ふん、これぐらいで動揺してたらウェリントンたる資格はないわ!」

と強がりを言うものの、前ターンの後半でせっかく多くのユニットが回復したのに元の木阿弥どころか状況は悪化している。


 英連合軍はほとんどの歩兵が混乱状態になった今、ここは騎兵を使うしかない。ロゲ部隊(赤)の壮年親衛隊に向かって、戦力9,士気5の精鋭騎兵がチャージ! 

 この壮年親衛隊は砲撃で混乱した後に回復していたため、方陣は解かれていた。「La Garde Avance!」では特別ルールで親衛隊は自発的に方陣を解くことが禁じられていると先述したが、混乱状態になると方陣でなくなるのである。方陣を解いた歩兵は騎兵の突撃に対して不利となるが、さすがは親衛隊、敵騎兵が迫ってきたのを見るや、即座に方陣を組む。

 JdGでは、突撃された歩兵は正常状態であれば方陣を組むことができる。1d10で士気以下が出れば成功なのだが、失敗すると混乱状態になる。突撃してくる騎兵を前にして方陣を組もうとして失敗し、逆に隊列が乱れた、という感じか。

 方陣に対する突撃は、突撃のDRMボーナスが無くなるどころか-2の不利な修正となる。ファランクスやシルトロン、Gewalthaufenなど、がっちり守る歩兵への突撃が自殺行為なのは古来変わらずですな。

 だがJdGでは、突撃の標的ユニットが方陣を組んだ場合、突撃の中止(rappel de la cavalerie)ができる。兵質チェック(test d’engagement)を行い、成功した場合は1へクス後退、失敗した場合はそのまま突っ込むことになる。

 突撃してきた英連合軍の騎兵は兵質(Valeur d'engagement)が5と高く、親衛隊が方陣を組んだのを見るや突進を止めて後退した。いやー、こういう攻守の駆け引きも結構好きです。ちなみに突撃しようとした騎兵はVivianの部隊で、史実のワーテルローの戦いでは後退する親衛隊に突撃してとどめをくらわしたらしい。

 

 続けて英連合軍は予備部隊(緑)で反撃。敵右翼(マップ右方)で弱体化しているドンズロの部隊に追い打ちをかけ潰走させた。それに先ほどの攻撃で、後退する敵を追って高地から駆け下りてきた老親衛隊の第二猟兵連隊第二大隊が側面をさらけ出している。好機、いつまでも老親衛隊の好きにさせてたまるか!と攻撃すると、さすがの老親衛隊も後退。

 その後退した先は英連合軍ユニットの前面ZOCで、混乱状態になってしまう。さらに戦闘結果で士気チェックが課せられていたため失敗すると潰走になるところだったが、混乱状態でも5という高い士気を維持する老親衛隊は踏みとどまった。


 英連合軍は多くの歩兵が混乱状態であるものの、フランス軍も両翼がほぼ崩壊しさすがの老親衛隊にも損害がでている。両者ともにフラフラになりながらの最後の殴り合いである。


つづく

2022年11月16日水曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑧

 ●第4ターン(続き)

 老親衛隊の攻撃であれよあれよという間に多くの歩兵が損害を受け、さらには反撃も失敗に終わった英連合軍だが、砲撃で敵を牽制しつつ中央に歩兵をかき集める一方、混乱状態のユニットの回復に努める。だがもともと歩兵の数に余裕があったわけではないため苦しい状況で、騎兵までもが防御に駆り出される。


 実は両プレイヤー共、いつも中世の会戦級ばかりプレイしていてこの時代の騎兵の運用についてはほとんど無知である。

「いつもみたいに、歩兵なんぞ相手になるか! みたいな感じで暴れさせちゃ、いけないんだよね?」

「うーん、数百年違うからね。というかみんな槍や剣じゃなくて銃持っているし、ちゃんと組織だった行動するよう訓練受けた軍隊だからね、やっぱまずいんじゃないの」

と妙に慎重になってしまう。実際、JdGでは騎兵が突撃をせずにショック攻撃を行う場合、-2の不利なDRMが課される。

 だが今、英連合軍最左翼(マップ右端)の騎兵の前には混乱状態となったドンズロ隊の歩兵がいる。ここで突撃しないんだったら馬に乗る資格なし、というシチュエーションだ。当然、突撃である。


