2022年5月31日火曜日

火器が勝敗を決した初の戦い Cerignola 1503 - Arquebus (GMT) AAR ④

  マップ上端でなんとか壕を突破したフランス軍だが、スペイン軍の猛火にさらされる。スイス傭兵がバタバタと倒れ、2ユニットが壊滅。Men of Ironシリーズでは歩兵のFP(敗走ポイント。ユニットが壊滅するとこのポイントがたまっていき負けてしまう)が2~3なのに、Arquebusではなんと5である。最高指揮官(Overall Commander)と同じFPなのだ。貴重なスイス傭兵、前回攻撃しないんだったら敵から離しておけばよかった…。ウィリアム・テルさん、ごめんなさい。


 その後フランス軍は混乱状態や敗走状態のユニットの回復に努め、再び左翼(マップ上方)から攻撃をかける。スペイン軍の対応射撃に多くの損害が出るが、塁壁の右端への攻撃に戦力を集中し、3ユニット連続射撃の末に防御ユニットを敗走させる。おおお、塁壁が空いた!


 塁壁があるから余裕で守れる、と思っていたスペイン軍は慌てる。兵力を右翼(マップ上方)にシフトさせ、射撃戦で敵を敗走させたうえで、壕のこちら側に単独で進出しているフランス軍SBに白兵戦を仕掛け退却させる。

 フランス軍はめげずに再び塁壁右端(マップ上方)に攻撃を集中。防御しているパイク兵を射撃で敗走させ、空いたへクスにSBが侵入。ついに塁壁を突破‼ フランス軍プレイヤーは雄たけびをあげ、スペイン軍プレイヤーは動揺を必死に隠そうとする。ソロプレイだけど。


 だが侵入してきたフランス軍SBにスペイン軍が即座に反撃。射撃で壊滅させ、フランス軍FPは23になった。FPにサイの目を足して敗走レベルを超えるかどうかの敗北チェック(Loss Check)では、1の目を出して乗り切る。これはまだあきらめるなという神の啓示に違いない。スイス傭兵のパイクユニットが塁壁内に侵入。戦闘忌避チェックも乗り越えてスペイン軍SBに白兵戦を仕掛け、混乱させる。まだまだ俺たちは戦える! だがこの後の敗北チェックでフランス軍はサイの目4を出し、敗走レベル25を超えたので負けとなった。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月27日金曜日

火器が勝敗を決した初の戦い Cerignola 1503 - Arquebus (GMT) AAR ③

  スペイン軍の陣地にずらっととりついたフランス軍に対し、スペイン軍歩兵が一斉射撃。初めて火器が勝敗を決した戦いとして、チェリニューラの名を歴史に刻んでやるのだ。次々と銃火に倒れていくフランス兵。ある部隊は混乱、退却し、ある部隊は自軍の旗が立っているところまで敗走(Retired)、そしてパイク兵1ユニットが壊滅した。フランス軍の歩兵戦列はぼろぼろである。



 余裕のスペイン軍、と言いたいところだが、恐怖の暴発ルールがある。実際の戦闘でもスペイン軍の火薬が爆発したそうで、この戦いではスペイン軍は歩兵部隊を活性化する度に暴発チェックをしないといけない。サイコロを振って40%の確率で暴発が起こり、ランダムにユニットが選ばれてそのユニットから2へクス以内のスペイン軍はすべて混乱してしまうのである。あー恐ろし。今回は幸い火薬に火はつかなかったけど。

 

 多くの部隊が損害を被ったフランス軍だが、左翼(マップ上方)は無傷である。まずはSBによる連続射撃で重装騎兵(Mounted Men-at-Arms, MM)を敗走させ、壕を挟んで白兵戦を行う。防御ラインを崩すことに成功、壕の向こう側にSBが進出した。




 左翼は果敢に攻撃したが、壕にとりついているほかのフランス軍部隊は敵けん制のため現状維持。なぜ攻撃させないかというと、攻撃成功の確率が低いこともあるが、何より彼らがスイス傭兵だからである。1315年モルガルテンの戦いでハプスブルグ家の軍隊を破り、1386年ゼンパッハの戦いで再びハプスブルグ軍に完勝したスイス歩兵の精強さは、ヨーロッパ中に知られるところとなった(ちなみに両戦闘ともVae Victis誌でゲーム化されている)。スイス傭兵はフランスをはじめとしてヨーロッパの諸勢力で雇われたが、金には貪欲で「金のないところスイス兵なし」と言われたそうだ。金が払われていないと戦うのを拒否したりしたらしい。ハイジはそんな守銭奴みたいな子じゃなかったのに。

 このゲームでもスイス傭兵が金にシビアなことを表すルールがあって、スイス傭兵が白兵戦を試みるたびに、実際に戦うかどうかチェックしないといけない。チェックに失敗すると攻撃を拒否するか、最悪の場合、戦線離脱をしてしまう。なのでスイス傭兵は壕にとりついて敵の戦力を引き付けておくことに使う。

 なおスペイン側にはドイツの傭兵であるランツクネヒトがいるが、彼らはスイス傭兵ほど金にうるさくなかったそうで、こういうチェックはない。まあランツクネヒトはランツクネヒトで、サッコ・ディ・ローマとかやっていますからね。

 

 このスイス傭兵の戦闘忌避チェックに関しては、ルールブックにSwiss Shock Reluctanceとあって、その下に(The Harry Lime/Jerry Maguire Rule)と書いてある。Harry LimeとJerry Maguireって誰?と思って調べてみたら、後者は映画「ザ・エージェント」の主人公。金だけを追い求める会社の方針に反対したらしい。要は、戦闘忌避チェックに成功して、金が支払われなくてもちゃんと戦うってことか。さfらにルールブックの説明では、チェックに成功した場合「ウィリアム・テルの子孫はパイクを構えて仕事に取り掛かる。ロッシーニをかけろ」なんて書いてある。そういえばウィリアム・テルの舞台はスイスだったな。ロッシーニって、オペラ「ウィリアム・テル」を作曲していたらしい。はー、勉強になるわ。

 もう一人のHarry Limeは映画「第三の男」の悪役。スイスとどういう関係があんの?と思っていたら、戦闘忌避チェックでサイの目が10以上の場合、「そのユニットは戦わないと決めただけでなく、国に帰って鳩時計を発明することを決意する(我々がハリー・ライムから得た情報だ)」なんて書いてある。

