2022年6月29日水曜日

血まみれの野に散ったランカスター Tewkesbury 1471 - Blood & Roses (GMT) AAR ③

  ランカスター軍のサマセット隊は特別ルールを利用して連続して活性化していたが、2度目の継続活性に失敗。一度失敗するともうこの特別ルールは適用されなくなるのだ。もう一回成功していればリチャード隊はかなり苦しくなったはずなのに。


 このゲームのマップには含まれていないが、テュークスベリーの戦場ではマップ下方面にあたるところに森があって、事前にヨーク軍のエドワード四世は200騎の騎兵を潜ませていた。実際の戦いではサマセット公の側面攻撃でエドワードは苦境に陥ったが、この伏兵がサマセット公の部隊を背後から奇襲、さらにリチャードの部隊も加わってサマセットを敗走させたらしい。

 このゲームでも騎兵の待ち伏せルール(Ambush)があり、ヨーク軍は自由活性化を使って騎兵(Cavalry, Cav)1ユニットをマップ下端から登場させられる。騎兵は登場時のみ移動力が2倍となり、最初の移動終了時に接敵している敵ユニットは混乱状態(Disorderd)になり、すでに混乱状態だと敗走(Retire)する、という奇襲効果がある。


 敵のサマセット隊がリチャードの側面から後方に回りこみそうになったのを見て、ヨーク軍は騎兵を投入。思いもよらない伏兵の出現にサマセット隊は混乱に陥る。いや、そりゃ騎兵が出てくることぐらいランカスター軍プレイヤーも知っていたけど、そのリスクを冒してでも攻勢に出たほうがいいと判断したわけです。

 続けてリチャードがサマセット隊に反撃。後方に回り込んだ長弓兵への攻撃ではサイの目1が出て退却させるだけに終わったが、サマセット隊本体には損害を与える。さらにヨーク軍はエドワード隊も活性化。突出している敵左翼(マップ上方)のデヴォン隊に射撃を加え兵力を削っていく。


 騎兵の奇襲にリチャード・エドワード兄弟のワンツーパンチと殴られっぱなしのランカスター軍だったが、やっと自由活性を得た。中央の王太子エドワード隊が前進、サマセット隊の支援に回る。なお、王太子エドワードは戦場経験の少なさから部隊の指揮は実質的にウェンロック卿がとっていた。そのためここでもウェンロック隊と呼ぶことにする。

 ウェンロック隊が援護している間に、騎兵の奇襲とリチャードの攻撃で多くが混乱状態となったサマセット隊は自隊の立て直しを図る。包囲されている歩兵(Infantry, Inf)は救出できないが仕方ない。一方、単独でリチャード隊の後方に回り込んでいた長弓兵は、リチャードとスタックしている重装備の歩兵Dismounted Men-at-Arms(DM)を射撃で混乱させた。


 ここでさらにウェンロックが動いてくれれば、サマセット隊は窮地を脱し逆にヨーク軍に対して優位に立てるかもしれない。実際の戦いでは、エドワードの側面に攻撃をかけたサマセットの後にウェンロックは続くことなく傍観していた。サマセット公はこれに激怒、戦いの帰趨が決まって敗走しているときにウェンロックの頭を戦斧で叩き割ったと言われている。

 そもそもこのウェンロックは味方として信用できない人物で、薔薇戦争最初の戦い第一次セント・オールバーンズの戦いではランカスター側だったが、その後ウォリックと親しくなってヨーク派に寝がえり1461年のタウトンの戦いでもヨーク側で戦っている。そのくせウォリックがランカスター側に移った時はヨーク派にとどまってウォリックを妨害。だがさらにその後ランカスター側に寝返った。状況次第でころころと立場を変える、太平記に出てきてもおかしくない感じの人物である。ウェンロックに限らず薔薇戦争では寝返りは結構あったらしいけど。


 「ウェンロックが友軍の窮地を救いに来るわけないじゃない。日和見しておいてヨーク軍が勝ちそうになったら寝返るつもりだよ。ほら、裏切りチェックしてヨーク軍のウェンロックユニットと取り換える?」 とヨーク軍プレイヤーは挑発。

(Blood & Rosesに入っているタウトンの戦いではウェンロックはヨーク側で戦っているので、ヨーク軍にもウェンロックのユニットがある。でもウェンロックの裏切りチェックなんてルールはありません)

それにランカスターの継続活性が続いていたため活性化チェックのサイの目が1不利になるのだ。


 だが、ウェンロックは活性化に成功。ランカスター家の大義のためにサマセット公をお助け申すと、リチャード隊の右翼に攻撃をしかけたのだった。ランカスター軍最大兵力を擁するウェンロック隊はヨーク軍の薄い防御を蹴散らし生垣地帯に突入した。




つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月27日月曜日

血まみれの野に散ったランカスター Tewkesbury 1471 - Blood & Roses (GMT) AAR ②

  Men of Ironシリーズでは基本的に部隊(Battle)ごとに活性化するのだけれど、Blood & Rosesでは全軍活性化(Army Activation)といって自軍のユニットをほぼすべて同時に活性化することができる。

 敵ユニットから4へクス以内には近づけず攻撃もできないという制約はあるのだが、先手であるヨーク軍は全軍活性化で一斉に前進。さらに指揮官の高い活性化値を活用して継続活性でマップ中央の生垣地帯を抑えた。


 ランカスター軍は左翼(マップ上方)のデヴォン伯ジョン・コートニー(John Courtenay, 15th Earl of Devon)の部隊が前進、射撃戦を開始する。だが、後が続かない。ヨーク軍はデヴォン隊に相対しているヘイスティングス男爵ウィリアム・ヘイスティングス(William Hastings, 1st Baron Hastings)、そして中央のエドワード四世の部隊が射撃戦に応じ、両軍ともじわじわと損害が出る。




 Men of Ironシリーズでは弓兵などの射程はMen of Ironでは3へクス、Infidelでは2へクスなのに対し、Blood & Rosesでは6へクスもある。これは1へクスがそれぞれ110ヤード、250ヤード、50ヤードとマップスケールが違うためのようだけれども、Blood & Rosesではさらに砲兵(Artillery, Art)も登場し最大射程が10へクスもある。そのため両軍が離れた位置での射撃戦が起こりやすくなっている。