 JdGの騎兵の突撃(charge-仏軍がやるときは「シャルジュ」と言ってあげてください)は強力で、重騎兵は+3のDRM、通常の騎兵は+1を得られるうえ、このDRMボーナスを維持しながら行われる追撃(poursuite)の回数に制限がない。混乱状態や潰走している敵集団に突撃すると、ガンガン追撃が続くのでやられる側は泣きそうになる。

 ちなみに重騎兵ユニットにはLと書かれているのだが、lightの意味にとってしまって思わず軽騎兵扱いしてしまいそうになる。lourd(重)のLですからね。でもフランス語では軽はlégèrで、こっちも頭文字がLだからややこしい。あ、cavalerie(騎兵)は女性名詞なんでlourdeとlégèreか。こういう細かい文法、マジ苦手。



 混乱状態で騎兵の突撃を受けたドンズロ隊の歩兵は恐慌状態に陥り潰走していった。だが英連合軍騎兵が調子に乗って追撃した先には砲兵と騎兵のスタックが待ち構えており、逆に混乱状態になって撃退された。


 そしてロゲの部隊の活性化が回ってくる。砲撃で敵に損害を与えたのち、高地中央部で不用意に突出していた英連合軍騎兵を包囲攻撃して壊滅させる。さらには老親衛隊が暴れまわり英連合軍の歩兵2ユニットが混乱状態に。ウェリントンは使える歩兵がいよいよ枯渇してきた。


 だがこの後は英連合軍の活性化が続いた。まずボロボロになっている中央部隊(青)で4ユニットが回復。そして予備部隊(緑)の歩兵が老親衛隊を攻撃。必死の反撃に老親衛隊も後退を余儀なくされる。だが後退した先は英連合軍ユニットの前面へクス。JdGでは敵の前面へクスに退却ができるものの、混乱の結果を被ってしまうのだ。そのため老親衛隊も混乱。ショック戦闘で老親衛隊初の損害である。そして反撃が成功したのを見て兵たちが奮い立ったか、予備部隊(緑)でも混乱ユニットが回復していった。

 そして、まだまだ終わりじゃないぜと言わんばかりに英連合軍の騎兵部隊(灰色)の活性化が回ってくる。歩兵の反撃で老親衛隊に損害を与え、さらには続々と兵たちが回復してきていて英連合軍が盛り上がっているとき。そのタイミングで、さっき一回突撃しただけでこれまで見せ場がほとんどなかった騎兵部隊にやっと活躍のチャンスが回ってきたのだ。老親衛隊は確かに強力だが、その両隣の弱小部隊を蹴散らしてやる。英連合軍の左右両翼にいる騎兵計3ユニットがチャージ! 

 だが騎兵部隊は非命令下で、兵質チェック(test d’engagement)に成功しないと突撃ができず、1ユニットのみチェックに成功。おい~、いいところなのに~。なんとか突撃した騎兵は、これまでの砲撃で混乱状態になっていたバシュリュの歩兵と砲兵のスタックを壊滅させた。



 ここで第4ターンが終了。残るは1ターンのみ。老親衛隊は敵陣を突破して皇帝陛下に栄光をもたらすことができるのか。それとも歴史は繰り返されるのか。


つづく

2022年11月10日木曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑦

 ●第3ターン(続き)

 反撃を受けたもののまったく意に介することなく、老親衛隊が攻撃を続ける。砲撃で敵を混乱させたのち、3ユニットが攻撃。親衛隊の士気の高さにものを言わせ、敵を混乱、潰走させる。


 ここでやっと第3ターンが終了。JdGでは各ターンの最後に、潰走状態のユニットは自軍マップ端(英連合軍はマップ上端、仏軍は下端)に向けて全移動力で潰走移動(mouvement de déroute)し、マップ外に出たユニットは壊滅とみなされる。

 マップを見れば一目瞭然だが、主戦場である高地からマップ下端までは距離があるのに対し、上端まではすぐであり、特に右方は余裕がない。つまり仏軍は潰走しても何度か回復する機会があるが、英連合軍は潰走するとあっという間にマップ外に出て壊滅してしまう。

 実際、英連合軍の潰走ユニットがすでにマップ端に達しているのに対し、第1ターンの英連合軍の反撃で潰走した壮年親衛隊はまだマップ上にとどまっている。フランス軍には復活の希望を、英連合軍には後ろがない緊張感を与える優れたデザインではないだろうか。-というのは何回かプレイして感じたことです。フランス軍は精神的に厳しいけど、こういうところでバランスをとっているのかな。



