2022年10月29日土曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ③

 ●第1ターン


 ネイ率いる壮年親衛隊(青)が前進を開始する。「La Garde Avance!」の特別ルールで、第1ターンの活性化はネイの部隊から始まるのだ。高地上に布陣している英連合軍はずらっと砲門を並べているため、方陣を組んでゆっくりと進んで攻撃だなんてなんの罰ゲームだよと仏軍プレイヤーが愚痴る。このゲーム、仏軍をプレイしているとほんと精神力が試されます。守る英連合軍プレイヤーは

「クレシー、ポワティエ、アジャンクールと、有利な防御地形に拠っている英軍に対して臆せず果敢に攻撃していった輝かしい伝統がフランス軍にはあるじゃないですか。祖先を見習わないと」

と挑発。いやそれ、全部フランス軍がお手本にしちゃダメなやつだから。


 じわじわと前進する親衛隊に対し、英連合軍は中央部隊(青)の全砲門が一斉に火を噴く。次々と敗走するフランス兵、と思いきや、砲撃を受けても士気の高い親衛隊の隊列は全く崩れない。


 Jours de Gloire(JdG)ではユニットは、兵数を反映している戦闘力(Points de force)の他に、CohésionとValeur d'engagementという数値を持っている。Cohésionは砲撃や戦闘で損害を受けるかどうかや混乱からの回復チェックなどに使い、Valeur d'engagementは総指揮官から命令を受けていない状態(後述する予定)でも攻撃や突撃ができるかのチェックに使われる。

 それぞれ直訳っぽく訳すと結束値と交戦値となるかなと思うんだけど、なんか雰囲気が出ないと感じるのでこのAARではCohésionは士気、Valeur d'engagementは兵質と表記することにする。おかしいと思われた方は結束値や団結力など好きな言葉に置き換えて読んでくださいコムヴヴレ。

 士気は英連合軍の歩兵ユニットのうち約7割が4,残り3割が5なのに対して、壮年親衛隊はすべて6と高い。そのため砲撃をくらって士気チェック(test de cohésion, TdC)の結果が出ても損害が出ない可能性が高いのだ。


 ところで訳語といえば、JdGでは近接戦闘にあたるChocという攻撃があるんだけど、どう訳せばいいんでしょうね。ルールには「Chocは歩兵によって行われる場合は近距離射撃と銃剣による突撃の組み合わせで、chocにおいて歩兵は戦闘そして白兵戦に参加することができる。騎兵も歩兵同様にchocを行うことができる」って書かれている。個人的には白兵戦と表記したいんだけど、それだと射撃が含まれないし、「近接戦闘」とかだとなんか勢いを感じさせないし。まあ無理に訳さずにそのまま音読して「ショック」でもいいのかもしれないけど。じゃあformationは「フォルマシオン」でOK? 


 と思っていたら、BGGにJdGシリーズのルールの日本語訳をあげてくれている人がいました。

2021年版ルールとのことで、「La Garde Avance!」をやる分には問題ないんじゃないでしょうか。なお、このAARでは自分の好きな訳語を使っているのでこの日本語訳ルールとは言葉が違う場合があると思います。


 それと、Vae Victisの公式サイトには「La Garde Avance!」の特別ルールの英訳がアップされています。

前述のJdG共通ルール日本訳と併せてこれを読めば、フランス語を読まなくてもプレイできると思います。特別ルールは実質1ページなので読む負担はかなり軽いかと。(上記サイトにはJdG共通ルールの英語版もあります)


 閑話休題。自軍砲撃のあまりのサイの目の悪さに茫然とする英連合軍プレイヤーだったが、追い打ちをかけるようにネイの部隊の活性化チットが引かれて愕然としてしまう。このゲームでは各部隊ごとに2枚の活性化チット(Marqueur d’Activation, MA)が用意されており、基本的に1ターンに2回活性化できるのだ。

