2023年6月19日月曜日

ワーテルローの日に、デザイナーが語る「親衛隊、前進!」

  昨日、6月18日はヨーロッパの歴史に残るあの日ですよね。6月22日じゃないですよ。6月6日でもないですからね。あれですよ、あれ。ワーテルローの戦いがあった日ですよ。

……って、知ったかぶりをしてしまいましたが、すみません、自分は知らなかったです。そういやボンサイゲームズのブログで「ナポレオン1815」の3人対戦のAARが16日から連日公開されていたのに…。ワーテルロー戦のあった日にあわせていたなんて、全然気が付きませんでした。すみません。

 で、何の気なしに前日の17日にツィッターを眺めていたら、「La Garde Avance!」をデザイナーとプレイするよ、ユーチューブでストリーミングするからね、みたいなツイッターを見かけました。おお、LGAと言ったら、自分はナポレオニック全然知らないのに無謀にもAARを書いたゲームじゃないですか。

 しかも、そのデザイナーは中世の会戦級のAu Fil de l'EpéeシリーズをデザインしたFrédéric Bey氏。こりゃ話を聞かなくては、と思ったんですけど、生配信のある昨日は仕事の関係で早く寝ないといけなかったんですよね。

 時差的にライブで見れないのは残念、とツィッターでつぶやいたら、この配信をしているFrédéric Servalという方が、「Beyさんに質問があったら聞いておくよ」と言ってくれました。ラッキー。で、Au Fil de l'Epéeシリーズの新作を出す予定があるかどうか知りたいです、と応えておいたんですけどね。おいおい、ワーテルロー戦の記念日に老親衛隊の戦いのゲームについての生配信だぜ。中世のゲームについて聞くかよ…と自分でツッコミを入れてしまったんですが、聞いておくよ!と返事をくれたんですよ。Servalさん、いい人だわー。

 で、ちょっとワクワクしながら今日ユーチューブで見てみたら、本当に聞いてくれていました。うほー、嬉しいー。まあ、Bey先生の返事は、その、やっぱり中世のゲームは売上的に厳しいという現実をわからせるようなものでしたけどね。とほほ。でも「Men of Iron」が再版されるしね、あきらめないでおくことにします。それはさておき、デザイナーさん本人の言葉で回答をもらえるのはうれしいですよね。


 で、メインの「La Garde Avance!」についてなんですが、Vassalを使って「La Garde Avance!」について説明しながらプレイの例を見せてくれました。約2時間の動画で結構長かったんですけど、Jours de Gloireシリーズの過去のゲームをまとめて出版する予定は、という質問には、来年の前半に出す予定だって言っていましたね。それに、親衛隊が出る新しいゲームも出すつもりとか。これは楽しみ。Jours de Gloireは息の長いシリーズだから、プレイしたことある、とか、聞いたことある、という人もいるんじゃないでしょうかね。


というわけで、Frédéric Bey先生の動画、よければ見てみてください。



 BANZAIマガジン第14号「続・八甲田山」のデザイナー和栗南華氏もJours de Gloireシリーズはお好きなようで、BANZAI15号では「La Garde Avance!」のレビューも書いているぐらいだから、Frédéric Bey先生がLGAについて語る、なんてのはツボなんじゃないかなー、と思うのですが。

 しかしiOGMさんを除いてみたら、LGAが付いているVae Victis 161号はまだ在庫があるじゃないですか。BANZAIマガジン15号のレビューを読まれた方は買いですよ~。


2023年6月11日日曜日

スペインが熱い! 無料・デジタルのウォーゲーム誌「CLIPEADOS」創刊

  スペインのウォーゲーム界、最近元気ですよね。あの元気さは謎ですよねって、日本のウォーゲーム関係者の方が以前言ってたんですけど、ほんと、盛り上がっています。SNAFUやNAC Wargamesといったパブリッシャーが意欲的にゲームを出しているだけじゃなく、ウォーゲーマーたちが活発に活動している感じなんですよね。つい先日はマドリード近郊でVassal Forever 2023というコンベンションが開かれたし、今年11月にスペイン北東部の街サラゴサで開かれるBatalladores2023なんか、申込開始から約一週間ですでに270人の参加申込があって、あと残り参加枠わずか5なんてアナウンスがありました。半年先のイベントでしょ。スペインのウォーゲーマーはすげーなー、と。