●第4ターン

 このターン、戦略イニシアティブ(initiative stratégique)はフランス軍がとった。神のご加護は皇帝にあり! 当然、老親衛隊のロゲ部隊(赤)を活性化させる。

 前ターン最後に続く老親衛隊の連続活性化である。英連合軍の砲兵から防御射撃(tir de réaction)を受けても微動だにしない老親衛隊は2ユニットで攻撃。防御スタックを蹴散らし、さらにその隣接スタックも混乱状態にして高地から追い落とした。士気が高い老親衛隊が戦力を集中させるとDRMがかなり有利になり、戦闘結果で突破(choc de rupture)が出てさらに攻撃が行えるのだ。

 また戦列中央では、士気8とこのゲーム最強を誇る親衛隊第一猟兵連隊第2大隊がついに攻撃を開始。ウェリントンとスタックしている歩兵を苦も無く蹴散らした。


「やばい! まともな歩兵が残っていないじゃん!」

 老親衛隊の猛攻にさらされ、中央部が危うくなってきている英連合軍。もともとこのゲームでは英連合軍の歩兵は潤沢にあるわけではないのだ。

 だが幸い、前ターンに敵右翼(マップ右方)ドンズロ部隊への反撃が成功していたため、この方面はしばらくは打ち捨てられる。英連合軍は正常状態で残っているわずかな歩兵から2ユニットを抽出し、老親衛隊の第二猟兵連隊第2大隊に反撃を試みる。親衛隊がなんぼのもんじゃい! DRM+3の攻撃をくらえ! だが、サイの目は無情にも1。攻撃側は混乱し、士気チェックにも失敗して2ユニットとも後退。マジかよ。



 JdGのショック戦闘は戦力比などをDRMとして1d10を振る、というのは先述したが、4以下の場合、攻撃側が混乱状態となり、さらに士気チェックに失敗すると1へクス後退となる。つまりDRM+3の攻撃だと攻撃側混乱となるのは20%の確率なのだが、英連合軍は渾身の反撃でそのような結果が出てしまったのである。

 不運の続く英連合軍だが、マップ上端まで潰走していた歩兵が回復。このままだとターンの終わりにマップ外に出て壊滅だったので助かった。


 ちなみに反撃に失敗した英連合軍の2ユニットだが、Kruse、Brunswickと書かれていて、このゲームの英連合軍のユニットの中では例外的に紋章がユニット左に小さくついている。

 Kruseのほうには青地に金色の獅子らしきものが描かれていて、どうやらこのユニットはAugust von Kruseの率いるナッサウ公の部隊で紋章はナッサウ家のものらしい。もう一方はブラウンシュヴァイクの部隊で、描かれている紋章は赤字に白い馬でブランシュヴァイクを含むニーダー・ザクセン地方のもののようだ。つまり両ユニットともドイツの兵ということか。ただ自分はワーテルローも紋章も詳しくないので、知っている方いらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。

 また、「La Garde Avance!」の英連合軍ユニットは士気値の色で国籍が識別されている。ちなみにルールでこれを説明している部分は、Vae Victisのホームページに載っている英文ルールではカットされている。プレイ上は国籍関係ないけど、ちゃんと訳そうよ~。あと、この時代に国籍って言葉でいいのかな。ルールにはnationalitéって書いてあるけど。

 英連合軍の多くは英軍だが、ナッサウ、ブランシュバイクの他、オランダ、ハノーファーのユニットも含まれている。オランダはナショナルカラーのオレンジ、というのはわかるけど、ハノーファーは黄色と白になっていて、なんでそうなっているのかわからず自分の無知を痛感します。知識があるとそういう細部も楽しめるんだろうなあ。


つづく


2022年11月7日月曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑥

 ●第3ターン

 Jours de Gloire(JdG)シリーズでは毎ターン冒頭、活性化チットを引く前に戦略イニシアティブ(initiative stratégique)フェイズがあり、両軍1d10を振って自軍総指揮官のダイス修正値(Modificateur au dé, MD)を足し、大きい数のほうのプレイヤーは一番最初に活性化する部隊を選べる。ナポレオンとウェリントンのダイス修正値は同じなので、単純にサイの目勝負となる。


 このターンのイニシアティブは英連合軍が得た。当然、最大兵力を擁する中央部隊(青)を活性化し、老親衛隊を砲撃する。だが老親衛隊は7や8という高い士気を誇るのだ。士気チェックの結果が出ても、80-90%の確率で無傷なのである。