「マジ? 無傷の親衛隊が攻撃してくんの!?」

 仏軍はまず砲撃で敵中央部を混乱させたのち、壮年親衛隊が突撃。砲兵はショック攻撃を受けると防御射撃(tir de réaction)ができるため、砲兵スタックへの攻撃はリスクがあるのだが、至近距離からの砲撃をものともせず親衛隊が突っ込んでいく。

 防御側の英連合軍ユニットは高地上で戦列を引いているが、実際の戦いでは稜線の向こう側で身をかがめてフランス軍の視界から隠れていたらしい。そのため、特別ルールでゲーム当初はこれらのヘクスは平地(Clear)ではなく荒地(Difficile/Coupé)とみなされ防御に有利になる。だが高い士気を誇る親衛隊は待ち構えていた敵にひるむことなく猛攻。精鋭部隊の攻撃に英連合軍はたまらず混乱状態になり退却を余儀なくされた。いきなり中央突破か?




つづく

2022年10月27日木曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ②

  「La Garde Avance!」の初期配置は写真の通り。このゲームは1ターン20分で1へクス100mと、JdGシリーズの他のゲームよりは規模が小さくなっている。なお、親衛隊は最初から方陣(carré)を組んでいるので方陣マーカーをユニット上に載せるんだけど、見ため的にユニットが現れているほうがいいのでマーカーは下に置いている。このやり方はネットで見つけたAARからパクり……見習わせてもらいました。



 ところでナポレオニックの言葉って定訳があると思うんだけど、ぜんぜん自信がありません。だって、家にあるナポレオン関連の書籍っていったら池田理代子の『エロイカ』ぐらいなんですよ。詳しい方、優しく教えてくださいシルヴプレ。Vieille Gardeは老親衛隊でOK? で、Moyenne Gardeは中年親衛隊?? でも「中年親衛隊」って聞くと、アイドルにはまったおっさん集団が推しのライブで夢中になっている絵が思い浮かぶんだけど……あわわわわ、皇帝陛下の親衛隊を茶化すようなこと言ってすみません。自分が馬鹿でした。ナポレオニック好きの方、怒らないで! バヨネットをこっちに向けないで! ヴィーヴ・ランペルール! La Garde meurt mais ne se rend pas!! 

まあ、Vieille Gardeは老親衛隊と書くのが自分的にはしっくりくるので、Moyenne Gardeのほうは壮年親衛隊と書くことにします。ただvieilleとかmoyenneというのは所属する兵の年齢ではなくて、編成された時期から来ているみたいですね。だったら「古参」「中堅」とかのほうがいいのかな。というか、gardeって女性名詞だったのね。


 で初期配置のフランス軍のほうだけど、ネイ率いる壮年親衛隊の後方にロゲ(Roguet)の老親衛隊が控えており、右には第一軍団ドンズロ(Donzelot)師団の残余、左には第二軍団バシュリュ(Bachelu)師団がいる。これを迎え撃つ英連合軍(Anglo-allies)のほうは高地を占めている。JdGはチットプルで部隊(formation)ごとに活性化するのだが、フランス軍は上記4部隊に、英連合軍は中央(青)、予備(緑)、騎兵(灰色)の三つの部隊に分けられており、ユニットの上部の線の色で所属部隊を識別する。なお両軍の総指揮官(général en chef)のナポレオンとウェリントンのレーティングは同じである。

 マップ右端のラ・エイ・サントはフランス軍が占領しておりZOC(Zone de Contrôle)も及ぼす。ただし両軍とも進入不可。逆に左端にあるウーグモンは英連合軍が持ちこたえており同様にZOCを持つ。

 

 前述のとおり親衛隊はすべて方陣を組んでいる。JdGでは方陣を組むと移動や攻撃ができなくなるのだが、「La Garde Avance!」には特別ルールがあり、方陣を組んだ親衛隊ユニットは移動と攻撃が可能となっている。ヒストリカルノートによると親衛隊の大隊はすべてcarré ouvertという方陣を組んで前進した。散兵を配置せず、仏騎兵がほとんど消耗していたため敵騎兵の攻撃に対する防御の備えをしながら戦ったらしい。carré ouvertって「開かれた方陣」といった意味になるけど、定訳をご存じの方教えてくださいメルシーダヴァンス。