映画「第三の男」では

「イタリアではボルジア家支配の30年間は戦争、恐怖、流血に満ちていたが、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてルネサンスが生まれた。片やスイスは、500年にわたる民主主義と平和で何を産んだと思う? 鳩時計さ。」

っていう感じのハリーのセリフがあって、それを指しているんでしょうな。ボルジア家の支配って、Arquebusのイタリア戦争の時だし。いやーしかし、このゲームのルールって結構ノリノリで書いたのかな。ルールブックでニヤニヤしてしまうって、自分が読んだ中ではなかなか無いなー。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月25日水曜日

火器が勝敗を決した初の戦い Cerignola 1503 - Arquebus (GMT) AAR ②

  フランス軍が前進を開始。まずは騎兵で敵左翼(マップ下方)をけん制した後、歩兵が一斉にスペイン軍の防衛ラインにとりつく。

 塁壁の向こうにずらっと並んでいるスペイン軍歩兵は、パイク兵(Pike, PK)と、SBという兵種。パイクは長い槍。SBはSword & Bucklerという兵種で、bucklerは鍋の蓋ぐらいの小さな丸い盾のこと。ビジュアルで見たほうが分かりやすいよね。

buckler - Google 検索

 パイク兵と戦うときは、この小さな盾でパイクを払いあげ、敵に接近する。パイク兵は至近距離での戦いではパイクを使うことができないため剣にやられてしまうわけだ。このゲームでも対騎兵ではパイクのほうがSBより優位だが、パイク対SBではSBのほうが強いレーティングになっている。


 でもこの戦い、火器が戦場を制したんでしょ。パイク兵とかSBって射撃できなくて白兵戦をするんでしょ? とMen of Ironシリーズをやっていると思ってしまうんだけど、スペイン軍のパイクやSBユニットが射撃もできることがこの戦いの特徴、というかAruquebusの特徴になっている。

 この時代、火縄銃が発達して多くの軍隊で使用されるようになっていった。弓やクロスボウを扱う兵士の訓練には数年を要するが、火縄銃だと数か月で済んだそうだ。さらにこの時代の特徴として、パイク兵部隊の両翼にクロスボウや火縄銃の兵を加えるようになったという変化がある。クロスボウや火縄銃兵はまず敵を射撃し、接近戦になったらパイク兵の後ろに退避するという戦い方になっていった。パイク兵の部隊に火縄銃兵を加えるという編成を発案したと言われるのが、チェリニョーラの戦いで大勝利を収めたスペイン軍の指揮官ゴンサロ・デ・コルドバ(Gonzalo de Cordoba)だそうである。このような編成がのちにテルシオに発展していくわけですな。全部ヒストリカルノートの受け売りだけど。ちなみにゴンサロ・デ・コルドバは生涯に一度しか負けていないらしい。すげー。


 Men of Ironシリーズでは弓兵など射撃ができるユニットと槍兵など白兵戦向きのユニットが分かれているが、Arquebusでは上記のような変化を反映して、パイク兵やSBでも多くは射撃できるようになっている。つまり、敵が近づいてきたら対応射撃をして、しかもそのあと白兵戦を仕掛けられてもちゃんと戦えるのだ。Men of Ironシリーズのほかのゲームだと、弓兵やクロスボウは敵が隣接してきたら対応射撃ができるけど、そのあとの白兵戦には弱い。アジンコートの戦いのように杭でしっかり守られているんだったら別だけど。


 ふーん、同じシリーズでも違うのね、ルールはちゃんと確認しなきゃ、と読んでいると、Seizure(活性継続の奪取)の説明のところで、「…もしくは、白兵戦の際にゼロの目を7回連続で出したプレイヤーに起こること」なんて付け加えてある。え、どういうこと? 7回連続ゼロの目だと奪取できるの? これまでのシリーズにそんなのなかったぞ。でも7回連続でゼロなんてほぼあり得ないのに何で? と困惑していたんだけど、seizureっていう単語には発作や脳卒中という意味がある。白兵戦でサイの目ゼロって最低の目で、10面体サイコロを振って最悪のゼロが7回連続で出たら何かの発作に襲われてもおかしくないですわな……って、ジョークかい! ふう、真面目にルール読んで損したぜ。

 気を取り直して読み続けると、次の項目Shock(白兵戦)の説明で、「…もしくは、相手プレイヤーが7回連続して9の目を出した時に起こること」って加えてある。そりゃ、相手の攻撃で最高の9の目が7回連続で出たらショックですよ。しかしこういう混乱するようなことをルールブックに書かれると困る。嫌いじゃないけど。

(後でよく読んだらMen of Iron Tri-packのルールブックにも同じことが書いてありました。このジョーク、気に入っているのかな…)


 スペイン軍の歩兵はパイク兵もSBもすべて火縄銃兵が配備されていて、射撃ができるようになっている。つまりフランス軍がスペイン軍の陣地に押し寄せていくと、塁壁の向こうから火縄銃の砲弾を浴びせかけられるのだ。今回も一斉にフランス軍が塁壁にとりついたけど、あー、見てられない。待ち構えていたスペイン軍の火縄銃が火を噴き、数ユニットが混乱状態に。

 フランス軍の歩兵のうちSBはクロスボウが配備されていて射撃能力があるため、対応射撃を受けた後に射撃ができる。クロスボウの威力はこのゲームでは火縄銃と同等だ。だが塁壁の向こう側に身を隠しているスペイン軍を撃つも、被害は皆無。



 通常であればこの後フランス軍は白兵戦が行えるのだけれど、壕にとりついたのと同じ活性化中に白兵戦をしかけることができず、攻撃できるのは次の活性化になる。塁壁を一度でも突破するとこの制限はなくなるが、今は次の活性化まで待ちだ。それまでスペイン軍が壁の向こうでのんびりしているはずもなく…。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月23日月曜日