 ただしこのゲームでの砲兵は威力が弱いうえ、一度射撃をすると移動できなくなって、かなり使い勝手が悪いように感じる。砲自体はヨーロッパでは14世紀から登場しているし、百年戦争やフス戦争でも使用された。テュークスベリーの戦いの約20年前にはウルバンの巨砲がコンスタンティノープル攻略に一役買っている。だが薔薇戦争の時点ではまだまだ信頼性や輸送手段など様々な面で問題があって、15世紀末から始まるイタリア戦争で急速に発展を遂げるそうだ。

 

 生垣地帯をヨーク軍に抑えられたランカスター軍。今のところ射撃戦では互角の戦いを演じているが、敵の長弓兵が防御に適した地形(サイの目-1)に位置しているのに比べ、こちらは身を隠す場所のない平地だ。このままではじわじわと損害に差がついていくだろう。そう判断したランカスター軍は接近戦に持ち込むことに決める。

 ランカスター軍で一番活性化値の高い右翼(マップ下方)のサマセット公エドムンド・ボーフォート(Edmund Beaufort, 4th Duke of Somerset)の率いる部隊がヨーク軍の左翼のリチャード隊に襲い掛かる。Men of Ironシリーズでは基本的に同じ隊が続けて活性化はできないのだけれど、この戦いの特別ルールとしてサマセット公の側面攻撃(Flank Attack)というものがあり、ゲーム中に一回だけサマセット隊は連続して活性化を試みることができるのだ。実際の戦いではサマセットはヨーク軍中央のエドワード四世の部隊の側面に攻撃をかけたそうで、それを再現するものらしい。


 サマセット隊は射撃でリチャード隊前衛の長弓兵を混乱させたのち、白兵戦で壊滅させる。サマセット公の活性化値は4で継続活性の確率は50%だが、サイの目に嫌われることなく側面攻撃ルールでの継続活性に成功。リチャード隊をさらに攻撃し、長弓兵1ユニットが後方に回り込んだ。




 サマセット公エドムンドのボーフォート家はランカスター家の分家で、薔薇戦争ではランカスター派に属していたがヨーク派によって滅ぼされた。エドムンドはテュークスベリーの敗戦で処刑されるが、いとこマーガレットがエドムンド・テューダーと結婚してヘンリー・テューダー、のちのヘンリ-7世が生まれる。

 サマセット公がこの戦いのあとに斧で斬首されるシーンの絵が、Blood & RosesのシナリオブックにあたるBattle Bookにも載っている。この絵↓ですね。

The historical reputation of Edward IV, 1461-1725 - Medievalists.net

 ちなみに左側で王冠をかぶっているのがエドワード四世。なんか漫画っぽくて威厳や強さを感じないな。

 エドワードが持っている盾に描かれているのはイングランド王の紋章で、赤地に三頭の金色のライオンがイングランドの王、青地に金の模様はフランス王を表しているらしい。なんでイングランド王の紋章にフランスのが入ってんのかというと、百年戦争の際にエドワード三世がフランスの王位継承を主張してフランスに喧嘩をふっかけて以降、建前上はイングランド王はフランス王も兼ねている、ということになっていたからだそうだ。あー、ややこしい。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月23日木曜日

血まみれの野に散ったランカスター Tewkesbury 1471 - Blood & Roses (GMT) AAR ①

  SNSの知り合いnyaoさんがMen of Iron Tri-Packを買われて、薔薇戦争のものをプレイしたいとのことだったんだけれど、もしかして「薔薇王の葬列」の影響でWars of the Rosesが世の中的に今は旬? そうだ、そうに違いない......のか? (nyaoさんがあの作品を見られたのかどうかは知らなくて、自分が勝手に薔薇王で盛り上がっているだけです。)

 あの作品の独特の世界観を考えると一般の人がアニメや漫画を見てウォーゲームに流れてくることはまずないだろうけど、ウォーゲーマーの間では薔薇戦争に関する興味がほんのわずかでも高まっていると思いたい。


 ということでMen of Iron Tri-Pack所収の、薔薇戦争のゲームBlood & Rosesのなかからテュークスベリーの戦いをやってみることにした。B&Rに関してはSNSで知り合ったこーちゃさんがルールだけでなくシナリオブックにあたるBattle Bookも訳されていて、計40ページの力作には頭が下がります。

 

 この戦いは約30年続いた薔薇戦争のちょうど真ん中あたりで起こったもので、約三週間前にあったバーネットの戦いに続けてヨーク派が勝ちランカスター派はほとんど壊滅。敗走するランカスター軍が虐殺された野原は「血まみれの牧草地」(Bloody Meadow)と呼ばれる。この勝利でエドワード四世の政権が安定することになったらしい。


 らしい、というのは自分も薔薇戦争のことを最近かじったばかりで、こーちゃさんにお勧めの本を紹介してもらっているのだけれどすみません、まだあんまり読めていません。

 でもほとんど知識がない者としては「薔薇戦争 イングランド絶対王政を生んだ骨肉の内乱」で大要をつかんで、「薔薇戦争新史」でもう少し細かいところが分かるようになった(実際に読んだのは"Lancaster Against York"のほう)。困るのは人名で、爵位と名前が全然一致しない。例えばテュークスベリーの戦いに出てくるサマセット公はエドムンド・ボーフォートだ、なんて言われてもピンとこないというか混乱しまくる。その点、「薔薇戦争新史」は巻末に主要登場人物の一覧があってそこで爵位と名前を確認できるのがありがたい。でも主要登場人物とか言いながらそのリストが20ページにわたっていて、どんだけ多いんだ。加えてこの本には詳細な索引があるので、この人どこで出てきたっけな、と思った時にすぐに見つけられるので重宝する。(ただし自分は和訳のほうは読んでいないので、和訳本で人物リストや索引がどうなっているかは未確認です。すみません)


 で、テュークスベリーである。初期配置では、赤いユニットのランカスター軍と白いユニットのヨーク軍が相対している。兵力的にはややランカスター軍が優勢だが、両軍それぞれ3人いる指揮官の活性化値はマップ上方からランカスター軍が2,3,4でヨーク軍が3,4,4と、ヨーク軍が優位だ。