 まあとにかく、このゲームの親衛隊は方陣を組んだまま前進、攻撃をしなくてはならないのだが、移動力が半減して2になるうえに砲撃を受けるとサイの目が1不利になる。自分から方陣を解くことは禁じられており、さらには敵砲兵の射程内に配置されているため、のろのろと前進する親衛隊は砲撃のいいカモである。だがグルーシーは現れず右翼からブリュッヒャーが迫る今、フランス軍の勝利のためには敵の中央戦列を打ち破るしかないのだ。断じて行えば鬼神も之を避く。デザイナーズノートでも、フランス軍プレイヤーが敵陣を突破するのは現実的に不可能ではないと書かれているではないか。


つづく

2022年10月24日月曜日

親衛隊は死すとも降伏せず  La Garde Avance! (VV161) AAR ①

  ワーテルローの戦いの最終局面、親衛隊による攻撃をシミュレートしている「La Garde Avance!」はナポレオニックの会戦級のゲームJours de Gloire(栄光の日々)シリーズの最新作で、今年3月に出たVae Victis161号の付録ゲーム。ウェリントンの粘り強い防御に消耗していくフランス軍。その右翼にはブリュッヒャー率いるプロイセン軍が迫る。だが激戦の末に戦場中央部の要衝ラ・エイ・サントを陥落させたナポレオンは、親衛隊を投入して中央突破の賭けに出る。果たして親衛隊は英連合軍の戦列を抜くことができるのか、という燃えるシチュエーションである。



 Jours de Gloire(JdG)シリーズはVae Victisの付録のほか、単体ゲームなどで計30作以上出ているらしい。その中で「La Garde Avance!」はマップが小さいうえ5ターンしかなく、プレイ時間は1時間とのことだから自分のようなJdG初心者でも気軽に遊べる。

 とはいえ、JdGでは命令を受けている部隊とそうでない部隊ではできることが違ったりとか、うーん、自分の脳みそのキャパではちゃんと理解できているか不安……と思っていたら、JdGの解説動画がユーチューブにありました。動画で説明してもらうとわかりやすいっす。いやルール読めばいいだろ、という話なんですけど、ふんだんに図で例示してもらえるとハードルが下がります。2014年にアップされたみたいでルールの細部は変更があるかもだけど、ルールやゲームの手順をざっくり把握するのに役立ちました。


 それにしてもワーテルローなんてメジャーテーマのゲーム、長い間怖くて手が出せていなかった。でもBANZAIマガジンの次号はワーテルローだ。乗るしかないだろこの波に! ということで「La Garde Avance!」をやってみた。

←ウソです、ごめんなさい。BANZAIマガジンのことはプレイしてこのAARを書き始めた後に知りました。

 「La Garde Avance!」をやってみたのは、たまたま前回プレイしたAu fil de l'épéeシリーズ(AFdE)のデザイナーFrédéric Beyがデザインしたゲームだから。だってFrédéric Bey先生、AFdEは2018年から新しいのを出してないし。Vae Victisでは162号でビザンツについて記事を執筆したりしているのになー。でも、別のデザイナーのゲームだけどA la Charge!シリーズは今年5年ぶりに新作が出たし、Bey先生、あきらめずに待ってますよ! それとBANZAI次号も期待してます。

 BANZAI次号の付録ゲームはSSワーテルローの再版らしい。SSシリーズといえばたしか昔シミュレイター誌に、中黒氏がSS川中島を日本のワーテルローだと言ってアメリカ人に売り込んでいたって書かれていた(自分の記憶違いだったらごめんなさい)。若い頃から国際的なマーケティングセンスがあることをうかがわせるエピソードで、栴檀は双葉より芳しというやつですか。