 しかも、多くのウォーゲームのコンベンションが開催されているんですけど、それがマドリードとか特定の大都市だけじゃなくて、国内のあちこちで開かれている印象なんですよね。

 今年の1月には南西部、ポルトガル近くのバダホスでBellota Conというのがあったし、3月にはバスク地方のビルバオでCinturon de Hierroっていうイベントがあって、「300」のトーナメントも行われたみたい。そこにこのゲームのデザイナー御大がリモートで降臨、とかあると面白かったんじゃないかなーと夢想してしまいます。ちなみにCinturon de Hierro(直訳すると鉄の帯)っていうのはスペイン内戦中にビルバオの周囲に構築された防御線のことのようです。あと、9月末にはスペイン南端部のカディスでPax Lucidaっていうイベントが開かれます。

(お隣のイタリアでは9月中旬にVenCon 2023というのがヴェネツィアであります。VenConは今年で15回目らしい。フライヤーみたいなものには、六文銭に赤備えの真田幸村?と、「ラスト・サムライ」の謙さんがあしらわれています。)

 サラゴサで開かれるBatalladores2023を主宰しているウォーゲームクラブClub Batalladorは、この5月に新しいクラブハウスをオープンしています。うらやましい…。


 と、元気いっぱいのスペインのウォーゲーム界なんですが、つい先日、「CLIPEADOS」というウォーゲーム誌が創刊されました。無料のデジタル誌なので早速ダウンロードして読んでみました。



 PDF形式で35ページ、巻頭にはVUCA SimulationsのPatrick Gebhardt氏のインタビュー。他には、HEXASIMのEagles of Franceシリーズについて3人がエッセイを書いていたほか、「Twilight Struggle」の中国人ゲーマーの戦略紹介、GMT「Almoravid」のファーストインプレッションなどが載っています。 あと、NAC Wargamesの新作ナポレオニック「Valls 1809」のMarc Aliaga氏が書いたデザイナーズノートもありました。

 VUCA SimulationsのPatrick Gebhardt氏のインタビューは、「Donnerschlag」や「The Chase of the Bismarck」といったGebhardt氏自身がデザインしたゲームについて話しています。でも個人的に面白かったのは、ツイッターでもつぶやいたけど、

価格を下げるために製品の質を落とすことはしない。デザイナーにはコンポーネントの制限をかけないということをはっきりと言っている。自分たちのゲームには常にベストのものを求めているんだ

と言っているころ。Gebhardt氏、熱いですなー。

 あと、ウォーゲームがもっと知られるためにはビジュアル的にアピールするゲームが鍵となる、とも言っています。世界中から新しいゲーマーをひきつけている理由の一つが、グラフィック要素だと考えているそうです。

 「CLIPEADOS」はこちらからダウンロードできます。

https://mesadeguerra.com/clipeados-mesa-de-guerra-magazine/

全部スペイン語で書かれていますが、スペイン語が読めなくても大丈夫。Google翻訳やらDeepLやらAIやらがサクッと自然な日本語に訳してくれますよ。知らんけど。ちなみに、Clipaedosというのはカウンターなどが切り離された、という意味でも使われる言葉で、みんなカウンター切ってプレイしようぜ、ということなんでしょうかね。


 「CLIPEADOS」を出したSergio Ortega氏はMesa de Guerra(直訳すると戦争のテーブル)というサイトを運営していて、ウォーゲームの情報やインタビューなどを載せている。AlmoravidのデザイナーVolko Ruhnkeのインタビューが個人的には目を引きました。あと、Ortega氏は「Twilight Struggle」がお好きのようですね。


 この「CLIPEADOS」、ツィッターでは歓迎するツイートが結構あったんですけど、似たような企画で2号しか続かなかったものがあるからうまくいくといいね、なんてちょっと不吉なコメントもありました。でも、何事も始めることが大切ですよね。自分もウォーゲーマーの一人として、これからもウォーゲーム界が盛り上がっていってほしいと思います。