 このときはまだグロスター公だったリチャードも、兄エドワード四世に従って弱冠18歳ながら左翼の部隊を率いている。

 ところで弱冠って本来は数え歳で二十歳を意味するそうですね。でもリチャードの生年月日から計算してみたら、この戦いのときは数え歳で二十歳じゃないですか。セーフ。でも、じゃあ「弱冠18歳」という表現は間違いになるのかな。


 話がいつもながらズレたが、両軍の間にはマップ中央を縦断するように生垣/灌木(Hedgerow/Brush)が続いている。この生垣/灌木はノルマンディーのボカージュの親戚みたいなものらしくて、防御に適した地形だ。生垣地帯を確保できた側が有利になることは目に見えているが、ゲーム開始時に先に活性化できるヨーク軍が先取する可能性が高い。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月21日火曜日

ソリティアのペデスタル作戦

  BANZAIマガジン最新号の付録ゲームは「マルタ島攻防戦:ペデスタル作戦1942」。ペデスタル作戦ってたしかどこかで聞いたことあるな、と思ってうちにある古いゲームをあさっていたら、ありました。Vae Victis誌69号付録のOpération Pedestal。

 この号の付録ゲームはFéodalitéという9~10世紀のフランスが舞台のものだったんだけど、さらにおまけのような感じでミニゲームのペデスタル作戦がついていた。一人用のゲームで、プレイヤーは枢軸軍を担当しマルタ島への補給船団を攻撃する。ルールは2ページ、ユニット数は約50で、一回プレイするのに30分もあればいい手軽なゲームである。

 ちなみに出版は2006年と16年前になる。そりゃ持っていることを忘れていてもおかしくない。たしか、BANZAIマガジンの「マルタ島攻防戦:ペデスタル作戦1942」のもともとのデザインは2006年のはず。デザイナーズ・ノートには、その年の6月に朝日ソノラマの『マルタ島攻防戦』を入手したのが制作のきっかけと書いてあるので、たまたま同じ年になっただけなんでしょうね。Great minds think alikeってことかな。しかしあのデザイナーズ・ノートは熱いです。


 Vae Victis誌の付録のほうは枢軸軍をプレイするソリティアだからか、連合軍側のカウンターは護送船団を表す1ユニットのみ。しかもサイズも小さい。護送船団には輸送船やタンカーの他、空母、巡洋艦、駆逐艦が含まれるのだけれど、それらの数はマップ左下の白丸を鉛筆で丸で囲んだり消したり、バツをつけたりして管理する。ルールを読んでいるとプレイで準備するものとして鉛筆と消しゴムって書かれていて、最初は何で?って思ってしまいましたよ。

 一方、枢軸軍側のユニットはすべてイラスト付き。こんなにえこひいきしなくても。もちろんオハイオはユニット化されていない。あと、ドイツ軍はルフトヴァッフェが黒十字、潜水艦はクリークスマリーネの旗がついているけど、イタリア軍ユニットは航空機も潜水艦もイタリア王国の国旗がついている。


 初期配置の際、連合軍の護送船団の構成および枢軸軍の兵力はサイの目でランダムに決まる。でも、Luftwaffeとかはそのまんまでもわかるけど、Regina AeronauticaとかSommergibiliとかイタリア語で書かれてもわからんです。WWⅡの地中海戦域が好きな人にとっては雰囲気が出ていいんでしょうけど。まあシンプルなゲームなんで何を意味しているかはすぐに想像はつきますけどね。というか、すぐ横に説明あるけど。

 それとどうでもいいけど、マップ上ではU-Booteとドイツ語なのにルールではU-Boatsと英語で表記しているのは何で? ただし、枢軸軍のユニットはゲーム上は国籍の意味がほとんどなく、航空機と潜水艦の2種類に分けられる。


 勝敗は、枢軸軍がどれだけの艦船を沈めたかによる。輸送船やタンカーは得点が高く、それぞれ巡洋艦の2倍と3倍だ。駆逐艦に至っては沈めても得点にならない。ただし空母は15点と例外的に高い。また、すべてのタンカーを沈めたりするとボーナス得点が得られる。

 ということで枢軸軍としては輸送船やタンカーを狙いたいのだけれど、護送船団と接触できるかどうかのチェックのあと敵の迎撃を受け、さらに攻撃目標もランダムに決まるのでフラストレーションがたまる。しかも一回出撃したユニットは2ターン以上たたないと再び使用可能とならないため、計画的な運用が求められる。


 で、久しぶりにちょこっとやってみました。思うように輸送船団を補足できないうえ、4つの海域に分散して兵力を配置しないといけないし、いざ船団を見つけて迎撃をかいくぐって攻撃しても40%ぐらいの確率でしか損害を与えられないので、攻撃がうまくいかないたびにシャイセ! とかメルダ! とか言うと気分がある意味、盛り上がります。

 途中で連合軍の護衛艦が一部ジブラルタルに戻ったり、囮やスクリーンを連合軍側が使うランダムチットがあったりと、プレイ中にちょっとした変化はある。枢軸軍の初期兵力がサイの目で決まるのに勝利条件には影響しない(使用できる兵力が大きくても小さくても勝利条件は変わらない)というのがゲームとして荒いかな。でもまあ、マイナーテーマのミニミニゲームですっかり忘れていたけどBANZAIマガジンのおかげで久しぶりに日の目を見てよかったです。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月17日金曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-pack (GMT) AAR ⑤

  デュ・ゲクラン隊(青)の攻撃を受けたイングランド軍のパーシー隊(水色)が反撃。混乱状態の重装騎兵を重装歩兵のDM2ユニットが攻撃する。楽勝だぜ成仏しな傭兵ども、と思いきや、No result。さらに別の重装騎兵にDM2ユニットで側面攻撃をしかけたのだが、サイの目ゼロで攻撃側混乱。おいおい、ずっと放置されていてやっと回ってきたチャンスなんだからいいところ見せろよパーシー。


 活性化値が3と比較的低いパーシーを自由活性化で攻撃させた後、活性継続で黒太子隊の態勢を立て直させようとイングランド軍はもくろんでいたのだが、活性継続に失敗。え、やばいんでないの。騎兵集団の攻撃で結構な損害を被っていたのに。黒太子を守っているDMは混乱状態だし、黒太子隊とパーシー隊の間には戦列の隙間が生じているし。不甲斐ないパーシーなんかを自由活性化で動かさずに、黒太子隊を優先していればよかった。