 というわけで「La Garde Avance!」なんだけれども、ナポレオン戦争は、まあその、なんだ、よく知らないんですよ。すみません。なのでまずはヒストリカルノートを読んでみた。Vae Victis161号には"L'infanterie de la Vieille Garde au combat"というタイトルで、親衛隊について1799年の執政親衛隊の創設からワーテルローでの敗戦までが6ページにわたって描かれている。筆者は「La Garde Avance!」のデザイナーFrédéric Bey。親衛隊は二百年以上たった今でも、ナポレオン軍の中でもっとも敬意を払われ研究されている、なんてこと書かれていたら読むしかないじゃないですか。親衛隊って精鋭部隊だよねぐらいの漠然としたイメージしか自分は持ってなかったけど、いろいろと勉強になりました。ということでヒストリカルノートを和訳してみました。ご興味ある方は下記リンクからどうぞ。





……なんてなことはしてません。だって、ナポレオン関連の文献は日本語でふんだんにあるでしょうからね。親衛隊のことを含めナポレオニックについてあんまり知らない自分がウォーゲーマーの中ではマイノリティなんだろうなあ。それと、デザイナーズノートでは親衛隊の士気などについて説明されていて面白かったです。


つづく

2022年10月22日土曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ⑥

 ●第10ターン 

 ブルゴーニュ軍の両端は兵力が足らず間隙が生じており、フランス軍の両騎兵部隊はそこに浸透。背後から白兵戦をしかけブルゴーニュ軍騎兵はたまらず潰走していく。フランス軍騎兵部隊がマップ右端へと前線を押しこんでいるため、中央のマクシミリアンの指揮が届かずブルゴーニュ軍は有効な対応が打てない。


 もうボロボロになったブルゴーニュ軍左翼騎兵部隊を率いるPhilippe de Clevesは、ギネガテの戦いの前からフランドル地方を治めフランスと戦っていた。ブルゴーニュ公シャルルが残した一人娘の公女マリーは領民たちから「美しき姫君」や「我らのお姫さま」と慕われていたのだが、Philippe de Clevesは幼い頃はそのマリーの遊び相手だったらしい。マクシミリアンとマリーの夫婦仲はよかったが、マリーは若くして亡くなる。その後マクシミリアンは神聖ローマ皇帝になり、ブルゴーニュ領ネーデルラントを帝国の勢力圏内に組み込もうとしたらしく、Philippe de Clevesはそんなマクシミリアンに対して反旗を翻す。あくまでブルゴーニュ公家そして幼馴染のお姫様マリーに忠節を貫いたということか。


 ブルゴーニュ軍は中央でもフランス軍の射撃によってじわじわと士気低下、はては潰走するユニットが出る。両翼の敵騎兵部隊に対応する必要があるため、ゲーム前半のときのように中央で積極的に攻勢に出ることができないのだ。マクシミリアンとしては耐えるしかない。



 

 最後の騎士と呼ばれたマクシミリアンはさまざまなエピソードを残しているのだが、狩猟で銃を使うのは卑怯、と弓矢でカモシカ猟をしていたそうだ。そういうこだわりが最後の騎士と呼ばれた所以ですかね。ある日、お供のものもついて行けないほどの峻険な岩山をものともせず一人でガンガン上っていき、狭い岩角に片足をかけ、弓矢を放っていた。だがあまりにも険しい場所だったためそこから動くことができず片足で立ったままになっていたという。いやなんかそれ、騎士というよりはギャグですか、という印象を受けるんですけど…。そうすること三日目、いずこともなく牧人が現れマクシミリアンを安全な場所に導いた。いまもインスブルックにはマルティンの岩壁という場所があり、これがマクシミリアンが三日間立ち尽くしていたところだと言われている。マクシミリアンを助けた牧人は天使だったとも伝えられているらしい。なんか、こういうおちゃめなエピソードが何百年も語り継がれているところに、マクシミリアンが人々に敬愛されたということがうかがえますな。

