2022年8月31日水曜日

(幕間)イタリア戦争関連の書籍

  ラヴェンナの戦いがあったイタリア戦争って全然知識がない、と思って本を探してみた。塩野七生の作品、例えば『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』『わが友マキアヴェッリ』とかこの時代を扱っているものはいくつかあるけど、イタリア戦争全体を通してのまとまった本が見つからない。ちなみにチェーザレと言えば『チェーザレ 破壊の創造者』っていう漫画もありますね。

 佐藤賢一の『ヴァロア朝』では数十ページにわたってフランス視点で書かれている。ほかにも『イタリア史10講』とか『戦闘技術の歴史3 近世編』とか、イタリア戦争に少し触れている本があることはある。

 アドテクノスのラヴェンナの戦いは昔知人が持っていたのを見せてもらったことがあって、ヒストリカルノートが充実していた記憶がある。気軽に買えないのが難かな。ヤフオクでも時々出品されているのを見るし、手に入れればいいのだろうけれど。そういえばタクテクス誌でもラヴェンナの戦いの記事があった記憶が。


 Arquebusのルールブックには資料としていくつか本が挙げられてあって、最後に「…笑わないでね、ウィキペディア…」と書いてある。いや、笑いませんよ。いつもウィキにはお世話になっているし。

 ウィキと言えば、創設者ジミー・ウェールズが10数年前に来日したとき、誰でも編集できるから内容の信ぴょう性に欠けるのではとの質問に対し、

「確かにその通りだ。でも何かを調べようと思った時に、出発点としては最適なのだ。自分の知らない事柄については何から調べていいかわからないが、まずはウィキペディアを読み、そこに書かれている情報について他のソースにあたっていくことができる」

という感じの返答をしていて、ほう、なるほどね、と思った記憶はある。ちなみにジミーは結構イケメンでした。それと確か同じ年にユーチューブの共同創設者二人も来日していたな。日本のテレビ局が新興のユーチューブを敵対視というか警戒視していた雰囲気が懐かしい。


 でもね、たしかにウェブ上でイタリア戦争についていろいろ読めるけど、一冊まとまったものを読まないとなんというか落ち着かないんですよね。で、日本語の本はあきらめて、アマゾンで『Italian Wars』という本を見つけて買ってみた。Hourly Historyというところから出ていて、忙しい人のために1時間でさっと読めるシリーズらしい。

 本自体は薄っぺらくて、アマゾンによると45ページしかない。アマゾンによるとというのは、この本にはページ番号、いわゆるノンブルがつけられてないのである。ノンブルがついてない本なんて初めて見た。しかも最後のページには「Printed in Japan 落丁、乱丁本のお問い合わせはAmazon.co.jpカスタマーサービスへ」と日本語で書かれている。もしかしてアマゾンジャパンが印刷してんの?

 といささか訝しく思いながら読んでみると、中身はまともそうで、わかりやすくまとまっていました。疑ってごめんなさい。イタリア戦争の流れをざっくりと知るには、自分が読んだ中ではこの本が一番いいかな。



戦争ものの定番、OspreyのMen-at-Armsシリーズには『Renaissance Armies in Italy 1450-1550』というのがある。年表には結構説明が書かれているので、イタリア戦争の流れを追っていくのに便利。それに各国の軍隊の特徴も解説してある。なによりページ数が少ないうえイラスト中心なので読むのが楽である。Ospreyといったら『Pavia 1525』とか『Fornovo 1495』など、Arquebusに収録されている戦いについての本も出ている。


 Arquebusのルールブックで資料として挙げられている本のなかには『The Art of War in Italy 1494-1529』というのがあって、騎兵の章とラヴェンナの戦いについての解説の部分の和訳が『私家版近世欧州軍事史備忘録(別冊2)イタリア戦争の戦争術1494-1529 第四章 騎兵』というタイトルで出ていて、小さなウォーゲーム屋でも手に入る。でもなんで全部訳さなかったのかな。百数十ページしかない短い本なのに。

 戦略、歩兵、騎兵、砲兵、戦術などの章に分かれていて、各章10数ページしかないので読む負担が少ない。けど、イタリア戦争全体の流れを知ってから読んだほうがいいかも。時代的には、書名にもあるようにイタリア戦争の前半を扱っている。


 ほかに、これもルールブックに資料として挙げられている『The Renaissance at War』という本は、前半がこの時代の戦術や武器、制度について書かれている。テルシオにつながる歩兵の部隊編成とか、兵に月いくら払っていたかとか。後半は歴史。対トルコ戦争、イタリア戦争、宗教戦争についての章からなる。ラヴェンナの戦いの戦況図も載っていてイメージがしやすくなった。


 あとCharles Oman著の『A History of the Art of War in the Sixteenth Century』という本のBook Ⅰ~Ⅲがイタリア戦争について書いている。枕にするのにちょうどいい感じの分厚い本なので全部読む気はしないけど、イタリア戦争関連の部分だけ拾い読みしてみた。古い本ですけどね。イタリア戦争当時の戦略と戦術の章、それにイタリア戦争後期における戦術の変化の章が面白かったな。


 それとこれは忘れちゃいけない、C3i誌31号にWeaponary in Arquebusというリチャード・バーグが書いた記事もありましたね。みなさんも他に手ごろな本を知っていたら、教えていただければうれしいです。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)


2022年8月25日木曜日

歩・騎・砲の連携で敵陣を抜け  Ravenna 1512 - Arquebus(GMT) AAR ①

  ラヴェンナの戦い、というと昔アドテクノスからゲームが出ていたのである程度知名度はあるのではないかと勝手に思っている。Men of IronシリーズのArquebusでもラヴェンナの戦いが収録されているのでやってみた。


 この戦いはイタリア戦争の最中に起こったのだけれど、イタリア戦争って全然知らない。ちょっと調べてみると、15世紀末から16世紀半ばまで約60年間の、断続的な戦争の総称のようだ。