2023年6月8日木曜日

『ウクライナに対する戦争―その背景、経緯、影響』

  いまさらですがウクライナの戦争のことを全然知らないのはまずい、コンパクトにまとまった本はないかな、と思って探していたんですけど、みつけたのがこの本、『Der Krieg gegen die Ukraine』。直訳すると『ウクライナに対する戦争』となるのかな。出たのは2022年10月ですけど書き終えたのはロシアのウクライナ侵攻の5カ月後って書いているから、去年の7月末に脱稿したってことなんでしょう。そのため、最新の情報は当たり前だけど載っていません。

 というか、副題みたいなものとして「Hintergründe, Ereignisse, Folgen」って書いてあるけど、Hintergründe(背景)がこの本の約半分を占めているんですよね。しかも戦争の背景として2022年の侵攻の直近のことよりも、1991年のウクライナ独立以降の約30年が主に書かれています。なので、私のような知識のない人間には今読んでも役に立つかなと思いました。本文も120ページほどしかなくてちょうど日本の新書ぐらいの分量だから読みやすいし。

 戦争の背景について書かれた部分が半分を占めるだけでなく、タイトルにもなっている「Der Krieg gengen die Ukraine」という言葉に筆者は2014年のクリミア併合とその後に続いたドンバス地域での紛争も含めているので、2022年2月からのロシアの侵攻そのものについての説明は結構少なめ。なので、去年の2月からの戦況の変化を知りたい、といった人にはこの本は向いていないと思います。それに、筆者はドイツのベルリン・フンボルト大学の教授で東欧問題の研究所の所長(Direktorin)だそうなんですけど、比較政治学が専門だからか、この本は軍事色は薄いです。まあ、社会的および政治的力学に重点を置いたって序文に書いていますからね。

 と、こんな風に書くと面白くなかったように聞こえますが全然そんなことなかったです。結構忙しい時期で隙間時間しか読むのに使えなかったんですけど、勉強になることが多くてどんどん読み進めてしまい、仕事するふりしながら(←おい)こそこそっと辞書を引きつつ1週間弱で読み終わってしまいました。



 筆者は、この戦争においてプーチンは明らかに重大な責任を負っているけれど彼個人だけの問題ではないという趣旨のことを述べたうえで、戦争が起こった背景にある主要な要素を7つあげています。その中でもロシアの専制化とウクライナの民主化・西欧への接近が重要だと筆者は考えているようですが、個人的に興味深かったのが「国家が中心となったウクライナのアイデンティティの強化(die Stärkung einer staatszentrierten ukrainishen Idetität)」というもの。民族、言語、地域、社会などによるアイデンティティよりも包括的なウクライナ市民としてのそれの強化が様々な調査によってあらわれており、特に2014年のマイダン革命以降は加速化しているそうです。ロシア語を母語とするゼレンスキーが大統領に当選したっていうことからもこのことはうかがえるそうですね。

 あと、世論調査を根拠にウクライナ人の意識を説明しているのが結構勉強になったかな。それと、クリミア・タタール人についての言及も結構あって、個人的には好感が持てました。


 この本のドイツでのレビューをちょっと見てみたらおおむね好評っぽいです。でもなかには、なんでこんな戦争を起こしたのかというプーチンの動機をシンプルに知りたいという人には向いていない、なんていうコメントもあったけど、まあそのとおりです。でも今の段階でプーチンの動機をこれだって提示するのはむずかしいんじゃないかな…。

 ちなみにこの本の筆者は、今年の9月に『Russia's War against Ukraine』っていう英語の本を出すらしいけど、もしかして『Der Krieg gegen die Ukraine』の英訳本なのかな。


 ところで話が全然変わりますが、先日「ヴィンランド・サガ」に関するウェビナーに参加していたら、作者がなんでミクラガルド編を描かなかったかについてちょこっと説明してくれていました。トルフィンたちが一角獣の角を売るためにミクラガルド(コンスタンティノープル)まで行って帰ってくる過程は、ヨムスボルグ以降はばっさりとはしょられていてビザンツ好きとしてはなんと言いますか悔しい思いをしていたんですよね。