 そんなイングランド軍のミスを見逃さず、カスティーリャ軍のデニア伯の部隊(茶)が黒太子隊に再び襲い掛かる。クロスボウの射撃でイングランド軍DMを敗走させ、さらに最強DMとスタックしている黒太子へ重装騎兵MMが突撃する。前回は踏みとどまったDMだが今回は耐えきれずに壊滅、黒太子がついに討ち死にか?! と思われたが、危ういところで逃げ延びた。

 さらにデュ・ゲクラン隊(青)がパーシー隊(水色)を攻撃。クロスボウで長弓兵を排除してから、重装騎兵がパーシーに突撃。パーシーとスタックしていたDMが壊滅する。だが黒太子同様、パーシーは戦死チェックを生き延びた。


 カスティーリャ軍の連続攻撃を受け、イングランド軍左翼が危うい。このままカスティーリャ軍が押し切り、まさかの黒太子敗北か。だがイングランド軍は動じない。イングランド軍の敗走ポイントFPはいまだに21。敗走レベルの45までかなり余裕がある。なんなら黒太子を見殺しにしても負けそうにない。そんなこと、しませんけどね。一方、出血を顧みない攻撃によってカスティーリャ軍のFPはすでに52に上っており、崩壊目前なのだ。

 イングランド軍はまず最右翼のジャン隊(白)の射撃プラス白兵戦で敵ユニットを着実に壊滅させる。そして黒太子隊が反撃。混乱状態になっていたテージョ隊(赤)の重装騎兵2ユニットを壊滅させた。これによってカスティーリャ軍のFPは60となり、負けが確実となったため投了した。



 敵軍の側面を攻撃という奇襲状態にもかかわらず、慎重に攻めたことがイングランド軍の勝因か。一方、カスティーリャ軍は活性化値の高いデュ・ゲクランを積極的に動かして敵左翼にプレッシャーをかけるとともに、もう少し早い段階で攻勢に出て混戦に持ち込むべきだったか。今回もマップ左方に退避していたエンリケ王の騎兵部隊を投入する前にカスティーリャ軍は負けてしまったし。

 でもね、デュ・ゲクランは確かに優秀だけどユニット数が少ないのでイングランド軍とガチンコ勝負はできないうえ、ほかのカスティーリャ軍の指揮官は活性化値が低いので連携して動くなんて期待できない。まあ、自軍部隊が思うように動いてくれないところがこのシリーズの面白さだとは思います。とりあえず黒太子が戦死しなくてよかったよかった。



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月15日水曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ④

 テージョ隊(赤)の自殺的とも言っていい攻撃で損害を受けた黒太子隊だが、冷静に対処する。16歳でクレシーの戦いを経験し、以来約20年の戦歴を重ねてきているのだ。これぐらいの攻撃でうろたえるはずがなかろうが。


 カスティーリャ軍はテージョ隊に続けとデニア伯の騎兵部隊(茶)を前進させつつ、これまで忘れられていた観のあるデュ・ゲクラン隊(青)を動かす。いや、放置していたわけじゃないんだよデュ・ゲクラン君。君の活性化値5っていうのはうちのやる気のない諸将の中ではピカイチなので、切り札としてとっておいただけだよ。デュ・ゲクラン隊は正面のパーシー隊(青)を攻撃。損害を与える。



 ところでこのトーマス・パーシーだが、どこかで見たことのある名前だと思ったらボスワースの戦いのノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーと同じパーシー家じゃないですか。薔薇戦争を終結させた1485年のボスワースの戦いで、ヘンリー・パーシーはリチャード3世の側にいながら動かなかったのだが、一族の日和見行為を天国のトーマスはどういう風に見ていたんだろう。ランカスターとヨークどちらが王座を確保するかわからない状況では、貴族が生き残るためには当然のこと、とでも思っただろうか。というかこの時代、多くの諸侯にとってはお家大事で、王に忠実に仕えるなんて二の次だったんでしょうな。何せトーマス・パーシー自身がナヘラの戦いの三十数年後に兄弟や甥と一緒にイングランド王ヘンリー4世に対して反乱を起こしているし。


 デュ・ゲクラン隊に続いてその右隣のデニア伯の騎兵部隊(茶)が黒太子隊に攻撃をしかける。今回もイングランド軍の長弓兵によって次々と損害を受けていく投槍騎兵。8ユニットのうち半数が壊滅したが、黒太子隊の長弓兵1ユニットが壊滅。残り1ユニットも混乱状態になった。さらには、黒太子とスタックしている重装歩兵DMは最強の防御力を誇る精鋭なのだが、投槍騎兵の波状攻撃で混乱状態に。

よくやった投槍騎兵ども、お前らの犠牲は無駄にはしない、と重装騎兵が突撃。目指すは黒太子の首だ!   だが最強DMが奮戦、踏みとどまった。



 カスティーリャ軍は活性継続をしていたためさらに活性継続は難しい、と思いきや、ここでデュ・ゲクランの活性化値の高さが生きる。ゲクラン隊(青)が再び活性化、正面のパーシー隊(水色)の長弓兵を1ユニット壊滅させる。もっとデュ・ゲクラン隊に兵力があればイングランド軍にひと泡ふかせることができるはずなんだが…。

 デュ・ゲクランは小説『双頭の鷲』の主人公。低い出自で、「鎧を着た豚」と呼ばれたこともあったが、その軍事的能力が評価されフランス王軍の司令官にまでのし上がっている。このナヘラの戦いではイングランド軍の捕虜になっており、のちに身代金と引き換えに解放されている。エンリケがデュ・ゲクランの助言を聞いてナヘラでの黒太子との決戦を避けていれば、捕虜になんかならなくて済んだだろうにね。まあデュ・ゲクランはエンリケを支援しているフランスからの援軍、というか傭兵隊の指揮官という立場だから、カスティーリャ王であるエンリケの考えのほうが優先されざるを得なかったんだろうけれど。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月13日月曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ③

  ゴメス隊(紫)の右(マップ下方向)にいたエンリケの騎兵部隊(緑)を後退させたカスティーリャ軍は、そこにできたスペースにサンチョ(Sancho Alfonso)の歩兵部隊(黒)を前進させる。サンチョ隊は数は多いので、ゴメス隊の歩兵のロスをカバーしイングランド軍と殴り合いに持ち込むことをもくろむ。