 基本的にフランスがイタリアに攻め込み、それに対しスペイン、神聖ローマ帝国が対抗。その間ヴェネツィアやローマ教皇などイタリアの諸国が合従連衡を繰り広げて強くなった国をたたき、結局フランスはイタリアをあきらめ、イタリアの大部分がハプスブルク家の統治下となる、という流れらしい。というか、いろんな同盟が出てきてややこしいんだよね。


 しかもイタリアだけの話にとどまらず、ヨーロッパ全域の戦争と関連があるのが特徴らしい。イタリア戦争以前、15世紀には英仏百年戦争やフス戦争、フランスとブルゴーニュ公国の衝突やスイスとハプスブルク家との争い、それにオスマントルコによるハンガリーへの侵攻など様々な地域で戦争が起こったが、あくまでも地域内での戦いで、戦争間の関連性に乏しかった。イタリア半島でも諸国家間で傭兵を使って様々な戦いが行われていたが半島内での話。イベリアのアラゴン王アルフォンソがナポリ王国を占領したりしたけどこれは他の様々な地域と関連する国際的な戦争ではなくイタリアに限定したものだ。

 だがイタリア戦争の時期になると、スペイン、フランス、ドイツ、低地諸国、ハンガリー、オスマントルコなど多くの国が巻き込まれた大規模な戦争に次第に変化していく。


 ……というのはイタリア戦争関連の本からの受け売りである。正直自分はよく知らない。でも実際、イタリア戦争の時代にはスペイン王カール一世が神聖ローマ皇帝カール5世として即位することでスペインとドイツが一つになったり、オスマントルコによるウィーン包囲があったり、フランスとオスマントルコが同盟してハプスブルク家に対抗したり、イギリスのヘンリー8世がフランスに攻め込んだりとヨーロッパ全体が複雑に絡み合っていく。この辺の状況はGMTのHere I Standが好きな人だったらよくわかるんじゃないかと思います。


 で、ラヴェンナの戦いである。ラヴェンナは北イタリアの都市で、西ローマ帝国末期には宮廷が置かれていた。しかしホノリウス、なんでスティリコを処刑しちゃうかな…。おおっと、時代が違った。ラヴェンナの戦いは1512年で、日本だと戦国時代の初期にあたる。上杉謙信や武田信玄の生まれる10~20年ぐらい前のことである。

 イタリアに侵攻したフランスに対し、ローマ教皇がヴェネツィア、スペインなどと神聖同盟を結成。フランス軍は神聖同盟側の都市ラヴェンナを攻撃する。その救援にスペイン軍を中心とする神聖同盟の軍隊が派遣されて起こったのが、今回プレイするラヴェンナの戦いである。


 兵力に劣る神聖同盟軍はラヴェンナ近郊で野戦陣地を構築。フランス軍は補給線が後方でヴェネツィアによって妨害されていること、さらにはスイス軍が背後のロンバルディア平原に南下してくるという情報もあり、早期に敵の救援軍を排除する必要があった。また総兵力、とくに砲兵力で優越していたこともあって、攻撃を決意する。

  一説では、フランス軍に所属していたドイツ傭兵ランツクネヒト部隊が、まもなく神聖ローマ帝国はフランスと開戦するからすぐにフランス軍の陣を離れるようにとの密命を皇帝マクシミリアン一世から受け取ったことも、フランス軍が早期に攻撃をする一因となったらしい。ランツクネヒトを率いていたトマス・エンプサーは長年フランス王のもとで戦っており、戦いの直前になって軍を離脱するのに忍びなくフランス軍総指揮官ガストン・ド・フォアに皇帝からの命令の内容を告げたそうだ。確かに神聖ローマ帝国は神聖同盟に加わっているし、マクシミリアン一世はランツクネヒトの父と呼ばれているからこういうことはあり得ないわけではないけど、なんか出来すぎていて小説みたいな逸話だな。



 初期配置(写真上)を見ればわかるように、スペイン軍(Arquebusの表記に則って神聖同盟軍をスペイン軍と呼ぶことにする)の前面には壕(Trench)と塁壁(Rampert)が構築されており、左翼(マップ上方)は川、右翼は湿地で守られている。

 それに対してフランス軍は左右両翼に騎兵集団と砲兵部隊が配置され、多くの歩兵ユニットが中央を占めている。理想的な防御地形に布陣したスペイン軍に対し、フランス軍はどう攻めていくのかが考えどころである。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年8月23日火曜日

But we can still rise now-だが我らは再び立ち上がる  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-Pack(GMT)第二戦 AAR ④

 左翼(マップ下方)では守勢に立たされたイングランド軍だが、右翼で攻勢に出る。ボーモント隊(ピンク)が射撃で正面の敵マレー伯隊(青)に損害を与えたのち、迂回してきたヘレフォードの重装騎兵部隊(緑)がマレー伯隊の側面から後方に回りこむ。

 ヘレフォードはこの前日、甥がロバート一世と一騎打ちをして頭を叩き割られている。甥の敵討ちだ。スコットランドの反乱者どもに目にものを見せてくれる。


 敵重装騎兵部隊に側面が脅かされているスコットランド軍は、まずマレー伯部隊の軍旗を活性化。敗走状態だった2ユニットを回復させる。さらにマレー伯部隊を活性化させ、先ほど敗走状態から混乱状態に戻っていた2ユニットを正常状態に回復。そして突出してきた敵重装騎兵を攻撃し損害を与えた。


 

 ちなみにマレー伯はこの戦いの前月にエディンバラ城を落としている。堅城だったが、守備兵の息子が街にいる彼女に会うためこっそり城を抜け出していたらしい。他の人に見つからないよう、城基部の急峻な崖となっている部分を通ったようだけど、そのことを知ったマレーは城門に陽動の攻撃をしかけておいてから、夜、若者の案内で一部隊を送り込む。部隊は崖を登り城内に進入、エディンバラ城は陥落したそうだ。若者の恋心って意外なところで役に立つんですね。


 両軍の攻防が続き、スコットランド軍の累計敗走ポイントは17に。一方イングランド軍は左翼(マップ下方)での損害が響き、累計敗走ポイントが34に上った。イングランド軍の敗北レベルは40で、累計敗走ポイントにサイコロの目を足してこの数を越えたら負けてしまう。そのため、イングランド軍は軍旗を活性化。軍旗の周辺で敗走状態となっていた6ユニットを回復させたので、累計敗走ポイントが一気に28に下がった。


 だがスコットランド軍は攻撃の手を緩めない。侵略者イングランドの軍を打ち破り、スコットランドの独立を守るのだ。俺たちのプライドをなめんじゃないぞ。フリーダーーム!!