 ちなみに岩山で立ち往生、という話を聞くと、落石事故で右腕が岩に挟まれ、5日間の苦闘ののちに自ら腕をナイフで切断して脱出したアーロン・ラルストンを思い出す。母校のスピーチでもこの経験をポジティブに語っていて、すげーなーと。




●第11ターン 

 ターン最初の射撃戦で双方に潰走ユニットが出る。もともとユニット数が敵よりも少ないブルゴーニュ軍としては痛い。

 そしてフランス軍騎兵部隊の攻撃。目指すはブルゴーニュ軍の荷車列、お宝を奪うのだ! 欲に疲れも忘れたか、次々と敵騎兵を潰走、壊滅させていく。

 フランス軍右翼の騎兵部隊を率いる、フランス軍総指揮官Philippe de Crèvecœurは若い頃はブルゴーニュ側で仏王ルイ11世と戦ったりしていたが、マクシミリアンの舅ブルゴーニュ公シャルルが1477年に戦死するとフランスに寝返ったらしい。ギネガテの戦いのたった2年前ですね。この戦いの4年後にはフランス元帥(Maréchal de France)になっている。


 フランス軍は騎兵部隊と連動して中央の歩兵部隊も攻撃に出る。集中射撃で敵槍兵を潰走させた。フランス軍は得点を伸ばしていき、壊滅ユニットによる得点の差は2にまで縮まった。


●第12ターン

 最終ターンである。お宝頂戴! と全力で駆けるフランス軍騎兵だったが、おしくも一歩及ばず。だがフランス軍総指揮官率いる騎兵主力部隊が敵歩兵を壊滅させていく。


 中央では両軍ともに指揮官たちが陣頭に立って最後の死闘を繰り広げる。フランス軍の歩兵部隊を率いるAntoine de Choursesに至っては、指揮官自ら騎兵を率いて突撃。たまらず戦列を乱して後退するブルゴーニュ軍の歩兵。マクシミリアンを中心に、残り少ない兵力で必死に防戦、反撃する。




 そして長時間にわたった戦闘も終わりを迎えた。勝利得点は、フランス軍は51。ブルゴーニュ軍は敵ユニット壊滅によって同じく51、だがそれに加え、潰走状態の敵軍1ユニットにつき1点を得られるので、計55。両者の差は4で、この戦いは引き分けとなった。

2022年10月21日金曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ⑤

●第8ターン

 マップ下方でフランス軍騎兵部隊の攻撃が続き、この方面のブルゴーニュ軍騎兵部隊は半減、残存2ユニットとなった。ブルゴーニュ軍は中央から兵力を割いたものの、機動力の低い歩兵では敵騎兵による延翼運動への対応が遅れてしまう。さらには、ブルゴーニュ軍が潰走した際にはマップ右端に向かって逃走するのだが、そちら方面にフランス軍騎兵が回り込んできているため潰走できずに壊滅するユニットが出てきた。


 マップ上方でもフランス軍騎兵部隊の攻撃にブルゴーニュ軍騎兵だけでは対応しきれなくなってきている。ただしここは幸い、通行不能の川によってフランス軍騎兵の迂回運動は妨げられているため、歩兵部隊が支援に駆け付け反撃を行う。

 

 こちら方面のブルゴーニュ軍歩兵部隊を率いているのはNassau-Dillenbourg伯Engilbert二世。ギネガテの戦いのときはまだ20代の青年だったが、ブルゴーニュ公国の金羊毛騎士団に序列されている。1487年にはフランス軍の捕虜となり、莫大な身代金と引き換えに解放されているが、その後も長くフランドル地方でフランスに対抗した。


 ブルゴーニュ軍にとっては両翼の危機が続くが、総指揮官であるマクシミリアンは中央で動かない。なるべく多くの自軍ユニットを総指揮官の指揮範囲内にとどめ、柔軟な対応ができる態勢を維持するのだ。