 また、ほとんど騎兵で構成されているデニア伯アルフォンソ(Alfonso of Aragón and Foix, Count of Denia)の部隊(茶)が右翼に展開。うまくテージョ隊(赤)やゲクラン隊(青)と連携して、敵左翼の黒太子隊を攻撃できれば。


 一方イングランド軍は右翼のジャン隊(白)の長弓兵で着実にゴメス隊(紫)に損害を与えていく。ジャン隊に隣接するチャンドス隊(青)がそれに連携して前進してくれればいいのだが、継続活性に失敗し続ける。

 チャンドスは鉄人の異名を持ち、クレシーやポワティエなど戦場の経験も豊富なのに、動いてくれないとジャン隊がそのうち孤立してしまう。お願い動いて鉄人チャンドス、というイングランド軍の思いが通じたのか、やっと継続活性に成功。チャンドス隊が前進、ジャン隊の左翼をカバーする。

 また、カスティーリャ軍の騎兵集団がマップ下方に回り込んでいるのを見て、イングランド軍最左翼に位置する黒太子は防御態勢に入った。



 前進してきたチャンドス隊にカスティーリャ軍のサンチョ隊(黒)が攻撃をしかける。サンチョ隊の槍兵はイングランド軍の重装備の歩兵DMよりやや劣るが、チャンドス隊左翼(マップ下方向)に攻撃を集中。少しでも敵戦列を乱して混戦状態に持ち込むのだ。そうすればこちらの数の優位が生かせる。

 だがイングランド軍は冷静に対応。長弓兵でカスティーリャ軍に損害を与えつつ、歩兵は戦列を維持し攻撃を自重する。このゲームでは戦闘後前進が強制されるため、攻撃に成功して追撃したはいいもののその後敵に囲まれてしまう、ということがよくあるのだ。


 歩兵部隊ではらちが明かないと見るや、カスティーリャ軍はマップ下方に展開した騎兵集団で攻勢に出る。このままではじり貧だ。きれいに並んだイングランド軍の重装歩兵DMの戦列に槍兵で攻撃をしかけても、防御力の高いDMによって跳ね返されてしまうだろう。そしてにらみ合っているだけでは、長弓兵によって歩兵部隊が削り取られていくのを見ていくだけになりかねない。

 マップ下方の黒太子の部隊(黄)は長弓兵でかっちり防御態勢を敷いていて、投槍騎兵が正面から攻撃せざるを得ない。隣接した時点で長弓兵の対応射撃を受け、70%の確率で損害を受ける。そのあとに投槍で攻撃しても、同時に長弓兵から応射(Return Fire)されてしまう。つまり長弓兵を投槍で攻撃すると2回射撃を受けることになるのだ。

 だがテージョ隊(赤)には投槍騎兵が8ユニットいる。黒太子隊左翼の長弓兵2ユニットに的を絞って、全滅もいとわず連続攻撃をしかければ長弓兵を排除できるはず。そのあとに重装騎兵MMで突撃をかければさすがのイングランド軍も大きな被害を被るに違いない。


 テージョ隊(赤)の投槍騎兵が次から次へと黒太子隊の長弓兵に襲い掛かる。こいつらはクレシーやポワティエを知らんのか、とイングランド軍は射撃を加える。だが、バタバタと倒れていく味方の兵を顧みることなく攻撃を続けるソビエト軍、じゃなかったカスティーリャ軍。投槍騎兵は8ユニットのうち半数が壊滅したが、長弓兵も1ユニットが敗走、1ユニットが壊滅した。

 長弓兵のスクリーンを排除したところにテージョ隊(赤)の重装騎兵が突撃。損害を被りつつも、黒太子隊のDMを混乱状態にした。



 この時点でカスティーリャ軍の累積敗走ポイントは33。敗走レベルの60まではまだまだ余裕がある。黒太子隊に対応する余裕を与えることなく攻撃を続けることができるか。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月11日土曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ②

  マップ右端上部からカスティーリャ軍の側面を突く形で現れたイングランド軍は、右翼(マップ上方)から順にジャン(Jean III de Grailly, Captal de Buch)、チャンドス(Sir John Chandos)、パーシー(Sir Thomas Percy)、黒太子と展開。

 活性化値は上から順にジャン3,チャンドス4,パーシー3,黒太子4だ。最右翼のジャン隊(白)の右側は渡河不可の川で守られているため、活性化値が低めのジャンでもなんとかなるだろう。

 最左翼はパーシー隊(水色)が登場するのだが、オープンスペースとなっているため機動力に勝るスペイン軍が優位になるかもしれず、活性化値3のパーシーでは今一つ心配だ。そのため、パーシー隊のさらに左翼に黒太子隊を展開させる。やや交通渋滞気味になりながらも、イングランド軍は攻撃を焦ることなく戦列を整えることを優先する。


 一方カスティーリャ軍は機動力を生かしてテージョ(Tello Alfonso of Castile)の部隊(赤)がマップ下方に回りこむことをもくろむ。活性化値の高いゲクラン隊(青)は黒太子隊が最左翼に出ようと団子状態になっているときに先制攻撃をかけるか迷ったが、デュ・ゲクラン指揮下のユニット数が少ないため、自重して後方に下げておく 。こっちは側面を突かれて不利な態勢なのだ。無理に攻勢に出るよりは、騎兵部隊をマップ下方に迂回させてプレッシャーをかけつつ歩兵部隊の正面転換を目指す。



 イングランド軍は右翼(マップ上方)のジャン隊(白)から前進。長弓兵による射撃でゴメス(Gomez Carillo)の部隊(紫)の左翼にいたクロスボウに損害を与える。そしてジャンの左横のチャンドス隊(青)も前進。さらに黒太子(黄)も前進。東方(マップ右下)を向いて布陣していたカスティーリャ軍が方向転換する前に距離を詰めていく。


 ここでカスティーリャ軍のゴメス隊(紫)が動いた。ほとんどが槍兵で構成されているゴメス隊は数の優位を生かし、犠牲をいとわずイングランド軍の長弓兵に攻撃を仕掛ける。接敵すると長弓兵の対応射撃によって70%の確率で混乱状態になるのだが、白兵戦になったら混乱状態であっても長弓兵相手に互角以上に戦える。だが、肝心の白兵戦でNo resultの連発。おいおい、やる気あんのかー。