 スコットランド人のプライドがいかにイングランドによって傷つけられていたか、しかもそのことが何百年も尾を引いていたということを示す事件が20世紀になって起こっている。スコットランドにはStone of Sconeと呼ばれる石があり、13世紀まで代々スコットランド王はその上で戴冠をしていた。「運命の石」とも呼ばれているこの石は、「スコットランド人への鉄槌」エドワード一世がスコットランドを征服したときに1296年に戦利品としてイングランドに奪い去られる。しかも、代々イングランド王が戴冠式を挙げるウェストミンスター寺院で戴冠式用の玉座に組み込まれてしまっていた。イングランド王がスコットランド王を尻に敷くような感じか。

 スコットランド人にとっては屈辱的なことだったようで、石が奪われてから650年以上のち、1950年にグラスゴー大学の学生たちがウェストミンスター寺院から撤去、スコットランドにひそかに持ち帰る、という事件が起こっている。スコットランド人のプライドって恐ろしい。ちなみにこの事件を題材にした映画も作られている。運命の石は事件から2年後の1952年にウェストミンスター寺院に戻されたが、1996年、つまりスコットランドから奪われて700年たってやっとスコットランドに返還された。


 スコットランド軍は左翼(マップ上方)のマレー伯隊(青)、それに右翼のキャリック伯隊(緑)が射撃&白兵戦のコンボでイングランド軍に次々に損害を与えていく。特に右翼はHabilarの独立騎兵部隊による小川向こうの長弓兵の掃討が効いて、側面を恐れることなく攻撃できる。長弓兵の射撃で敵を混乱状態にしたのち、槍兵や戦斧兵が前進して白兵戦で攻撃。イングランド軍の損害が増大していった。


 イングランド軍は右翼(マップ上方)ヘレフォード隊(緑)の重装騎兵が反撃したが、すでに累計敗走ポイントは38。自由活性化のあとの敗北チェックでサイの目4を出し、負けとなった。


 こうしてスコットランドは独立を保ったのでした。スコットランドの(非正式の)国歌、Flower of Scotlandを流したいところですね。



But we can still rise now

And be the nation again

という歌詞そのまんまですな。


 でもこれで大団円を迎えたわけではなく、すぐにイングランドが盛り返してスコットランド王はフランスに亡命、百年戦争が起こる要因の一つになった。薔薇戦争では落ち目のマーガレット王妃の要請に応じてスコットランドは兵を出す。そのためランカスター派が盛り返してウェイクフィールドでヨーク公リチャードが敗死してしまう。そんなこんなでイングランドとの因縁は続くのでした。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

 

2022年8月21日日曜日

But we can still rise now-だが我らは再び立ち上がる  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-Pack(GMT)第二戦 AAR ③

  イングランド軍左翼(マップ下方)に対してスコットランド軍は軽騎兵Hobilarの独立部隊を派遣してきたが、イングランド軍は長弓兵で射撃するほかは有効な手が打てない。それに対してスコットランド軍はロバート一世を活性化。前線中央でイングランドに攻撃を続けつつ、右翼では独立部隊のHobilarが小川(Burn)を渡り長弓兵を攻撃する。


 このHobilarのうち1ユニットを率いているロバート・キースは、代々Marischal of Scotlandという称号を受け継いでいる。スコットランド軍元帥、みたいな感じかな。王権を守ることが職務だったらしく、ロバート一世とその息子に忠実に仕えている。

 もう1ユニットを率いているジェームズ・ダグラスはバノックバーンの後も対イングランド戦で活躍し、1327年にはWear川の河畔に陣取っていたイングランド王エドワード三世の軍を夜襲している。エドワード三世は危ういところでのがれたが、もしこの時ダグラスがイングランド王を討ち取ったり捕虜にしていたら、百年戦争は起こらなかったかもしれませんね。


 小川(Burn)向こうのイングランド軍左翼の槍兵は一目散にエドワード二世を目指して逃げていたため、長弓兵を守るユニットがおらず、Hobilarは長弓兵の側面に回り込んで白兵戦を仕掛ける。ダグラスはこのバノックバーンの時点ではイングランド軍のロバート・クリフォードに領土を奪われていたそうで、クリフォード隊(青)を目の前にして復讐する気満々だったでしょうな。

 下馬したHobilarは白兵戦では重装備の歩兵、Dismounted Men-at-Arms(DM)と同様に扱われる。Men-at-Armsといったら、日本人が中世ヨーロッパの鎧と言ったら思い浮かべるような、鋼鉄のがちがちの装甲に身を包んだ兵だと思えばいいんでしょうな。それが攻撃してくるのだから、長弓兵に勝ち目はない。スコットランド軍右翼を脅かしていた長弓兵が2ユニットとも混乱状態になった。


 さらにスコットランド軍右翼のキャリック伯がダメ押し。小川向こうの長弓兵をHobilarに任せられるため、正面の敵クリフォード隊(青)に突進。クリフォードはスコットランド軍との対戦経験が豊かな指揮官だったが、バノックバーンで戦死しているのだ。史実同様、この戦場で最期を迎えさせてやる。キャリック隊(緑)の攻撃でクリフォードの長弓兵が1ユニット混乱状態で退却、さらに1ユニットが壊滅した。