 マクシミリアンはブルゴーニュ公シャルルの戦死後、いわば入り婿のような形でハプスブルグ家からブルゴーニュ公国に入っている。結婚相手であるマリーはシャルルの一人娘で、ブルゴーニュ家の人々にとっては我らがお姫様。その結婚相手だからマクシミリアンも一応受け入れたらしい。だがよそ者だったマクシミリアンは領内を精力的に回り率先して庶民と気軽に語り合おうとする姿勢を見せたため、次第に人々から好意を寄せられるようになったそうだ。

 ちなみにオーストリアから来たマクシミリアンはブルゴーニュ家で話されていたフランス語が分からず、マリーはドイツ語が話せないため二人は最初のうちは、当時のヨーロッパの共通語だったラテン語で会話をしていたそうだ。婚姻の際にマクシミリアンがマリーにダイヤの指輪を贈っており、婚約の際にダイヤの指輪を贈るという慣習のもとになったと言われている。いらんことしよってからに、と高価な婚約指輪をねだられた男性は思うんですかね。


●第9ターン 

 ブルゴーニュ軍の中央歩兵部隊の弓兵と槍兵の積極的な攻撃によって弱体化していたフランス軍中央歩兵部隊だったが、再編成に努め次第に戦力が回復してきている。白兵戦で攻撃に出るには戦力が足りないものの、射撃によってブルゴーニュ軍中央にじわじわと損害を与える。そしてフランス軍両翼の騎兵は敵後方への突破を目指して猛攻。ブルゴーニュ軍の損害が増え、気がついたら点差は11に縮まっていた。


 フランス軍が敵後方への突破をもくろむのは中央歩兵部隊と連携して敵を挟み撃ちするためだけではない。ブルゴーニュ軍がはるか後方に退避させている荷車4ユニットが標的なのだ。実際のギネガテの戦いではフランス軍騎兵は敵荷車の略奪に夢中になってしまい勝機を逸したが、このゲームではその誘導のためか、フランス軍は騎兵によって荷車を破壊すると10点のボーナスが得られる。荷車自体も1ユニット壊滅するごとに2点なので、一気に18点取って逆転する可能性があるのだ。フランス軍騎兵がどちらかの翼で突破した場合、騎兵がほとんど残っていないブルゴーニュ軍は荷車を防御するすべがないため、少しでも粘って戦列を維持するしかない。残りはあと3ターン。戦況は時間との戦いの様相を見せてきた。





つづく




2022年10月19日水曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ④

 ●第6ターン

ブルゴーニュ軍の射撃で、フランス軍歩兵部隊の指揮官Jean de Baudricourtとスタックしている騎兵が潰走。これは痛い。スタックしているユニットが潰走すると指揮官は一緒に潰走するのだ。だがフランス軍は右翼(マップ下方)にいる総指揮官の指揮のもと、歩兵部隊が反撃する。弓兵の集中射撃によってマクシミリアン直属部隊の弓兵が潰走した。さらにフランス軍右翼の騎兵部隊が正面のブルゴーニュ軍騎兵部隊を攻撃、2ユニットを士気低下状態で退却させる。そして左翼の騎兵部隊も機動力を生かして敵ユニットの間隙から背後に進入し攻撃。ブルゴーニュ軍騎兵部隊指揮官は士気低下状態となった騎兵とともに退却を余儀なくされた。


 ブルゴーニュ軍はここで総指揮官マクシミリアンの活性化が回ってくる。このままでは敵騎兵部隊が両翼を突破してくる可能性が高い。特に、左翼(マップ下方)は自軍歩兵主力と離れているうえにスペースも広く敵の騎兵部隊に圧倒される危険性がある。たしかに前ターンの攻撃で敵中央の歩兵部隊にはかなりの損害を与えた。だが敵騎兵が自軍後方に回り込んできた場合、敵中央に攻勢をしかけている主力部隊の歩兵はすぐに対応することは難しいだろう。そうだとすると、早めに守りを固めるべきか。