 中央部隊の砲撃に微動だにしない老親衛隊。その右翼に位置するドンズロの部隊(緑)は、ナポレオンの命令を受けていなかったが親衛隊の姿を見て意気があがったか、歩兵が高地に向かって攻撃、奮戦のうえ敵を後退させた。



 JdGでは各ターン最初に命令フェイズ(Phase d’ordres)があり、各プレイヤーはどの部隊を命令下(Ordres Reçus)にするか相手にわからないように決める。命令下にできるのは総指揮官の命令値(Potentiel d’ordre)の数まで。ナポレオンとウェリントンの命令値は2である。それ以外の部隊は非命令下(Sans Ordres)となり、行動が制限される(命令下にできる部隊数についてはもう少し規定があるのだが、後述する)。なお、命令下、非命令下のマーカーはターンの最初に相手プレイヤーにどの部隊が命令下かわからないように裏返しにしてユニットの上に置くのだが、このAARでは見た目重視でユニットの下に置いています。

 このターンのドンズロの部隊は非命令下だったため、歩兵がショック攻撃を行う際に兵質チェック(test d’engagement)を行い、1d10を振ってそのユニットの兵質(Valeur d'engagement)以下を出さないと攻撃できない。ドンズロの歩兵の兵質は4で成功の確率は50%だったが、皇帝陛下の親衛隊を支援するという使命感に燃えたのか命令なしに攻撃できたのである。



 砲撃で必死に防戦する英連合軍は、ロゲの部隊に1ユニットだけ含まれている壮年親衛隊の第三擲弾兵連隊第二大隊を何とか混乱させ、仏軍左翼のバシュリュの歩兵にも損害を与えた。だがついに老親衛隊が英連合軍の戦列にとりつき、その破壊力を発揮する。


 JdGのショック攻撃では、戦力比、士気差、地形などをDRMとして1d10を振って大きな数が出るほど攻撃側に有利な結果となる。同じデザイナーのAu fil de l'épéeシリーズの白兵戦と似たようなシステムである。老親衛隊は戦闘力が3や4と低いため、戦力比から不利なDRMとなることが多い。例えば攻撃:防御が1:2の場合、DRMは-2。だが士気差がそのままDRMとなるため、士気7の親衛隊が4の歩兵を攻撃した場合DRM+3となって、2倍の兵力の敵を攻撃する不利を簡単にひっくり返してしまうのだ。


 老親衛隊の第二猟兵連隊第二大隊と第二擲弾兵連隊第二大隊の2ユニットが、右翼の丘に布陣する予備部隊歩兵を攻撃。斜面を登る攻撃でありながらも、老親衛隊の高い士気と正面と横からの連携攻撃のおかげでDRMは+5となり、戦闘結果は突破(choc de rupture)となった。JdGのショック戦闘では、DRMを適用したサイの目が10以上だと攻撃側は突破となり、戦闘後前進をしてさらに攻撃ができる。さらに、このゲームの特別ルールで親衛隊は自分から方陣を解くことができないのだが、例外的に突破を行うと方陣を解除できる。混乱状態となって後退する敵歩兵を目にして、老親衛隊は方陣から脱して猛追、潰走させた。



 左翼(マップ右方)が予想以上の損害を受けた英連合軍。予備部隊(緑)が活性化となったため、中央部にいる予備部隊を投入して反撃しようとするが問題があった。命令は部隊ごとに割り当てると上述したが、もし部隊が拡散している場合、戦術グループ(groupe tactique)に分けられ、戦術グループ単位で命令下、非命令下となる。具体的には、自部隊の他のユニットから3へクス以上離れているユニットは別の戦術グループになる。このターン、英連合軍はマップ右方の予備部隊の戦術グループを命令下としており、中央の戦術グループは非命令下だったのだ。


 非命令下だとショック攻撃の際に兵質チェックが必要など行動が制限される。だが戦術グループごとに1d10を振って活性化チット(Marqueur d’Activation, MA)のイニシアティブ値(valeur d’initiative)以下を出すと、その戦術グループのすべてのユニットが命令下と同じ状態になる。ただ失敗すると回復以外何もできなくなるため、ある意味ギャンブルである。イニシアティブ値はその部隊の指揮官がどれだけイニシアティブをとるかを表しているようだが、英連合軍の多くは4であるのに対し、ワーテルローの激戦で消耗しているドンズロは3,バシュリュは2とかなり低い。