 左翼(マップ下方)で押されているイングランド軍は、クリフォード隊(青)が敵キャリック隊(緑)に対して必死で反撃を行うも、スコットランド軍のHobilarによって小川向こうの長弓兵が掃討されてしまった。


 やや分が悪くなってきたイングランド軍。状況を落ち着いて分析する。左翼は湿地帯や小川があるうえ自軍ユニットが多く、兵の展開には適していない。中央は兵数の多いエドワード二世の隊がなんとか敵の攻勢に対抗できるだろう。とすると、右翼だ。騎兵に迂回させて敵の側面を突くのだ。

 ヘレフォードが重装騎兵を連れて右翼に展開する。こちらは小川や森など機動に不向きな地形があるし騎兵が小川(Burn)を越えるときは混乱チェックをしなければならない。だが騎兵の移動力、それにヘレフォードの活性化値が4と高いことを考えれば、迂回して敵左翼を脅かすことができるだろう。この方面にいるスコットランド軍は戦力が半減しているマレー伯隊(青)。そこに重装騎兵をぶち当てるのだ。


 これに対し、スコットランド軍は右翼で敵の混乱状態の槍兵を掃討しつつ、左翼のマレー伯で攻撃をしかける。敵のヘレフォード隊が迂回してくるまで時間がかかるはず。それまでに正面の敵に損害を与えておくのだ。

 マレー伯の領土はこの戦いの前年、エドワード二世によって寵臣ヒュー・ディスペンサーに与えられたらしい。ふざけんなエドワード、おれの土地を返せ、とマレー伯が猛攻。正面のボーモント隊に大きな損害を与えた。



つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年8月19日金曜日

But we can still rise now-だが我らは再び立ち上がる  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-Pack(GMT)第二戦 AAR ②

  スコットランド軍とイングランド軍が交互に活性化する状況が続く。じわじわとイングランド軍のエドワード隊(水色)が態勢を整え、ヘレフォード隊(緑)が移動して空いたスペースに展開していく。さらにマップ右下からは増援も登場した。スコットランド軍はキャリック隊(緑)だけでは右翼(マップ下方)を支えきれない。

 ここで中央のロバート一世が前進し、右翼キャリック隊の左側に展開。さらに継続活性でキャリック隊を右にシフト。指揮官の活性化値の高さを生かしたスコットランド軍の連携プレーである。

 

 と思ったのもつかの間、今度はイングランド軍の活性化が続く。まずは中央でエドワード二世が攻撃。続いて左翼(マップ下方)でクリフォードが自隊の回復に努め、さらに右翼でボーモント隊が継続活性。長弓兵がまたも威力を発揮する。正面のマレー隊(青)の槍兵2ユニットが壊滅し、スコットランド軍の敗走ポイントは13になった。一方イングランド軍の敗走ポイントはまだ10だ。

 この戦いでの敗走レベルはスコットランド軍は30、イングランド軍は40なので、スコットランド軍は敵により多くの損害を与える必要がある。それなのに敗走ポイントで先行してしまっては不利は否めない。


 さらにはエドワード二世の本隊が中央に展開し、左翼(マップ下方)でも増援の長弓兵がスコットランド軍の側面を脅かしている。このまま前回同様、イングランド軍のペースとなってしまうのか。


 だが今度はスコットランド軍が3連続で活性化。スコットランド軍のほうが指揮官の活性化値が高いんだから、イングランド軍よりも活性化が続いて当然なのだ。右翼(マップ下方)のキャリック隊(緑)がさらに右にシフト。イングランド軍左翼の小川(Burn)の向こうの長弓兵、それに混乱状態の槍兵を攻撃する。

 ここの槍兵はエドワード二世の部隊に属しているのだが、特別ルールで自隊指揮官の指揮範囲にいないと混乱状態から回復できない。おまけに指揮範囲外(Out of Command)なので、自分から接敵もできず、接敵されたら移動ができない。要はスコットランド軍に捕まったら混乱状態のままやられ放題なのである。


 エドワード二世は映画「ブレイブハート」ではかなり頼りない王子として描かれていたが、実際もダメダメだったようで、寵臣をえこひいきしたり優柔不断だったりと政治でも軍事でもいいところがなかったそうだ。このゲームのエドワードは指揮範囲が2,活性化値も2とかなり能力が低い。実際のバノックバーンの戦いでは、イングランド軍の大司馬だったヘレフォード伯と、エドワードの甥のグロスター伯の二人が前衛をめぐって争いとなったため、エドワード二世は両人に前衛を指揮させている。なんか、臣下の統制を取るのがうまくいってない感じ。1326年には王妃がクーデターを起こしてエドワード二世を幽閉、翌年には議会から廃位されている。ちなみにこの後を継いだのが、百年戦争を起こすエドワード三世である。


 スコットランド軍左翼(マップ上方)ではマレー伯が混乱状態のユニットを回復させつつ正面のボーモント隊(ピンク)と射撃戦を行う。このマレー伯の部隊はすでに3ユニットが壊滅、2ユニットが敗走と戦力が半減しており無理はさせられないのだ。

 さらにロバート一世の主力が続く。中央部で前進、攻撃をかけるとともに、右翼に軽騎兵Hobilar2ユニットを派遣する。


 この軽騎兵Hobilarは高い移動力を生かして敵の側面を脅かしたり自軍の危ういところに急派するのに使われていたようで、移動に馬を使い、下馬して歩兵として戦っていた。

 バノックバーンの戦いでは軽騎兵部隊はキースとダグラスという二人の指揮官に率いられていたのだが、このシナリオではロバート一世の部隊に含まれている。ただし常に指揮下(In Command)とみなされるため、ロバート一世から離れていても自由に行動できる。つまり独立した部隊として使えるのだ。

 前回は予備としてとっておいていたが使うタイミングを見極められずまったく活用できなかった。スコットランド軍はその教訓を生かし、小川向こうのイングランド軍を掃討するのに使うことにする。