 すぐにジャン隊(白)が対応。長弓兵を下げ重武装の歩兵DMでゴメス隊(紫)の槍兵を攻撃していく。ゴメス隊もやり返し、チャンドス隊(青)の長弓兵を壊滅させる。


 カスティーリャ軍は継続活性でエンリケ王の騎兵部隊(緑)でチャンドス隊(青)を攻撃するか迷う。チャンドス隊の左翼には長弓兵がいないため、対応射撃を気にすることなくエンリケ隊の投槍騎兵でチャンドス隊のDMに攻撃を仕掛けることができる。だがその後が問題だ。一度投槍を使ってしまった騎兵は脆弱になるうえ、敵に自由活性が移ったらチャンドス隊の左側にいるパーシー隊(水色)が確実にエンリケ隊をしとめに来るだろう。活性化値の高いゲクラン隊(青)がエンリケの左翼から支援にいけるが、その正面には黒太子がいる。ここは無理せず、最初の方針の通りテージョをマップ下方に展開させてイングランド軍の左翼を脅かすことを目指す。




 イングランド軍は右翼のジャン隊(白)とチャンドス隊(青)で着実にゴメス隊(紫)に損害を与えていく。そんなもの、カスティーリャ軍にとっては計算のうちさ。ゴメス隊が時間を稼いでいる間にテージョ隊(赤)が敵の左翼に回りこむとともに、エンリケ隊(緑)はいったんマップ左方に後退して自軍の他の部隊とともにイングランド軍を待ち受ける体制を整える。




 この戦いは両軍のユニット数が多いことを反映してか、敗走レベルが高い。カスティーリャ軍は60もある。カスティーリャ軍のほとんどのユニットは敗走ポイント(FP)が2なので、20数ユニットまでの損害に耐えらえるのだ。

 一方のイングランド軍の敗走レベルは45。これも比較的高いが、イングランド軍の主力を構成するDMのFPは3だ。カスティーリャ軍としては戦列を広げて機動力と数の優位を生かせるようにし、そのうえで殴り合いの消耗戦に持ち込めば勝機が見えてくるはず。


 Men of Ironにはルールブックとは別に、収録の6つの戦いのセットアップや特別ルールが書いてあるBattle Bookという冊子があるのだけれども、そこにはイングランド軍が簡単に勝っちゃうよね、みたいなことが書かれてある。でもネットでAARをちらほら読んでみるとイングランド軍の負けとなったものもある。しかも黒太子が戦死した、なんてものまであった。実際、練習としてソロプレイしてみたんだけど、イングランド軍が調子に乗ってどんどん攻撃していくと、突出したチャンドス隊が騎兵に包囲され壊滅し指揮官が捕虜になる、なんてことが起きてしまった。イングランド軍が簡単にワンサイドゲームで勝てるというわけではないはずだ。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月9日木曜日

完勝の再現となるか、黒太子  Nájera 1367 - Men of Iron Tri-Pack (GMT) AAR ①

  英仏百年戦争という比較的マイナーな戦争の中で、まだ名前が知られているのがエドワード黒太子じゃないだろうか。あ、ジャンヌ・ダルクがいたな。でもウォーゲーマー的には、ポワティエの戦いで寡兵でもってフランス軍を完膚なきまでに叩きのめした黒太子のほうが琴線に触れるんじゃないのかな。

 今回プレイするのはエドワード黒太子が大勝した戦いの一つ、ナヘラである。ゲームはMen of Iron Tri-pack。時代は百年戦争の前半にあたり、場所はスペインの太平洋側、ピレネー山脈近くのところ。


 イギリスとフランスが戦争していたのになんでスペインで戦い? と思って調べてみたら、1360年に英仏間で講和が結ばれていたが、スペインでは中央部のカスティーリャ王国の王位をめぐって英仏の代理戦争が行われていたらしい。確かGJの英仏百年戦争でもこの地域は含まれていたはず。カスティーリャ王ペドロ1世の異母弟トラスタマラ伯エンリケがフランスの支援を受けて王位を狙い、ペドロは当時フランス南部のアキテーヌ地方を支配してたエドワード黒太子に助けを求めた、というお家騒動である。

 この戦いには小説「双頭の鷲」の主人公、デュ・ゲクランも参加している。1360年の和平のあと、仕事にあぶれた傭兵たちがフランス国内で盗賊化していたため、その厄介払いも兼ねてデュ・ゲクラン指揮下のもとカスティーリャに派遣されていたからだ。


 街道沿いに東から進軍してくるイングランド軍に対しもっと有利な態勢で戦えるようデュ・ゲクランは退却を進言したが、エンリケはナヘラの町から川を渡って平原で迎え撃つことを決める。だが黒太子は山道を使って迂回し、エンリケ軍の側面に現れたのだった。

 初期配置では、エンリケ軍は東(マップ右下)を向いて布陣している。見事に川を背にしていて、あなた、韓信ですか。この戦いの一週間ほど前にイングランド軍の一部隊を壊滅させているから、相手をなめていたのかな。



 イングランド軍はエンリケ軍の左翼、マップ右端上方から登場するのである。エンリケは完全に虚を突かれている。さすが黒太子、グッジョブ。


 イングランド軍は数は少ないものの、重武装の歩兵(Dismounted Men-at-Arms, DM)と、百年戦争を通してその威力を発揮した長弓兵で構成されている。

 前衛であるチャンドスの部隊(青)から登場し、主力である3部隊が続く。4人の指揮官のうち半分が活性化値4,残りが3。後衛としてマヨルカ王ジャウメ4世の部隊(緑)がありイングランド軍の中では貴重な騎兵主体の部隊となっているが、活性化値が2と低いため登場させない(させられない)かもしれない。



 一方のエンリケ軍、というかこれ以降はMen of Ironの表記に従ってカスティーリャ軍と書くことにする。この戦いのときにはペドロを追い出してエンリケ2世としてカスティーリャ王になってたようだしね。そのカスティーリャ軍だが、指揮官の活性化値はデュ・ゲクランが5と突出して高いものの、ほかは3が3人、2が2人だ。活性化値が低めの指揮官を使ってこれだけの大軍の正面をイングランド軍側に転換しないといけないため、下手をすると大混乱が起きてしまう。