 中央部にいる予備部隊(緑)の戦術グループはイニシアティブのチェックに無事成功、老親衛隊に反撃する。だがさすがは老親衛隊、ショック攻撃を受けて士気チェックの結果が出ても、7という高い士気のおかげで整然と1へクス後退するのみに終わった。一方、マップ右端のドンズロの部隊への反撃は成功。ドンズロ部隊が持つ歩兵は2ユニットとも混乱状態となった。



 

つづく

2022年11月4日金曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ⑤

 ●第2ターン


 第1ターンの英連合軍の反撃によって高地上に残っている壮年親衛隊は第三猟兵連隊第一大隊のみとなっていた。ところでChasseurって、猟兵でOK? まあとにかく、1ユニットしか残っていない親衛隊を英連合軍は袋叩きにして壊滅させる。さらに前ターンの親衛隊の砲撃と攻撃で多くのユニットが混乱状態になっていた英連合軍の中央部隊だが、順調に回復していった。


 JdGでは各部隊の活性化は、砲撃、移動、攻撃、回復という手順になっている。活性化中に何も行動をせず敵に隣接していないユニットは回復(ralliement)を試みることができ、1d10を振って士気以下が出れば混乱ユニットは回復する(潰走ユニットの場合はサイの目が1不利になる)。

 つまり士気の高いユニットほど回復しやすい。当然親衛隊はすぐに回復する、と思いきや、壮年親衛隊ユニットは混乱状態だと士気がガクンと落ちるのである。通常のユニットは混乱状態だと士気が1下がるだけだが、壮年親衛隊は3も低くなる。高い士気を誇る精鋭だが、いったん混乱状態になると脆弱で回復もしにくくなるのだ。有能だけど怒られるとすぐに気弱になっちゃう子、という感じか。デザイナーズノートによると、この局面での壮年親衛隊の士気は明らかに揺らいでいて、それを反映しているそうだ。



 ここでロゲの老親衛隊(赤)の活性化が回ってくる。ネイの部隊の攻撃によって一時は危うくなった英連合軍はほぼ回復し、壮年親衛隊の攻撃なんかあったっけ、と思わせるような強固な防御ラインが高地上に再び構築されている。こんな相手に攻撃を仕掛け突破しないといけないのか。心折れそう。気持ちが沈む仏軍プレイヤーに対し、

「あきらめたら、そこで試合終了ですよ…?」

と、そっとささやく英連合軍プレイヤー。そのセリフ、こういう状況で敵から言われるとマジむかつく―‼ だが前進するしかない。じりじりと進む老親衛隊。ネイの部隊の砲兵がそれを援護する。敵中央部隊の歩兵を集中砲撃によって潰走させた。


 中央部隊(青)の活性化となった英連合軍。歩兵の援護なしに中央高地上で孤立している敵砲兵を屠るか。だがその後、まず確実に老親衛隊が襲ってくる。ここは守備を固めるべき。そう考えた英連合軍プレイヤーは突出している歩兵を後退させ、混乱しているユニットの回復に努めた。


 ネイの壮年親衛隊が事実上壊滅した以上、老親衛隊の他に仏軍が使えるのは右翼のドンズロの部隊(緑)と左翼のバシュリュの部隊(黄色)。どちらの歩兵も戦闘力は8や9と高いものの、ユニット数が少ないうえ、バシュリュの歩兵は士気が3と低いため粘り強く戦うことは期待できない。もう夕方の7時ですからね、予備としてとっておかれていた親衛隊とは違って、そりゃ疲れていますよ。さらに左翼は平地が広がっており、敵の砲撃で混乱したところに騎兵の突撃をくらったら確実にアウトである。

 だが右翼は激戦の末に占領したラ・エイ・サントがある。このヘクスは両軍とも進入不可で、英連合軍に対しては周囲にZOCも及ぼす。右翼でドンズロの部隊が不利な状態になってもすぐには総崩れにならないだろう。しかも砲撃の応酬で敵最左翼(マップ右方)の砲兵が混乱状態となっている。好機と見た仏軍は、老親衛隊を支援するためにドンズロの歩兵を前進させ、敵の最左翼スタックに攻撃をしかける。攻撃を受けた英連合軍は歩兵が混乱状態になって後退、砲兵は潰走した。