 このゲームではHobilarは移動力が7と高いものの騎乗した状態では白兵戦での攻撃はできず、防御の際も不利なサイの目修正を受ける。また敵に接敵した状態や混乱状態では下馬(Dismount)できない。さらにこのシナリオの特別ルールとして、騎兵は道が通っている地点以外で小川を渡る場合は混乱チェックをしなければならない。そのため、小川の手前で下馬し、次にロバート一世の部隊が活性化したときに長弓兵を攻撃できるようにしておく。




つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年8月17日水曜日

But we can still rise now-だが我らは再び立ち上がる  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-Pack(GMT)第二戦 AAR ①

  前回、途中まで優勢にゲームを進めながら負けてしまったスコットランド軍。

スコットランドの独立のために-Freeedooom!!  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ⑥

 バノックバーンでスコットランド軍が敗れるなんて、そ、そんなことあり得ない。もう一度、もう一度勝負だ!

 あきらめきれないスコットランド軍プレイヤーは、泣きを入れて再戦を申し込む。そして気合を入れるためにはやっぱりこれ、映画「ブレイブハート」の演説ですよね。

やつらは俺たちから命を奪えるかもしれないが、自由は決して奪えない! スコットランドの自由と独立のために戦うのだ! うおおおおー!!!

 一人で盛り上がるスコットランド軍プレイヤー。だけど、これってロバート一世じゃなくてウィリアム・ウォレスのスピーチだし。それにバノックバーンじゃなくてスターリングブリッジだし。しかもブリッジじゃなくて野原だし。

 いや、細かいことはいいんだ。とにかく士気が鼓舞されたところでリターンマッチだ。


 前回と同じくイングランド軍先攻となった。エドワード二世を活性化したのち、単騎で突出しているグロスター伯を退避させる。この戦いの当時、グロスター伯はまだ20代前半で経験不足だったらしい。イングランド王エドワード二世の甥で、そのせいか若くして前衛を任されており、初期配置でも突出した位置にいる。なおグロスター伯はこの戦いで戦死している。

 スコットランド軍は右翼(マップ下方)のキャリック伯の部隊(緑)を前進。敵クリフォード隊(青)のクロスボウを射撃で壊滅させる。続いて左翼のマレー伯が動く。正面のボーモント隊(ピンク)に射撃戦を仕掛けるがいいところなし。だが白兵戦で敵長弓兵を1ユニット敗走させる。

 ボーモントはすぐに反撃。長弓兵が猛威を振るい、マレー伯隊(青)の槍兵が1ユニット壊滅、戦斧兵と長弓兵が敗走する。イングランドの長弓兵はやっぱり恐ろしい。


 ボーモントは指揮官としての能力が低く、この前日には固く守っているスコットランド軍に対し繰り返し突撃。無理な攻撃に反対する部下に、怖いなら逃げろと言い放ったのはいいけどスコットランド軍に撃退された、という逸話が残っている。だがそのうち長弓兵を活用するようになり、1332年ダップリンムーアの戦いで寡兵でスコットランド軍を破り、1333年にはハリドンヒルの戦いでエドワード三世が数的に劣勢ながらもスコットランド軍を破るのに貢献している。イングランド軍はこうやってスコットランド軍相手に長弓兵の運用を発展させ、百年戦争でその破壊力を発揮するのである。フランス軍涙目。

 ちなみにボーモントはエドワード二世のいとこで、しかもおじいちゃんはエルサレム王というセレブな家系である。


 スコットランド軍は右翼(マップ下方)のキャリック伯の部隊(緑)が敵長弓兵の対応射撃を受けながらも取り付き、白兵戦で損害を与える。長弓兵の数では負けているのだ。敵の射撃で少々損害が出てもスコットランド軍としては積極的に攻撃していく以外に勝つ道はない。

 このキャリック伯エドワード・ブルース、衝動的な性格で、この戦いの前にバノックバーン近くのスターリング城をほとんど攻城兵器がないのに勝手に包囲してしまっている。その結果イングランド王の出兵を招くことになり、ロバート一世の怒りをかった。またこの戦いの翌年にはアイルランドに侵攻、上王と名乗るが撃退されている。ちょっと猪突猛進気味なのかな。でも敵長弓兵に臆せず突っ込んでいくには適任である。


 一方、イングランド軍は混乱状態で散らばっているエドワード隊(水色)の再編成に努めつつ、ヘレフォードの重装騎兵部隊(緑)を右翼(マップ上方)に回す。前回の教訓から、複数の部隊が混在してもイングランド軍の兵力の多さが生かせないため、エドワード隊の前をあけて多数のエドワード隊の槍兵が展開しやすくするのだ。さらにイングランド軍はマップ右下端から増援を登場させ、スコットランド軍の右翼を脅かし始めた。

つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年8月13日土曜日

『十字軍全史』

  SNSの知り合いnyaoさんが『十字軍全史』(ダン・ジョーンズ著)という本について日記に書かれていて、こーちゃさんも早速買われたとのことだったので刺激されて読んでみた。しかし一瞬、「十字軍」→「中世」、「ダン・ジョーンズ」→「ダンジョン」と連想して、RPGの世界に脳が行ってしまいそうになりましたよ。


 ちょっと調べてみると、筆者のダン・ジョーンズの他の著書『テンプル騎士団全史』は世界的ベストセラーと出版元の河出書房は言っているし、『The Plantagenets: The Kings Who Made England』はニューヨークタイムズのベストセラーになっている。『十字軍全史』もアメリカのアマゾンでの評価は悪くない。