 しばし迷ったブルゴーニュ軍プレイヤーだが、思い切って中央での攻撃を続けることを決断する。中央は総指揮官マクシミリアンがいるため二回活性化できる。一方、中央の敵歩兵2部隊のうち、マップ上方の部隊は敵総指揮官から離れているため1回の活性化しかできない。しかも、もう一つの歩兵部隊は指揮官が潰走している。今のうちに敵歩兵部隊に強烈な打撃を与えておくのだ。

 

 そう考えたブルゴーニュ軍は中央で全力で攻撃を加える。中央上部に進出してきている敵騎兵にも反撃を加え、士気低下状態にして撃退した。騎兵が戦場を支配する時代はとっくの昔に終わったということを思い知らせてやる。実際、「最後の騎士」と呼ばれたマクシミリアンだが、ギネガテの戦いでは騎乗せずに歩兵とともに戦っている。このゲームでもフランス軍の歩兵部隊指揮官は二人とも騎兵ユニットとスタックしているのに対し、マクシミリアンとスタックしているユニットは下馬騎士(Ch à pied)である。


 多くのユニットが潰走したフランス軍だが、ターン終了時の回復フェイズで多くが回復した。だが、指揮官がスタックしている潰走騎兵は回復に失敗。必死に押しとどめようとする指揮官の言うことを聞かず、恐怖にかられた兵たちは安全な場所を目指して逃走し、その波に飲み込まれて指揮官も一緒に後方に下がっていってしまった。その結果、次ターンはこの歩兵部隊の多くが指揮範囲外になる。これは痛い。ADdEではターン冒頭に各ユニットが指揮官の指揮範囲にいるかどうかのチェックがあり、指揮範囲外になるとそのターンは攻撃ができないなどかなり行動が制限されてしまうのだ。





●第7ターン


 フランス軍は両翼での攻撃を続ける。騎兵は質も量もフランス軍が上なのだ。そのうちブルゴーニュ軍が限界を迎えるはず。そしてボロボロになっている中央歩兵部隊は残存している弓兵で射撃を加えるとともに、再編成に努める。

 そんなフランス軍に容赦なく射撃を加えるブルゴーニュ軍。歩兵の潰走に巻き込まれて、仏軍中央上方の歩兵部隊を率いるAntoine de Choursesまでもが潰走してしまった。ターン終了時に回復はしたものの、フランス軍中央はかなり弱体化している。

 このゲームでは両プレイヤーとも勝利得点は基本的に壊滅した敵ユニットによって得られる。得点は兵種によって異なり、騎兵は4や5と高く、槍兵は2だ。第7ターン終了の時点でブルゴーニュ軍はフランス軍より24点リード。ゲーム終了時に相手より7点以上得点が上のプレイヤーが勝利する。フランス軍は敵の大量リードを縮めることができるのか。





つづく

2022年10月17日月曜日

最後の騎士と呼ばれた男  Guinegatte 1479 - La Trêve ou l'Epée(Ludifolie) AAR ③

●第4ターン
 射撃戦で両軍ともに損害を受ける。前ターンに引き続きブルゴーニュ軍は中央で押していくが、両翼、とくに左翼(マップ下)では敵騎兵部隊によって劣勢に立たされている。

 AFdEでは各ターンの最後に回復(Ralliements)フェイズがあり、ブルゴーニュ軍の潰走や士気低下状態ユニットの多くが回復した。回復フェイズでは接敵していないユニットは士気低下状態や潰走状態からの回復を試みることができる。各ユニットには戦闘力(Facteur de combat)のほかに兵質(Qualité)という数値を持っており、10面体サイコロを振って兵質以下の目が出れば士気低下状態から回復できる。ブルゴーニュ歩兵は3分の2が兵質5,残りが4だ。一方フランス軍歩兵の兵質は6割が4,残りが3と、ブルゴーニュ歩兵のほうが高い。
 なおフランスは、百年戦争中の1445年には常備軍の走りとなる勅令隊(compagnies d'ordonnance)が、1448年には各教区ごとに平民が一人を民兵を出すという国民弓兵隊(francs archers)が創設されている。このゲームでのフランス軍の歩兵ユニットには勅令隊と国民弓兵隊が含まれているが、兵質は勅令隊のほうが国民弓兵隊より1高く、常備軍と民兵の違いが現わされていると思われる。