 「ヴィンランド・サガ」の作者によると、キエフ経由でミクラガルドまで行く行程を描くために取材旅行を2014年に計画していたら、マレーシア航空の撃墜事件があっていけなくなったそうです。そうか、ウクライナ情勢は「ヴィンランド・サガ」にも影響を与えていたのか、マジでプーチンやめてくれよ…って思いました。いや、漫画だけでなく多くの人の生活に多大な影響を何年にもわたって及ぼしているわけですから、早く終わってほしいと切に願います。



2023年6月2日金曜日

将門最後の戦い(武士ライフ 第肆號)AAR ④

 -第6ターン

 以降のターンは討伐方が主導権を握る。追い風を受けて反撃である。マップ左方で包囲されていた将門方が射撃で壊滅した。

 だが将門方も引かない。このゲームでは白兵戦はマストアタックであり、主導権側は隣接する敵ユニットをすべて攻撃しないといけない。非主導権側は白兵戦で攻撃ができないのだが、移動して敵に隣接し不利な白兵戦を強制することができる。いわば非主導権側による「攻撃」が可能なのだ。

 将門方は前進してきた討伐方を迎え撃つ。マップ左方では射撃で混乱状態にした敵ユニットに文屋好立が攻撃を強制して壊滅。また移動フェイズで包囲した従類ユニットを将門が壊滅させた。さらには文屋の隣のユニットも討伐方の+2攻撃を撃退。将門方は主導権を失ったものの、まだ戦いの流れは討伐方に移っていない。


-第7ターン

 平貞盛と藤原秀郷が将門に弓矢の雨を降らせる。合計射撃力4だと、2分の1の確率で将門は敗走状態もしくは混乱状態になる。そうなれば白兵戦をしかけて将門を討ち取るのだ、と目論む討伐方だったが、将門直属の兵たちの士気は高く1へクス後退したのみに終わった。

 

 平将為を討ち取るなど第5ターンからの反撃で敵に損害を与えた討伐方だが、ゲーム開始時からの将門方の猛攻で大量出血が続き、すでに数的優勢を失っている。いまだ強力な打撃力を有する将門方の動きを封じるため、討伐方は1ユニットのみの移動で移動フェイズを終了させた。先述のようにこのゲームでは主導権プレイヤーは好きなタイミングで移動フェイズを終わらせることができるため、主導権を失った将門方は思うように兵が動かせないのだ。

 

 続く白兵戦で混乱状態の敵ユニットを蹴散らした平貞盛と藤原為憲が、戦闘後前進をして将門を射程にとらえた。これで次ターンも再び集中射撃が行える。



-第8ターン

 最終ターンである。平貞盛と藤原為憲による将門への射撃はまたも後退に終わった。討伐方はこのターンも将門方の動きを封じるため、平貞盛のみを移動させすぐに白兵戦に移行する。大将である平貞盛はみずから陣頭に立って切り込み、敵の混乱状態のユニットを壊滅させた。


 そして戦いは終了。将門方の得点は23点、討伐方は36点で討伐方の勝利に終わった。


 戦場が狭い割にユニット数が多くさらには強ZOCなので、機動の余地がなく団子状態になっての叩き合いかな、と最初は思っていたんですが、なかなかどうして。お互いに1ユニットずつ移動させるため相手の動きの読みあいになるうえ、戦力不明状態の伴類ユニットと、1ターンに2回射撃が行えることが偶然性を増して計算通りにいかないようになっています。

 将門方はゲーム前半、敵をどんどんと蹴散らしていく快感を味わえますし、討伐方は風向きが変わるまでなんとか耐えて、主導権を握ったら「狙うは将門の首!」と猛反撃に出ることも可能なんじゃないかな。

 それに何と言っても税込みで二千円いかないというのがありがたいです。平安時代の戦いをシミュレートしたゲームはあんまりないので、ご興味ある方は気軽に試せるんじゃないでしょうか。

2023年5月28日日曜日

将門最後の戦い(武士ライフ 第肆號)AAR ③

 -第4ターン

 このターンではサイの目5-6で風向きが変わり主導権が移る可能性がある。だがサイの目は3。風向きはそのままで、将門方が主導権を保持した。当然、このターンも全力で攻撃するのみである。