 ということで実物を見てみたら、結構分厚い本。こりゃ読むのに時間がかかるかな、と思っていたら、面白くて数日で読み切ってしまいました。


 まずね、文章が悪くないんですよ。歴史の本にありがちな、客観的だけど無味乾燥な文体ではなく、読み手の興味を持続させるような書き方。じゃあ内容はというとしっかりしていて、さすが筆者はケンブリッジ大学で歴史学を専攻しただけのことはある。もちろん自分には書かれている内容の正確さをうんぬんできるほどの知識はないけれど、本書では西欧だけでなくイスラム圏の文献も多く参照して書かれていて、なにせ主要登場人物一覧は15ページ、注釈だけで40ページあるという結構な力作。詳細な索引もついているので、十字軍関連の人物や地名などについて調べるのにも便利。(ただし自分が読んだのは原著の『Crusaders』だけなので、翻訳本で索引などがどうなっているかは未確認です。すみません)


 基本的に第一回から七回までの十字軍の経緯が述べられているのだけれど、イスラム側の視点も結構入っていて、もちろんアンナ・コムネナ様も登場します。十字軍については結構シニカルに描いている印象。それと個々の戦いについてはごくあっさりと書かれている。

 また聖地を目指した十字軍だけでなく、イベリア半島のレコンキスタ、バルト海沿岸の北方十字軍、南仏のアルビジョワ十字軍、13世紀のモンゴル軍の侵入など当時のヨーロッパ・北アフリカ・中東を俯瞰して描かれているので断片的だった知識がつながっていくのが個人的には楽しかったです。

 例えばアルビジョワ十字軍で活躍した(というか結構無茶なことをした)人物としてシモン・ド・モンフォールが出てきて、あれ、それって世界史で習ったイギリスのシモン・ド・モンフォールの乱の人じゃないの、と思っていたら、乱を起こしたシモンと同名で父親らしい。てなことがわかってアルビジョワ十字軍と13世紀半ばのイングランドでの反乱が自分の中でつながったりして、こういう経験って歴史の本を読む醍醐味ですよね。それと、ノルウェイ王シグルドの、イベリア半島をぐるっと回ってパレスチナに遠征・巡礼し、ビザンツ経由で帰国する経緯が書かれているのがぐっと来ました。


 北方十字軍については、ドイツ東部、エルベ川流域以東やバルト海沿岸の異教徒ヴェンド人の住んでいた地域への進出というか侵略にも触れている。12世紀から始まる東方植民、いわゆるDrang nach Osten(東方への衝動)である。そういえば、独ソ戦のDrang nach Osten!というGDWの古いゲームがありましたね。これはたしかバルバロッサ作戦からソ連軍の冬季反攻までを扱ったものだけれど、東方への衝動の20世紀バージョン、という感じで名前を付けたのかな。

 それと、GMTのLevy and CampaignシリーズのNevskyは1240~1242年でドイツ騎士団のバルト海沿岸への進出を扱っているが、この本でドイツ騎士団の成立からバルト海地域への移転についても知ることができる。


 イベリア半島でのレコンキスタも結構説明されている。Nevskyと同じくGMTのLevy and CampaignシリーズでAlmoravidという新作が出たけど、このゲームが扱う1085~1086年の前後の時代のスペインや北アフリカの状況って全然知識がなかったので興味深かった。Almoravidって日本語だとムラービト朝と呼ばれるのが普通だと思うのだけど、王朝名は聞いたことあったけな、というぐらい。ゲームAlmoravidで一方の主役となるレオン・カスティーリャ王アルフォンソ六世って知らんかったわー。 あと、小さなウォーゲーム屋で販売されているALEA誌38号の付録ゲームになっている、1086年のサグラハスの戦いも触れられているのがちょっとうれしい。


 ということで個人的には大満足の本でした。nyaoさん、教えていただきありがとうございます。

 十字軍に興味があったらこの本ですよ、と言いたいところなんだけど、結構分量があるうえ前述のように幅広い地域に話が広がるので、いきなりこの本を読むよりも塩野七生の『十字軍物語』で十字軍のおおまかな流れと主要な人名や地名を知っておくといいかもしれません。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年8月11日木曜日

スコットランドの独立のために-Freeedooom!!  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ⑥

  やや優勢な状態になっているスコットランド軍は、中央主力のロバート一世の部隊(黄色)を前進させ右翼(マップ下方)のキャリック隊(緑)を援護する。そして左翼のマレー隊(青)が混乱状態のユニットを回復させつつ、敵ボーモント隊(ピンク)の槍兵に2ユニットで攻撃をしかける。側面と前面からの攻撃でDRMは+5。これで敵槍兵の戦列も崩せる、と思いきや、無情にもサイの目はゼロで効果なしに終わった。

 だがスコットランド軍はめげない。高い活性化値を生かして右翼のキャリック隊が活性化。敵長弓兵と射撃戦を行う。

 Men of Ironシリーズでは活性化した部隊の長弓兵が敵長弓兵に射撃を仕掛けた場合、応射(Return Fire)をくらい両軍同時に射撃結果を解決するのだが、スコットランド軍のサイの目はボロボロで敵の射撃にやられてばかりに終わる。だが、戦斧兵が小川の対岸にいる長弓兵に接敵、対応射撃をくらって混乱状態になりながらも2ユニット相手に白兵戦で大暴れし敵の両ユニットとも混乱状態で退却させた。

 戦斧兵が長弓兵に白兵戦で攻撃する場合、DRMが+3となる。長弓兵はユニット固有の白兵戦防御DRMも弱いため、混乱状態の戦斧兵でもサイの目に嫌われなければ長弓兵を蹴散らすことができるのだ。


 ここでイングランド軍は軍旗(Standard)を活性化させ、軍旗の周りにいる敗走状態(Retired)の6ユニットを士気回復(Rally)させる。各部隊ごとに軍旗があるスコットランド軍と違い、イングランド軍は軍全体で軍旗一つで、すべての敗走ユニットがここに集中して逃げてくるのだ。敗走ユニットは敗走ポイント(Flight Point, FP)が1発生するが、士気回復させるとそのFPは打ち消される。累積FPが23となっていたイングランド軍だが、敗走ユニットを6つ士気回復させたことにより、一気にFPが17まで下がった。イングランド軍の敗走レベルは40なので、かなり余裕ができたことになる。