 いいぞ、ドンズロ。ラ・エイ・サントの攻防戦で兵たちはすでに疲れ切っているはずなのによくやった。こうやって右翼でプレッシャーをかけている間に、老親衛隊はさらに前進。次ターンには敵戦列にとりついてその真価を発揮することだろう。





つづく

2022年11月1日火曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ④

 ●第1ターン(続き)


 JdGの砲撃では、砲兵ユニットの砲撃力(capacité de tir)や地形効果がDRMとなって1d10を振って解決する。砲撃力は砲門数を反映しているそうだが、このゲームでの英連合軍砲兵の砲撃力はほとんどが3で、方陣を組んでいる親衛隊が砲撃された場合10%の確率で混乱(désordre)し、40%の確率で士気チェック(test de cohésion, TdC)となる。士気チェックでは1d10を振ってそのユニットの士気(Cohésion)以下だと損害無し、そうでなければ混乱となるが、壮年親衛隊の士気は6あるため混乱する確率は30%。つまりなんやかんや合計すると22%の確率で砲撃を受けた親衛隊は混乱することになる(計算あってる?)。

 なので一回の砲撃で損害を受ける可能性自体はそれほど高くはないのだが、英連合軍の砲撃のサイの目や活性化チットの引かれた順番によっては、壮年親衛隊が砲撃で次々と損害を受け、それでも残存部隊が悲壮なまでの攻撃を行う(でも反撃でボロボロにされて仏軍プレイヤーのモラル崩壊)、というケースも珍しくない。


 ただ、ワーテルローのこの最終局面では英連合軍の砲撃の威力はかなり落ちていたのでは、と書いているAARもあった。弾薬が不足していたうえ、数と長距離射撃力で上回る仏軍砲兵からの砲撃で消耗していたし、仏軍騎兵の突撃で砲撃手が退却して多くは戻っていなかったことを考えると、もっと英連合軍の砲撃力を制限したほうがいいのでは、と提案している。自分はワーテルローのことは全然知らないんですけど、多くの資料ではそう書いてあるんですかね。



 第1ターンの仏軍だが、壮年親衛隊は無理に突っ込まずに後方の老親衛隊を待てばいいのでは、と思えるかもしれない。だが特別ルールで、壮年親衛隊がショック戦闘を行った次のターンからロゲ率いる老親衛隊の活性化が可能になるのだ。老親衛隊も壮年親衛隊同様に方陣を組んでいるので前線にたどり着くまでに時間がかかる。5ターンしかないこのゲームでは1ターンでも惜しく、第2ターンから老親衛隊を活性化させたい。そのため、ネイの部隊は敵戦列に全力で(とはいえ方陣だからゆっくりとだけど)向かっていったのだ。まあ、たまたま今回はかなり運に恵まれて壮年親衛隊が悲惨な状況にならずにすんだけど。



 余裕で守れると思っていたらいきなりピンチとなった英連合軍。ひるむな、反撃するのだ! 予備部隊(緑)が動く。戦列中央部で砲兵の援護を受けつつ歩兵が攻撃をしかけると、さしもの壮年親衛隊も耐え切れずに後退する。続けて中央部隊(青)の砲門が火を噴く。至近距離から砲弾を浴びて次々と混乱していく親衛隊。そこに英連合軍が歩兵をかき集めて包囲、攻撃すると親衛隊は後退できずに2ユニットが壊滅。さらには2ユニットが潰走(déroute)した。




「い、いいのさ。老親衛隊の封印を解くために壮年親衛隊は犠牲になる運命なんだから」

と平静を装う仏軍プレイヤー。やっぱりこのゲーム、フランス軍をやるには強靭な精神力が必要である。


 先述のように親衛隊はすべて方陣を組んでいるが、方陣だとZOCを持たないため、するすると敵軍が親衛隊ユニットの間隙を縫って来たり背後に回ってきたりするのだ。さらに移動力が低いうえ砲撃やショック攻撃を受けるとサイの目が1不利になるため、方陣を解かせてよ!と思いたくなる場面は多い。

 だが一応、方陣にもメリットがある。JdGにはユニットの向きがあって周囲6へクスのうち前面(front)2へクス以外は背面(arrière)となり、背面から攻撃を受けると不利になるのだが、方陣を組んでいるとこのルールの適用は受けなくなる。さらにショック攻撃は前面へクスに対してのみ行えるのだが、方陣だと周囲すべてが前面へクスとみなされるため攻撃方向に制限がない。乱戦上等、どっからでもかかってきやがれ!という感じである。


つづく


マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...