 将門方は包囲していた2ユニットを射撃で壊滅。包囲されているユニットが射撃で後退の結果を受けた場合、敵ZOCには退却できず壊滅するのだ。

 つづく白兵戦では討伐方も一部の兵が奮戦し敵を退けたものの、多くは将門方の激しい攻撃に耐えられずあるいは退却、あるいは敗走していった。


 これまでマップ右方では討伐方の遅滞戦術のせいで将門軍の前進がままならなかったが、戦闘後前進で平将為が切り込み、ついに討伐方の武将二人、平貞盛と藤原為憲を補足した。またもう一人の武将藤原秀郷も将門軍に接敵されてしまっている。

 マップ右方では、討伐方は1ユニットが敵中に孤立、3ユニットが敗走しており、武将を支援するユニットが枯渇してきている。武将を除去すると高い得点を得られるだけに、このままの勢いで敵武将討ち取りを目論む将門方である。


-第5ターン

 このターンはサイの目3-6で南風に変わる。風向きチェックのサイの目は4で、ついに主導権が討伐方に移った。これで討伐方の射程は風下方向、つまり将門方が攻めてきた方向に対して2へクスに伸びる。逆に将門方は隣接へクスにしか射撃できないため、討伐方はアウトレンジで射撃ができるのだ。さらに主導権側の射撃が先に解決されるため、討伐方は射撃戦でかなり有利に立つことになる。

 このターンに主導権が移ることを期待して、討伐方は前ターンに罠をしかけておいた。将門方は多くの討伐方ユニットを壊滅させているものの、討伐方の遅滞戦術のせいで武将は補足できていない。そのため戦闘後前進を利用して武将に向かって急進してくるだろう。そう読んだ討伐方は、左翼に位置していた藤原秀郷を他の二武将のいる右方にシフトさせ、突出してきた敵に対してこのターンの遠戦フェーズで三人の武将の集中射撃を浴びせられるように布陣しておいたのだ。

 将門方は、これまでのマップ左方での文屋好立の快進撃に刺激されたか、遅れている右方で早く敵武将を補足しようと前ターンの白兵戦フェーズで武将の平将為を突出させていた。好機! とばかりに討伐方の武将3人が一斉に弓矢を放つ。たまらず将為は敗走状態となった。


 このゲームでは敗走状態になると移動、射撃、攻撃が不可となるだけでなく、白兵戦で攻撃を受けると自動的に除去される。当然、討伐方は大将の平貞盛が将為ユニットを攻撃する。

  俄に降り注ぐ矢に浮足立ちたる兵どもを押しとどむる間もあらばこそ。将為、討伐方が御大将平貞盛によって討ちとられにけり ― 将門記(民明書房版)

 三武将による集中射撃が反撃の嚆矢となった討伐方。獲物を屠るJägerのごとく、進撃の将門方を討つことができるか。対する将門方は、朝廷に弓引くものとされながら、家畜の安寧を捨て死せる餓狼の自由を求めて最後まで抗い続けるか。


つづく

2023年5月23日火曜日

将門最後の戦い(武士ライフ 第肆號)AAR ②

 -第1ターン

 将門の軍勢が風上から討伐方に襲いかかる。全軍一斉に突進、としたいところなのだが、既述のようにこのゲームの移動は、将棋のように各プレイヤーが1ユニットずつ交互に動かすためそうもいかない。一方、討伐方は1ユニットを前進させて将門軍の足止めを狙う。移動中に敵ZOCに侵入すると止まらないといけなく、かつ敵ZOCにいるユニットは移動では離脱できない。さらに湿地へクスでは移動を終了しないといけないため、地形をうまく活かせば1ユニットだけでも敵の前進をとどめることが、わずかの間だが可能なのだ。

 討伐方は敵前面で自軍ユニットが犠牲になって時間を稼いでいるうちに、武将ユニットをはじめできるだけ多くの兵力を後退させようと試みる。ゲーム後半になれば主導権が移る。それまで兵力を温存するのだ。

 だが主導権プレイヤーは好きな時点で移動フェイズを終了させることができる。当然、将門方としては敵の後退を許すはずがなく、討伐方が3人の武将と2,3のユニットを後退させた時点で移動フェイズを終え白兵戦フェイズとなった。この辺り、少数精鋭の将門方vs大軍を擁するがうまく使いこなせない討伐方、という雰囲気が出ていい。