 続いてイングランド軍は中央左翼よりのへレフォードの重装騎兵部隊を右翼(マップ上方)に回す。右翼のボーモント隊(ピンク)がやや押され気味ということもあるが、エドワード隊の前面をあけて大量の槍兵を前線に投入できるようにするのが目的だ。槍兵の数で圧倒するだけでなくエドワード隊の長弓兵と槍兵を有機的に組み合わせて使えるようになれば、スコットランド軍には脅威となる。



次第に態勢が整いつつあるイングランド軍を見てやや焦るスコットランド軍は、右翼(マップ下方)で攻勢に出る。エドワード隊でやり返すイングランド軍。両軍の活性化が交互に続いたが、兵力差がじわじわと効いてくる。エドワード隊の大量の槍兵は初期配置では混乱状態で分散していたものの、士気回復し集結して攻勢に出ている。しかもエドワード隊には長弓兵が計5ユニットとスコットランド軍右翼のキャリック隊(緑)の倍以上。キャリック隊に隣接するスコットランド軍中央のロバート一世の部隊には長弓兵はいない。槍兵でも長弓兵でもスコットランド軍は数的に劣勢の状態のまま攻防が続いた。


 そしてついに、長弓兵の射撃の援護下で攻撃をしかけてくるエドワード隊の槍兵の大群によって、スコットランド軍右翼は限界を迎えた。キャリック隊とロバート一世の部隊の間を突破され、イングランド軍がなだれ込む。スコットランド軍の敗走ポイントは21に上った。



 前線の崩壊を防ぐため、スコットランド軍はSeizureカウンターを使用して継続奪取(Seizure)。中央のロバート一世が右翼の火消しに懸命になる。さらには継続活性で左翼(マップ上方)のマレー伯隊が攻撃。イングランド軍右翼ボーモント隊(ピンク)の2ユニットを壊滅させた。

 だがエドワード隊が射撃と白兵戦のコンボでスコットランド軍ユニットを次々と壊滅させていく。やはり諸兵科連合(と言っていいのかな)は強力である。スコットランド軍の右翼危うし。そしてイングランド軍はスコットランド軍左翼に対してもボーモント隊(ピンク)で射撃を浴びせかける。スコットランド軍の累計敗走ポイントは28になり、敗走レベルの30が目前となった。



 自由活性を得たスコットランド軍は左翼のマレー伯隊で少しでもイングランド軍に損害を与えようと全力で攻撃する。だが時すでに遅し。敗北チェックで4の目を出し、敗走レベルの30を超えてしまった。


 え、これってもしかして「スコットランド人への鉄槌」エドワード一世に続いて息子のエドワード二世もスコットランドを実効支配するようになるってこと? 優柔不断で軍政ともに能力がなかったエドワード二世がスコットランドの英雄ロバート一世を破ったってことになっちゃうの? バノックバーン700周年のスコットランド独立住民投票も無し?!


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)


2022年8月7日日曜日

スコットランドの独立のために-Freeedooom!!  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ⑤

  左翼(マップ上方)で敗走していた4ユニットを回復させたスコットランド軍は、続いて右翼のキャリック伯の部隊(緑)で攻撃に出る。

 キャリック伯の部隊はイングランドの中央ヘレフォード伯率いる重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)部隊の側面からの突撃で損害を被っていたが、長弓兵による射撃で重装騎兵を混乱させてから槍兵の白兵戦攻撃で敗走させる。そして残り3ユニットとなっているイングランド軍左翼(マップ下方)のクリフォード隊(青)にダメ押し。クロスボウを壊滅させ、継続攻撃(Continued Attack)でクリフォードとスタックしている槍兵を混乱状態にした。


 スコットランド軍はさらに左翼のマレー伯の継続活性に成功した。この連携プレイこそスコットランド軍の持ち味。先ほど4ユニットを正常状態に回復させているので強気で攻撃に出る。長弓兵で射撃戦を行った後、対応射撃に臆することなく正面のイングランド軍ボーモント隊(ピンク)の長弓兵にとりつき、白兵戦で2ユニットを混乱状態にさせた。イングランド軍はボーモント隊の長弓兵を下げ、同隊に2ユニットしかいない槍兵でマレー伯隊の前に戦列を引くのがやっとだ。

 スコットランド軍は攻撃の手を緩めない。左翼のマレー伯隊が突進を続ける。小川の対岸にも兵を送り、射撃と白兵戦のコンボでボーモント隊の長弓兵を1ユニット壊滅させる。そして中央寄りでは戦斧兵(Axe Infantry, AX)がクリフォード隊(黄色)の重装騎兵を敗走(Retired)させた。



 戦斧兵はこのシナリオにのみ登場する兵種で、特別ルールでシルトロン状態の槍兵とスタックができる。Men of Ironシリーズは基本的にスタック禁止なので、スタックできるというだけでなんか気分が上がる。シルトロン隊形を組んでしっかりと守っている槍兵の背後に潜んでおいて、敵の隙をついて飛び出し斧をふるって襲い掛かる、というイメージらしい。実際、ユニットのイラストも斧を振り上げ飛びかかっているようなもの。攻撃力は槍兵よりも高いが、防御では劣るという、攻撃向きの兵種である。

 ただこのシナリオではスコットランド軍が攻撃する側のため、シルトロン状態の槍兵とスタックしているのは、スコットランド軍の戦い方にもよるがおそらく初期配置の時ぐらいである。特別ルールを読んでいるときはなんか期待しちゃったんだけどな。


 イングランド軍は右翼(マップ上方)のボーモント隊(ピンク)の多くが混乱状態になっているため、回復に努める。その間、スコットランド軍は今度は右翼(マップ下方)で攻勢に出た。キャリック伯の部隊がクリフォード隊(青)に攻撃を仕掛け、1ユニットが敗走、1ユニットが壊滅。クリフォード隊は残り1ユニットとなった。