火器が勝敗を決した初の戦い Cerignola 1503 - Arquebus (GMT) AAR ①

  Cerignolaと書いて「チェリニョーラ」と読むらしい。南イタリアにある町である。南伊ナポリ王国をめぐってスペインとフランスの衝突が続ていたイタリア戦争中の1503年、スペイン軍の軽騎兵の妨害に悩まされながら、フランス軍は斥候も出さずにチェリニューラの町に向かって進んでいた。陽も傾くころになってようやく町近くについたとき、スペイン軍を見つける。フランス軍を率いていたヌムール公は翌朝を待って攻撃しようと考えていた。そうすれば後続の砲兵部隊も追いつくうえ、長い行軍と暑さで疲弊している歩兵部隊も休養が取れる。だが配下の諸将は攻撃を主張した。これまでどおり、強力な一撃で敵を破ればいい。そのあとでぐっすり眠れる。だが、スペイン軍の前に掘られた深い堀に誰も気がついていなかった。攻撃を告げるラッパの音が鳴り、フランス軍が突撃を開始する…。


 このチェリニョーラの戦い当時のイタリアはルネサンス華やかなりしころで、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチなどが活躍している。一方、ミラノ公国やヴェネツィア共和国、ローマ教皇領など政治的には分裂状態にあった。この戦いの約30年後にはマキャヴェリが「君主論」でイタリア統一への願いを述べていたりする。

 チェリニューラの戦いは初めて火器が勝敗を決した戦闘と呼ばれているそうで、スペイン軍が火器に加えて野戦築城を効果的に利用し、精強を誇ったフランス軍とスイス傭兵を打ち破った。長篠の戦いの約70年前のことである。


 ゲームはMen of Ironシリーズの4作目となるArquebus。年代的には同シリーズのInfidelが11~12世紀で、Arquebusは15世紀末から16世紀半ばと400年ほどの違いがある。どれだけ雰囲気が違ってくるのかと思い、InfidelのあとにArquebusで遊んでみることにした。

 Arquebusに入っている8つの戦いのうちチェリニョーラを選んだのは、もちろん火器が初めて勝負を決した歴史的な戦闘だから、ではなく、単にマップが小さくユニット数も少ないため楽そうだからである。まずはゲームに慣れないとね。


 マップを見るとditch(壕)とrampartがスペイン軍(白っぽい黄色のユニット)の戦列に沿って地図をほぼ縦断している。



rampartって何?と思って調べたら「塁壁」という意味だそうで、塁壁って何?と思って調べたら「砦の壁」だそうだけど、とにかく壕と壁でスペイン軍は守られている。

 これがまた強力で、接敵してもすぐには攻撃できず、白兵戦をしかけるためには次の活性化まで待たないといけない。だがその前に防御側の射撃で損害を受けている可能性大。しかも白兵戦を仕掛けるときも混乱チェックがあって、基本的に50%の確率で攻撃側は混乱してしまう。さらに地形効果でサイの目マイナス2。もしかなりの幸運に恵まれて、自軍は損害を受けずに防御ユニットを退却させたとしても、戦闘後前進の際にまた混乱チェックがある。

……と、ルールを読んでいるだけで攻撃をするが失せてくる。よくまあフランス軍はこんな強固に守っている敵に攻撃を仕掛けたもんだ。その日は埃っぽくて、実際に近づくまでは壕や塁壁がよく見えなかったらしいけど。


 ただよく見ると、スペイン軍の左右両翼の守りが比較的弱い。壕だけで塁壁はないし、守っている部隊も白兵戦に弱い投槍騎兵(Genitor、GE)とかだ。両翼から攻撃し、スペイン軍が中央から歩兵を引き抜かざるを得ないようにして、守りが手薄になったところを突破する。おし、これでいこう。余裕で守れると思っているスペイン軍プレイヤーの鼻をあかすのだ。ソロプレイだけど。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月21日土曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ⑦

  この戦いの舞台となったアンティオキアだが、アレキサンダー大王の死後にセレウコス朝シリアの首都として建設され、ローマ時代においてもローマやコンスタンティノープルと並ぶ政治的、軍事的に重要な都市だったらしい。キリスト教にとっても重要な都市で、キリスト者という言葉がはじめてつかわれたのもこの都市だそうで初期キリスト教伝道の拠点となっていた。ローマ時代にキリスト教が公認されたのちは、コンスタンティノープル、ローマなどに置かれた5大総主教座がこの都市にも置かれていた。

 ――という感じの、歴史的にはメジャーな都市のはずなんだけど、個人的にはなんだか印象が薄い。20数年前にこの町を訪れた、というかシリアに行くために長距離バスの乗り換えでちょっと下車しただけなんだけど、水を買おうとして高かったからやめたというどうでもいい記憶しか残っていない。現在はアンタキヤと呼ばれて遺跡もあんまり残っていないそうだ。長く続くシリア内戦でトルコは反政府勢力を支援してるって聞いたことがあるけど、シリア国境近くのこの町もその影響を受けているんだろうなあ。

 それはさておきアンティオキアの戦いの続きである。十字軍左翼のアデマール隊(黒)に続いて、ゴドフロア隊(青)が活性化。Duqaq隊(緑)の攻撃で多くのユニットが混乱状態になっていたゴドフロア隊(青)だが、このゲームでは、混乱状態のユニットは自隊の活性化中に移動も攻撃もせず、接敵していなければ正常の状態に回復できる。Duqaq隊(緑)が後退していたおかげで、混乱状態だった槍兵ユニット3つが回復した。

 続いて十字軍左翼のアデマール隊(黒)がQaradja隊(青)を再び攻撃。まずクロスボウの射撃で軽弓騎兵を混乱状態に。そうなると軽弓騎兵は戦闘前退却ができないため、槍兵で捕捉、壊滅させた。また中騎兵も2ユニットを混乱状態に。Qaradja隊(青)はボロボロだ。

 3回活性化が続いていた十字軍だが、ここで継続活性に失敗。このゲームでは継続活性に成功するごとに、次の継続活性判定でサイの目が1不利になっていく。そのため、一方の軍が何度も続けて活性化できないようになっている。やっと活性化が回ってきたトルコ軍は損害を受けているQaradja隊(青)を退かせる。接近戦での殴り合いには不利なトルコ軍だが、こういうときは機動力を生かせる。

 続いて中央のDuqaq隊(緑)が活性化。混乱状態にある約半数のユニットは回復させ、残りの部隊でユーグ隊(赤)を攻撃。ユーグ隊(赤)は残存3ユニットとなり、そのうち2ユニットが混乱状態。もうユーグ隊(赤)は使い物にならないだろう。