 白兵戦で敵陣深く切り込んでいく将門方。戦闘の結果、防御側が壊滅もしくは後退した場合、攻撃側は敵ZOCを無視して2へクス戦闘後前進できる。そのため、密集している敵に対して「戦闘後前進で敵を包囲→攻撃して壊滅」という作戦級によくある攻撃が行えるのだ。



-第2ターン

 将門方の猛烈な攻撃が続く。左翼(マップ右方)を率いる将門は敵を蹴散らし石井営所に突入した。

 マップ中央にある石井営所は将門の本拠で、この戦いの前に討伐方によって焼かれていたらしい。それを反映してか、白兵戦での防御効果はなく射撃を受けた場合にサイの目が1有利になるのみだ。

 将門方右翼(マップ左方)では武将の文屋好立が陣頭に立って奮戦。数的不利をものともせず敵陣深く突進していった。

 このゲームでは白兵戦フェーズの前に両軍射撃ができる。射撃力1でも3分の1の確率で敵を退却させられるため、突進してくる将門の軍勢を必死の射撃で何とか撃退して白兵戦に持ち込ませない、というパターンもあり得る。だが戦力未確認状態で配置される伴類16ユニットのうち6ユニットが射撃力を持たないため(そのうち4ユニットは戦闘力もゼロで戦力確認時点で即座に除去)、討伐方としては計画的な防御がままならないようになっている。


-第3ターン

 マップ右方には、営所に突入した将門ともう一人の武将、平将為がいる。討伐方としては、この将門方主力が自軍武将めがけて突進してくることは極力避けたい。強力な敵を足止めするため、討伐方は戦闘力1の弱小ユニットを営所に送りこむ。当然白兵戦で瞬殺されるだろうが、敵主力の前進を少しの間でも遅らせるのだ。

 その間、マップ左方では文屋好立率いる将門方右翼がさらに突進、討伐方1ユニットを包囲した。


 石井営所では討伐方の足止めユニットが壊滅するも、その犠牲のおかげで討伐方の目論見どおり将門の前進が遅れ気味となった。

 だがマップ左方では文屋好立がまたも白兵戦で敵2ユニットを蹴散らし敵陣深くに切り込んでいく。さらに第一ターンからマップ右方の川の対岸を迂回してきた将門方1ユニットが討伐方の右翼を攻撃し始めた。


 第1ターンから続く将門方の強力な攻撃で討伐方はすでに兵力の半数を失った。一方、将門方はいまだ無傷。このままの勢いで主導権が移る前に敵武将を補足したいところだ。


つづく

2023年5月18日木曜日

将門最後の戦い(武士ライフ 第肆號)AAR ①

 平将門、というと日本史の授業で名前を聞いた人も多いはず。10世紀、平安時代の半ばに関東で反乱を起こすが鎮圧された武将である。源氏物語が成立する数十年前のこと、京の都では雅な貴族文化が花開きはじめ、土佐日記や伊勢物語が書かれたと言われているが、遠く坂東の地では武士が勃興しつつあった……という説明で、あってる?

 日本史に疎い自分でも知っているぐらいのメジャーな人物なんだけれども、将門が出てくるゲームは少ないらしい。昔「シミュレーター」誌の付録に将門の戦いのゲームがあったけど、他には国際通信社から出ている「将門記~承平天慶坂東大乱~」という戦略級のゲームぐらいしか見つからない。

 今回プレイする「将門最後の戦い」は、そんな将門が活躍する貴重なゲーム。「武士ライフ」第肆號の付録ゲームで、タイトルどおり将門の最後の戦いをシミュレートしている。(ちなみに「第肆號」は「だいよんごう」と読むようです。教養のない自分には??でした)

 追討軍に敗れ、本拠の石井営所まで焼かれた将門に残る兵はわずか四百。だが将門とその側近の兵たちの士気は衰えない。巧妙な機動で敵の風上に布陣した将門は、10倍の兵を擁する追討軍に対して攻撃をしかける…という燃えるシチュエーションだ。

 ゲームは将門方と討伐方が相対するのだが、将門が討ち取られたらその時点で討伐方の勝利、逆に討伐方の大将平貞盛ともう一人の武将が討ち取られたら将門方の勝利となる。狙うは敵の大将の首! という感じ。