 スコットランド軍の左右両翼からの攻撃でイングランド軍の累積敗走ポイントは23になった。一方スコットランド軍は11だ。この戦いのイングランド軍の敗走レベル(Flight Level)は40,スコットランド軍は30。累積敗走ポイントにサイコロの目を足して敗走レベルを超えた側が負けになるので、ややスコットランド優勢と言える。イングランド軍としてはなんとかスコットランド軍の勢いを弱めないといけない。


 イングランド軍はエドワード二世を活性化。エドワード二世はイングランド軍最大兵力を率いているのに活性化値が2しかないので自由活性化のときぐらいしか動くことを期待できない。最左翼(マップ下方)、小川の向こうの長弓兵3ユニットでスコットランド軍右翼のキャリック伯隊(緑)の側面に射撃を浴びせかけ、槍兵を1ユニット壊滅させる。やはり長弓兵は怖い。

 そしてエドワード周辺でじわじわと槍兵の大群が隊列を整えていく。さらには戦いの最初のころに右翼に派遣していた長弓兵2ユニットもエドワード本隊のいる左翼に呼び戻し、長弓兵の射撃と槍兵の白兵戦のコンボができる態勢を取ろうとする。


 だがエドワード隊の前面にはヘレフォードの重装騎兵部隊(緑)、それにクリフォード隊の残存ユニットがいて邪魔である。ただでさえエドワードは士気範囲が2とかなり狭い。指揮下(In Command)の自隊ユニットが隣接して続いていれば連鎖効果でエドワードと離れていても指揮範囲外にならないのだが、他の部隊と混在しているとそれもなかなか難しい。エドワード隊を有効に使うには隊がまとまっていなくてはならず、そのためには前線整理が必要になってくるのだが、スコットランド軍がそのような余裕を与えてくれるかどうか。


つづく


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2022年8月3日水曜日

スコットランドの独立のために-Freeedooom!!  Bannockburn 1314 - Men of Iron Tri-pack(GMT) AAR ④

  イングランド軍はマップ右下から増援も登場し、大量の槍兵を擁するエドワード隊がようやく態勢が整ってきた。スコットランド軍は慎重に攻めていたら兵力差で押し切られる可能性がある。右翼(マップ下方)のキャリック伯の部隊がさらに前進、敵の長弓兵2ユニットを壊滅させる。これでイングランド軍左翼のクリフォード隊(青)は槍兵2ユニットに混乱状態のクロスボウ1ユニットを残すのみとなった。

 続けて中央のロバート一世率いる主力が前進、と思いきや、継続活性に失敗。指揮官の活性化値が高いのがスコットランド軍の売りなのに、どうした。

 逆にイングランド軍は、右翼のヘンリー・ボーモント(Henry Beaumont, 1st Baron Beaumont)の部隊(ピンク)が射撃をしたのち、継続活性で中央のヘレフォード伯(Humphrey de Bohun, 4th Earl of Hereford)率いる重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)が動く。突出して側面をさらけ出しているスコットランド軍右翼キャリック隊(緑)に突撃。横から騎兵の突撃をくらって槍兵が瞬殺された。


 じわじわと損害が増えていっているスコットランド軍。ここでマレー伯の軍旗(Standard)を活性化。敗走状態(Retired)だった4ユニットを士気回復(Rally)させる。

 Men of Ironシリーズでは、戦闘結果で敗走(Retired)が出たユニットは、自隊の軍旗のヘクスもしくはその隣接へクスまで動かされる。軍旗は自軍のかなり後方に配置されていることも多く、この動きをテレポーテーションと評しているレビューもあった。

 だがこれは、士気喪失した兵たちが軍旗を目指して逃げている過程をいちいち再現する手間を省くため、便宜的にユニットを瞬間移動させているのだと思う。実際、敗走の結果を受けたユニットが遠く離れたところにある軍旗まで瞬間移動させられたとしても、軍旗をすぐに活性化して敗走ユニットが士気回復してすぐに再び動く、というケースはプレイをしていてもそうそう起こらない(と思う)。つまり、遠いところまで瞬間移動したユニットがそこからすぐに動き出す可能性は低く、実際はいくつかの活性化が行われたのちに士気回復するケースがほとんどだ。それまでの間、兵は一目散に逃げており、ただしユニット自体は便宜的に軍旗のところに移動させているのだと好意的に解釈しています。

 SPI/S&TのGreat Medieval Battlesという中世の戦いをシミュレートしたシリーズでは、敗走したユニットは実際に毎ターン数ヘクス逃げていくが、難易度の低いゲームを指向しているMoIシリーズは簡略化のためにこういう処理にしたのではないだろうか。ルールブックのイントロダクションにも「細かい点は省略されるか全体的なシステムに組み込まれている」と述べているし。


 ちなみにGreat Medieval Battlesでは敗走していく兵士を引き留めるために指揮官があちこち走り回る、という状況がよく見られる。なんか、ヘイスティングスの戦いでノルマンディー公ギヨーム2世(征服王ウィリアム一世)戦死の噂に動揺した兵士たちに、ギョームが兜を脱いで健在であることを示して士気回復させた、というバイユーのタペストリーに描かれているエピソードを思い出しますな。なおGreat Medieval Battlesにはバノックバーンのほか、クレシー、ナヘラとMoIと同じ戦いが3つ含まれていて、比較するのも面白い。個人的にはMoIのほうが好きですが。


 先ほどの重装騎兵の突撃に続いてさらに敵に攻勢を仕掛けたいイングランド軍はSeizureカウンターを使用して継続奪取(Seizure)を試みる。だが、失敗。逆に自由活性を得たスコットランド軍はマレー隊(青)を活性化させ、先ほど敗走状態から回復して混乱状態となっていた4ユニットを正常の状態に戻した。マレー隊は残存ユニットが9なので、そのうち4ユニットが前線に復帰できるのは大きい。これで左翼でも再び攻勢に出られるはずだ。



つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...