 しかも20ユニット以上ある投槍騎兵は移動力は8もあるものの、接敵しないと槍を投げられず、一度投げてしまうと再装備するまでかなり脆弱になる。さらに再装備には敵から3へクス以上離れた状態で何もしないせずに一活性化を使うことが必要で、つまり一度攻撃すると1回か2回の活性化を経ないと再び攻撃できるようになれない。イベリア半島で主な敵だったイスラム教徒相手にはある程度有効だったこの兵種は、イングランド軍にはほとんど通用しなかったらしい。どうなることやら。


つづく


(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月7日火曜日

「馬だ! 馬をよこせ! 代わりにわが王国をくれてやる!」 Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ③

  一人突出していたリチャードに対し、ヘンリー隊のMM3ユニットが突撃する。結果は防御側混乱で継続攻撃。よし、今度こそシェイクスピアの名場面を再現するのだ。だがリチャードが奮戦し、結果はNo Result。リチャード強え。 

 オックスフォード隊よ続け、とヘンリーが命ずるも、リチャード側がSeizureカウンターで継続奪取。リチャードを大急ぎで後退させ、支援のユニットを前進させる。危ういところで窮地を脱したリチャードである。


 だが今度はヘンリーがSeizureカウンターで継続奪取。ヘンリーが陣頭指揮をとった突撃は敵歩兵を壊滅させる。リチャードばかり活躍させてたまるか。これまでだてに苦労してきたわけじゃないんだ。薔薇戦争が始まって2年後に生まれたヘンリーは、生まれたときにはすでに父親はこの世にいなかった。さらには幼くして母親と別れることを余儀なくされる。ランカスター朝のヘンリー6世と王太子エドワードが殺された後は、ランカスター家の血を引く唯一の男子としてヨーク派に命を狙われ、14歳にしてフランスのブルターニュ公国に逃げる。そして14年間の亡命生活ののち、イングランドに捲土重来。重耳みたいなもんなんだぞ。あんなに歳とってないけど。


 ランカスター軍のオックスフォードが部隊を後退させ戦列を整理するも、再びリチャードが猛攻。ヘンリー・チューダーが王位継承権を持っているなんてちゃんちゃらおかしい。百年戦争を始めた王エドワード3世の、王子の一人が生んだ私生児のひ孫ってだけじゃないか。こんな僭称者、王の威厳にかけて叩き潰してくれる。

 気がついたらランカスター軍のFPは14になっていた。敗走レベルは18なのでかなりやばい。だが敗北チェックのサイの目は3でヘンリーは耐える。


 ヨーク軍は継続活性に失敗し、今度はヘンリーが反撃。MM2ユニットによるMMへの攻撃はなんとサイの目ゼロで効果なし。だがヘンリー自ら突撃し、リチャード隊に損害を与える。そして敗北チェックも再び耐えた。苦労人ヘンリーの本領発揮である。オックスフォード隊が混乱状態のユニットの回復に努め、再びヘンリー隊が活性化。リチャード隊のMMと歩兵を壊滅させる。

 だがヘンリーの奮闘もここまでだった。ヨーク側に自由活性が移り、リチャード隊の攻撃ののち、敗北チェックでサイの目は5。敗走レベルを超えてしまい、ランカスター軍の敗北となった。


 リチャードは王位にとどまってヨーク朝が続き、シェイクスピアの書く「リチャード3世」は真逆の内容となったことだろう。いや、「冬の王」に描かれているようにボズワースの戦いの後もイギリスは不穏な状態が続き、ヨーク朝が転覆させられたかも。それよりなにより、1ミリも動かかなかった後衛のノーサンバランド伯、それに裏切らなかったにせよリチャードを助けることもなかったスタンリー兄弟の戦後の処遇はどうなるんでしょうね。ロンドン塔送り? それとも、beheaded?



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月5日日曜日

「馬だ! 馬をよこせ! 代わりにわが王国をくれてやる!」 Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ②

  ヨーク軍は射撃戦でオックスフォード隊(黄)の前衛に損害を与えたのち、ノーフォーク隊(緑)の歩兵と騎兵が攻撃に移る。オックスフォードは即座に対応。ノーフォーク隊の戦列の両端のユニットを混乱状態にさせる。


 そこにリチャード本隊が騎兵の機動力を生かしてノーフォークの左翼に突撃する。陣頭に立つリチャード。シェイクスピアがなんぼのもんじゃい。馬を失うことを恐れて突撃ができるか。

 このゲームの指揮官にはカリスマ(Charisma)という数値があり、スタックしているユニットが攻撃する際にサイの目修正ができるのだが、リチャードのカリスマは+2だ。強烈な突撃で敵歩兵を敗走させる。


 だがランカスター側のオックスフォード隊がすかさず反撃。長弓兵の射撃でリチャード指揮下のMMが強制下馬(Unhorsed)。馬を失った騎兵など物の数ではないわ、と歩兵(Infantry, Inf)2ユニットが攻撃。シェイクスピア「リチャード3世」の再現だ、と思いきや、防御側混乱で終わった。ふう、やばいやばい。歴史は繰り返すって言うからね。


 リチャード直属部隊の攻撃を受けているオックスフォード左翼の支援のため、ヘンリーは自分の直属部隊を派遣。だがスタンリーを裏切らせようとマップ右側に寄って行っていたため、すぐには間に合わない。

 トマス・スタンリーはこの戦いの13年前にヘンリーの母親と再婚しており、ヘンリーは継子になる。そのためリチャードはスタンリーが裏切らないように息子を人質に取っていた。このゲームでは自由活性化を使ってスタンリーの裏切りチェックを試みられるのだが、リチャード軍の猛攻でランカスター側は自由活性化をそんなことに使う余裕がなくなってきた。ヘンリーの母親と再婚してるんでしょ、早くこっちについて参戦してよー。


 リチャードとスタックしているユニットが混乱状態のうちに討ち取ってしまいたいランカスター軍。ヘンリー隊が間に合わないため、頼むぞオックスフォード。オックスフォードの活性化値は4で、ヘンリーの士気範囲にいるとサイの目が1有利になる。だが継続活性に失敗してしまう。リチャードは窮地を脱し、再び怒涛の攻撃。オックスフォード隊の左翼に大きな損害を与える。