 そしてQaradja隊(青)が中騎兵を回復させつつ、軽弓騎兵のヒットアンドアウェイでアデマール隊(黒)の槍兵を壊滅させる。

 今度は十字軍が自由活性。中央のボエモンド隊(緑)が、ユーグ隊(赤)を攻撃したDuqaq隊(緑)の重騎兵に反撃。再びボエモンドが騎士とともに陣頭に立つ。指揮官とスタックした騎士が攻撃する場合、サイの目1有利になるのだ。1ユニットが壊滅、1ユニットが混乱状態、さらに1ユニットを包囲化におく。

 このまま一気にたたみかけるチャンス! なのだが、十字軍は継続活性に失敗。トルコ軍はDuqaq隊(緑)がボエモンド隊(緑)に反撃。MAを混乱状態にして退却させる。そしてボエモンドとスタックした騎士に対して、重騎兵4ユニットの包囲攻撃。サイの目修正+4、退却路は無し。さすがの騎士もこれでおしまい、と思いきや、結果はNo Result(効果なし)。ボエモンドの騎兵はシシリー島から連れてきたノルマン騎兵だからね。そりゃ強いよね。


 重騎兵の攻撃をしのいだボエモンド隊(緑)が反撃。ボエモンドと騎士は包囲網を打ち破る。さらにゴドフロア隊(青)がDuqaq隊(緑)に追い打ちをかけ、重騎兵が1ユニット壊滅。トルコ軍のFPは27に。

 十字軍は再びボエモンド隊(緑)の継続活性に成功。弓兵の射撃で重騎兵を混乱状態にしてから、歩兵の攻撃で壊滅させる。さらにもう一ユニットもボエモンドの陣頭指揮で壊滅し、トルコ軍のFPは33に。敗走レベルの35に迫る。

 怒涛の十字軍の攻撃の後、やっと迎えたトルコ軍の自由活性。このままでは負けてしまう。とにかく全力で攻撃して、敵ユニットを壊滅させるのだ。無傷で残っていた左翼のSoqman隊(紫)が動く。軽弓騎兵の連続射撃でボエモンド隊(緑)の槍兵が壊滅。そして中騎兵3ユニットの攻撃で、混乱状態だったユーグ隊(赤)の騎士が壊滅する。十字軍のFPは14になった。


 自由活性化の最後に敗北チェック(Loss Check)がある。両軍がそれぞれサイコロを振って出た目を自軍FPに足し、敗走レベルを超えると負けだ。デザイナーズノートによると、このようなサイコロによる勝敗の不確定さは士気の上下や戦場の霧など様々な要素を表しているらしい。

 十字軍の敗北レベルは20で、FPは14。サイの目は、5。耐えた。続てトルコ軍。敗走レベルは35でFPは33。サイの目は…3。トルコ軍の士気は崩壊し、アンティオキアの戦いは十字軍の勝利となった。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)



2022年5月19日木曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ⑥

  トルコ軍の波状攻撃に十字軍中央のゴドフロア隊(青)が反撃。だがDuqaq隊(緑)の重騎兵の守りは固く、痛み分けに終わる。そして十字軍は継続活性に失敗。Duqaq隊(緑)がゴドフロア隊(青)にやり返す。MAを敗走させ、槍兵を3ユニット混乱状態にする。戦列にも穴が開いた。

 このままではゴドフロア隊(青)が危ない。十字軍がここでSeizureカウンターを使用。敵の継続活性を奪い、崩れかけているゴドフロア隊の救援に主力のボエモンド隊(緑)が駆け付けた。指揮官のボエモンドが陣頭に立ち、騎士を率いて突撃。重騎兵を壊滅させる。さすがはボエモンド。


 ボエモンドはノルマン人の家系で、11世紀の初頭にフランスのノルマンディーから兄弟とともに南イタリアとシチリア島を征服したロベール・ギスカールの息子。ノルマン人はアンティオキアの戦いの30年ぐらい前にはノルマンディーからイングランドを征服するノルマンコンクエストなんてのもやってるし、まあとにかく戦いには強かったらしい。もともとヴァイキングだしね。
 ちなみに資料によってはボエモンドはボエモンとフランス語読みで書かれたり、ロベール・ギスカールはロベルト・グイスカルドとイタリア語読みだったりして、結構混乱する。『ノルマン騎士の地中海興亡史という本の巻末に主要な人名のラテン英仏独伊各国語の対応表があって、ラテン(羅)語でマリアが英メアリ、仏マリ、独マリア、伊マリアっていうのはまあわかるけど、ウィレルムス(羅)が英ウィリアム、仏ギョーム、独ヴィルヘルム、伊グリエルモなんてのもあって、絶対同一人物だってわからんだろ、ウィリアムとギョームとグリエルモがなんで同じ名前なんだよと自分の無学を棚にあげて突っ込みたくなる。まあ、東アジアでも「もうたくとう」が「マオ・ツォードン」だろっていうのもありますからね。「李小龍」が「ブルース・リー」とか。いや、これはちょっと違うな。

 閑話休題。半数近くが混乱状態となっているDuqaq隊(緑)はボエモンド隊(緑)とやりあっても益なしと、ひとまず後退。騎兵の機動力を活用して十字軍と距離を取り、態勢の立て直しをもくろむ。
 続いてトルコ軍は右翼のQaradja隊(青)の活性化に成功。軽弓騎兵がヒットエンドアウェイの連続射撃でゴドフロア隊(青)の騎士を混乱状態にする。そこにQaradja隊(青)の中騎兵が集中攻撃。この連係プレーで騎士は壊滅した。なんかペルシアのころから続く東方系の軍隊の伝統を見た気分。その一方でトルコ軍の歩兵が一切活躍していない。というか下手に戦列に加えると味方の邪魔になるうえ、あっという間に敗走しそうなのもオリエントの雰囲気がぷんぷんする。

  Infidelの参考文献として挙げてあった"Crusading Warfare, 1097-1193"という本には、十字軍が最も恐れ称賛した相手がトルコ軍だと書いてある。十字軍に比べて軽武装で機動力に優れていたため、敵との距離を維持し攻撃するタイミングを選べたそうだ。十字軍が攻撃したら逃げ、側面や後方に回り込む。そうして弓騎兵の射撃で敵に損害を与え混乱させ、最後は接近戦で決定的なダメージを与えるという戦術をとっていたらしい。ゲームやる前に読んどきゃよかった。でもこのゲームでも、兵種の特徴や部隊構成を考えたら自然とそう言う戦い方になるよね。