 もしこれらの条件が満たされない場合、ゲームは8ターンまで続き両者の勝利得点を比べて多いほうの勝利となる。勝利得点は除去した敵ユニットの戦闘力と同じ1~2点が得られるが、武将ユニットは15もしくは20点とかなり高い。やはり「雑魚はほおっておけ! 狙うは敵の大将の首!」という感じでプレイしてしまいたくなる。


 各ターンは主に遠戦、移動、近接戦、白兵戦のフェーズからなり、移動フェーズでは将棋のように各プレイヤーが1ユニットずつ交互に動かす。また遠戦と近接戦の両フェーズは射撃フェーズで、各ユニットとも1ターンに二回射撃の機会があることになる。

 なおこの時代の坂東では騎馬弓兵が主戦力だったようで、そういえば将門の時代から数十年後の更級日記にも、武蔵の国のところで「馬に乗りて弓もたる」なんて表現が出てくる。


 このゲームの特徴として主導権がある。主導権プレイヤーは先に射撃が行えるうえ風下方向には射程が長く、さらに移動フェーズを好きなタイミングで終了させられる。また白兵戦による攻撃も主導権プレイヤーしか行えない(ただしマストアタック)うえ、風下方向への攻撃には有利に2コラムシフトが得られる。要は、主導権プレイヤーがかなり有利なはずだ。

 風上から攻撃した将門方がゲーム前半は主導権を握るが、後半では風向きが変わり討伐方に主導権が移る。追い風を背に将門軍が討伐方の大軍を蹴散らしていくが、そのうち討伐方の反撃が始まる、というのがたいていのプレイの流れになると思う。

 討伐方は将門方の2倍半以上のユニットがあるものの、その半数以上は「伴類」という戦力未確認ユニット。将門方ユニットと隣接した時点で表を向けるのだが、伴類の4分の1は射撃力無しかつ戦闘力ゼロという、表にされた時点で即座に除去されるユニットだ。討伐方としては大軍を擁するものの当てにならない兵を使って将門方の猛攻をしのがないといけない。 


 両軍とも3つの武将ユニットをもつが、将門は射撃力3、戦闘力5と最強だ。このゲームではスタック禁止、白兵戦は戦力差による解決なので、主導権による2コラムシフトと併せると将門は凶悪なまでに強い(なお、武将以外のユニットの戦闘力はゼロから2)。一方の討伐方は、大将の平貞盛よりも史実で将門を討ち取ったとされる藤原秀郷のほうが戦闘力が高くなっている。


 上記武将たちとは別に、将門方には古志賀谷太郎というオプションユニットがある。将門と同等のレーティングを誇るが、この人物については自分は全然知らない。ユニットに描かれているのがドット絵っぽいシルエットで、ファミコンの時代から時空を超えてやってきたのかと思ってしまったけど、もしかして実在の人物なんですかね。

 まあとにかく、古志賀谷太郎殿には今回はご遠慮いただいてプレイしてみた。


(なおすでに英語でAARを書いているけど、戦いの推移はこの日本語版AARも同じなので、英語版を読んだ人はあんまり期待しないでね。

それと、英語版でも断っておきましたが、このゲームはBGGでは"Masakado's Last Battle"で登録されていますが、"Masakado's Last Stand"のほうが悲壮感というか劇的な雰囲気が出ると思ってそうしました。越谷党の棟梁の方からは「ご自由に」とのお言葉をいただいています。ありがたや)

つづく

*5/19追記:古志賀谷太郎について、越谷党の棟梁から

「古志賀谷(越谷)太郎」は武蔵七党の一つ「野与党」一族に居たと言われている人物

と教えていただきました。ありがとうございます。

ライプツィヒの戦いについて手軽にまとまった本を読むならー『ライプツィヒにおける諸国民の戦い』

  1813年10月18日の朝5時ごろ、アウグスト・フォン・グナイゼナウは妻に手紙をしたためていた。  「世界の歴史の中でこれまでほとんど起こらなかったような戦いをむかえる朝に、これを書いている。我々はフランス皇帝を完全に包囲した。この戦いはヨーロッパの運命を決定づけるだろう」 ...