 続いてヨーク軍のノーフォーク隊が活性化。長弓兵の射撃でオックスフォード隊に損害を与えるが、混乱状態の歩兵に対する攻撃はなんとサイの目0が出て攻撃側の混乱に終わった。10面体ダイスを振るのでこういうこと時々あります。


 ヨーク軍の連続攻撃に対して態勢を立て直したいランカスター軍。Seizureカウンターを使っての継続奪取を試みようか迷ったのだが、継続奪取成功の可能性は60%。リチャードの継続活性は60%の確率で失敗するはずなのでSeizureカウンター使用を見送る。だがヨーク側はリチャード隊の継続活性に成功。これは痛い。

 先ほどの攻撃で損害を受けていたオックスフォード隊に、リチャード隊が再び猛攻をかける。リチャードが陣頭に立ち、オックスフォードの軍旗(Standard)に迫った。敗走状態のユニットは軍旗まで逃げていたのだが、リチャードは2回連続の継続攻撃で3ユニットを壊滅させる。おそるべし、リチャード三世。


 リチャード三世は悪人というイメージがイギリスでは定着しているそうなんだけど、これはシェイクスピアの書いた「リチャード三世」の影響が大きいらしい。シェイクスピアが活躍したのはイングランドの黄金時代を築いたチューダー朝エリザベス1世の治世で、エリザベス1世はヘンリー7世の孫である。長きにわたった内乱に終止符を打った名君でチューダー朝の開祖、ヘンリー7世をシェイクスピアが悪く書くはずがなく、ヘンリー7世が打ち破ったリチャード三世は極悪人に描かれているのだ。

 だがそういったリチャード像は正確ではないようで、例えば「物語 イギリスの歴史(上)」という本なんかでは、リチャードは

「兄王エドワード4世からも絶大な信頼を寄せられ、劇中に見られるような兄クラレンス侯爵、妻アン、二人の甥(エドワード5世と弟リチャード)を次々と殺害したという証拠はいっさいない。むしろ勤勉で公正な支配を進めたと言われている」

とまで書かれている。このゲームのデザイナーもリチャードを正当に評価しようとする立場だって言っているしね。名前が一緒だからってわけでもなさそうだし。


つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

2022年6月3日金曜日

「馬だ! 馬をよこせ! 代わりにわが王国をくれてやる!」 Bosworth 1485 - Blood & Roses (GMT) AAR ①

  1455年から30年間続いたイギリスの内戦が薔薇戦争。ランカスター家とヨーク家が王位をめぐって争ったらしいが、GJ65号のリプレイマンガが自分の基本知識である。この戦争を締めくくったのが今回プレイしたボスワースの戦いで、ヨーク朝のリチャード3世をヘンリー・チューダー、のちのヘンリー7世が打ち破った戦いである。SNSで知り合ったこーちゃさんに教えていただいた、ヘンリー7世を描いた「冬の王」という本が面白かったので(実際に読んだのは"Winter King"のほうですが)ヘンリーの見せ場であるこの戦いをやってみた。アニメ「薔薇王の葬列」放送に便乗して、というわけではない、けど、ほんと日本の漫画・アニメっていろんなジャンルの作品があるよね。なおゲームは今回もMen of Ironシリーズで、使用したのはTri-pack版である。



 初期配置は上の写真のとおり。ヨーク側、リチャード軍の最後尾にはノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーの部隊(青)がいる。パーシー家は代々北イングランドの要職を歴任していたが、リチャード三世が甥にイングランド北部を任せるようになって、ノーサンバランド伯パーシーはリチャードの元での出世に見切りをつけたそうだ。そのためこの戦いの最中はリチャードの命令に反して動かなかったらしく、活性化値はなんと1である。しかも通常は活性化チェックが不要の自由活性化でも、ノーサンバーランドはチェックが必要となる。

 ヨーク軍の前衛、ノーフォーク公ジョン・ハワードの部隊(緑)は長弓兵中心で打撃力にはやや欠ける。主力はリチャードの直接指揮下の部隊(黄)となるだろう。

 一方のランカスター側は、オックスフォード伯ジョン・ド・ヴィアーの部隊(黄)の後ろにヘンリー直属部隊(黒)。ユニット数は5と少ないが、そのほとんどが重装騎兵であるMM(Mounted Men-at-Arms)である。

 マップ右下にはスタンリー兄弟の2部隊がいる。こいつらは一応リチャードの配下で、ヘンリーの右翼を攻撃してくれたらいいのだが、実際の戦闘ではずっと日和見で最終的にリチャードを裏切った。大まかに言って関ヶ原の小早川秀秋という感じか。このゲームでもランカスター側がスタンリーを裏切らせるルールがある。


 ゲームはヨーク軍の活性化から始まる。ノーフォーク隊(緑)は長弓兵が6ユニット、かたやオックスフォードの長弓兵は3ユニットに射程と威力に劣る弓兵が2と、ノーフォークのほうに分があるため、まずは射撃戦を仕掛ける。その間、リチャード隊は地形的に障害が少ないマップ左方に展開を目指す。

 これに対してヘンリーはスタンリーに近寄り、裏切りを促す。ヘンリーが近くにいればスタンリーの裏切りチェックでサイの目が有利になるのだ。またマップ右側にシフトすることで、騎兵にとって不利な地形である沼地にリチャード軍を誘導し、身動きが取れなくなったリチャードを討ち取れれば理想的である。シェイクスピアの史劇「リチャード三世」では、戦いの最後にリチャードが突撃。馬を失い、「A horse! A horse! My kingdom for a horse!(馬だ! 馬をよこせ! 代わりにわが王国をくれてやる!)」と叫んで討ち取られる、というクライマックスがある。あのシーンを再現してやるのだ。




つづく



(以前、SNSマストアタックに書いたものです。修正を加えている場合があります)

マーケット・ガーデン80周年なので読んでみた、『9月に雪なんて降らない』

 1944年9月17日の午後、アルンヘムに駐留していた独国防軍砲兵士官のJoseph Enthammer中尉は晴れわたった空を凝視していた。自分が目にしているものが信じられなかったのだ。 上空には 白い「雪」が漂っているように見えた。「ありえない」とその士官は思った。「9月に雪な...