 トルコ軍は継続活性に失敗。突出していたQaradja隊(青)に、十字軍左翼のアデマール隊(黒)が攻撃を仕掛ける。中騎兵が3ユニット壊滅した。


 両軍の激しい攻防が続いたが、この時点で両軍のFPは十字軍8,トルコ軍19。敗走レベルはそれぞれ20と35なので、今のところややトルコ軍有利といったところか。

つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月17日火曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ⑤

  Infidelのアンティオキアの戦い、前回は十字軍があっさり負けたので泣きの再戦である。前回の教訓から、十字軍は増援部隊を出陣させることを優先する。ゴドフロア隊(青)を展開させつつ、ユーグ隊(赤)でトルコ軍軽弓騎兵の排除を進める。

 一方トルコ軍はなんと3回連続で増援部隊の登場に失敗。トルコ軍の諸将は連携が取れておらず、総指揮官のケルボガの言うことを聞かなかったというが、まさにそんな感じ。

 トルコ軍の増援部隊の活性化には、登場させたい部隊の指揮官の活性化値ではなく、ケルボガの活性化値3を使う。自由活性化のときはサイの目が1有利になるので4以下、つまり50%の確率で成功するはずなんだけど。
 もし増援部隊の活性化に失敗してもマップ上にいる部隊の継続活性を試みることができるのだけど、初期配置されている軽弓騎兵の部隊は指揮官がいないため自由活性化でしか動かせない。だが自由活性化は上記のとおりサイの目が有利になるので増援の活性化に使いたい。つまり、増援部隊を出さないことにはトルコ軍はほぼ何もできないのだ。うへー。
 しかも後で気がついたんだけど、このシナリオの特別ルールで4つの増援部隊を出すまでは自由活性は増援登場に使わないといけないとなっている。プレイしているときにはこのルールをすっかり見落としてました。

 十字軍のユーグ隊は軽弓騎兵の対応射撃で歩兵が少々混乱状態になっても気にせず攻撃し、軽弓騎兵部隊の殲滅を進める。トルコ軍は指をくわえて自軍ユニットが消えていくのを眺めているしかない。やっとQaradja隊(青)が登場するころには軽弓騎兵部隊は雲散霧消し、トルコ軍のFPは12になっていた。



 その後も活性化のサイの目は十字軍に分があり、トルコ軍が3部隊を登場させたころには十字軍は主力のボエモンド隊(緑)までアンティオキアから出てきていた。たぶん、これがヒストリカルな展開なんでしょうな。
 その後はお互いに間合いを取りつつ陣形を整えていく。総兵力では勝っているはずのトルコ軍なのだが、マップ上に出ているユニット数では十字軍のほうが優勢である。




 にらみ合いのような状態から、トルコ軍が先に動いた。敵主力のボエモンド隊(緑)がまだ戦列を整えていないうちに機先を制すべし。先んずれば人を制すって項羽も言ってるし。いや違った。これを言った人はそのとおりだよねって感じで項羽に首を切られたんだった。
 自由活性化で任意の部隊を活性化できるため、トルコ軍は活性化値が3と低めのSoqman(紫)の部隊から攻撃に移る。

 まずは軽弓騎兵でユーグ隊(赤)の騎士に連続射撃。このゲームでは1ユニットごとに移動・射撃を行い、射撃をしたユニットはそれ以上移動ができない。だが軽弓騎兵は射撃後も移動を続行できる。さらには、通常は移動中に接敵するとそこで移動終了なのだが、1移動力を消費して射撃を行えば離脱して移動を続けられるという、ヒットアンドアウェイが行えるのだ。
 馬上からの射撃は威力が比較的低かったのか、軽弓騎兵の射撃には攻撃側に不利なサイの目修正-1がつく。さらに騎士の強固な鎧や士気の高さを反映してか、騎士を撃つ場合はサイの目修正-1が加わる。そのため軽弓騎兵が射撃で騎士に損害を与えらえる確率はやや低く、複数のユニットを使う必要がある。

 Soqman隊(紫)の軽弓騎兵ユニットが次から次へとユーグ隊(赤)の騎士に弓の雨を降らせ、さすがの騎士も混乱状態に。さらには重武装のMAも壊滅した。
 そして混乱状態の騎士に中騎兵が3ユニットで攻撃をかける。結果は防御側の敗走だったが、騎士の特別ルールで退却だけに終わった。

 次にトルコ軍はSoqman隊(紫)右に位置するDuqaq隊(緑)の継続活性化に成功。Soqman隊(紫)に続きユーグ隊(赤)に重騎兵で突撃をかける。クロスボウ、槍兵ユニットが次々とアンティオキア市内に敗走していく。ユーグとスタックしていたMAも混乱状態になり退却した。だがDuqaq隊(緑)も無傷とはいかず、突撃に失敗し混乱状態になった重騎兵もいくつか出る。

 Duqaq隊(緑)の突撃の後は、トルコ軍右翼のQaradja隊(青)が前進してDuqaq隊(緑)の右をカバー。おお、トルコ軍がなんか連携が取れている。



つづく




(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月15日日曜日

マルタ島の攻防戦関連の書籍

 もうすぐ発売になるBANZAIマガジン13号の付録ゲームは、マルタ島攻防戦らしい。https://bonsai-games.net/banzaimagazine/bm13/

 マルタ島の戦いの本と言ったらこれですよね。
 "The Great Siege, Malta 1565"


 ……あれ、年代がなんかおかしくない? BANZAIマガジン13号はペデスタル作戦1942でしょ? WWⅡだよね。16世紀の戦い関係ないじゃん。

 
 そうなんです、この本は第二次世界大戦じゃなくて、1565年に聖ヨハネ騎士団がオスマントルコの大軍を激戦のうえ撃退したマルタ島の戦いを描いています。BANZAIマガジンに便乗してすみません。
 でもね、まったく関係がないわけじゃないですよ。筆者のErnle Bradfordは1942年に英海軍の士官としてマルタ島に来ているんですね。「この島の歴史で二回目の大攻囲戦に耐えているとき」って書いているけど、それって、ペデスタル作戦のときじゃないの? で、一回目は16世紀のオスマントルコの攻撃だと言いたいんでしょうな。