 ブルゴーニュ軍は多くのユニットが回復したものの、フランス軍で遅れ気味だった中央上方のAntoine de Chourses率いる歩兵部隊が戦闘に参加してきているため、中央の多数の敵歩兵部隊に適宜反撃しつつ両翼の騎兵部隊にどう対処するかが悩ましい。逆にフランス軍は中央でプレッシャーをかけつつ両翼の騎兵部隊で早く突破したいところだ。




●第5ターン
 中央の射撃戦で両軍とも大きな損害が出る。兵数で劣っているブルゴーニュ軍としてはこうして消耗戦となるのが痛い。
だがこのターンはブルゴーニュ軍がイニシアティブを握った。マクシミリアンの指揮のもと、中央の仏歩兵部隊に総攻撃を仕掛ける。砲撃で吹き飛ぶフランス軍歩兵。ブルゴーニュ軍は歩兵部隊の指揮官Romont伯が陣頭にたち、仏軍弓兵の防御射撃を受けながらも果敢に白兵戦をしかける。フランス軍の歩兵戦列は崩れ多数が潰走、騎兵部隊も損害を受けた。

 ブルゴーニュ軍を指揮するマクシミリアンだが、ハプスブルグ家の神聖ローマ皇帝フリードリヒ三世を父に持つ。ハプスブルグ家といったらその後何世紀にもわたってヨーロッパにおける有力な王朝となるが、フリードリヒ三世の時代はそれほど勢力が飛び抜けていたわけではないらしい。分裂状態のドイツにおいて、毒にもなにもならない無能者とみなされていたからこそ神聖ローマ皇帝の君主に選ばれた、なんてなことが書いてある文献もある。だがフリードリヒ三世は50年以上の長きにわたって統治し、その子マクシミリアンは初めて教皇による戴冠を受けぬまま神聖ローマ皇帝となり、以来神聖ローマ帝国の君主はローマに出向いて教皇から戴冠を受ける、ということをしないまま皇帝になる。つまりマクシミリアンの代になってドイツの皇帝となったと言えるらしい。
 しかし神聖ローマ帝国ってほんと、ややこしい。大空位時代や金印勅令とか世界史の授業で習った覚えがあるけど。まあとにかくずっと分裂状態で、三十年戦争が有名だけどその前から何世紀も諸侯がずっと勝手なことやっていて、18世紀にはヴォルテールが「神聖でなければローマでもなく、帝国でもない」という有名な言葉を残していますね。

 フランス軍は両翼の騎兵で攻勢を続けるものの、戦果が上がらない。だが後方からゆっくりと進んできた砲兵がやっと戦列に参加、砲撃で敵弓兵を士気低下させた。さらに多くの損害を受けている歩兵部隊では、指揮官を士気低下状態のユニットに隣接させる。指揮官は指揮ボーナス(Bonus)という値を持ち、指揮官と隣接もしくはスタックしているユニットは回復チェックの際、指揮ボーナス分サイの目が有利になるのだ。戦場から逃げ出そうとしている兵たちに指揮官が駆け寄って叱咤激励、士気回復させるというやつである。
 



つづく

『ナポレオンの騎兵とその指揮官たち』

  いつものことなんですが本って自分でなかなか選べずにほかの人が勧めているのを読むのが多いんですけどね、先日こういうポストを目にしまして。 『Napoleon's Cavalry and its Leaders』、読了しました。 1978年初版と古い本ですけど、フラン...