 1565年のマルタ島攻防戦は、オスマントルコの絶頂期、スレイマン大帝の時代。トルコの大軍の損害を顧みない攻撃、それに圧倒的な量の砲撃に騎士団はさらされるが、隣のシチリア島からは約束の援軍が全然来ない。そんな状況下、不屈の闘志を持つ騎士団総長ジャン・ド・ラ・ヴァレットのもとでマルタ島を守り切った様子が"The Great Siege, Malta 1565"には描かれています。両軍とも苦しい戦いが続いて、もう早く終わらせてーと読んでいて思ってしまいました。ちなみにド・ラ・ヴァレットにちなんで、今のマルタの首都もバレッタと呼ばれていますね。
 オスマントルコによる攻囲戦は5月から9月まで約4か月続いて、この本ではマルタ島の夏のすさまじい暑さも描写されているけれど、ペデスタル作戦が行われた8月もさぞ暑かったんでしょうな。
 この本の表紙に大きく描かれている黒いマークは、マルタ十字と呼ばれる、聖ヨハネ騎士団の象徴。一瞬、鉄十字のバッタもんかと思いましたよ。マルタ騎士団のみなさんすみません。

 あと、1565年のマルタ島攻囲戦のゲームとしてはWargamer誌50号の付録The Knights of Justiceというのがあるんだけど、マップの色とかが好みじゃなくてユニットの切り離しすらしていなかったわ。今思い出したけど。

 "The Great Siege, Malta 1565"は『マルタ島大包囲戦』というタイトルで和訳が出ています。それと、塩野七生の『ローマ亡き後の地中海世界』の文庫本第四巻でもこの攻防戦について書かれていますね。『ロードス島攻防記』と併せて読むと面白かったです。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月13日金曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ④

  Men of Iron Tri-Pack版ではSeizureカウンターというものがあって、攻撃を有利にしたり、相手の継続活性を中断させて自軍部隊を活性化したりする活性継続奪取(Seize Continuity)など数種類あるのだが、ゲーム開始時に両軍が決められた数だけランダムに引く。アンティオキアの戦いでは十字軍は4つ、トルコ軍は3つだ。

 十字軍のゴドフロア隊(青)の左側面ががら空きなうえ、最左翼のMAも騎士も混乱状態になっているため、チャンスと見たトルコ軍はSeizureカウンターを使用。10面体ダイスを振り0~7で活性奪取成功のチットである。80%で成功だからこれで十字軍にたたみかけらる、と思いきや、十字軍側もSeizureカウンターを使用。奪取を無効化(Seizure Negation)で、せっかくのトルコ軍の試みも無駄に終わった。
 十字軍はアデマール隊(黒)を前進させ、ゴドフロア隊(青)の左翼をカバー。これで城門の前が空くので、十字軍最大兵力のボエモンド隊も出撃できる。

 続けてゴドフロア隊(青)を活性化させ、混戦状態となっているDuqaq隊(緑)を攻撃する。重騎兵が1ユニット壊滅し、Duqaq隊(緑)の残り8ユニットのうち6ユニットが混乱状態となった。重騎兵は敗走ポイント(Flight Point, FP)が3と結構大きいため、十字軍としてはDuqaq隊(緑)をさらに攻撃しなるべく多くのユニットを壊滅させたいところだ。

 だが十字軍は活性継続に失敗、トルコ軍の自由活性となる。多くが混乱状態となっているDuqaq隊(緑)をひとまず退かせるべきか。それとも敵のゴドフロア隊(青)が左翼をさらけ出しているところにQaradja隊(青)で攻撃を仕掛けるべきか。


 ゴドフロア隊の横には無傷のアデマール隊(黒)がいるため、攻撃を仕掛ければ補足され白兵戦に持ち込まれてしまう可能性が高い。重騎兵で構成されているDuqaq隊(緑)と違い、Qaradja隊(青)の中騎兵は攻撃されるともろい。アデマール隊(黒)の弓兵の射撃によって混乱状態になったあとに騎士やMAに攻撃されたらかなりの損害が出る可能性がある。

 しばし迷ったトルコ軍だが、攻めを選択する。虎穴に入らずんば虎子を得ず。班超ほど追い詰められた状況じゃないけどね。しかし学者一家からあんな冒険野郎がよく生まれたもんだ。それはさておき、Qaradja隊(青)の中騎兵がゴドフロア隊(青)の騎士とMAに襲い掛かる。
 だがMAは中騎兵2ユニットの攻撃を持ちこたえた。そして騎士への中騎兵3ユニットの攻撃。騎士はゲームで最強のユニットで、中騎兵が攻撃する場合サイの目に-3の修正がついてしまう。さらにこの騎士ユニットの防御力は-1なので計-4。だが前面と側面からの同時攻撃で+4、さらにユニット数の差で+2の修正で、差し引き+2となる。混乱状態のユニットへの攻撃で+2だと、通常だと70%の確率で攻撃は成功となり防御側は除去もしくは自軍本営に逃げて行く。だが騎士は自軍本営に敗走する結果(Retired)は、1へクス退却だけで済むのだ。そのためこの場合、騎士を退却ではなく除去するにはサイの目6以上、40%の確率となる。3ユニットで側面からも攻撃して、しかも混乱状態で防御しているのに、騎士強すぎ。BGGかどこかのレビューでこのゲームInfidelの騎士は中世のパンツァーだと書かれていたが、確かにそんな感じ。今回はあんまり活躍していないけど。
 気合を入れてトルコ軍が振ったサイコロは、6。おっしゃ、騎士壊滅。へなちょこ中騎兵でもやるときはやるのだ。


 騎士の壊滅により、十字軍のFPは13に達していた。サイコロを振って出た数を足すと、十字軍の敗走レベルの20を越す可能性がある。そしてそのチェックは自由活性化が終了する度に行われる。これまでは両軍ともサイコロを振っても敗走レベルに達するほどのFPではなかったため、今回が初めてのチェック。そして出た目は…なんと9。FP13と足して22、十字軍の敗走レベルを超えたため、トルコ軍の勝利となった。えええ、こんなにあっさり負けちゃうの?

つづく




(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月11日水曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ③

  このアンティオキアの戦いでは、トルコ軍を率いるケルボガは十字軍をすべて市内からおびき出して一気に叩こうとして攻撃を控えていた。その間に十字軍が素早く攻撃にでてトルコ軍を打ち破ったらしい。

 その轍は踏まない、と、十字軍の態勢がまだ整っていないのを見て取ってトルコ軍が攻勢に出た。トルコ軽弓騎兵部隊に向かっていたユーグ隊(赤)の側面に対して、Duqaq(緑)の重騎兵が機動力を生かして一気に襲い掛かる。
 まだ全軍が出ていない段階で、しかも遠巻きにしていた位置からの攻撃に十字軍は慌てる。こんなに早くトルコ軍が攻勢に出るなんて。増援部隊の出撃を優先していたからユーグ隊(赤)は左側面をさらけ出したままじゃないか。
 そこに騎兵群の突撃。ユーグ隊の弓兵とクロスボウが瞬殺された。まあこうなるよね。さらに重武装の歩兵MAも、重騎兵2部隊の突撃を側面と後方からくらい、混乱状態(Disordered)になって退却した。

 このゲームの白兵戦は10面体ダイスを一つ振って出た目に、防御側の地形や防御ユニットの防御力、それに攻撃側と防御側の兵種の組み合わせでサイの目修正が適用される。さらに側面や後方からの攻撃は有利なサイの目修正がつく。
 MAは防御力に優れ重騎兵が攻撃しても不利なサイの目修正がつくうえ、攻撃されたMAユニットの防御力は-2(マイナスの数値が大きいほど防御が固い)で、正面から攻撃するとなかなか損害が与えられない。だが側面と後方の二方向からの突撃にはさすがに耐えられなかったようだ。

 MAを退却させた重騎兵は継続攻撃(Continued Attack)の戦闘結果が出た。戦闘後前進をしてさらに攻撃できる、というか攻撃しないといけない。だがその正面にはさらにMAがいて重騎兵の攻撃を撃退。重騎兵は混乱状態となった。突撃あるある。
 だが全体としてDuqaq(緑)隊の強襲は成功と言える。


 Duqaqの重騎兵にほかの部隊も続け、 と言いたいところなのだが、トルコ軍は継続活性に失敗。総大将のケルボガの言うことを諸将があまり聞かないという、トルコ軍の本領発揮か。

 重騎兵の攻撃で損害を出したユーグ隊(赤)が反撃。だが槍兵(Pike, PK)2ユニットによる攻撃は跳ね返され、逆に槍兵が混乱状態に。さらに十字軍が誇る最強ユニット、騎士(Knight, KN)による攻撃も効果なしに終わった。接近戦に弱いトルコ軍の中で、重騎兵が例外的に白兵戦でもなかなか強いのである。

 今度は十字軍が継続活性に失敗。トルコ軍のDuqaq隊(緑)が、ユーグ隊(赤)とその左翼を守るゴドフロア隊(青)に突撃する。両隊の槍兵を3ユニット壊滅させるとともに、ユーグ隊(赤)の騎士への包囲攻撃も成功、騎士が壊滅してしまう。さらに継続攻撃で残存の槍兵を混乱状態に。だがMAへの攻撃は跳ね返され重騎兵は混乱して退却した。

 この攻撃でDuqaq隊(緑)はユーグ隊(赤)をほぼ無力化したものの、多くが混乱状態となっており衝力はかなり落ちてしまった。その援護のためにQaradja隊(青)が前進し、突出したDuqaq隊(緑)の右翼をカバーする。

 ここで十字軍のゴドフロア隊(青)がDuqaq隊(緑)に反撃。1ユニットを混乱、退却させ戦闘後前進で1ユニットを包囲する。だがMAと連携しての騎士の突撃は、なんと攻守両者混乱。なんか全然活躍してないぞ、騎士。


 十字軍は最大兵力を擁するボエモンド隊を早く出陣させたいのだが、トルコ軍の攻撃に対応するのに追われてその余裕がない。この戦いの十字軍は増援として出す隊の順番が決まっており、一番強力なボエモンド隊は最後に出さないといけないのである。

つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月9日月曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR②

  このシナリオは十字軍の活性化から始まる。初期配置されているトルコ軍の軽弓騎兵集団は指揮官がいないためほとんど使い物にならないのだが、十字軍にとっては敗走ポイント(Flight Point、以下FP)を稼げるいいカモである。

 Men of Ironシリーズではユニットの除去や敗走によってFPが加算されていくのだが、各陣営に敗走レベル(Flight Level)というものが設定されていて、累積FPと10面体ダイスの目の合計が敗走レベルを超えた側が負けになる。

十字軍の敗走レベルは20,トルコ軍は35で、十字軍が勝つためには多くの損害をトルコ軍に与えないといけない。軽弓騎兵は1ユニットが2FPなのでマップ上の6ユニットを除去するだけで12FPとなる。十字軍としては敵の増援主力が現れる前に、ユーグの部隊(赤)で軽弓騎兵部隊の除去を目指す。

 軽弓騎兵に正面から接敵すると対応射撃(Reaction Fire)で撃たれてしまううえ、歩兵が攻撃しても戦闘前後退で逃げられてしまう。そのため歩兵は接敵せず、まず騎士(KN)を側面から回りこませて攻撃する。

 だが十字軍は増援の活性化に失敗し続ける。このゲームでは1部隊の活性化のあと、自軍の別部隊の活性化を試せるのだが、この活性化の継続に失敗した場合、敵軍には自由活性化が与えられる。自由活性化の場合は活性化チェック無しに任意の部隊を活性化できるため、十字軍は唯一活性化値が3と低いユーグをまず動かし、ついで増援部隊の活性化を試みていたのだが、なかなか成功しない。50%の確率で成功するはずなのに、狭い城門から我先に出陣しようとして大混雑でもおきてんのかな。自由活性化のときにユーグを動かさずに増援部隊を出すことを優先すればよかったのだが、後の祭りである。

 トルコ軍の増援は、登場させる部隊の指揮官ではなく総指揮官のケルボガの活性値3を使わないといけない(なおケルボガのユニット自体はマップに登場しない)。10面体ダイスで0~3(40%)で成功なのだが、十字軍と対照的に次々と成功させていく。

 まずQajadja(青)の部隊の活性化に成功。軽弓騎兵と中騎兵(Medium Cavalry, MC)が中心の部隊だ。快速の一方で接近戦には弱いため、十字軍とは距離を取りながらマップ左側のオープンスペースに展開することを目指す。

 続いてDuqaq(緑)の部隊も登場。これは重騎兵(Heavy Cavalry, HC)のみで構成されている部隊で、トルコ軍の打撃力の中心となる。

 十字軍が増援の活性化に失敗している間に、さらにSoqman(紫)の部隊も登場。こちらもQajadja(青)の部隊同様に軽弓騎兵と中騎兵が中心の部隊だが、指揮官の活性化値が3とやや低く、思うように動かせない可能性が高い。そのためオープンスペースが広がるトルコ軍右翼は活性化値4で騎兵中心のQajadja(青)とDuqaq(緑)の部隊にまかせ、この部隊は左翼を固める。

 十字軍はユーグ隊(赤)に後続部隊が続かないのに、トルコ軍は着々と態勢を整えている。おいおい、トルコ軍は統制が取れていなかったんじゃないのかよ。



 だがその後は十字軍も増援を出すことを最優先。ロレーヌ公ゴドフロア(青)、そして司教アデマール(黒)と出撃する。が、1へクスサイドしかない狭い城門から橋を渡って出てくるため団子状態になるうえ、ほとんどが歩兵なので移動力が低く、部隊を展開して隊列を整えるのに時間がかかる。指揮官の活性化値が十字軍のほうが比較的優れているため、活性化する回数はこっちのほうが多くなるはずだが…。


 ちなみにこの司教アデマールは法王代理として第一回十字軍の精神的指導者だっただけでなく、戦闘指揮官としての才もあったようで、前年のドリレウムの戦いでも活躍している。中世は祈る人、戦う人、耕す人っていう3つの身分に分けられていたってどこかで読んだ気がするけど。まあこの戦いの20年ぐらい後には騎士修道会なんてのができますからね。

つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年5月7日土曜日

少数精鋭の十字軍vs機動力に富むトルコ軍  Antioch 1098 - Infidel, Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ①

 今回プレイしたゲームはMen of Ironシリーズ(GMT)のInfidel。Men of Ironシリーズはデザイナーのリチャード・バーグが亡くなった翌年にInfidelをふくめ3つのゲームがセットになってTri-pack版として売り出されている。The Supremacy of Cavalry in the Crusade Eraとゲームに書かれているように、Infidelは騎兵が戦場を支配していた十字軍時代の戦いを扱っている。

 Infidelにはいくつかシナリオが含まれているが、アンティオキアの戦いを選んでみた。この戦いは11世紀末、現在のトルコとシリア国境近くで起こったもの。エルサレムを目指してヨーロッパをたった十字軍は、セルジューク・トルコ支配下にある主要都市アンティオキアを包囲。食糧不足に苦しみながらも半年以上の攻囲の末に陥落させた。
 その数日後、アンティオキア救援にかけつけたモスールの太守(エミル)のケルボガ(Kerbogha)が大軍でアンティオキアを囲む。やっと攻略した市内に閉じ込められ、食糧が枯渇し脱走兵が続出する十字軍。だがその時、イエス・キリストが十字架にかけられたときにそのわき腹を刺した聖なる槍、いわゆるロンギヌスの槍が、アンティオキア市内で発見される。
 聖槍が現れたことでキリスト教徒たちは感激し大いに士気が上がった。そしてどうやらトルコ軍は内部で統制が取れていないらしい。そう見て取った十字軍の事実上の総司令官、プーリア公ボエモンドは市内から打って出ることを決める…
というのがアンティオキアの戦い。重武装で少数精鋭の十字軍に対し、機動力と数で勝るトルコ軍という対照的な軍隊のぶつかりあいである。

 ユニットは部隊(Battle)という単位でまとめられており、部隊ごとに活性化して移動、射撃、白兵戦(Shock)を行う。活性化は基本的に10面体ダイスを振って指揮官の活性化値以下を出せば成功する。
 そのため指揮官の活性化値が重要なのだが、十字軍は4人中3人が活性化値4で一人だけ3、対してトルコ軍は5人中2人だけが4,残りの指揮官と、援軍を登場させるために活性化値を使う総指揮官のケルボガは3となっている。
 積極的な十字軍と統制の取れていないトルコ軍をこういう形であらわしているということか。『アラブが見た十字軍』という本には、「ムスリム軍なるものは一体化した勢力ではさらさらなく、往々にして利害が相反する諸君主の寄せ集めだ」なんて書かれているし。


 初期配置(写真上)では両軍とも主力はまだマップ上に現れていない。十字軍はユーグ(Hugh Capet, Count of Vermandois)の部隊が出撃済み。ちなみにこのユーグ、フランス王フィリップ1世の弟なのだが、当時のフランス王朝であるカペー朝の創設者ユーグ・カペーと同名である。ヨーロッパの王族って同じ名前が多くて本当に困る。さらにどうでもいいけど、兄のフィリップ1世は好色王と呼ばれる。そんなあだ名がつけられる王様って…。

 トルコ軍の初期配置としては、川の近くに軽弓騎兵の集団がいるが、実際の戦闘ではあっという間に逃げてしまったらしい。
 マップ下端がアンティオキアの城壁で、十字軍は城壁左端の門から現れる。トルコ軍主力が登場するのはマップ右端上部。
 両軍の増援は下の写真のとおり。各ユニットに入っている横線の色で所属部隊が識別される。トルコ軍は数は多いのだけれども、槍兵(Pike, PK)は弱くてほとんどあてにならない。指揮官の活性化値が4のQaradja(青)とDuqaq(緑)の部隊が攻撃の中心となるだろう。
 トルコ軍は増援を登場させるためには総指揮官のケルボガの活性化値3を使わないといけない。これがまた、思うように登場させられなくて苦労するんだな。ケルボガの言うことを聞かない各指揮官って感じが出ていいんだけど。

 一方、十字軍は数は少ないもののMen-at-Arms(MA)という重装歩兵に加えて、かなり強力な騎士(Knight, KN)がいる。だが歩兵主体で、機動力に勝るトルコ軍にどう対処するかが問題になる。

つづく

(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...